印刷用紙:A4縦 1ページの行数:40 1行の文字数(半角で):92   −−以下 指導案本文−−   第5学年道徳学習指導案 日 時 平成8年7月4日(木)3校時 学 級 5年2組 男12名・女11名・計23名 授業者 佐 藤 公 一 1 主題名 相手の立場を考えて[2−4 寛容・謙虚] 2 資料名 「すれちがい」(「みんなのどうとく5年」学研) 3 主題設定の理由 1 価値について     指導書によれば、高学年の内容項目2−4は「謙虚な心をもち、広い心で自分と異なる意見や立   場を大切にする」とあり、広がりと深まりのある人間関係を築くために必要な謙虚な心と広い心を   育てようとする内容項目である。     この期の児童は、自我が発達する一方、一つの事象に対する判断が、得てして自分本位に陥りや    すい傾向をもっている。いったん言い出したら、たとえその誤りに気付いたとしても何やかやと理    屈をこねて後に引かない頑なさをみせることもその例である。そこで、独断偏狭な自己主張に無理    があることに気付かせ、真の自己確立に至る道程を開いてやることが必要になる。即ち、弱さや醜    さをもつ存在として自分を謙虚にみつめる心を育てていくこと、そして、自分と異なる意見や考え    を尊重し、他者理解を深め、受け入れるという寛容の態度を身につけていくことが必要となる。こ    こでいう謙虚とは、自分の内面の充実を図ることであり、寛容とは自分とのかかわりのある人への    理解を深めることである。この二面を調和させながら発達させることが、児童の自己確立に大きく    かかわっていることは間違いないことと考える。     本主題では、相手の意見を素直に聞き、なぜそのような意見や立場をとるのかを相手の立場に立    って考えようとすることが自らを成長・発展させるということを指導の根拠としてふまえ、異なっ    た意見や立場に対しても広い心で対処できるような態度を養うことをねらいとする。 2 児童の実態について     本学級の子どもたちは、明るく元気で、その素直さに魅力を感じる子どもたちである。比較的女   子に積極的に自己を表現をしようとするする子が多いが、おしなべて自己表現が弱い傾向にある。    学習でも生活でもさらに自らの考えを出し合いながら切磋琢磨し、学級が高まっていくことを切に   願っている。     4月当初に比べると、友達をからかったり、一方的に非難したりする場面は少なくなってきた。    しかしながら、確かに相手の気持ちを考えることを形式的には理解できているものの、いざ自分が    その立場に立つと、ふとしたことから相手の失敗を責めたり、腹を立てたりして、その言動に厳し    さが増してしまっているという場面はままある。たとえ心の中では仲良くしたいと思っても、つい    我を通そうとしたり、相手の立場を受け入れようとする広い心が持てないなど、意外に自分たちの   力で解決できないでいることが多い。     実際に子どもたちのトラブルの仲裁に入ってみると、担任として明解に善悪の判断を促したり、   片一方にばかり正当性を認めたりといった対応ができにくい実状がある。それは、どちらにも理に   かなった言い分や事情があるからである。そのトラブルの解決の方策としては、結局、喧嘩両成敗   的に、両者ともに認めて落ち着けるといったやや曖昧にも感じられるような処理にならざるを得な   いことが多く、いつも頭を悩ませている。     以上のような実態から、子どもたちには、本主題の学習を通して、互いに謙虚な心をもち、広い   心で相手の意見や立場を考える寛容の態度の大切さに改めて気付かせていきたい。 3 資料について     本資料は「よし子」と「えり子」の二人が同じ出来事を自分本位の立場から書いた作文である。     よし子は学校帰りに、ピアノのけいこに一緒に行こうとえり子から誘われる。しかし、誘ったえ   り子は自らの意に反して、その約束を守れない状況に陥ってしまう。よし子も、自分なりに正しい   と思った行動をとるのだが、いらだつ思いでえり子を待ったあげくに、すっぽかされたと思い込む。   結果的には二人の行動はすれちがってしまい、事情を聞こうともしないよし子と謝罪を無視される   えり子は、互いに「もうつきあいたくない」と思ってしまう、という内容である。     このような内容は、子どもたちの身近で起こりそうな問題であり、二人の考えや立場を共感的に    受け止めて思考を進めることができる。ねらいとする価値に迫るためには適切な資料であるといえ    る。また、資料把握として、えり子の作文は、結果的に、えり子のやむを得ない事情やよし子の至   らなさを裏づける効果を担っているととらえる。     指導に当っては、まず資料を事前読みさせ、初発の感想として「よし子とえり子のどちらが悪い   といえるか」の判断と、その根拠についての考えを持たせる。そうすることで、双方の立場を把握   して話し合いに入ることができると考える。     展開前段では、よし子の行動をどう思うかという判断を問う。そのことによって、よし子に欠け   ていたものに気付かせていく。一方、えり子については、やむを得ぬ事情があったことをおさえさ   せることで、よし子の自分本位なところを裏付けていきたいが、できればさらに深めて、えり子に   も、誠意を尽くした謝罪の態度が少々欠けていたのではないかという点にも気付かせていきたい。   そうすることで、二人に欠けていたものを考えていく。     展開後段では、その後の好ましい人間関係を築き、保つためにはどうすればよいかということを    考え、具体的に役割演技を通して考えさせていくことで価値に迫り、かつ主体的にとらえさせて日    常生活へとつなげていきたい。     今後の子どもたちの日常生活にあっては、なるべく子どもたち自身の力で今回の時間の学習を生    かした対処ができるような支援を心がけながら見守っていきたい。 4 本時の指導 1 ねらい 広い心で相手の立場を考え、自分と異なる意見も大切にしようとする態度を養う。 2 展 開 +−−−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ |過 程|学習活動(教師の働きかけ)| 期待される児童の反応 | 指導上の留意点 | +−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ |導|問|1 日常生活で、友だちと「| |・資料は事前に配布してお| | |題| すれちがった」経験を発表| | く。 | | |の| する。 | |・自らの経験を想起させ、| |入|意| ○ 友だちと気まずくなっ| | そのときの事情や心情を| | |識| たときのことを話して下| | 出し合うことで、資料へ| |3|化| さい。 | | の方向付けを図る。 | +−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ | | |2 資料のあらすじを確認す| |・時間的な経過に沿いなが| | | | る。 | | ら、二人の行動について| | | | | | の確かめをする。 | | |問|3 資料について話し合う。| | | | | | 1 よし子やえり子の行動| | | |展| | や心情について考える。| | | | |題| | | | | | | @ 最後にはえり子に腹を|・腹を立てたのはわかる。|・相手の立場をよく考えよ| | | | 立てたよし子のことをど|・ピアノの練習をして、電| うともせず、自分本位で| | |の| う思いますか。 | 話を近くで待っていなか| あったよし子の行動を批| | | | | ったのはよくない。 | 判的にとらえさせる。 | | | | |・2時と決めたことは、自| | | |具| | 分勝手だ。 | | |開| | |・えり子の話を最後まで聞| | | | | | いてやらなかったのはよ| | | |現| | くない。 | | | | | |・謝っているのに、許して| | | | | | あげようとしなかったの| | | |化| | はよくない。 | | | | | | | | | | | A ピアノの先生の家での|・約束を守ることができな|・えり子は遅れても仕方が| |前|・| よし子の態度を見て、え| くて、すまなかった。 | ない事情があったことや| | | | り子はどんな気持ちにな|・遅れてすまなかった。 | 謝罪しようとしているの| | | | っていったのでしょう。|・かなり怒っているぞ。 | に、それを聞こうともし| | |価| |・遅れた理由ぐらい聞いて| ないよし子に対して次第| | | | | くれたっていいのに。 | にいらだちが高まってい| | | | |・もうつきあいたくない。| くえり子の心情を共感的| | |値| | | にとらえさせ、よし子の| | | | | | 自分本位な態度の裏付け| |段| | | | を図る。 | | |の| | | | | | | B 二人にそれぞれ足りな|・自分の都合だけでなく、|・結局双方が「つきあいた| | | | いところがあるとすれば、| 相手の都合も考えること| くない」と思うような「| | |追| それはどんなところでし| (主によし子)| すれちがい」の事態にな| | | | ょう。 |・相手の話をよく聞いてあ| ったことをおさえ、二人| | | | | げること (よし子)| に欠けている点に気付か| | |求| |・相手を思いやる心 | せる。また、それは誰に| | | | | (主によし子)| もありがちな人間として| | | | |・相手を許す心(よし子)| の弱さであることにも気| | | | |・心の底からすまないと思| 付かせたい。 | | | | | う心 (えり子)|・よし子、えり子の順で問| |25| | | | う。 | +−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ | | | 2 二人にとって、今後ど| |・双方とも、心の奥底には| | |価| うすることが一番よいこ| | 「できれば仲直りしたい| | | | とかを考える。 | | をしたい」という気持ち| |展|値| ○ どのようにしたら、二|・もう一度よく話し合う | があることを確認する。| | | | 人は仲直りできるのでし|・自分のことだけでなく、|・より好ましい関係を築き、 | |の| ょうか。演技をしながら| 相手の気持ちをよく考え| 保っていくための現状の| |開| | 考えてみましょう。 | てみる | 打開策を、実際に役割演| | |主| | | 技を通して考えていく。| | | | | | そうすることで、日常生| |後|体| | | 活への態度にもつなげて| | | | | | いきたい。 | | |的| | |・演技は、演技を観る観点| |段| | | | や演じる観点を明確にす| | |自| | | る。また、演技を観ての| | | | | | 感想やアドバイス、演技| | |覚| | | 者の感想等から話し合い| |15| | | | を構成していく。 | +−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ | | |4 教師の説話を聞く。 | |・資料のようなことは、大| |終|学| ○ 先生のお話を聞いてく| | 人でさえ日常的によく起| | |習| ださい。 | | こり得ることである。ま| | |の| | | た、相手を許すことは簡| | |整| | | 単なことではないが、相| | |理| | | 手の立場や気持ちを思い| | |・| | | やろうとすることが、好| |末|ま| | | ましい人間関係を築き、| | |と| | | 保つとともに、よりよい| | |め| | | 生活の基盤となるという| |2| | | | ことを伝えたい。 | +−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ 3 板書計画 +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | す れ ち が い | | +−−−−−−+ | | 子|ピアノに行く| 子 | | し| | り | | よ|やくそく | え | | +−−+−−−+ | | +−−−−−−−−−+ | +−−−−−−−−−+ | | |二階でピアノの練習| | |走って買い物へ | | | ++−−−−−−−−+ | | (ことわれない)| | | | | +−+−−−−−−−+ | | | い | +−+−−−−−−−−−−+| | | な−+−+約束の電話(4時にしよう)|| | | 出 | +−+−−−−−−−−−−+| | ++−+ | 言 |+−−+ | | |電話+−−−−−−−−−+−− ||る一| | |5++−+ | 伝 ||いパ| | |5++−−−−−−−−+ | ||で一| | |:|広場で待つ(三十分)| | ||んス| | |1++−−−−−−−−+ | ||こ | | | | |0 |+−−+ | | ++−−−−−−+ |4+−+−−−−−+ | | |一人でピアノへ| |:|全速力で広場へ| | | ++−−−−−−+ |2+−+−−−−−+ | | | | | | | ++−−−+ |0+−+−−−−+ | | |知らん顔| |0|「ごめんね。あの・・・」 | | +−−−−+ |:+−−−−−−+ | | |3 ・すまなかったな | | | ・おこっているな | | | ・理由くらい聞いてほしい | | | ・自分勝手だ | | | ・腹が立つ | |+−−−−−−−−−−+ |+−−−−−−−−−−−−−+| ||もうつきあいたくない| ||もういっしょにいきたくない|| |+−−−−−−−−−−+ |+−−−−−−−−−−−−−+| | ×自分勝手に決めた | | ×話を聞かない | | ×許す心がない | | | | ○足りなかったところ | | ・相手の都合も考える ・心からあやまる | | ・相手の話もよく聞く | | ・許す心をもつ | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+