印刷用紙:B4縦 1ページの行数:63 1行の文字数(半角で):106   −−以下 指導案本文−−             第 6 学 年 道 徳 学 習 指 導 案                                 日 時  平成8年10月18日(金) 5校時                                 児 童  6年1組 男17名 女13名 計30名                                 指導者  尾 形 啓 介 1 主題名  おたがいの立場  (2−C 寛容・謙虚) 2 資料名  お別れ会     (出典 「みんなのどうとく6年」 学研) 3 主題設定の理由  1 価値について    本主題の内容項目「寛容・謙虚」は、視点2「主として他の人とのかかわりに関すること」の4に位置付けられ   ており、第5学年及び第6学年においては「謙虚な心をもち、広い心で自分と異なる意見や立場を大切にする。」   とある。この内容は、より広がりと深まりのある人間関係を築くために必要な、謙虚な心と広い心を育てようとす   るものである。社会生活の中で人間関係を広げていくには、自分のことばかりではなく、相手の立場や考えを認め   調和を図ろうとする気持ちが大切である。自分の立場や考えを頑固に主張し、その反面、相手を認めず、過ちを厳   しく批判すれば、対立や争いが生じるのは当然である。これでは円滑な社会生活は望めない。そこで、一人一人が   お互いに相手の立場や考えを理解し、尊重できる広い心をもつことが要求されるのである。たとえ、自分と異なる   立場や考えの相手であっても、人間として同格であり、尊重すべき人格をもっていることへ注目させることによっ   てこそ、寛容を深くとらえさせることができる。自分も不完全な人間であり、過ちを冒しやすい存在であることを   自覚させ、自分に対する謙虚な心をもつことによって、相手への民主的な寛容が得られると考える。    この時期の児童は、自己主張が確立され、相手と意見がくい違ったり、行動のいき違いがあったりすると、一方   的に自分の考えが正しいと固執してしまい、相手の意見を聞く耳は持たないという例が多々見られる。そんな時こ   そ、すっと自分を引き、相手の意見に耳を傾け、「なぜそのように考えるのか、なぜそんな立場や行動をとるのだ   ろうか」と、相手の立場に立って考えようとする態度を育て、異なった意見、異質なものの受容から人間は多くの   成長・発展をとげていることに気付かせる指導が重要である。  2 児童の実態    学級の児童の様子は、とても仲良く、協力的である。授業中はもちろん、学級会などの話し合い活動では、相手   の話をよく聞き、自分の考えと比較しながら発表できる児童が増えてきている。自己中心的な面もあるが、相手の   気持ちや立場を考えることの大切さは分かってきており、相手の表面にあらわれた悲しみや苦しみに共鳴できる児   童である。しかし、相手を気遣うあまり、対立関係を避けるため方便としての寛容や、いったん言い出したら、た   とえその誤りに気付いたとしても、何やかやと理屈をこねて後に引かない頑なさが、児童の実態に見い出される。   そこで、まず、自分も不完全な人間であり、過ちを冒しやすい存在であることを児童に気付かせるとともに、どん   な相手でも尊重すべき人格をもっていることに気付かせる指導が大切であると思われる。    また、本資料を使っての事前調査では次のような結果が見られた。(複数回答)   「直美のしたことや考えたことをどう思いましたか」という問いに対して、@「直美がしたことは、よくないと思   う」8名、A「直美の気持ちがよくわかる」5名、B「直美は、小原さんに都合を話すべきだ」2名、C「直美は   小原さんの事情をよく聞くべきだ」2名、D「直美はすごく反省したと思う」3名、E「直美も悪いが小原さんも   悪い」1名であった。特に「一方的に不満を言う直美」に対しての批判が多かったが、「自分もきっと直美と同じ   ことをするだろう」と、今までの経験を省みる児童の考えも見られた。  3 資料について    本資料の主人公である直美は、お別れ会約束の当日、家族ドライブという誘惑に後ろ髪引かれる思いをしながら   も、約束を果たそうと決心するが、一歩遅かった延期の電話に、気持ちを踏み躙られてしまう。都合が悪くなった   友達は弁解したり直美をなだめようとしたりするが、自分を正当化している直美のいかりはおさまらなかった。し   かし、時間が経つにつれ、何のためにお別れ会をしようとしていたのか、初めに返って考え直しているうちに、直   美は、何となくすっきりしない気持ちになってしまうのである。相手をなかなか許せない直美の心情を探り、共感   を深め、後にすっきりしない気持ちになっていく姿を通して、ねらいとする価値について考えさせるのに適した資   料である。  4 指導にあたって    事前調査によると、直美がドライブよりお別れ会を選んだことについては、ほとんどの児童が共感的にとらえて   いる。しかし、その後の直美の態度については8名が批判的である。その根拠として、小原さんの気持ちも考える   べきであると言う児童が6名、怒り過ぎだと言う児童が2名である。    そこで指導にあたっては、まず、ドライブかお別れ会か迷った末、自分の都合を犠牲にし、友達との約束を最優   先させた直美の誠実さをしっかりととらえさせ、一方的に会を延期された時の直美のショックと腹立たしさ、更に   自分は正しいことをしていると思い、友達の言い分を受け入れられない直美の気持ちに十分共感させたい。そして   中心場面では、「直美がなんとなくすっきりしない気持ち」になった理由を書かせ、直美はまだ友達を非難してい   ると考えるグル−プと、直美は自分自身に対してすっきりしないと考えるグル−プに分けて話し合いをさせたい。   そこで、友達の育代や幸子、小原さんは、直美のことやお別れ会のことをどう考えていたかについて考えさせ、直   美がどのように考えていけばすっきりするかを話し合わせることによって、3人の理由も正当な理由であったこと   に気付かせながら、本価値に迫らせたい。 4 資料分析図 資料名   お別れ会         ねらい   広い心をもち、謙虚に自分と異なる意見も聞き、お互いの立場を大切にしようとする心情を育てる。 +−+ +−−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−−−−−−−−+ |主| |1 お別れパ−ティ−に出席する| |2 お別れ会が延期になったとい| |3 育代と幸子から出席できなく| |4 時間がたつにつれて、なんと| |な+−+ か、赤城山へドライブに行くか+−+ う電話をもらう直美。 +−+ なった理由を聞き、不満がおさ+−+ なくすっきりしない気持ちにな| |場| | 迷う直美。 | | | | まらない直美。 | | る直美。 | |面| | | | | | | | | +−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ | | | | +−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ |主| |・ お父さんが、急に赤城山にド| |・ 小原さんからお別れ会の延期| |・ 翌日、育代と幸子の理由を聞| |・ 直美が、なんとなくすっきり| |発+−+ ライブに行こうと言い出した時+−+ の電話をもらった時、直美はど+−+ いた時、直美はどんな気持ちに+−+ しない気持ちになっていったの| |問| | 直美は、どんなことを考えただ| | んな気持ちになっただろうか。| | なっただろうか。 | | は、どうしてだろうか。 | | | | ろうか。 | | | | | | | +−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ | | | | +−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ | | |・ドライブは楽しいだろうなぁ。 | |・約束したのにとても信じられない。 |・自分勝手で頭にくる。 | |・みんなの言い分は分かったけれど、あの電話さえもう少し早けれ | | |・私も家族と一緒に行きたい。 | |・家族とドライブに行ってしまえばよかった。 ・どうしてくれるのよ。 | | ば、私もドライブに行けたのに。 | |心| |・困ったなぁ。どうしよう。 | |・自分勝手で頭にくる。 | |・私だって行きたいドライブをがまんしたのよ。 ・小原さんのためのお別れ会だったのに、小原さんをせめてしまっ | | |・家族とはこれからもドライブに行ける。|・私の予定をどうしてくれるのよ。| |・私の身にもなってほしいわ。 | | た。 | |の| |・小原さんには、もう会えないかも知れない。 ・もっと早く電話してくれれば、私もドライブに行けたのに。 ・友達だったら約束守りなさいよ。 ・みんなは、私の事情を知らなかったんだ。 | +−+・ドライブより、友達との約束が大事だ。 + +−+・絶対に許さない。 +−+・私は自分の予定も言わずに勝手に怒っていたわ。 |動| | | | | | 私は悪くないわ。 | | | | | | | | | | | |・もうちょっと冷静になって理由を聞いてあげればよかったな。 |き| | | | | | | |・私がもう少しみんなの事情や立場を考えてあげられれば、みんな | | | | | | | | | 嫌な気持ちにならなかったんだわ。 | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | +−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ +−−−−−−−+−−−−−−−+ | | | | 責任 友情 謙虚 +−+友情 寛容 |変|信頼 |容| |の+−− |様| |子|迷い 苛立ち 苛立ち +−+困惑 困惑 恨み 5 本時の指導  1 ねらい    広い心をもち、謙虚に自分と異なる意見も聞き、お互いの立場を大切にしようとする態度を育てる。  2 展開 +−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |段階 教 師 の 働 き か け |予想される児童の反応 |・指導上の留意点 ◇個への配慮 評価 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |1 資料「お別れ会」を読み、感想| |・直美の行動や意識に着目させ、個々の児| |導| を発表し、課題を設定する。 | | 童が、主人公に対してどんな意識を持っ| | | ・ 直美のしたこと、考えたこと|・せっかく約束を守ったのに、友達の都合でお別れ会ができなくな ているのかをとらえたい。 | | について、どう思いましたか。| ってしまって、直美がかわいそう。 ・事前調査の結果から意図的指名を行い、| | | |・直美は、自分のことしか考えないで怒っているからわがままだ。 本時のねらいとする価値への方向付けを | | |・直美は、どうしてすっきりしない気持ちになったのだろう。 図る。 | | | | |◇多くの児童に発表させ、意欲付けにした| | | | | い。 | | | | |・児童の感想をもとに、課題を設定する。| | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−+| |入| | || 時間が経つにつれて、何となくすっ|| | | +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+ ||きりしない直美の気持ちの変化に気付|| |10| | 直美が、なんとなくすっきりしない気持ちになっていったの| ||き、それを課題としてとらえることが|| |分| |は、どうしてだろうか。 | ||できたか。 || | | +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+ |+−−−−−−−−−−−−−−−−−+| +−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |2 友達の自分勝手な言い分に腹を| | | | | たてる直美の気持ちを考える。 | | | | | | | | | | ・ お父さんが、急に赤城山にド|・ドライブは楽しいだろうなぁ。 |・友達との約束を守るか、家族とのドライ| | | ライブに行こうと言い出した時|・私も家族と一緒に行きたい。 | ブをとるか、揺れ動く直美だが、大の仲| | | 直美はどんなことを考えただろ|・困ったなぁ。どうしよう。 | 良しである小原さんのためのお別れパ−| | | うか。 |・家族とはこれからもドライブに行ける。 ティ−を選択した直美の気持ちをしっか |展| |・小原さんにはもう会えないかも知れない。 りととらえさせる。 | | | |・ドライブより、友達との約束が大切だ。 | | | | | | | | | | | | | ・ 小原さんからお別れ会の延期|・約束したのにとても信じられない。 ・お別れ会の一方的な延期の電話にショッ | | の電話をもらった時、直美はど|・家族とドライブに行ってしまえばよかった。 クを受ける直美の気持ちに十分共感させ | | んな気持ちになっただろうか。|・自分勝手で頭にくる。 | たい。 | | | |・私の予定をどうしてくれるのよ。| | | | |・もっと早く電話してくれれば、私もドライブに行けたのに。 | | | | | | | | | | | | | ・ 翌日、育代と幸子の理由を聞|・自分勝手で頭にくる。 |・直美の気持ちに十分共感させたい。 | | | いた時、直美はどんな気持ちに|・どうしてくれるのよ。 |+−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | なっただろうか。 |・私だって行きたいドライブをがまんしたのよ。 自分は正しいことをしていると思い | | |・私の身にもなってほしいわ。 ||友達の言い分を受け入れられずに腹を|| | | |・友達だったら約束守りなさいよ。||立てる直美の気持ちに十分共感するこ|| | | |・絶対に許さない。 ||とができたか。 || | | |・私は悪くない。 |+−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | | | | | | | | | | | ◎ 直美が、なんとなくすっきり|・みんなの言い分は分かったけれど、あの電話さえもう少し早けれ ・すっきりしないのは、自分に対してであ | | しない気持ちになっていったの| ば、私もドライブに行けたのに。 | ることをおさえたい。 | | | は、どうしてだろうか。 |・小原さんのためのお別れ会だったのに、小原さんをせめてしまっ ・3人の理由も正当な理由であったことに | | | た。 | 気付かせたい。 | | | |・みんなは私の事情を知らなかったんだ。−−−−−−−−−−−−−−−−+| |開| |・私は自分の予定を言わずに勝手に怒っていたわ。 書く活動と、それを発表する活動を | | |・もうちょっと冷静になって理由を聞いてあげればよかったな。 通して、友達の気持ちや立場を思いや | | |・私がもう少しみんなの事情や立場を考えてあげられれば、みんな り、また、お別れ会の目的を考え直す | | | 嫌な気持ちにならなかったんだわ。|ことによって、自分のことだけを考え|| | | | ||て怒ってしまったことを反省する直美|| | | | ||の気持ちをつかむことができたか。 || | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | | | | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |3 自分の生活を見つめる。 | |・日常生活の中で遊びの約束や、ちょっと| | | ・相手の立場になって考えてあげ| | した口論、言葉遣いなどに目を向けさせ| | | て、よかった経験を発表して下| | 経験を発表させたい。 | | | さい。 | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | | ||自分の生活を見つめ、発表することが|| | | | ||できたか。 || |33| | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−+| |分| | | | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |終|4 教師の説話を聞く。 | |・日常の観察から、学級の穏やかで、誰の| | | | | 意見にも耳を傾ける児童を紹介し、広い| |末| | | 心をもち、謙虚に自分と異なる意見も聞| | | | | き、お互いの立場を大切にしようとする| |2| | | 実践の意欲付けを図りたい。 | |分| | | | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+