小学校5年 道徳(春をつげる鳥) 指導案 仁王小学校 用紙は A4 縦  1行 90字(半角) 1ページ 49行に設定してください。     第5学年 道 徳 指 導 案 指導者   多 田 英 史  .主題名  春をつげる鳥  .主題について  ○ 学級の子どもたちは、自然や音楽、美術作品などの素晴らしさを感じたり、物語の人物の生き   方に素直に感動したりするようになっており、心情面における成長をうかがい知ることができる。    しかし、「美しいもの」の意識は、自然美や造形物など、姿、形として視覚的にとらえられる   ものに多く集中し、人間の持つ心や行為の美しさに対しての感じ方はまだ十分とは言えないよう   である。その理由としては、現代のように物質中心に目まぐるしく変動する社会の風潮の中で、   子どもたち自身も急激な発達の波に押し流されて、純粋な心や行為の美しさに目を向け、感動に   心ゆくまでひたる機会や、善さを深く味わう精神的なゆとりを失っていることなどが考えられる。    そこで、人間の純粋な心の尊さに数多くふれさせるため、美しい話を読ませたり聞かせたりし   ながら、それらのもつ感動性を子どもの心情に訴える。子どもの奥深くに潜んでいる情操を揺り   動かし、美しいものに憧れを持たせることによって、一人一人の子どもが、ほのぼのとした温か   い心で、生活の中にうるおいを見いだすような気持ちを育てたいと考える。    本時の授業では、感受性豊かで、美しいものを素直に感じとりながら善さを求めている「Aタ   イプ」と、美しいものに接しても気付かず、たり、感動の不十分な「Cタイプ」との見方、考え   方の交流を通して意識の変容を見守っていく。  ○ 指導項目3−(3)は、高学年では「美しいものに感動する心や人間の力を超えたものに対する  畏敬の念をもつ。」を内容としている。    われわれは、功利打算にとらわれない純粋で無償の素晴らしい行為や心に接した時、そこに、   美しく崇高な人間の姿を見い出し、強い感動を覚える。崇高なもの、美しいもの、人間の力を超   えたものに接することによって、卑俗な自己の心が潔白にあらわれ、より善なるものに目覚めて   いく。また、そのような崇高な姿へ自己を一歩でも近付けたいと心から願うのである。美しいも   のや崇高なものに感動できるということは、人間としての弱さや醜さを乗り越えて、より高い理   想や希望に向かって生きようとすることにほかならない。ソクラテスの言うように「善く生きる   ことと、美しく生きること、ただしく生きることとは同じ。」であり、美的情操を養うことが道   徳的情操を育てる側面になるということも考えられる。    美しいものを美しいと感じ、喜びや哀しみを鋭く、深く感じ取る心を持つ子どもたちが多く育   っていったなら、人間社会はどんなにうるおいのあるものになるだろう。子どもたちに人間の素   晴らしい行為や心の中に美しさや気高さがあることに気付かせ、それを大切にしようとする気持   ちを育てることは意義深いことである。  ○ 資料「春をつげる鳥」は、屈強のアイヌの酋長が、気高く美しく純粋に生きようとした息子の   姿に心を打たれるという話である。    自然をこよなく愛するアイヌの少年が、権力者としての父の意に沿わずに自らの生き方を貫き   通した結果、春をつげる鳥に生まれ変わる展開は、人間の生命を越える神秘的な世界を思い描か   せ、子どもたちの想像を十分に掻き立てるであろう。   息子の心の奥深いところにあるものに気付かず強制的に自分の生き方を押し付けていた酋長と、   苦悩する息子を対比させながら、息子の行為を“死”というよりは“生き方”として読み取らせ   ることが大切である。その心情的理解を基底にして、うぐいすの声を聞いた酋長が息子の気高く   純粋な生き方に強く心を揺り動かされ、安らかな気持ちになって行く姿を十分に浮き彫りにする   ことにより、ねらいとする清らかなものを尊ぶ心の素晴らしさを感得できる資料である。   .指導の構想   子どもの価値意識の個人差を 日常活動の観察、 資料状況に対する感想、の2つの観点からと  らえておく。ねらいに関わっての子どもの価値観を、                       Aタイプ(深)---美しいものを敏感に感じとりながら善さを求める子ども             Bタイプ(普)---美しいものを素直に感じとる子ども                      Cタイプ(浅)---美しいものへの感動に乏しい子ども  の3つのタイプに分けて把握しておく。   《個人差に応ずる手だて》   多様な価値観の表出と交流の場の設定  ○山小屋へ出かけた息子の気持ちを「どうしようか。」と単に迷っている姿でとらえているB・C  タイプに更にその迷いの根拠となるような状況や経緯にかかわるとらえかたをしているようなAタ  イプの見方・感じ方に触れさせる。酋長の願いと自分の考え方に大きな違いを感じ、追い詰められ  て深く苦悩する息子の姿に共感させたい。  ○春をつげる鳥の声に耳を傾ける酋長の気持ちを、B・Cタイプの子どもには表面的な安心感や息  子への親心というとらえにとどまる子もいるであろう。そこで、息子の死の意味を純粋な生き方を  貫いた姿として再確認するとともに、Aタイプから、息子のもっていた清らかな願いと気高い魂の  象徴としてうぐいすの声を聞き、酋長が深い感動にひたっている様子をとらえる反応を引き出す。  その感じ方の交流を通して、絶望的な悲しみが崇高な祈りにもにた気持ちに昇華していく酋長の  姿にふれさせ価値を理解させたい。  自己の振り返りをうながす発問 ○B・Cタイプは、息子の死の意味については、気の弱さや逃避の結果とする消極的な段階でとら  えていると思われる。そこで、「どうして春をつげる鳥に生まれ変わったのだろうか。」と発問し て子どもの思考を角度づけ、息子の自然と生命に対する深い愛、父である酋長の意に流されない意  志力に気付かせ、「生き方」として自ら強く願うあまりの姿として理解を深めていきたい。   書く活動の組み入れ  ○春をつげる鳥の声を聞いて酋長の悲しみが和らいだ理由を考えさせる場面では、酋長のより高ま   った心情をより深く理解させるため自分の考えをノートに書かせてから発表させる。息子の心の   美しやさ純粋性が酋長の心を揺り動かし、穏やかな気持ちや畏敬の念を抱かせていく様子を一人   一人自分の言葉で考えさせたうえで発表させる。  《話し合いの流れ》  T 獲物を捕らずに帰っ  C 弱虫め T 息子はどうして春 C 争いがいやだった てきた息子を見た酋 B 困ったことだ をつげる鳥に生ま B 自然や生命を愛する   長の気持ち  A やさしい子どもだ れ変わったのか  A 人の心を和ませたい T 春をつげる鳥の声で C 息子が幸福になった   T 春をつげる鳥の 息子よ、この美しい   悲しみが和らいだ訳  B 息子の願いが分かった 声に耳を傾ける 歌声をいつまでも人 A 息子の気高さに打たれた 酋長の思い の心に伝えておくれ  .ねらい   心の美しさが、人の心を揺り動かすことに気付かせ、清らかなものを尊ぶ心情を養う。  .展開の大要 ------------------------------------------------------------------------------------------ 学 習 活 動  予想される児童の反応 指 導 上 の 留 意 点 ------------------------------------------------------------------------------------------ 1.うぐいすの声の録音   ・うぐいすの美しく、すきとおった を聞き、感じたことを 声を聞かせ、子どもたちに興味や 問 話し合う。   関心を持たせるとともに、資料に    ○うぐいすの声を聞いて・雪がとけはじめた野山の春 適した学習の雰囲気を盛り上げる。 どんなよさを感じまし ののどかさ。  ・感じたことを自由に語らせながら、  題  たか。 ・澄み切った空気のしずけさ。 うぐいすの声のよさを意識付けて、 ・心が透き通るような感じ。  本時の資料への導入とする。 ・春の温かさや柔らかさ。 の 2.資料を読み、話し合 ・息子の純粋でやさしい生き方の素     いの方向をつかむ。 晴らしさと気高さに、かたくなで ○みんなで話し合ってい・息子は死んだ後に、どうし 権力的な酋長が、悲しみの底で心 把 きたいことはどんなこ て春をつげる鳥に生まれ変 を洗われ、心を和らげていく様子     とか。        わったのだろう。 を探って行く方向で話し合うこと ・春をつげる鳥になった息子 を確認する。 握 の声を聞いて、酋長はどん なことを思ったのだろう。 3.息子に強い酋長にな ・強くたくましい後継者に育てよう     ってほしいと願う酋長 とする権力者としての酋長の存在 問 の気持ちについて話し を分からせる。 あう。 題 ○酋長は獲物を捕らずに・なんと弱虫で意気地がない ・息子の心の奥深いところにあるも 帰って来た息子を見て・男のくせにだらしがない。 のを理解しようとせず、強制的に の どんなことを思ったで・こんなことでは、強くたく 自分の生き方を押し付けている酋 しょうか。 ましい酋長になんかなれっ 長が、息子を追い詰めていく状況 分 こないぞ。 をとらえさせたい。 ・もっと厳しく鍛えなければ 析 ならない。 4.春をつげる鳥に生ま ・酋長の意には反するが、自ら純粋  ・  れ変わって行く息子に な生き方を貫いていく息子の素晴 ついて話し合う。 らしさについての理解を深める。 追 ○笛をもってでかけた息・父の願いも分かるけど、ど ・追い詰められた状況をふまえて- 子は、山小屋で息をひ うしたらいいのだろう。 酋長の願いに沿うこともできず、 求 きとるまでどんなこと・やっぱり私には動物を捕ま 深く苦悩する息子に強く共感させ   を考えていたのでしょ えることなんてできない。  たい。  う。 ・私の命は死んだ後、どうな                るのだろう。           ○息子は死んだ後、どう・笛を吹くのが好きだったか ・息子の死を逃避という消極的なも して春をつげる鳥に生 ら。 のとしてとらえるのでなく、自然 価 まれ変わったのでしょ・自然に対して深く優しい心 と人間を深く愛するがゆえに、父 うか。 を持っていたから。 の意にも沿わず、自らの意志を貫 ・笛の音をうぐいすの声に込 き通した結果、うぐいすに生まれ めて人々に聞かせ、心を和 変わった息子の生き方として考え 値 ませたいと思ったから。 させたい。 5.春をつげる鳥の声を ・悲しみが和らぎ、息子の美しい心 聞いた酋長の気持ちに に強く心を打たれる酋長の気持ち ついて話し合う。 共感的にとらえさせる。  の ○酋長の悲しみが春をつ・息子が幸福になったことが ・息子の美しい心と純粋な生き方が、 げる鳥の声を聞いて和 分かったから。 酋長の心を強く揺り動かし、悲し らいだのはどうしてな・息子の本当の願いが心に伝 みを和らげていく気持ちの変化を のでしょうか。 わってきたから。 考えさせながらねらいに迫ってい 感 ・息子の命がより美しいもの きたい。 に生まれ変わったから。 ・酋長の心情をより深く理解させる ・息子のやさしい心、美しい ため、一人一人の言葉で考えさせ 心に、深く心を打たれたか て、ノートに書かせた後に発表さ 得 ら。 せる。    ○春をつげる鳥の声に耳・これでよかったのだ。 ・うぐいすの声を聞いて酋長が息子 ・ を傾ける酋長は、どん・「春の使い」になった息子 の持っていた清らかな願いと気高     なことを思っているの は、幸福なことだろう。 い生き方を感動的に分かることに 理 でしょうか。 ・なんて素晴らしい心なのだ り、安らかな気持ちや畏敬の念を ろう。 抱いていく姿に共感を深めさせて ・心の安らぐいい声だ。 いきたい。 ・息子よ、この美しい声をい 解 つまでも私たちに聞かせて                おくれ。 6.春をつげる鳥に伝え ・春をつげる鳥に伝えたい言葉を発 価 たいことについて話し 表させて、美しく純粋な心に触れ 値 合う。 た感動を大切にすることによって、 の ○春をつげる鳥にどんな・心が安らぐ歌声をありがと 余韻を残しながら清らかなものへ  主  言葉をささげたいです う。これからも聞かせてね。 の憧れをふくらませたい。 体 か。 ・この美しい心の音色は、決 化 して忘れません。 +---------------------------------------------------------------------------------------+ +---------------------------------------------------------------------------------------+