印刷用紙:B4縦 1ページの行数:50 1行の文字数(半角で):100 第 6 学 年 道 徳 学 習 指 導 案   盛岡市立城北小学校    教諭  工 藤 真紀子 1 主題名 たとえ友達でも         資料名 「わたしの一票」 2 主題設定の理由 (1) 価値について    指導内容の「公正・公平、正義」は、第5学年及び第6学年の「主として集団や社会とのかかわりに関す   ること」の(3)に、「だれに対しても差別や偏見を持つことなく公正、公平にし、正義の実現に努める」   とある。   「公正・公平に振る舞う」とは、自分の利害や感情を越えて、理にかなった考えのもとに良心に従って行動   することである。誰に対しても偏見を持たずに公正・公平な行いをしようとする態度を育てていくことは、   民主主義社会において大切なものであり、集団や社会の道徳性を身につけるために必要なものである。とか   く、他の人の痛みに思いが及ばずに差別や偏見を助長し、不公平を見過ごしがちである。そこで、公正・公   平に振る舞おうとする心を養うことが大切である。    高学年の段階においては、偏見を持つことや差別することはいけないことだということはもちろん分かっ   ている。しかし、自分の利害や感情が先に出て、他の立場を考えない態度を取りがちである。そこで、この   期の児童に集団生活の中で公正・公平な態度で他と接することができるよう指導していくことが大切である。 (2) 児童について    学級の児童は、偏見による悪口や差別している場に直面すると、注意したり、それをやめさせようとする   ようになってきた。しかしその反面、利己的な面も強くなり、自己や親しい友人の利益を優先してしまった   り、スポーツや遊びで能力のある者に左右されやすい傾向も見られる。また、不公平な扱いを受けたことに   対しては敏感に反応し、相手に強い不満を持つが、自分がとった不公平な言動によって相手が傷ついても気   にしない児童も見られる。    このような児童に、自分の損得や好き嫌いにとらわれずに誰に対しても分けへだてなく公正・公平に行動   しようとする態度を育てていきたい。 (3) 資料について    本資料は、学級会の議題を決めるにあたって、私情を交えず、公正・公平に振る舞おうとする三郎の姿が   描かれている。三郎は、自分の一票を投じることは正しいと信じながらも親友との関係が悪くなるだろうこ   とを思い悩む。しかし、好き嫌いや利害感情を捨て、広い視野に立って公正な判断をしなければいけないと   考え、一票を投じるのである。    どの児童も、公正・公平に振る舞わなければいけないことは分かっているが、自分の利害や感情が先に出   てしまいがちである。こうした児童にとって親友に対する思いと不公平を正そうとする正義感から苦悩する   三郎の心情に十分共感できると思われる。本資料は、三郎の姿を通して、利害・感情にとらわれることなく、   公正・公平に振る舞うことの大切さに気づかせていくのに適した資料である。 (4) 指導にあたって    友への思いと学級委員としての立場との間で思い悩む三郎の心の葛藤に焦点をあてて考えさせたい。まず、   友を裏切りたくないという三郎の気持ちに十分共感させるために、学級会での三郎の気持ちを考える前段で、   議題に出された正夫のつらそうな様子を想像豊かに想起させ、正夫に申し訳ないと思う気持ちを捉えさせる。    自己活動は、学級会で思い悩む場に設定し、その後の話し合いでは、自分の友人関係とかかわらせて、ど   うすることが正しいのか分かっていても人間誰もが持っている弱さゆえ悩む三郎の気持ちを考えさせたい。   そして、迷いながらも誰に対してでも正しく公平に判断しようとした三郎の姿を通して、利害や感情を意思   の力で押さえることによって、初めて公正・公平さが成立するのだということを感得させさせたい。    終末のふりかえりにおいては、資料で学んだことをもとに今までの生活を見つめさせることで、自分の「   公正・公平」に対する考え方や行動の傾向性に気づかせる。そして、その気づきの内容に対して個に応じた   支持的あるいは肯定的な言葉をかけながら、価値的行為を行おうとする意欲を高めたい。 3 本時の指導 (1) ねらい 自分の好き嫌いや利害にとらわれず、誰に対しても公正・公平に行動しようとする態度を育てる (2) 展 開 +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+ |段| | |時| | | |  学習活動・・・・・・・・・・  |   教師の働きかけ・・・・・・・・ | | 指導上の留意点・・・・・・ | |階|      |   |間| | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+ | |1 価値に関わる課題意識を|・ 相手が自分と仲がいいか悪い|3|・ 経験を想起できない児童に| | | もつ          | か、あるいは、男か女かなどに| | は、清掃や給食などの当番活| |導| ・ 気が合う人にだけ、い| よって接し方や態度を変えるこ| | 動や班活動など、身近な活動| | |  いように振る舞った経験| との多い自分に気づかせる  | | を想起させる | | |  を想起する      |☆ 児童の経験を、よくありがち| |・ 発言に対して、言葉がけや| | |             | なこととして、共感的に受け取| | うなずきをし、想起内容を支| | |             | める            | | 持する | | |             |・ 相手によって態度が違うこと| |・ 問いかける形で、課題意識| |入|             | がよくあることだが、どんな気| | を持たせる | | |             | 持ちで接することが大切かと問| | | | |             | いかける | | | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+ | |2 資料「わたしの一票」の|・ 三郎が、ボールの問題に投票|3|・ 読みの視点を与える | | | 範読を聞く       | した気持ちを考えながら聞くこ| | | | |             | とを指示し、範読する  | | | | |3 主人公三郎の心の動きに|  | | | |展| ついて考えながら、価値を| | | | | | 追求し、把握する    | | | | | | (1) 自分の投票が正しいと|・ 学級全体のことを考えると、|8|・ 三郎は、学級委員の立場に| | |  信じながらも、親友のこ| 議題に取り上げなければいけな| | あること、ボール問題の原因| | |  とを考えると心が沈んで| い、でも、友達の正夫に申し訳| | は仲良しの正夫にあることを| | |  いく三郎の気持ちを考え| ない、という迷いの中味を理解| | 押さえさせることで、三郎の| | |  る  | させる  | | 置かれた状況をつかませる | | | (2) 学級会で下を向く正夫|○ 学級会で非難されてつらそう|15|・ 学習プリント   | | |  を見て、親友を思う気持| にしている正夫の様子をイメー| |・ 自分なりの考えをもてず書| | |  ちと学級委員の立場を尊| ジさせる  | | けないでいる子には、板書を| | |  重しなければと思う三郎| | | 基に、学級委員の立場とボー| | |  の気持ちを考える   | | | ル問題の原因を作っているの| | | ・ 三郎の気持ちを考える|☆ 机間巡視しながら、自己活動| | は仲良しの正夫にあること、| | |  自己活動を行い、自分な| のよさに気づかせる言葉がけを| | つらそうにしている正夫の様| | |  りの考えをもつ  | 行い、子供の考えを把握する | | 子等を思い出させる  | | | |☆ 学級委員の立場から、不公平| | | | |   | は正さなくてはいけないと考え| | | | |           | ながらも、仲良しの正夫のこと| | | |開| | を考えるとつらく思う三郎の気| | | | | | 持ちを共感的に書いている子供| | | | |    | に同意を示しながらほめる  | | | | | ・ 自分なりの考えをもと|・ 正夫に申し訳ないと思いなが| |・ 話し合いの始めは、机間巡| | |  に、葛藤する三郎の気持| らも、ボールの問題を取り上げ| | 視で整理したものをもとにし| +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+ +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+ |段| | |時| | | |  学習活動・・・・・・・・・・  |   教師の働きかけ・・・・・・・・ | | 指導上の留意点・・・・・・ | |階|      |   |間| | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+ | |  ちについて話し合う | たのはどんな気持ちからなのか| | て意図的指名をし、学級委員| | |            | を考えさせることで、学級委員| | の立場と親友としての立場と| | |             | の立場を尊重した三郎の気持ち| | の間で揺れ動く気持ちを焦点| | |             | をとらえさせる       | | 化しながら話合いを進める | | |             |・ 学級委員としてボールに投票| |・ どちらの気持ちがより大き| |展|             | すべきだということは分かるが| | いと考えるかと問いかけ、話| | |             | それは友達を失うことにもつな| | し合いをうながす  | | |             | がり、できることならボールに| | | | |             | 投票したくないとためらう三郎| | | | |             | の気持ちを、当然のこととして| | | | |             | 受け止め、肩入れすることで共| | | | |             | 感を深めさせる       | | | | |            |☆ 自分の学級での生活経験にの| |         | | | | っとって、学級委員の立場や友| | | | | | 達関係のことを発言している子| | | | | | を賞賛する         | | | | | |☆ どの子にもある弱さ等に触れ| | | | |  | た発言に対しては、うなずきや| | | | |             | 同調を示しながら共感を深めた| | | | |          | ことを賞賛する        | | | | | (3) 学校帰りに、正夫の言|・ 正夫から自分の行動が認めら|7|・ 自分の利害や感情にとらわ| | |  葉を聞いてほっとする三| れた三郎の気持ちを考えること| | れずに行動することの大切さ| | |  郎の気持ちを考え、価値| で、公正な行いをしたことの成| | を三郎の言葉で代弁させる | | |  を把握する      | 就感や満足感を捉えさせる  | | | | |             |☆ 誰に対しても差別しないで平| |・ 三郎の気持ちから価値をま| | |             | 等に行動する等の発言のもつ価| | とめにくいときは、「三郎の| | |             | 値を認める         | | すばらしさとその訳」を問い| | |             |               | | 価値をまとめる | |開|4 把握した価値を広くとら|・ 利害や感情にとらわれず、公|4|・ 日常生活の身近な事例の他| | | える          | 正・公平に行動しなければいけ| | にも、社会生活における差別| | |             | ない場面を広く捉える    | | にも目を向けさせる | | |             |☆ 公正・公平に生きることの価| | | | |             | 値をふまえて生活場面を発言で| | | | |             | きた児童に賞賛を与える | | | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+ | |5 学習をふりかえり公正・|・ 誰に対しても差別しないで平|5|・ 学習プリント | |終| 公平な行いについて、今ま| 等に振る舞うという価値に照ら| |・ 今までの自分を振り返り、| | | での自分を見つめる   | して、今までの自分はどうだっ| | 差別したり平等に振る舞えな| | |             | たか見つめさせる      | | かった等マイナス面の価値を| | |             |☆ 自分の生活を振り返って、素| | 自覚した児童に対して誰にで| |末|             | 直にありのままに自分を見つめ| | もよくあることだ等の声がけ| | |             | ることができたことを賞賛する| | をし、意欲付けを図る | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+