小学校4年 国語(場面をくらべて) 指導案 仁王小学校 用紙は A4 縦  1行 90字(半角) 1ページ 49行に設定してください。 第四学年国語科学習指導案                                   指導者 立 花 育 子 一、単元名  場面をくらべて(教材「一つの花」) 二、単元について  1 四年生の理解領域における指導の重点は、「段落ごとの内容の要点相互の理解や内容の中心点   を把握しながら叙述に即して正確に文章を読んだり、話の要点や中心点を正確に理解しながら聞   いたりすることができるようにするとともに、読書の範囲を広げるようにする。」ことである。   この重点に迫っていくためには、「文章の叙述に即して、表現されている内容を正確に読み取る   力」、「表現に即して場面やその情景を思い描く力」、「文章を段落毎に要約しながら読み、そ   れぞれの段落の関係、段落と文章全体との関係などについて考える力」などを培っていく必要が   ある。    そこで、物語文の指導において心がけてきたことは、叙述に即した読み取りを基底に据えなが   ら、言動から人物の心情やその変化を読み取る力を育てることであった。具体的には、情景を表   す言葉に着目して読めるようにすること、人物の心情を表す言葉に着目して読めるようにするこ   となどの指導を続けてきた。    このような指導の中で、子どもたちは、人物の行動や心情について考えながら読んだり、心情   やその変化に気をつけて読んだりすることができるようになってきている。しかし、子どもたち   の読みは、表現されている内容の表面的な読み取りにとどまりがちであり、人物の行動や心情と   場面の状況とを結びつけながら深く読み取ることは、まだできないでいる。このことは、情景を   表す言葉に着目して読んだり、言動から人物の心理、心情やその変化などを明らかにしたり、人   物の性格から言動、心情を明らかにして読んだりする力が不足しているためであると考える。そ   の実態は、次の通りである。   A情景を表す言葉に着目して読めない子ども              (下男など十三名)   B言動から人物の心理、心情やその変化などを明らかにして読めない子ども(裕女など二十五名   C人物の性格から言動、心情を明らかにして読めない子ども       (山男など三十四名    したがって、人物の行動や心情と場面の状況とを結びつけながら深く読み取っていけるように   するためには、子どもたちに右のような力を培っていくとともに、場面の状況をとらえて読むこ   とが心情を読み取る上で大事であることを学ばせていかなければならないと考える。       2 本単元は、人物の行動や心情を場面の状況と結びつけながら読み取ることを主なねらいとする 教材「一つの花」は、戦争という暗く悲惨な状況の中で父母がゆみ子の幸せを願うやりきれな   い思いと、父母の愛情につつまれて育っていくゆみ子のけなげな姿を描いた物語である。   内容の中心価値に迫っていくためには、幼いゆみ子が「一つだけちょうだい。」という言葉を   最初に覚えてしまった戦争中の状況、ゆみ子の行く末を心配しながらもどうすることもできない   父の思い、ゆみ子の幸せを願いながら出征していく父の思い、父の願いどおり明るくけなげに生   きている母子の姿を読み取っていく必要がある。  幼いゆみ子が「一つだけちょうだい。」という言葉を最初に覚えてしまった戦争中の状況を読   み取っていくためには、「食べ物といえば・・・配給される、おいもやまめやかぼちゃしか」や   「もっともっとと言って、いくらでもほしがる」に着目して、幼いゆみ子のような子どもまで飢   えている世の中の様子を思い描きながら読んでいかなければならない。    また、ゆみ子の行く末を心配しながらもどうすることもできないお父さんの思いを読み取って   いくためには、「そんなとき・・・決まって・・・めちゃくちゃに高い高い」に着目して、ゆみ   子をかわいそうに思いながら、どうすることもできないお父さんのつらさ、持って行き場のない   悲しさを想像しながら読んでいかなければならない。    さらに、ゆみ子の幸せを願いながら出征していくお父さんの思いを読み取っていくためには、   「いよいよ汽車が入ってくるというときになって」に着目して、今まさに戦争に駆り出されると   いうぎりぎりの状況であることをとらえなければならない。そのうえで、お父さんが手にした花   のイメージをはっきりととらえ、「ゆみ。さあ、一つだけあげよう。一つだけのお花、大事にす   るんだよう 。」の会話文に着目して、つらくても強く明るく生きてほしいと願うお父さんの   せつない思いを想像しながら読んでいかなければならない。    そして、お父さんの願いどおり明るくけなげに生きている母子の姿を読み取って行くためには   「コスモスの花でいっぱい」「ミシンの音が、たえず速くなったり、おそくなったり」「スキッ   プをしながら」に着目して、母子が力を合わせていっしょうけんめい生きている姿を思い描きな   がら読んで行かなければならない。  3 本教材内容を一読した段階で、子どもたちの読みの様相には、いつもおなかをすかせているゆ   み子に同情したり、父母の愛情深さに感動したり、戦争に対する憤りを覚えたりするなど、個人   差が見られるであろう。しかし、本単元では、それらを生かすべく配慮しながら、ゆみ子に対す   るお父さんの心情に視点を当てて、叙述に即してその内容を確かに読み取らせていく指導を基本   にする。個人差の観点からすれば、理解技能の差に着目し、その差を縮めていく方向で指導を進   めたいと考える。本単元のねらいから見たとき、理解技能の個人差については、「単元について   1」の項において記した実態A,B,Cのようにまとめられる。そこで、内容精査の段階では、   それら個人差に応じて次のような手だてで指導していきたい。    1 場面状況をおさえさせることによって、Aを中心とする子にも課題意識をもたせ、学習の      見通しをもたせる。    2 自分の読みの力(理解技能)を試し、また、獲得していく場として、自己学習の場を設定      する。その際、子どもの読みの力に応じて読み取りの手引きを与えて、自らの読みを深め      させていく。       3 自己学習の場で読み取ったものを出し合い、学び合わせながら、いっそう読みを深めさせ      ていく。    また、自分の読みの深まりや読み取り方について自己評価させていくことも大切にしていきた   いと考える。                 三、指導目標  1 価値目標   戦争という暗く悲惨な状況の中で父母がゆみ子の幸せを願うやりきれない思い          と、父母の愛情につつまれて育っていくゆみ子のけなげな姿を読み取る。  2 技能目標      主目標     表現に即して場面やその情景を思い描くこと           1 情景を表す言葉に着目して読む           2 言動から人物の心理、心情やその変化などを明らかにする           3 人物の性格から言動、心情を明らかにして読む   副目標    内容をいっそう正しく、かつ深く理解するため、段落と段落の関係、段落と文          章全体の関係について考えること           1 段落を要約し、要点をとらえる           2 段落の要点相互の関係を考える   言語事項    表現したり理解したりするために必要な語句の量を増すこと           ・ 文末表現のはたらきを考え、理解を深める           ・ 接続語、指示語のはたらきを考え、理解を深める 四、指導計画 (十二時間扱い)  第一次 全文を概観し感想をもつための読み                     二時限      (1)題名について考え、全文を読んで感想を書く               (1      (2)五つの場面に分けて、学習課題を決める       (1 第二次 場面ごとのくわしい読み       六時限 (1)「一つだけちょうだい。」と言うゆみ子を取り巻く状況についての読み   (2 (2)ゆみ子をめちゃくちゃに高い高いするお父さんについての読み  (1 (3)家族と最後のひとときをひっそりと過ごすお父さんについての読み (1 (4)一つの花に託したお父さんの思いについての読み (1 (5)貧しいながらも明るく生きている母子についての読み (1 第三次 まとめのための読み 二時限 (1)一つの花の意味するものについてまとめる (1 (2)お父さんの言動について思ったことを中心に感想文を書く (1 第四次 練習と評価 二時限 (1)漢字と語句について (1) (2)単元の評価 (1) 五、本時の指導  1 ねらい お父さんの言動に着目させて、今まさに戦争に駆り出されるというぎりぎりの状況        で、ゆみ子が強く明るく生きてほしいと願う、一つの花に託したお父さんの思いを読        み取らせる。    A 下男など  情景を表す言葉に着目して読む。    B 裕女など  言動から人物の心理、心情やその変化などを明らかにして読む。    C 山男など  人物の性格から言動、心情を明らかにして読む。  2 展 開                             個  個人差への対応 ------------------------------------------------------------------------------------------   学 習 活 動  時間          指  導  の  要  点 ------------------------------------------------------------------------------------------   1前時想起をする。 1分   ひっそりと、家族と別れの前のひとときを過ごすお父さんの様子                 を想起させる。                 本時学習場面を確認し、「お父さんはどんな思いで、ゆみ子に一 ------------------------------------------------------------------------------------------   2本時学習課題を      つの花をあげたのだろう。」について考えていくことを学習課題    把握する。    4   として把握させる。                個・「いよいよ汽車が入ってくるときになって」から、状況をおさ                 えさせ、お父さんの別れ際の気持ちを考えるのだという課題意識                 を、下男などAを中心とする子にも持たせたい。 ------------------------------------------------------------------------------------------   3課題を解決するた     お父さんの言動に着目していくことを読み取りの視点とし、1「    めに読む。        ゆみ子にあげたのはどんな花かを考える」2「その花をどんな思   1解決方法と        いであげたのかを考える」という順序で読み取っていくことを、    解決の見通し       解決の見通しとしてとらえさせる。   2学習場面の音読  5   課題について考えながら音読させる。   3一つの花に託し      一つの花に託した思いが書かれている部分として、「ゆみ。さあ    た思いについて      一つだけあげよう。一つだけのお花、大事にするんだよう  。-    の読み          「お父さんは、それを見てにっこりわらうと、何も言わずに、汽車     自己学習    2   に乗って行ってしまいました。ゆみ子のにぎっている、一つの花を                見つめながら   。」を視写させ、自力で課題の解決を図らせる               個・読み取りの手引きを子どもに与え、視写した文をもとに、ABC                それぞれの子どもに、課題に応じた読み取りをさせていきたい-A                BCそれぞれの評価基準を次のように設定し、指導にあたる。                 A 「一つだけあげよう。」に着目し、「一つだけ。」と言って                   泣いているゆみ子を泣きやませたいお父さんの思いを読み取                   ることができたか。                B 「大事にするんだよう  。」に着目し、ゆみ子もコスモス                   のように強く明るく生きてほしいというお父さんの願いを読                   み取ることができたか。                C 「何も言わずに」に着目し、ゆみ子の幸せを願いながら花に                   それを託して去らなければならないお父さんのつらさを読み                   取ることができたか。     読み深め合い      自己学習で読み取ったことをもとにお父さんの思いについて話し合                わせ、ABCそれぞれの子どもの読みを深めさせていく。                個 -読み深めの基本的手順を次のようにおさえて-見通しを持たせた                 上で話し合わせ-子どもの実態に応じてそれぞれの力が培われて                 いくようにしたい-     -一つの花に託     1  一つの花をどんな思いであげたかを読み取る-          した願い      個 --一つだけあげよう--に着目させ--一つだけ-一つだけ--とゆみ子                が泣いている状況を振り返らせることによって-泣きやんでほし                 いというお父さんの思いを-下男などAの子を中心に読み取らせる                個 --大事にするんだよう  -- に着目させ-すぐにしおれてしまう                 コスモスを大事にするとはどういうことかを考えさせることによ                 って-目の前のコスモスを大事にしてほしいのではなく-コスモス                 のように強く明るく生きてほしいのだというお父さんの願いを-                 裕女などBの子を中心に読み取らせる-                 2 ゆみ子の幸せを願いながら何も言わずに行ってしまったお父                  さんの心の中はどうかを読み取る-     -花に願いを託    個 --何も言わずに- に着目させ-二の場面の-めちゃくちゃに高い高     すしかないつら     い- をするしかなかったお父さんの思いを想起させることによっ     さ           て-ゆみ子の幸せを願うしかないお父さんのつらさを-山男などC                 の子を中心に読み取らせる- ------------------------------------------------------------------------------------------  4本時学習のまとめを    一つの花に託したお父さんの思いについて読み取ったことを振り   し、次時学習の見通    返り、自分の読みの深まりと読み取り方について自己評価させる。   しを持つ。         戦争中の場面と十年後の場面とをくらべ、ゆみ子がどんな子に育 ------------------------------------------------------------------------------------------