小学校6年 国語(情景を想像しながら) 指導案 緑が丘小学校 用紙は B4 縦  1行 106字(半角) 1ページ 63行に設定してください。          第6学年国語科学習指導案                                日 時 昭和63年11月25日(金) 3校時                      学 級 6年3組(男20 女22 計42名)                      指導者 教 諭  菅野 亨          1 単元名 情景を想像しながら(物語)                               教材名 やまなし                              2 教材について                                      この物語は、宮沢賢治独特の言葉で描かれた詩的・映像的世界ともいうべき味わい深い作品  である。かにの兄弟が恐怖や死の不安にさらされながらも、やがてその世界をくぐりぬけ、静  かで平和で生の喜びに満ちた豊かな世界に浸る様子が、父親がにとの語らいや美しい情景描写  の中で繊細に描かれている。                                前半の「五月」は、明るい陽光の中で生命が躍動する昼の谷川が舞台になっている。その中  で弱肉強食の争いによって引き起こされる二つの冷酷な死が、いわば現実の世界として描かれ  ている。                                         後半の「十二月」は月光が水中に透き通る静かな夜の谷川が舞台になっている。ものみな眠  りにつく冷たい時期であるが、そのなかでかにの親子の暖かい語らいや突然落ちてきたやまな  しがもたらす幸せが、平和で豊かな理想的世界として描かれている。どちらも川底のかにの目  を通して語られる世界である。                               文章は、「五月」と「十二月」の場面を「動と静」、「冷と暖」「昼と夜」「かわせみとや  まなし」などの徹底した対比で表現される「小さな谷川の底を写した二枚の青いげん灯」で構  成されている。この対比は、「五月」の場面の中でも「明と暗」として描かれるが、この外に  も比喩、擬声語、擬態語、色彩語、造語が文章のいたるところで巧みに使用されている。それ  らによって情景が鮮やかに描写され、かにの親子を取り囲む世界が生き生きと詩情豊かに語り  上げられている。                                     本教材での最も大切なねらいは、描写から水の中にさしこむ光、波のゆれ動くさま、かにの  会話、かわせみとやまなしの来訪が織り成す川底の情景をとらえ、児童それぞれが自分なりの  イメ−ジをより鮮明に豊かに描き上げていくことである。繊細な描写表現を読み取ることから  児童一人ひとりに情景を豊かにふくらませて想像する力をつけてやりたいと考える。そして、  比喩、擬声語、擬態語、色彩語に気付かせ、主題を考えさせていきたい。そのために--五月」  と「十二月」を対比して考えさせたり、賢治独特の言葉のひとつひとつの響きやイメ−ジを大  切にしながら朗読・視写・書き込みを重ね、情景とかにの気持ちを密接に結びつけて考えさせ  ながら読み取りを深めさせていきたい。                         3 児童について                                      子どもたちは、これまでに二つの物語教材を学習してきた。「野ばら」では、人物の言動の  内にひそむ心の動きを読み取ることを、「石うすの歌」では、登場人物の気持や場面の様子か  ら作品の主題をとらえることを主なねらいとして進めた。その結果、国語学習に意欲的に取り  組み、登場人物の言動や心情を追いながら主題を読み取ったり、読み取った事柄を朗読や書き  込みに表現したりする力が少しずつついてきている。しかし、使われている言葉に鋭く反応し  て、読みを深めながら描かれている情景をイメ−ジ豊かにふくらませたり、描写と心の動きを  密接に結びつけて読み味わう力はまだまだ不十分である。したがって、主題の読み取りも浅く  やや表面的・部分的な読みにに傾いている。                4 指導目標                                       ◎事象の説明と筆者の意見のかかわり方に注意し、文章の構成を考え筆者の要旨を読み取るこ   とができるようにする。                                〇文章の要旨をまとめて書いたり、感想を書いたりすることができるようにする。       〇文章の構成について理解を深めるとともに言葉の使い方に注意することができるようにする  〇宮沢賢治の他の作品を進んで読み、読書に親しむことができる。             5 指導計画(11時間)                                 ア 意識化    全文を読み、印象深く感じたところや疑問に思ったところを   2時間           中心に初発の感想を書く。わからない語句を調べる。           イ 焦点化    初発の感想をもとに学習課題を設定する。           1時間  ウ 思考の秩序化 学習課題にそって読み深める。                4時間           ・「五月」の谷川の底の情景とクラムボンが殺され不安に思(1)               う兄弟の気持ちを読み取る。                              ・かわせみが飛び込んだあとの情景と恐怖にふるえる兄弟の(1)               気持ちを読み取る                                   ・「十二月」の谷川の底の情景とあわの比べっこをする兄弟(1)               の気持ちを読み取る。                                 ・やまなしが落ちた後の情景と平和で豊かな喜び満ちた世界(1)本 時            に浸るかにの親子の気持ちを読み取る。                エ 統合化    「五月」と「十二月」の情景を対比し、それぞれの意味を考   1時間           える。                                         全文を読み、第二次感想を書く。自分の好きな表現を視写し   1時間           て読み味わう。                            オ 適用化    朗読会を開き、作品を鑑賞し合う。語句の練習をする。     1時間           宮沢賢治の他の作品を読む。                 1時間 6 本時の指導                                      (1) 目標                                         やまなしが落ちた後の谷川の底の情景やかにの様子を表わす表現から、平和で豊かな十    二月の世界を想像豊かに読み取ることができる。             (2)展 開                                                 +---+------------------------------------+------------------------------------+------------------+ |  |  指 導 内 容 ( 主 発 問 ) |  学 習 活 動(・予想される反応) |  指導上の留意点 | +---+------------------------------------+------------------------------------+------------------+ | 意| 1前時の想起             | 1前時の学習内容を想起する      | ・本時のねらいと直| | 識|   十二月の川底はどんな様子だったか。|  ・おだやか ・とても静か ・きれい |  接つながるように| | 化|   子がにたちはどんな様子だったか  |  ・仲が良い ・おもいやりがある   |  想起させたい  | |  |                    |                    |      (視1)| | 焦| 2学習課題の確認           | 2学習課題を確認する         | ・今日の学習の目的| | 点|   十二月後半の課題は何か。     |                    |  をはっきりさせ意| | 化|       +-----------------------+-----------------------+       |  欲を持たせたい | |  |       | やまなしが落ちた後のかにの親子の気持ちを読み取ろう|       |          | |  |       +-----------------------+-----------------------+       |          | |  |   何を表す言葉に気を付けて読めばいい|  ・情景の変化 ・やまなしの様子   | ・読み取る視点を明| |  |   か。               |  ・かにの親子の会話や行動      |  確にし課題解決の| |  |                    |                    |  手がかりとしたい| | 思| 3                  | 3                  |          | |  | (1) 本時の学習場面の音読       | (1) 本時の学習場面を読む       | ・指名読2名   | | 考| (2) 水中に落ちてきたやまなしの様子とか| (2) やまなしが上から自然に水中に落ちた| ・正確に読むため、| |  |  にの兄弟の気持ちの読み取り     |  様子とかにの兄弟の気持ちを読み取る |  かにの視点は水中| | の|   やまなしはどんな様子で落ちてきたか|  ・トブンとやさしく軽い感じ     |  であることをおさ| |  |                    |  ・きらきらっと輝く感じ       |  える      | | 秩|                    |  ・いきなりつきささるようだったがトブ| ・五月のかわせみを| |  |                    |   ンと自然に            |  想起させることに| | 序|   「やまなしだ」と教えられた時、どん|  ・殺されると思ったのでホッとした  |  より、やまなしが| |  |   な気持ちになったか。       |  ・怖かったけど安心した       |  落ちた様子をより| | 化|                    |  ・良かったな            |  鮮明に浮かび上が| |  |                    |                    |  らせたい    | |  | (3) やまなしが流れていく様子と、それを| (3) やまなしが流れていく様子と、やまな| ・なぜ追いかけたの| |  |  追いかけるかにの親子の気持ちの読み取|  しにひきつけられるかにの親子の気持ち|  かを問うことでや| |  |  り。                |  を読み取る。            |  まなしの流れる様| |  |   かにの親子はなぜやまなしを追って行|  ・ぼかぼかと流れるのがおもしろくて |  子や、やまなしに| |  |   ったのか             |  ・きらきらっときれいだからつい   |  引かれる気持ちを| |  |                    |  ・ぼかぼかは浮いたり沈んだり    |  引き出したい  | |  |                    |  ・いいにおいに誘われて       |          | |  | (4) やまなしをつつむ谷川の情景と平和で| 3視写や書き込みをしながら谷川の情景を| ・一人ひとりに主体| |  |  豊かな世界に浸るかにの親子の気持ちの|  詳しく読み取る。又、これと関連させな|  的に自由に想像で| |  |  読み取り。             |  がら、かにの親子の気持ちも読み取る。|  きるよう視写と書| |  |   やまなしが止まった辺りの情景が分か|  ・サラサラ鳴り→きれい、静か、やさし|  き込みをさせたい| |  |   る部分を視写し、情景が目に浮かぶよ|       く            |  また、一人ひとり| |  |   うな表現に書き込みをしなさい。  |  ・いよいよ青いほのおをあげ→波もうれ|  に自分自身の考え| |  |                    |       しがっている。      |  を練り上げさせた| |  |                    |  ・もかもか集まり→スポットライトをあ|  い。(視3)  | |  |                    |       びたように        |          | |  |   その様子を見て、かにの親子はどんな|  ・待ち遠しい ・早く二日たつといいな| ・賢治独特の優れた| |  |   様子で帰っていったのか。     |  ・必ず来よう ・楽しみにして帰った |  表現で、情景が生| |  |                    |  ・安心して帰った ・期待している  |  き生きと描かれて| |  |                    |                    |  いることに気付か| |  |                    |                    |  せ味わわせたい。| | 統| 4学習のまとめ            | 4本時の学習で自分が読み取ったことを、| ・本時で読み取った| | 合|   やまなしが落ちた後のかにの親子の気|  書く活動を通してまとめる。     |  ことを確かなもの| | 化|   持ちをノ−トにまとめなさい。   |  ・やまなしのおかげでかには幸せな気持|  にさせたい。  | |  |                    |   ちになった。           |  (視4)    | |  |                    |  ・十二月は静かで平和でとても美しい世|          | |  |                    |   界だ。              |          | |  |   情景が目に浮かぶように気持ちをこめ|                    | ・指名読1名   | |  |   てまとめの朗読をしよう。     |                    |          | | 適| 5次時の予告             | 5次時の学習内容を知り、意欲を持つ。 |          | | 用|   次時は「五月」と「十二月」を比べて|                    |          | | 化|   意味を考える。          |                    |          | +---+------------------------------------+------------------------------------+------------------+ (3)評 価                                                   ・やまなしと周りの情景を想像豊かに読み取ることができたか。