小学校5年 国語(情景を思いうかべて) 指導案 仁王小学校 用紙は A4 縦  1行 90字(半角) 1ページ 49行に設定してください。                第五学年国語科学習指導案                                              指導者     星   俊 也                                                一、単元名 情景を思いうかべて (教材 「大造じいさんとガン」)              ニ、単元について                                       1 五年生の理解領域の指導の重点は、「主題や要旨を理解しながら文章を読んだり話を聞いたり   することができるようにするとともに、読書を通して知識を増し、心情を豊かにする」ことであ   る。そのためには、主題や要旨を確実に理解しながら、自分の感情や意見をまとめる力が必要で   あるが、特に物語文の読みにおいては、人物の気持ちや場面の情景が描かれている箇所について   味わって読むこと、主題を確実に理解しながら、自分の感想をまとめることなどの力を培ってい   く必要がある。                                        四月以来、国語学習の中で心がけてきたことは、自分の読みの課題にそって語や文を正確に読   み取り、書き手の意図や表現上の工夫に気付くことのできる力を育てることであった。そのため   自分の課題に向かう主体的な読みの在り方、言葉に着目し、言葉から情景をつかみ、言葉から心   情の変化を読み取ることの大切さ、効果的な言葉の使い方などに気付かせながら、指導を続けて   きた。                                            このような指導のなかで、課題解決にむかって、大事な文や言葉に着目しながら、人物の行動   や心の動きを読み取り、主題に迫ろうとする意欲は育ちつつある。しかし、まだ読みが一過的で   言葉一つひとつを取り上げることはあっても、他の言葉や文と結びつけて読んだり、そこからイ   メージを広げて読んだりするところまで至ってない子も多い。又、人物の気持や場面の情景が描   かれている箇所に着目し、味わって読む力も不足している。                    その実態は、次のとおりである。                               A、場面や行動などの描写を手がかりに読み進めることができない子ども(智男など十三名)    B、人物の気持や心理を読み取り、想像を加えることができない子ども(美女など二十八名)    C、情景描写などを手がかりに、場面の移り変わりのなかで人物の関係や気持ちの変化を読み      取ることができない子ども                  (卓男など三十五名)    以上のような実態をふまえながら、具体的に個人差に応じた指導の手立てを組み、人物の気持   ちや情景が描かれている箇所に着目し、味わって読めるような力を培っていきたい。       2、本単元は、人物の気持ちや情景が描かれている箇所について味わって読むことを、主なねらい   とする。                                           教材「大造じいさんとガン」には、狩人の「大造じいさん」と、ガンの頭領「残雪」との間に   繰り広げられる生存をかけた厳しい闘いと好敵手に対する感動が描かれている。残雪をいまいま   しくも「たかが鳥のこと」と思っていた大造じいさんが、やがて残雪の知恵や頭領としての勇気   ある行動や態度に心を動かされていく。美しいもの、すばらしいものに感動をもって対し、それ   を認め誉めたたえていく大造じいさんの人間味あふれる姿が主題であると言えよう。         この物語は、前書きと四つの場面、1特別な仕かけをするが、失敗に終わる大造じいさん、2   夏から準備をしてきた計略も再び失敗に帰す大造じいさん、3残雪の頭領らしい行動や態度に感   動する大造じいさん、4残雪を空へ放す大造じいさん、からなり起承転結が明確な文章である。   筆者は、山場となる3場面へ向けて、様々なできごとを布石し、葛藤場面を設定することでドラ   マ性を強め、4の場面で事件を完成させ、さらに新たな発展と期待を読み手に余韻として残す、   構成上の工夫をしている。又、物語が一年という時間的経過を単位に繰り広げられていることか   らも、四つの事件に着目して読み進めていくことによって、物語のあらすじをとらえることがで   きる。                                            しかし、内容の中心価値に迫っていくためには、場面ごとの大造じいさんの気持ちをおさえな   がら、それがどう変わってきたのかを行動描写、情景描写を通して読み取っていく必要がある。   まず1・2の場面では、残雪を捕まえることに執念を燃やす大造じいさんの心情をとらえさせた   い。「いまいましく〜」「今年こそはと〜」「一発ぶちこんで」などの表現に、大造じいさんの   執念と心の高ぶりが読み取れよう。又、巧みな情景描写にも着目させていく必要がある。「あか   つきの光が、小屋の中にすがすがしく」や「東の空が真っ赤に燃えて、」などがそうだがこれら   は闘争心に燃える大造じいさんの心の象徴と言える。さらに、大造じいさんの執念は「目にもの   見せてくれる」「ひとあわふかせる」などの、慣用的な表現のなかにも読み取れる。         ところが3の場面で、残雪の勇敢で堂々とした態度を目の前にして、「たかが鳥のことだ」か   ら「ただの鳥に対しているような気がしませんでした」となるように心を動かされるのである。    そして、「おりのふたをいっぱいに開けてやりました」「いつまでも、いつまでも、見守って   いました」という4の場面も、晴れ晴れとしてすがすがしい大造じいさんの心、好敵手への限り   ない思いをこめた姿として、味わって読ませたいところである。                  以上のように、本教材の内容の中心価値に迫っていくためには、場面の展開に沿って、人物の   気持ちや情景が描かれている箇所について味わって読んでいかなければならない。従って、本教   材は、単元のねらいから見て、適材であると考える。                     3、指導にあたっては、残雪に対する大造じいさんの気持ちやその移り変わりが描かれている言葉   や文に着目させながら、十分に味わって読ませていきたい。具体的には、自ら読み深めていくこ   とを学習の基本にすえ、大造じいさんに焦点をあてて、自己学習で大事な文や言葉をとらえたり   書きこみをさせたりする。そうして、残雪の頭領らしい堂々とした姿に感動し、変容していく大   造じいさんの心情をとらえさせていきたい。                           子どもたちには、まず課題に対する自分の読みを持つことを指導していきたい。なぜなら、そ   こで読みとったことを基にして話し合ってこそ読みが深まっていくと考えると、自分の読みを持   つことが主体的な読み取りの第一歩だと思われるからである。                   しかし、そこには前述の実態A・B・Cのような個人差が存在する。A(下位)の子どものな   かには課題につながる言葉に気付くことができない子どももいるし、言葉は見つけても内容の乏   しい書きこみしかできない子もいる。その子どもたちにも、自分の力で読み深めているという充   実感・満足感を持たせていきたいと考え、「読み取りの手引き」を活用させることとした。子ど   もたちは、自分の読みの力に応じて手引きを選択し、手引きをヒントに自己学習を進めていく。   ただ、あくまでそれまでに身に付けた自分の力で読み取ることを前提にし、最終的には、手引き   なしで読み取れる力をどの子にもつけたいと考える。                       さて、具体的な読み取りの過程を考えたとき、子どもたちの目は、まず残雪に向けられるだろ   う。残雪の知恵に驚き、仲間を救おうとハヤブサと戦う勇敢さに感動しながら読み進めていくこ   とだろう。そこで、そんな残雪を大造じいさんはどのように見ているのだろうと、目を大造じい   さんに向けさせ、両者を対比的に読ませたい。そして、狩人としての大造じいさんの人物像を多   面的にとらえさせるとともに、全力を尽くして対決するもののみに通ずる心情にまで読みを深め   させたいと考えている。 三、指導目標  1、価値目標    残雪をつかまえることに執念を燃やしていた大造じいさんが、残雪の勇敢で堂々とした態度に   感動し、気持ちを変容させていく様子を読み取る。  2、技能目標   主目標 人物の気持ちや場面の情景が描かれている箇所について味わって読むこと        @ 場面や行動などの描写を手がかりに読み進める                       A 人物の気持ちや心理を読み取り、想像を加える                       B 情景描写などを手がかりに、場面の移り変わりのなかで人物の関係や気持ちの変          化を読み取る                                      C 表現がどのような視点でなされているか考える                  副目標 表現の優れた文章を視写することによって、理解及び鑑賞を深めるとともに、優れた点      を自分の表現に生かすこと                                    @ 視写の意義が分かり、進んで書く                             A 表現の適切さを味わいながら書く                             B 適切な表現を自分の表現に役立つように理解する                 言語事項 言葉の使い方などについて関心を深めること                          〇 擬声語・擬態語‥‥パッと ぐっと パーンと ぱっぱっ バシッ など           〇 漢語‥‥頭領、戦とう、花弁、最期、英雄、など                      〇 文語‥‥救わねばならぬ、堂々たる態度、きずつけまいと など        四、指導計画(十時間扱い)    第一次 全文を読んで感想をまとめる ----------------------------------二時限            ・全文を読んで感想をまとめる ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥1              ・学習計画を立てる ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥1          第二次 課題を追求するための読み ------------------------------------五時限            ・特別な仕かけをするが、失敗する大造じいさんについての読み‥‥1              ・二年目の計略にも失敗する大造じいさんについての読み ‥‥‥‥1              ・残雪の雄々しい姿に感動する大造じいさんについての読み ‥‥‥2(本時22)        ・残雪を空へ放す大造じいさんについての読み ‥‥‥‥‥‥‥‥‥1          第三次 まとめのための読み ------------------------------------------二時限            ・全文を通して読み、主題について話し合う ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥1              ・作品の優れた表現性を味わい、感想をまとめる ‥‥‥‥‥‥‥‥1          第四次 練習と評価 --------------------------------------------------一時限     五、本時の指導                                        1、ねらい     描写の細部に気を付けながら、仲間を救おうとする残雪の勇ましい行動や堂々たる態度に感    動し、残雪に対して畏敬の念を持つにいたる大造じいさんの心情の変化を読み取らせる。      A 智男など十三名 場面や行動などの描写をてがかりにして読ませる。             B 美女など十八名 人物の気持や心理を読み取り、想像を加えさせる。             C 卓男など八名  場面の移り変わりのなかで人物の関係や気持の変化を読み取らせる。   2、展開                           個  個人差への対応     +--------------+----------------------------------------------------------------+  |  学習活動  | 時    指  導  の  要  点                |  | 1、前時想起を| 分о今日こそ残雪をうちとろうと意気ごんでいた大造じいさんが、仲間を救|  |  する    | 2 おうとしてハヤブサに挑んでいく姿に心を動かされ、銃を降ろしてしま|  |        |   ったことを想起させる。                     |  | 2、本時の学習| 3о本時学習場面を確認し、「大造じいさんは、残雪のどんな姿に強く心を|  |  課題を把握す|   うたれて、ただの鳥に対しているような気がしなかったのだろう。」を|  |  る     |   課題として学習を進めていくことを確かめる。           |  | 3、課題を解決|                                   |  |  するために読|  о大造じいさんの目にうつった残雪の姿に着目しながら、@「残雪のどん|  | む      |   な姿に心をうたれたのか」A「残雪に対してどんな思いをもつに至っ3|  |  1 解決の見|   たか」の順で読み取っていくことを解決の見通しとしてとらえさせる。|  |   通しを持つ|                                   |  |  2自己学習1| 2о残雪の行動や様子の分かる文に線引きをする。           |  |        |  個 線引きの箇所を確かめながら、それが「ハヤブサと戦う残雪の姿」と|  |        |   「地上で大造じいさんに対した残雪の姿」の二つの場面に分けられるこ|  |        |   とをAの子どもたちにもおさえさせたい。             |  |  3学習場面の| 3о課題について考えながら音読させる。               |  |   音読   |                                   |  |  4ハヤブサと| 2о自分の身の危険もかえりみず仲間を救おうと必死で戦う残雪の姿を音読|  |   戦う残雪の|   を通して読み取らせる。                     |  |   読み   |  ・擬声語、擬態語に気を付け、音読の強弱・早さ・間の取り方などを工夫|  |        |   して、緊張感と力強さの感じられる読みをさせる。         |  |  5頭領らしい|  о残雪が描かれている部分として「残雪は、胸の辺りをくれないにそめて|  |   威厳に満ち|   〜。そして、じいさんを正面からにらみつけました。」と「大造じいさ|  |   た残雪につ|   んが手をのばしても、残雪は、もうじたばたさわぎませんでした。」の|  |   いての読み|   文を視写させ、自力で課題解決を図らせる。            |  |   自己学習2|  個 読み取りの手引きを子どもに与え、視写した文をもとに、ABCそれ|  |        |   ぞれの子どもに自力で課題の解決を図らせる。           |  |   読み深め合|  о自己学習で読み取ったことをもとに、頭領らしい威厳に満ちた残雪の姿|  |   い    |   とそれに感動する大造じいさんの心の動きをとらえさせる。     |  |        |  個 激しい戦いの後も、「残りの力を振り絞って」「じいさんを正面から|  |        |   にらみつけ」「もうじたばたさわがない残雪」の雄々しい姿をABの子|  |        |   を中心に読み取らせる。そしてCの子を中心に、残雪に対する大造じい|  | 4、本時のまと|   さんの思いがどう変わってきたのか前時迄の学習と重ねて読み取らせる|  |  めをし、次時| 5о残雪の姿や大造じいさんの心の変容について読み取ったことを振り返り|  |  の見通しを持|   自分の読みの深まりと読み取り方について自己評価させる。     |  |  つ     |  о次時の学習課題を確かめる。                   |