印刷用紙:A4縦 1ページの行数:40 1行の文字数(半角で):92   −−以下 指導案本文−−                    第5学年道徳学習指導案                             日 時 平成8年11月26日(火)1校時               学 級 5 年 2 組               男12名 女11名 計23名 授業者 佐 藤 公 一 1 主題名 本当の権利(4−2 公徳心・規則尊重、権利・義務) 2 資料名 「バスの中での出来事」(新小学校道徳指導自作資料集 高学年 8 第一法規) 3 主題設定の理由 1 価値について     高学年の内容項目4−2は「公徳心をもって、法やきまりを守り、自他の権利を大切にして義務   を果たすようにする」とあり、「約束や社会のきまりを守る」ことから、さらに遵法の精神を持つ   ところまで高めていく指導が必要とされる内容である。また、それに関連して、他人の権利を尊重   し、自分の権利を正しく主張するとともに、自分に課せられた義務をしっかり果たす態度を育成す   ることも求められている。     社会において認められている人間の自己の自由を主張したり実現したりしようとすることを妨げ   られないことを広く権利といい、そのために人が果たさなければならないことを義務という。     「権利を正しく主張する」とは、主張する動機が私益を越え、公益にかなったものであるだけで   なく、他の人々もまた基本的人権としての人間らしく生きる権利を持っていることを十分ふまえた   上で主張することである。     「人間としての義務を果たす」とは、単に自由と権利を主張するだけでなく、やらねばならぬこ   とは責任を持って確実にやり遂げることである。     人がともに生活していく中で自分の権利のみを主張し、それが原因でトラブルが起きることがあ   る。自己の権利を主張すればするほど、他人の立場を十分尊重し、義務を果たさなければならない   という、人間としての基本的生き方を理解させることは、非常に重要なことである。     この時期の子どもたちは、自我意識や権利意識が高まってくる。権利を主張し合うだけのために   学級会や当番活動、係活動がうまくいかないことなどもある。相手の立場や仲間を考えた正しい権   利の主張ができると同時に、自分の果たさなければならない義務の遂行が積極的にできる子どもに   育てていきたい。権利意識は個人的な欲求と結び付き、自ら発達していくので、特に義務意識につ   いて深めていくことを重視していきたい。     本主題では、主張する権利が果たさなければならない義務と表裏一体の関係にあることに気付か   せ、自分の権利を正しく主張するとともに、特に自分の義務(本主題では特に公徳心に支えられた   義務)も進んで果たす態度を養うことをねらいとする。 2 児童の実態について     学級の子どもたちは、全体的に明るく、男女の仲も良好である。子どもらしく躍動的な男子に比   べ、女子は多少大人びたところがある。日常生活の場面では、どちらかといえば女子のほうが自己   主張がはっきりしている。4月以来、子どもたちに対して、自分の思いは全体の前で堂々と表明し   必要なときは話合いで問題を解決していくこと、また、相手の立場に立って思いやる態度を大切に   することなどを特に強調しながら指導にあたってきた。     しかし、現実の学級生活では、たとえば、清掃や係、当番などの役割・責任を自覚して行ってい   る子どももいる一方で、自己弁護が先に立ち、それをやりたがらない子どもや、責任逃れをする子   どもが見られる。また、弱いものに責任転嫁したり、他人に迷惑をかける行為についての自覚が足   りず、厳しく指導しなければならない場面も多くあった。まだそれらの行為の問題性についての認   識が、当然のことながら未発達である。     そこで、権利と義務は集団生活の中でいかに大切であるかを理解させることはもちろんのこと、   特に、自分の義務を果たすことは、正しい権利を主張するためにも、必要不可欠なことであるとい   うことについて公徳心に支えられた義務を取り上げて気付かせていきたい。 3 資料について     本資料は、主人公の「わたし」が、こみ合っていたバスの中で見かけた出来事が主観的に書かれ   たものである。     部活動の帰りらしい3人の中学生は、大きなバックを座席につめ込み、自分たちは荷物を取り囲   むようにしながら立ち話を始める。後から乗ってきた、両手に買物のふくろを抱えた女の人がそれ   をみて、「周りの人のことを考えるように」と強い口調で注意するのだが、3人の中学生は意に介   さず、逆に「同じ料金を払っているのだから席を利用する権利がある」と主張する。一部始終をみ   ていた主人公は、権利を主張する中学生の姿がかっこよく思える反面、女の人のいう「周りの人も   考えて」という言葉も気になり、家に帰ってから改めて権利について考えてみるという筋である。   子どもたちにとって両者の立場とも比較的共感的に理解しやすい内容であり、乗合バスという公共   の場での、それぞれの権利とともに社会の一員として果たすべき公徳心に支えられた義務について   考えることのできる資料であるといえる。     指導にあたっては、まず、日常生活における一方的な権利の主張の経験について実態を把握し、   授業の構想に活かす。また、事前に資料を配付してあら筋をおさえさせ、道徳シートによって中学   生と女の人のどちらの立場に自分の考えが近いかの判断を問う。そのことによって、子どもたちは   課題意識をもって授業に臨むことができる。     展開前段においては、個々の判断に関わらず、無作為に子どもたちを二分し、それぞれの立場に   立たせながら役割演技で考えを進めていくことで、その立場や考え方の違いを明らかにしていく。   また、役割演技を取り入れることによって、敢えて自分を一方の立場に置きながら、積極的にそれ   を擁護しようとする姿勢で思考することになり、多様な感じ方や考え方の表出が期待できる。その   際、相互指名を活用しながら子どもたち同士で話合いが進められるようにするとともに、教師は、   必要に応じてそれを中断させ、話合いを整理したり、論点を絞ったりすることで関わっていくよう   にしたい。     展開後段では、前出の一方的な権利の主張の経験を個々にもう一度振り返らせ、前段での話合い   をふまえて、そのときどうすればよかったかについて考えさせる。そのことを通して、今後の生活   への意欲化や態度化を図りたい。     事後の生活においては、発言すべきことははっきり主張させ、責任を果たすべきところはきちん   と見届ける指導を大切にしていきたい。 4 本時の指導 1 ねらい    権利と義務の関係を考え、公徳心をもって権利を正しく主張し進んで義務を果たそうとする態 度を養う。 2 展 開 +−−−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ |過 程|学習活動(教師の働きかけ)| 期待する児童の反応 | 指導上の留意点 | +−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ | | |1 日常生活で、自分の権利| |・資料は事前に配付してお| |導|問| ばかりを主張した経験を発| | く。 | | |題| 表する。 | | | | |の| ○ お互いに自分の権利(| |・自らの経験を想起させ、| |入|意| 言い分)ばかりを主張し| | そのときの事情や心情を| | |識| 合い、いやな思いをした| | 出し合うことで、価値へ| |3|化| ことはありませんか。 | | の方向付けを図る。 | +−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ | | |2 資料のあら筋を確認する。 |・紙板書により、あら筋の| | | | | | 確かめをする。 | | | | | |・発表の際の混乱を避ける| | | | | | ために、主人公の「わた| | | | | | し」には、具体的な名前| |展|問| | | (夏子)を付ける。 | | | |3 資料について話し合う。| | | | | | | | | | |題| @ 中学生と女の人のそれ|<中学生の立場> |・それぞれの立場になって| | | | ぞれの立場になって、そ| | その理由づけについて共| | | | の言い分について考えて|・自分たちは、練習でくた| 感的に考えていくことで| |開|の| みよう。お互いどんなこ| くたに疲れている。 | その立場や考え方の違い| | | | とを思っているのだろう|・大人だからって威張らな| を明確にさせる。 | | | | か。 | いで欲しい。 | | | |具| |・荷物ぐらい置かせてもら|・個々の判断に関わらず無| | | | | っても構わないはずだ。| 作為に、子どもたちを中| | | | |・自分の席の分に荷物を置| 学生を擁護する立場と女| |前|現| | いているだけだ。 | の人を擁護する立場に分| | | | |・自分たちは座らずに立っ| ける。そして、それぞれ| | | | | ている。 | の立場に立たせて、全体| | |化| |・大人と同じ料金を払って| が演者になる役割演技の| | | | | いるのだから、当然の権| 形で話合いを進める。 | | | | | 利だ。 | | |段|/| | |・ときどき中断し、話合い| | | | |<女の人の立場> | を整理していく。 | | | | | | | | |価| |・こんなに込んでいるのだ| | | | | | から、席に荷物をおくな| | | | | | んて迷惑だ。 | | | |値| |・私にだって、座る権利は| | | | | | あるはずだ。 | | | | | |・周りの人のことを考えて| | | |の| | 欲しい。 | | | | | |・座りたくても座れないで| | | | | | 困っている人もいるのだ| | | |追| | から、席に荷物を置くな| | | | | | んていけないことだ。 | | | | | |・中学生なのだから(若い| | | |究| | のだから)、もっと年を| | | | | | とった人(大人)のこと| | | | | | も考えるべきだ。 |・最後にそれぞれの立場に| | |・| |・周りの人の権利を考えて| 立っての感想を発表させ| | | | | いない。 | る。 | | | | | | | | | | A 自分の部屋で、バスの|・自分の権利を堂々と主張|・これまでの話合いをふま| | |把| 中での出来事を思い返し| することは確かによいこ| え、「わたし」を通して| | | | ながら、「わたし」は、| とだ。 | 権利や義務についての個| | | | どんなことを考えたのだ|・しかし、自分の言い分ば| 々の考えを表明させる。| | |握| ろうか。 | かり主張していてはいけ| | | | | | ない。 |・自分の権利の主張ととも| | | | |・周りの人たちのことも考| に、周りの人たちのこと| | | | | えることが大切だ。 | 考えた上での果たさなけ| | | | |・自分の権利を主張する前| ればならない義務(公徳| | | | | に、しなければならない| 心に支えられた義務)が| | | | | こともある。 | あることについて理解さ| | | | | | せ、ねらいとする価値に| |30| | | | 迫りたい。 | +−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ |展|価|4 自分たちの生活の中での| | | | | | 権利と義務について振り返| | | | |値| る。 | | | |開| | | | | | |の| ○ お互いに自分の権利ば| |・道徳シートに書かせる。| | | | かりを主張しあったこと| |・導入での経験を振り返っ| |後|内| について、どうすればよ| | て、改めて、権利と義務| | | | かったと思いますか。 | | について考えさせる。 | | |面| | |・該当するような経験がな| |段| | | | かなか想起できない子ど| | |的| | | もに対しては、今日の授| | | | | | 業の感想等、価値を自覚| | |自| | | させるための手だての幅| | | | | | を持つようにする。 | |7|覚| | | | +−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ |終|学|4 友だちの発表を聞く。 | | | | |習| | | | | |の| ○ 友だちの発表を聞きま| |・具体的な生活場面につい| | |整| しょう。 | | ての友だちの振り返りを| | |理| | | 聞かせ、意欲化や態度化| | |・| | | を図る。 | |末|ま| | | | | |と| | | | |5|め| | | | +−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ 3 板書計画 +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 権利の主張(〜できる) | | | | バスの中での出来事 | | | | 「わたし」→夏子 | | | |+−−−+| | || || | ||人物絵|| | || || | |+−−−+| | | +−+ | | | |人| | | | |の| | +−−−+ | | |女| | 人物絵 | | | +−+ | +−−−+ | |−−−−−+−−−−−−−−−− +−+ | | +−+ | |子| | | |生| | | | | | |学| | |夏| | | |中| | +−+ | | +−+ | | |+−−−+| | || || | ||人物絵|| | || || | |+−−−+| | | | | 利 | | 権 ○ 自分の権利だけでなく | | の | | 当 ○ 周りの人のことも考えて | | 本 | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 道徳シート 月 日 氏名 | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 資料名 「バスの中での出来事」 | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 1 3人の中学生と買物のふくろを両手にさげた女の人のどちらの言い分に自分の考え は近いですか。その理由も書いてください。 ( 中学生 ・ 女の人 ) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− その理由は、 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 2 それぞれが自分の言い分を主張し合って、互いにゆずり合うことがなかったという 経験はありませんか。そのときのことを書いてください。 また、そのときどんなことを思いましたか。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 3 A 今、2の経験を振り返って、あのときどうすればよかったと思いますか。 また、これから気を付けたいことはありますか。 B 今日の学習での感想 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−