印刷用紙:B4縦 1ページの行数:60 1行の文字数(半角で):90           第6学年 体育科学習指導案                                                                                         指導者 仁昌寺 真 一                                                 T.単元名   みんなでチャレンジ  器械運動(跳び箱運動)                                                              U.単元について                                       1.教材について                                        子どもたちは,体格的にも少年前期の特徴を示し,筋力や持久力,敏しょう性が次第に発達し   てきている。運動の欲求も単に運動したいということから,全力を出し切ることができたり素早   く巧みにできたりする運動を好むようになってきている。また,組織的・集団的な運動に興味を   示し,集団の中で能力に応じて役割を決めたりリーダーを選出し,みんなで協力して活動できる   ようになってきている。しかし,一人一人を見たとき,日常生活場面での運動の量や質,体格や   体力面の差が大きく,運動に対する興味・関心も様々である。                   このような時期の特性から,一人一人の子どもが自分に適しためあてを持ち,その解決のため   の見通しを立て,動きを工夫したり,練習方法を工夫したり,グループの中で互いに励まし合っ   たり教え合ったりしていこうとするこの単元は,子どもの身体活動の欲求を充足させ,意欲的な   学習を進めるには,大いに意義のあるものと考える。単元名「みんなでチャレンジ」は,グルー   プの中で互いに協力し合いながら,よりよい動きを工夫したり,練習方法を工夫したりすること   を通して,それぞれのめあての解決に向かってチャレンジしてほしいとの願いから命名したもの   である。                                           器械運動は,ある障害やある困難に挑戦していき,今できる技をさらに上手にできるようにし   たり,もう少しがんばればできそうな技に挑戦し,できるようになったりすることを楽しむ運動   である。そのため,自分の能力に適しためあてを持ち,根気強く互いに協力し合って運動してい   くことが大切である。    跳び箱運動は,「助走ーふみきりー着手ー跳び越しー着地」という一連の動きが継続して成り   立つ運動であり,できる跳び越し方をさらに上手にできるようにしたり,できそうな跳び越し方   (技)に挑戦したりして楽しむ運動である。                           本単元では,いろいろな高さや方向の跳び箱を用意したり,跳び越し方も数例提示したりして   子どもたちの挑戦意欲を喚起していきたい。そして,より多くの跳び越し方を経験させながら,   上手になったり,できないことができるようになったりすることの喜びを味わわせていきたい。   その際,一人一人の子どもの跳び越す力に差があることから,その子にあっためあてを持たせ,   自己評価の観点や見返しの観点にそって,常に自分の姿を見返させながら,その解決に向かって   学習を進んで行うことができるようにさせたい。                                               2.子ども理解と単元を進めるにあたって                             (1)跳び箱運動                                    +-----+---------------------------------------------------------------------------+ |   |  跳び箱運動の好きな子は32人,きらいな子は2人である。好きな理由の主なものは次| |  @| のとおりである。                                | |   |    ・自分のめあてに向かって学習できる。                   | |  情|    ・グループで友だちと教え合ったり,互いに評価し合って学習できる。     | |   |    ・いろいろな跳び越し方(技)に挑戦できる。(特に,できない技)      | |   |    ・自由に場を選んで学習できる。                      | |   |    ・跳び越せたとき,最高にうれしい。                    | |   |    ・跳び越すこと自体が好き。                        | |  意|    ・練習方法をいろいろ工夫できる。                     | |   |  また,楽しさを阻害する要因としては,次のとおりである。            | |   |    ・いっしょうけんめいやっても跳び越せないとき。              | |   |    ・跳び箱にぶつかってけがをしたとき。                   | |   |    ・跳び方がどうだったか,評価してもらえないとき。             | |  面|    ・跳ぶ回数が少ないとき。                         | |   |    ・友だちにひやかされたとき。                       | +-----+---------------------------------------------------------------------------+ |   |  今までの体育の学習では,自分のめあてを持ち学習を進めていく形態は経験してきてい| |  A| る。例えば,「マット運動」では,今できる技をもとにして,ちょっとがんばればできそ| |   | うな技やもっと上手になりたい技に挑戦するようにしてめあてを決めてきた。また,「陸| |  認| 上運動(リレー)」では,前時のタイムや反省をもとにしてめあてを決めてきた。さらに| |   | めあてを達成するために,教師の用意した場や用具に対して自分やチームで選択したり,| |   | 工夫したりして,自分に合った練習方法を見つけて運動する姿も多くみられるようになっ| |  知| てきた。子ども同士のかかわりについては,グループの構成メンバーが変わっても教え合| |   | ったり励まし合ったり,相互評価をしながら学習を進めていくことができるようになって| |   | きている。しかし,自分やチームに適しためあてを設定したり,練習方法を工夫すること| |  面| については,教師の援助を必要とする子も何人かいる。               | +-----+---------------------------------------------------------------------------+ |   |  子どもたちの今できる跳び箱運動の技は,次のとおりである。           | |  B|    ・開脚跳び越し         ・かかえこみ跳び越し           | | 運動|    ・横跳び越し          ・台上前転                | | 技能|    ・あおむけ跳び         ・ホップ側転跳び             | | 面 |    ・ネックスプリング跳び     ・ヘッドスプリング跳び          | +-----+---------------------------------------------------------------------------+    以上,三つの面から子どもの特性をとらえたとき,差が大きくめざすところも一人一人ちがっ   ている。そこで,一人一人どの子にもめあてを達成する喜びを味わわせたいと考え,次のような   手立てを組み,指導にあたっていきたい。                                                                           ◎ 一人一人の子どもに自分に合っためあてを持たせ,全員に成功感を味わわせながら跳び      箱運動の楽しさを十分に体験させることができるように,次の道筋で進めていく。         +-----------------------------------------------------------------------+      | @ 今できる跳び越し方や高さ,向きの跳び箱で,より上手に跳び越すことができる|      |  ように挑戦する。                             |      | A ちょっとがんばればできそうな跳び越し方に挑戦したり,できる跳び越し方で高|      |  さや向きに挑戦したりする。                        |      +-----------------------------------------------------------------------+     ◎ どの子どもも自分のめあてに向かって精一杯取り組めるように,一人一人の特性に対応      した場を豊富に準備するとともに,場所別グループで練習させる。その際,互いに教え合      い励まし合って学習することを常に意識づけながら練習させたい。               ◎ なかなか跳び越せない子に対しては,技能ステップ表を示し,それにそって練習させた      り補助コーナーを設けたりしながら段階を踏んで練習させていきたい。また,教師もでき      るだけ巡視し補助してやり,なんとか跳び越す喜びを味わわせていきたい。十分に跳び越      せる子に対しても,新しい技に挑戦させたり,安定したフォームで跳び越せるよう努力さ      せたい。そこで,絵図やVTR,学習カードでめざす姿の具体的イメージ化を図るととも      に,見返しの観点を提示して自発的・自主的に学習を進める力をつけさせたい。                                               V.目 標  ・ 自分の力に合った高さや方向,跳び越し方のめあてを持ち,力いっぱい挑戦して,できる楽    しさを味わわせる。  ・ グループの中で互いに協力し合って,最後まで根気強く練習することができるようにさせる。  ・ 運動する場所の安全を確かめたり,用具の準備や後始末が素早くできるようにさせる。  ・ 運動後の汗の始末やうがい等,健康に気をつけるようにさせる。                                                            W.指導計画(8時間計画)                                 +------+---------+-------+------+-------+-------+------+-------+-------+ |    |  1  |  2 | 3 |  4 |  5 | 本E時|  7 | 8 |      +------+---------+-------+------+-------+-------+------+-------+-------+ |  5--+ はじめ | 《めあて@》                      |        | 10--+ ・ ・ |   今できる跳び越し方や高さ,向きの跳び箱で,より上手 | | 15--+ 学 技 |  に跳び越すことができるように挑戦する        |      | 20--+ 習 調 +-----------------------------------------------------+ | 25--+ の べ | 《めあてA》                      |        | 30--+ 方   |   ちょっとがんばればできそうな跳び越し方に挑戦したり | | 35--+ 法理  |  できる跳び越し方で高さや向きに挑戦したりする +-------+ | 40--+  解 等|                         | まとめ|     +-------+---------+--------------------------------------------+-------+                                               X.本時の指導            (1)ねらい                                          ・ 自分の今できる跳び越し方や高さ,向きの跳び箱をより上手に跳び越すことができるよう     に挑戦したり,ちょっとがんばればできそうな跳び越し方や高さ,向きの跳び箱に挑戦した     りして楽しむことができる。               (2)展 開                                       +---------------------------+-----+------------------------------------+----------+ |   学習内容と学習活動   | 時間|    指 導 上 の 留 意 点   | 用具・資料| +---------------------------+-----+------------------------------------+----------+ | 1.学習内容の確認     | 8分| ・ 健康観察,服装点検,用具や運動場所|      | |  ・ 学習内容やめあてについ|   |  の安全確認は,事前にしておく。   |      | |   て話を聞く。      |   | ・ めあてカードで本時のめあてを確認す| めあてカー| |               |   |  る。                | ド    | | 2.準備運動と用具の準備  |   | ・ 特に手首や首,肩,ひざの運動をしっ| 跳び箱  | |  ・ 班ごとに準備運動をする|   |  かりするよう指示する。       | マット  | |  ・ 班ごとに用具の準備をす|   | ・ 跳び箱運動に必要な補助運動も取り入| 安全マット| |   る。          |   |  れたい。              | 踏み切り板| |               |   | ・ 班ごとに協力して素早く準備できるよ| 踏み切り調| |               |   |  うに,事前に役割分担しておいたり,床| 節板   | |               |   |  に印をつけておいたりする。     | カラーリン| | 3.器械運動(跳び箱運動) | 30| ・ 自分のめあてを数人に発表させ,今日| グ    | | (1)個々のめあての確認  |  分|  の学習への意欲を高める。      | 絵図   | | (2)めあての達成に向けての|   | ・ 自分の能力にあった高さや跳び越し方|      | |   活動          |   |  に挑戦しているか観察し,問題点があっ|      | | +-----めあて@-----------+ |   |  たら助言する。           |      | | |  今できる跳び越し方や高| |   | ・ 23児の動きに注目し,励ましを与え自|      | | | さ,向きの跳び箱で,より| |   |  信をもたせる。           |      | | | 上手に跳び越すことができ| |   | ・ グループ内で教え合って学習できるよ|      | | | るように挑戦する。   | |   |  う,見る人・待つ人・行う人の役割分担|      | | +-----------------------+ |   |  を確認する。            | めあて@で| |  ○ 楽に跳び越せる向き・高|   | ・ めあて@のできばえについては,次の| きばえ表 | |   さから         |   |  基準で自己・相互評価させたい。   |      | |  ・ 繰り返し跳び越す   |   |    できばえ@ やっと跳び越せる  |      | |  ・ 上手になりたいところに|   |    できばえA 連続して跳び越せる |      | |   気をつけて跳び越す   |   |    できばえB 安定した動作で連続し|      | |   (安定した着地,着手の位|   |         て跳び越せる     | 絵図   | |   置,リズミカルな助走等)|   | ・ 一つ一つの跳び越し方の見返しの観点| 学習カード| | (3)できばえの確かめ   |   |  は,絵図や学習カードに提示しておく。| ガッツボー| |               |   | ・ めあての移行は,自分 友だちの順序| ド    | |               |   |  でできばえを評価して行う。また,でき|      | |               |   |  ばえBまでいけなくてもめあてAに移行|      | | (4)めあての達成に向けての|   |  してよいことを確認する。      | TV   | |   挑戦          |   | ・ 同じグループの友だちと見合い,教え| VTR  | | +-----めあてA-----------+ |   |  合いながら学習を進めさせる。    | 補助用具 | | |  ちょっとがんばればでき| |   | ・ 教師は,各グループを巡視し,練習の|      | | | そうな跳び越し方に挑戦し| |   |  仕方や自己・相互評価の仕方について観|      | | | たり,できる跳び越し方で| |   |  察し,適切なアドバイスを行ったり,つ|      | | | 高さや向きに挑戦したりす| |   |  まずきを取り除いたりする。     | 技能ステッ| | | る。          | |   | ・ つまずきの見られる子に対しては,個| プ表   | | +-----------------------+ |   |  別指導をしたり技能ステップ表にそって|      | |  ○ 簡単な場で,できそうな|   |  練習させる。            |      | |   跳び越し方に      |   | ・ F児や23児の動きに注目し,場や練習|      | |  ○ できる跳び越し方で高さ|   |  方法について必要に応じて助言する。ま|      | |   や向きを変えて     |   |  た,少しの進歩でも賞揚し,自信をもた|      | |  ・ 場や方法を工夫して  |   |  せる。               |      | | 4.整理運動        | 7分| ・ 大きくゆっくり筋肉をほぐすようにさ|      | |               |   |  せる。               |      | | 5.学習のまとめ      |   | ・ 努力の様子が見られた子数名に発表さ|      | |               |   |  せ,動きの高まりを賞揚するとともに,|      | |               |   |  グループでの学習の仕方についてもいい|      | |               |   |  姿について賞揚し,次時への意欲を持た|      | |               |   |  せたい。              |      | |               |   | ・ 振り返りの観点にそって本時の学習に| 学習カード| |               |   |  ついて発表せる。          |      | | 6.後始末         |   | ・ 安全に留意させながら素早く協力して|      | |               |   |  行わせる。             |      | |               |   | ・ 汗の始末やうがいをするよう指示する|      | +---------------------------+-----+------------------------------------+-----------+