印刷用紙:B4縦 1ページの行数:63 1行の文字数(半角で):90 第1学年  道徳指導案 指導者   多 田 英 史 T.主題名  二わのことり U.主題について  ○ 学級の子どもたちは,「友だちと仲よくしよう,困っている人を助けよう。」という言葉を素   直に受け止め,友だちが学習用具を忘れると自分のものを貸してあげたり,具合の悪い子やけが   をした子を保健室へ連れて行ったりしている。    しかし,遊びに夢中になっているときや好きな仕事などに熱中しているときは,ささいなこと   がもとで「けんか」や「いじわる」や「なかまはずれ」が起きたりすることがある。また,自分   が考えていることや自分がいましたいと思っていることは,友だちも同じように考え,同じよう   に欲していると思い込んでいる子どもが多い。その理由としては,この時期の子どもたちの特質   と言うべき自己中心性や相手の気持ちを考えようとする意識の弱さ,さらに友だち同士が仲よく   助け合うことのよさに気づいていないことなどが考えられる。    そこで,「友だちと仲よくすることの素晴らしさ」「互いに助け合おうとする心の大切さ」に   気づかせ,相手の立場や気持ちになって友だちと仲よく楽しい生活を送ろうとする気持ちを育て   たいと考える。    本時の授業では,いつも友だちと仲よくし助け合おうとする気持ちの強い「Aタイプ」と,自   分本位で仲よくしようとする気持ちの足りない「Dタイプ」の見方,考え方の交流を中心に意識   の変容を見守っていく。  ○ 指導項目2−(3)は,低学年では「友だちと仲よくし,助け合う。」を内容としている。    われわれが望ましい人間関係や社会生活を成立させるうえで,その基盤となる徳として人間相   互の信頼をあげることができる。それは,道徳の目標に示す「人間尊重の精神」そのものであり   その信頼を土台にした上に「仲よくし,助け合う」という発展が見られると考える。仲よくとは   心を許し安心できるきずなを保っている状態である。助け合うとは,お互いに慰め合ったり,励   まし合ったり,相手の足りないところに手を添えて補い合うということである。人間相互が分け   へだてなくだれとでも交わり,信じ合い,仲よく助け合ってこそ楽しい生活を営むことができる   ものと考える。そのためには,偏見や利害にとらわれ警戒し合ったり,不安や不信に陥ることの   ないようにしたいものである。    低学年では,集団生活の中での心配や不安を解消させ,学校生活を楽しいものにするためにも   温かい人間関係に満ちた仲間づくりが何にもまして必要になってくる。したがって,相手の存在   を認め,相手の立場に立ってものを考え思いやる優しい心や,互いに協力し,励まし合って生活   しようとする心情を育てることは意義深いことである。  ○ 資料「二わのことり」は,山奥の寂しい家に住んでいるやまがらの誕生会と,明るくてきれい   なうぐいすの家の歌のおけいこの会がかちあい,いったんはうぐいすの家に行ったみそさざいが 思い直してやまがらの家にかけつけるという話である。    物語の状況として,家の場所やその様子,会の内容や登場人物などが対照的に描かれており,   主人公であるみそさざいが「どちらへ行くのかな」と子どもたちも共に興味をもって考えること   のできるすじだてになっており,子どもの心理に即しているものと考える。    また,誕生会の招待にだれも応じてくれないときのやまがらの寂しい心情や,やまがらの気持   ちをくみ取り迷いながらも友だちを思いやったみそさざいの素晴らしい心情と行為は,子どもた   ちが共感的に理解することができるであろう。    やまがらの涙を見てさらに,友だちの気持ちを理解していくみそさざいの姿をとらえることに   より,友だちの気持ちを思いやり,助け合うことの大切さを感得させることのできる資料である    V.指導の構想   子どもの価値意識のちがいを@日常活動の観察, A資料と類似状況のアンケート,の2つの観 点からとらえる。   そして,ねらいにかかわっての子どもの価値意識を,次の4つのタイプに分けて把握しておく。           Aタイプ・・・いつも友だちと仲よくし,助け合う。           Bタイプ・・・友だちと仲よく遊ぶことができる。                        Cタイプ・・・友だちと遊ぶことはできるが,表面的である。    Dタイプ・・・友だちと仲よくしようとする気持ちが足りない。  《個に応ずる手だて》  ○多様な価値意識の表出と交流の場の設定  ・うぐいすの家へ飛んで行ったみそさざいの迷いを主に外的な条件からとらえているC・Dタイプ   に,さらにその迷いの根拠となるような内面的な状況や経緯にかかわるとらえかたをしているよ   うなAタイプの見方・感じ方に触れさせる。つい目の前の楽しさに心を奪われるみそさざいの弱   さに共感させつつ,友だちのやまがらのことがどうしても気になる姿を理解させたい。  ・うぐいすの家をぬけだしやまがらの家へ向かうみそさざいの行為を,C・Dタイプの子どもには   招待された義務感やかわいそうと思う同情からというとらえにとどまる子もいるであろう。そこ   で,Aタイプから,やまがらの立場や気持ちを自分のこととして感じ,いても立ってもいられな   いみそさざいの姿としてとらえる反応を引き出す。その感じ方の交流を通して,友だちの悲しみ   や喜びを分かり合うことの素晴らしさにふれさせ価値を理解させたい。 《自己評価の手だて》  ○自己の振り返りをうながす場の設定 ・みそさざいがうぐいすの家を抜け出す理由を考えさせる場面では,みそさざいのより高まった心   情を深くとらえさせるため,自分の考えをふき出しに書かせてから発表させる。みそさざいの思   いが自己中心から相手理解へと変容していく様子を,一人一人自分の言葉で考えさせたうえで発   表させる。 ・授業の中で心に残ったことを発表させながら,学習に対する自分自身の成果を確かめさせたい。  《話し合いの流れ》  T みそさざいがどっちの家にいこうかと迷ったわけ                         C うぐいすのいえはきれいで楽しい   D やまがらの家は遠くて寂しい T うぐいすの家でのみそさざいの気持ち     A やまがらが寂しく待ってるだろうな   A 誕生日なのにやまがらがかわいそう   B やまがらが気になって楽しくない   D にぎやかで楽しいな T みそさざいがやまがらの家にいったわけ   A やまがらを喜ばせてあげたい   C 友だちがいないのはかわいそう   D 約束を破っては悪い T やまがらの涙を見たみそさざいの気持ち     こんなに喜んでくれる   友だちを大切にしよう W.ねらい   お互いに相手のことを考えて,友だちと仲よく助け合おうとする気持ちを育てる。 X.展開の大要      学 習 活 動    予想される児童の反応    指 導 上 の 留 意 点      1.友だちにいじわるを              ・遊びに入れてもらえずに,困った   問  されたときの気持ちに               様子でじっと見ている場面の絵を      ついて話し合う。                 提示する。                ○仲間に入れてもらえ ・私も入れてほしいなあ。  ・感じたことを自由に語らせながら,  題   ない子どもはどんな ・どうして入れてくれないの。 友だち関係で困っている様子をと      気持ちでいるでしょ ・いじわるだなあ。入れてく  らえさせ,本時のねらいへの方向       うか。        れてもいいのに。      づけを図る。            の            ・他の人に入れてもらおうか。                    2.資料を読み、話し合              ・みそさざいとやまがら,みそさざ      いの方向をつかむ。                いとうぐいすの友だち関係につい   把  ○お話を聞いて,どん ・うぐいすの家の歌のおけい  て絵話で整理しながらおさえる。       なところが心に残り  この様子が楽しそう。   ・明るさや楽しさにとらわれていた       ましたか。     ・だれも来ないのでやまがら  みそさざいが,やまがらの家へか   握             がかわいそう。       けつけていくまでの気持ちの移り                ・みそさざいが行ってあげた  変わりを話し合いの中心とする。                 のでやさしいと思う。                     問 3.迷いながらもうぐい              ・やまがらの誕生会と,うぐいすの      すの家に飛んで行った               歌のけいこがかちあってしまった   題  みそさざいの気持ちに               ことをおさえる。             ついて話しあう。                                   の  ○どうしてみそさざい ・うぐいすの家は明るいけど ・目の前の楽しさについひかれてし       はどっちの家に行こ  やまがらの家は暗いから。  まいがちな気持ちや,みんなにつ   分   うかと迷ったのでし ・誕生会に呼ばれたけど遠く  られまねをしてしまう心の弱さに       ょうか。       て寂しいから気が進まない。 気付かせ,みそさざいの迷いを共   析            ・うぐいすの家に行きたいけ  感的に受け止めさせたい。                    どやまがらがかわいそう。                   ・  ○うぐいすの家に行っ ・やまがらのことが気になる ・みんなを待っているやまがらの気       てからのみそさざい  し,楽しめないなあ。    持ちにもふれながら,楽しめない   追   はどんな気持ちでい ・やまがらはだれか来てくれ  みそさざいの気持ちが自己中心か       たでしょうか。    るのを待っているだろうな。 ら相手理解に移っていることに気   求                           づかせる。                 4.やまがらの家に行く ・みそさざいの気持ちの変化を浮き     みそさざいの気持ちに 彫りにし,やまがらへの思いを深     ついて話し合う。                 く考えさせる。  価  ○みそさざいはどうし ・約束を破っては悪いから。 ・みそさざいがやまがらを思い,い       てうぐいすの家を抜 ・やまがらが一人ぼっちで寂  たたまれなくなるほどの友だちへ       け出して,やまがら  しく待ってると思ったから。 の優しさに共感させたい。単なる   値   の家へ行ったのでし ・誕生日なのに友だちが一人  義務感や同情と考えがちなCDタ       ょうか。       もいないのはかわいそう。  イプに,やまがらの寂しさを自分                ・やまがらを喜ばせてあげた  のことのように感じ,友だちを喜   の             いと思ったから。      ばせたいと考えたからととらえる                ・やまがらも大切な友だちだ  タイプの考えを交流させ,ねらい                ということに気がついたか  に迫りたい。           感             ら。           ・価値的に高まったみそさざいの心                               情を深く考えさせるため,ふき出                               しに一人一人自分の言葉で書かせ   得                           た後で話し合わせる。           ○目に涙を浮かべて喜 ・やっぱり,来てよかった。 ・涙を流して喜ぶやまがらの姿に目       ぶやまがらを見て, ・喜んでくれてうれしいな。  を向けさせ,友だちに対する思い   ・   みそさざいはどんな ・迷わずに初めから来ればよ  やりの気持ちの大切さに気付かせ      気持ちになったでし  かった。          る。みそさざいとやまがらの心の       ょうか。      ・ごめんね。一人ぼっちで寂 通いあいに深く浸らせたい。    理             しい思いをさせてしまって。・話し合った後で,みそさざいとや                ・これからもずっと仲よしの  まがらの様子を役割表現させる。                友だちでいようね。     友だちに対する思いやりのほしい   解                           子にみそさざいを,一人遊びの多                               い子にやまがらの役を意図的に指                               名する。              価 5.友だちと仲よくでき              ・自分の生活を思い起こさせ,友だ      てよかったという経験               ちのことを考えて助け合ったこと  値  について話し合う。                を発表させる。             ○友だちのことを考え ・おにごっこをしているとき ・自己を振り返ることが難しい場合   の   て仲よくしたり,助  入れてほしそうだったから  には,事前にとらえておいた事例       けたりしたことにど  入れてあげた。   を示したり,価値適用の場を広めた  主   んなことがあります ・係活動などのやり方が分か  りする。                  か。         らないとき,一緒に手伝っ ・仲よくしたり,助け合ったりでき   体             てくれた。         たときの様子や気持ちを語り合う           中で実践への意欲化を図っていき 化 たい。