印刷用紙:B4縦 1ページの行数:60 1行の文字数(半角で):108   −−以下 指導案本文−−                 第5学年 道徳学習指導案                                  日時  平成8年10月25日(金)5校時                                  児童  5年2組 男13名 女12名 計25名                                  指導者 豊 岡 真 也 1.主題名  かけがえのない命 (3−A 生命尊重) 2.資料名  手のひらのかぎ (学研) 3.主題設定の理由  (1) 価値について   本主題の3−Aは、「主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること」の「生命がかけがえのないものであ  ることを知り、自他の生命を尊重する」ことを内容としている。生命の大切さはどれだけ強調してもし過ぎることは  ない。すべての道徳性は、生命が尊重されて初めて成り立つものであるといえるからである。したがって、ほかのい  かなる価値よりも優先されなければならないととらえる必要がある。   生命とは、すべてのものに優先して存在し、ほかの何物にも代え難い、「かけがえのないもの」であり、人間存在  の根源である。その生命の尊さは、自分にとってだけでなく他人にとっても全く等しく、一つ一つの生命がこの世の  中で互いに影響し合い、それぞれ意味あるものとして存在している。ゆえに、生命をかけがえのないものとして自覚  し、生きとし生けるものに対する慈しみや恐れ、敬うことの大切さに気づかせ、豊かな心を育てていくことが人間尊  重の精神を築き上げる基盤になるものと考える。   特に高学年の段階においては、生命の誕生から死に至るまでの過程を理解できるといわれている。人間誕生の喜び  や死の重さ、生きることの尊さを子どもたち自身の生活とかかわらせて、自他の生命を尊重し力強く生きぬこうとす  る心を育てていく必要があると考える。子どもたちの生活とかかわらせるためには、家庭や地域との連携が不可欠で  あり、周りの人たちの支えによって今の自分が存在していることにも気づかせたい。  (2) 児童について   学級の子どもたちは、病気やけがで病院に運ばれたり、家族の看護を受けたりしながら、健康であることの大切さ  を実感としてとらえてきている子どもが多い。例えば、体育の時間に友だちが転んでけがを負ったとき、一生懸命気  遣ったり、図工の時間に彫刻刀で指を切ったりしたときなどは、保健室に進んで友だちを連れていこうとする姿が見  られる。   ももおり、言葉の上では生命の大切さを理解しているように見えても、それが真の生命の大切さについて十分に理  解されているものとは言えない。まして、他の人の生命の危険について真剣に考え、それを大切にしようとする子ど  もは少ない。   その原因として、今日の社会・生活状況の中では、子どもたちが生命の尊さについて深く考える機会に乏しく、ま  た自殺や傷害など生命を粗末にした場面を取り上げるテレビ、雑誌等のマスメディアの影響も考えられる。   そこで、このような子どもたちに、生命はかけがえのないものであり、何ものにも代えられない重い存在であるこ  とを理解させ、真に自他の生命を大切にする気持ちを育てていきたい。  (3) 資料について   資料「手のひらのかぎ」は、定期バスで働く主人公・山本運転手の、生命を重んじた勇気ある行動が描かれた物語  である。話は、上北山村の国道を走っていたバスが、しきりに手を振る少年によって止められるところから始まる。   友だちが死にそうだという少年の話を聞いた主人公は、倒れている少年をバスに運び、村の診療所までノンストッ  プでバスを走らせる。しかし、医師は診療所から十キロ離れた場所に出かけていた。主人公は、少年の命を優先に考  え、診療所の車のかぎをにぎりしめ、医師を迎えに出かける。連れて戻ってきた結果、少年は何とか一命を取り留め  るのであった。   頭から血を流して倒れている少年の様子を見たときの、山本運転手の「このままでは死んでしまう」「何とかしな  ければ」という気持ちは、子どもたちの追体験から共感的に理解できるのではないかと考える。また、診療所の医師  がいなくて、十キロ離れたところに出かけていることを知った時の場面では、バスの運転手としての責任をとるか、  少年の救助をとるかで主人公の心の葛藤がある。バスの仕事は時間に正確でなければならないということ、主人公だ  けでなく、助手のタマキも責任をとらなければならなくなること等の状況をつかませながら、主人公の心の揺れ動き  を自分の心の揺れ動きとして、受けとめさせていきたい。そして、「バスの仕事をやらなければならない」や「少年  の命を救うことが大切だ」などの子どもたちが持つ価値を表出させながら、相互に交流させ、考えを深めさせていき  たい。   また、医師を連れ戻ってバスに乗りこむ場面では、主人公が何よりも生命を尊重して考えていた気持ちをとらえさ  せ、ねらいとする命のかけがえのなさ、進んで他の生命をも大切にしようとする心情を感得させていきたい。 4.本時について  (1) ねらい   生命のかけがえのなさを知り、進んで自他の生命を大切にしようとする心情を養う。  (2) 展開 +−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+ |過程| 教師の働きかけ | 予想される児童の反応 | 指導上の留意点 | ++−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+ || |1.価値への方向づけ | |・資料を事前に渡し、読ませておく。 ||価| 生命の誕生を喜ぶ親の声を聞 | | | |導値|いて話し合う。 | |・本時までに、家庭との連絡を学級| ||へ| | | 通信等でとり、子供が誕生したと| ||の|○お父さんやお母さんの話を聞 |・お父さんやお母さんが自分のこと きの思いを書いてもらい、紹介す| ||方|いてどんなことを思いましたか。 |をそんなに考えていたんだ。 | る。 | ||向| |・うれしい。 |・本時で紹介できなかった子につい| |入づ| |・恥ずかしい。 | ては、学級掲示などで掲示するこ| ||け| | | とを知らせる。 | || | | | | ++−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+ || |2.資料を読み、主人公の気持 | | | || |ちについて話し合う。 | | | || (1)状況把握 | | | || |○客を乗せていたバスを止めて |・どうしたんだろう。 |・バスを止めることになった状況を| ||価|まで、倒れている少年に近づい |・何がおこったんだろう。 | 主発問からとらえさせる。その際、 || |のはなぜだろう。 |・大変なことがおきたんじゃないか バスに向かって手をふり「友だち| || | | | が死にそうなんだよう」と訴えた| || | | | 少年の危機的な様子もおさえさせ| || | | | る。 | |展値|○少年を抱き起こそうとして、 |・たいへんだ。このままでは死んで・少年が大変危険な状況にあること| || |頭から血を流しているのを見た |しまう。 | をおさえ、主人公の、少年を助け| || |とき、山本運転手はどんな気持 |・早く医者に診てもらわなければ。 なければならないという気持ちを| || |ちだっただろう。 | | つかませる。 | ||の| |・どうしたらいいんだ。 | | || | | | | || | | | | || (2)価値把握 | | | ||追+−−−−−−−−−−−−−−+| | | || |○ノンストップで診療所の前ま||・何とか少年を助けなければならな・主人公の置かれている状況、バス| || | でバスを乗りつけたのに、医師|い。 | の運転手としての職務とその責任、 || | がいないと知ったときの山本運|・バスの仕事もあるし、困った。| 助手のタマキさんのことをとらえ| ||求| 転手は、どんなことを考えただ| | させた上で揺れ動く気持ちを考え| || | ろう。 ||・ほかの人に頼もうかな。 | させる。 | || +−−−−−−−−−−−−−−+| | | || | | | | ||把| | | | |開 |○「もう30分おくれていたら、|・少年が助かってよかった。 |・仕事の責任ということよりも、人| || |どうなっていたかわかりません」 | | 命救助のことの方を何よりも優先| || |ということをあとで聞いた山本 |・時間ぎりぎりだったんだ。 | して考えていたこと、その行動が| ||握|運転手は、どんな気持ちだった |あぶなかった。 | 結果的には命を救うことにつなが| || |だろう。 |・やっぱり、何よりも命が大事なん ったことに気づかせ、本時の価値| || | |だ。 | を感得させたい。 | || | | | | |+−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+ || (3)主体的自覚 | |・主発問について書くことがなかな| ||内| 日常生活を振り返り、生命の大| | かできない場合、本資料の主人公| || |切さについて感じることを書く。| | の行動について強く感じたことを| ||省|○自分や友だち、家族など周りの|・家族が病気で入院したとき | 書くように支援する。 | || |人たちの命の大切さを感じたのは| |・動植物の生命についても考えさせ| ||化|どんなときですか。 |・友だちがけがをしたとき | る。 | || | | | | ++−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+ || |3.終末 | | | |終ま|教師の説話 | |・生命について唱った歌を紹介する。 || | | | | ||と| | | | || | | | | |末め| | | | ++−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+  資料分析 「手のひらのかぎ」          <主な場面>                <主人公の意識>           <基本発問>         <価値> +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−−−−−−−+ |上北山村の国道沿いで定期バスを走らせていた | |・どうしたんだろう。 | | 客を乗せていたバスを止めて| |山本運転手は、道端で手をふる少年の姿にただ | | | |まで、倒れている少年に近づい| +−−−−−−+ |ならぬものを感じ、バスを止めた。少年に理由 | |・何がおこったんだ。 | |たのはなぜだろう。 +−+ 思いやり | |を聞くと、道の下の方の大きな岩の上に一人の +−+ +−+ | | 生命尊重 | |少年が、死んだようにうつぶせになっていた。 | |・大変なことがおきたんじゃないか。| | | +−−−+−−+ |山本運転手は、岩角につかまって、倒れている | | | +−−−−−−+−−−−−−−+ | |少年に近づいた。 | | | | | +−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−+−−−−−−−−+ | | | | | | +−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−+−−−−−−−−+ +−−−−−−+−−−−−−−+ | |少年は頭から血をふきだしていた。山本運転手 | |・たいへんだ。このままでは死んでし| | 少年を抱き起こそうとしてし| | |は、ありったけのガーゼで傷口をおさえると助 | | まう。 | |て、頭から血を流しているのを| +−−−+−−+ |手のタマキさんと二人がかりで少年をバスに運 | |・早く医者に診てもらわなければ。 | |見たとき、山本運転手はどんな+−+ 思いやり | |んだ。一時も早く医者の手当てを受けなければ +−+ +−+気持ちだっただろう。 | | 生命尊重 | |ならないと考えた山本運転手は、村で唯一の医 | |・どうしたらいいんだ。 | | | +−−−+−−+ |者がいる河合までバスをノンストップで走らせ | | | +−−−−−−+−−−−−−−+ | |た。 | | | | | +−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−+−−−−−−−−+ | | | | | | +−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−+−−−−−−−−+ +−−−−−−+−−−−−−−+ | |診療所に大急ぎで運び込んだが、運悪く医師の | |・何とか少年を助けなければならない| | ノンストップで診療所の前ま| | |香原先生は小処温泉へ出かけていた。「よし、 | | | |でバスを乗りつけたのに、医師| +−−−+−−+ |先生をむかえにいこう」という山本運転手の言 +−+・バスの仕事もあるし困った。 | |がいないことを知ったときの山+−+ 規則尊重 | |葉におどろく助手のタマキ。山本運転手は手の | | +−+本運転手は、どんなことを考え| | 生命尊重 | |ひらに診療所の車のかぎを握りしめるのだった。| |・ほかの人に頼もうかな。 | |ただろう。 | +−−−+−−+ +−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | | +−−−−−−+−−−−−−−+ | | | | | | | +−−−−−−−−+−−−−−−−−+ | | +−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−+−−−−−−−−+ +−−−−−−+−−−−−−−+ | |車に飛び乗って、山本運転手は、バスの発車時 | |・少年が助かってよかった。 | |「もう30分おくれていたら、| | |刻寸前に先生を連れて戻ってきた。「何とかあ | | | |どうなっていたかわかりません| +−−−+−−+ |の子を助けてやってください」といって、山本 | |・時間ぎりぎりだったんだ。 | |」ということをあとで聞いた山+−+ 生命尊重 | | +−+ +−+ | | | |運転手は木和田行きのバスに乗りこんだ。 | | あぶなかった。 | |本運転手は、どんな気持ちだっ| +−−−−−−+ |診察の結果、頭の骨が折れていることが分かり、| |・やっぱり、何よりも命が大事なんだ| |ただろう。 | |ただちに手術が行われ何とか一命を取り留める。| | | +−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−−−−−−−−−−+