印刷用紙:B4縦 1ページの行数:60 1行の文字数(半角で):90 第三学年 国語科学習指導案      指導者   星  俊 也 一、単元名  人物の人がらや気持ちを (教材「太郎こおろぎ」) 二、単元について   1 三年生の理解領域の指導の重点は、「内容の要点を押えながら話を聞いたり、内容の要点を正   しく理解しながら文章を読んだりすることができるようにするとともに、いろいろな読み物を読   もうとする態度を育てる。」ことである。この重点に迫っていくためには、「文章の要点を正し   く理解しながら、内容を読み取ること」「文章の叙述に即して内容を正しく読み取ること」「人   物の性格や場面の情景を想像しながら読むこと」などの力を培っていく必要がある。    四月以来、物語教材の指導の中で心がけてきたことは、書かれてある言葉や文に着目し、言葉   を通して場面の様子や人物の心情を読み取る力を育てることであった。具体的には、様子や言動   を表す言葉に着目させ、その言葉のもつ働きを理解させるとともに言葉からうけるイメージを豊   かに感得させる指導を続けてきた。    このような指導の中で、言葉や文を大切にし、言葉を根拠にして考えたり、考えを広めたりし   ようとする読みの姿勢は育ちつつある。しかし、子どもたちの読みは表現されている内容の表面   的な読みにとどまりがちであり、人物の性格や場面の情景を想像しながら読み取るところまでは   至っていない。このことは、人物の言動をとらえて会話や様子を補ったり、人物の行動や気持ち   を想像しながら読んだり、人物の性格や人柄を想像しながら読む力が不足していることによると   考えられる。    その実態は、次の通りである。    A 会話や様子を補って読むことができない子ども (賢男など十名)    B 人物の行動や気持ちを想像しながら読むことができない子ども (早女など十九名)    C 人物の性格や人柄を想像しながら読むことができない子ども (智男など二十六名)    以上のような実態をふまえながら、具体的に個に応じた指導の手だてを組み、人物の性格や場   面の情景を想像しながら読む力を培っていきたい。  2 本単元は、人物の性格や場面の情景を想像しながら読むことを、主なねらいとする。   教材「太郎こおろぎ」は、子どもらしく自由奔放に生きる太郎と、彼をとりまく山奥の小さな小   学校の先生や子どもたちとの心の通い合いを主題として描かれた物語である。    この物語は、現在大人である「わたし」が過去を振り返って語るという形式で成り立っており   全体が四場面で構成されている。一の場面では、物語の背景となるさびしい山奥の小学校の様子   が紹介される。二の場面では、主人公であるがきだいしょう「太郎」の性格が描き出され、続く   三の場面では、「太郎」の人間性を一層印象付けるような消しゴム事件が展開される。そして、   四の場面には、語り手である「わたし」のなつかしい思いと現在の村の様子が描かれるという構   成になっている。 内容価値に迫っていくためには、会話文や様子を表す言葉に着目させながら、太郎や他の人物   の人柄をしっかりとらえさせていかなければならない。特にも、わんぱくで、人を困らせもする   が、優しいところがありどこかにくめない太郎の人間性に十分ふれさせたいと考える。ややもす   ると、子どもたちは、「たいへんないたずらっ子」で行動的な太郎の横暴さに目を奪われ彼の優   しさを見失いがちになるのではないかと思われる。しかし、太郎は都会から転校して来た「わた   し」には「なんとなく親切」であったし、しのちゃんの消しゴムを「おれが今、とってきてやる   と言ってすぐに探しにいく姿や、床下から「しのちゃんの後を受けて」こおろぎの鳴きまねをし   て、しのちゃんをかばおうとする姿にも優しさやユーモアが感じ取れるのである。このように、   太郎の性格や人柄を広さと厚みをもってとらえていくことによって、物語の読みを深めていくこ   とができると思われる。   また、物語の背景となる山奥の小学校の様子や、太郎を取り巻く人々とのかかわりも大切にし   ながら読み進めていきたい。そうすることで、この作品のもつのどかさや明るさに浸らせること   ができると思われる。 以上のように、本教材の内容価値に迫っていくためには、人物の性格や場面の情景を想像しな   がら読んでいかなければならない。したがって、本教材は、単元のねらいからみて適材であると   考える。  3 指導にあたっては、次の四点に留意していきたい。    第一点は、一読した段階でもった太郎に対する印象を、場面毎の読みを進めていく中で、前述   のような太郎像にふくらませていくことである。太郎の人柄を表す会話や行動に着目させていく   のは勿論だが、語り手である「わたし」が太郎や太郎を取り巻く人々をどう見ているかにも目を   向けさせることで、主観的、表面的な読みに終わらせずに太郎の人柄を豊かに想像させたい。   第二点は、床下から聞こえてきた「リリ、リリ、リリ 。」という太郎の声を、本当のこお ろぎの鳴き声だと読み違えている子への対応についてである。これは、「こおろぎが一ぴき、あ   なからとび出してきました。」の文に惑わされたものと考えられるが、叙述に即して読み取らせ  ていくことで前後の関係を正しくとらえさせたい。「とっさにそんなことを言ってしまいました」  「目になみだをためて下をむいてしまいました。」「しのちゃんの後を受けて〜」などの文や言  葉に着目させることで、太郎がこおろぎのまねをするにいたった経過とその行為のもつ優しさを  読み取らせたいと考える。  第三点は、自己学習と読み深めについてである。場面毎の読み取りについては、課題の解決に  向かって三年生なりに自分の読みを持たせ、それを出し合うことで読みを深めさせていきたいと  考える。自己学習の場では、視写・書き込みの時間を十分に確保し、自力で文や言葉に立ち向か  わせていきたい。しかし、書き込みは一学期末に「つり橋わたれ」で指導を始めたばかりで、ま  だまだ教師の援助が必要な状態である。机間巡視による個別指導と読み取りの手引の活用を通し   て、言葉への着目の仕方をていねいに指導していきたい。 第四点目は、感想の持たせ方についてである。子どもたちにとって、「がき大将太郎」は大い   に興味のもてる人物であり、意欲的にその人柄を追求していくと思われる。しかし、ここで大切   にしたいことは、自分と太郎を強くかかわらせながら、自分の行動と太郎の行動とを比較し、太   郎の人間性に深くふれさせることである。そこで、太郎の生き方を自分の生活や考え方と結び付   けながら読んだり、自分が太郎ならどうするかなどについて考えさせながら読ませ、感想を持た   せていきたい。 三、指導目標 1 価値目標 子どもらしく自由奔放に生きる太郎と、彼をとりまく山奥の小さな小学校の先生や子どもたち   とのほのぼのとした心の通い合いを読み取らせる。 2 技能目標 主目標 人物の性格や場面の情景を想像しながら読むこと。 点 @会話や様子を補って読む。 重 A人物の行動や気持ちを想像しながら読む。   B人物の性格や人柄を想像しながら読む。 C情景を想像しながら読む。 副目標 聞いたり読んだりした内容から素材を見付け、その素材を使って表現してみること。 点 @聞いたり読んだりした事の中から、話したいことや書いてみたい素材を見付ける。 重 A素材について自分なりに気付いたり、考えたり感じた事を話したり書いたりする。 言語事項 人の活動や社会の事象などを表す語句を増し、その使い方の範囲を広げること。 ・人の活動などを表す語句 通う いじめる けずる すてる 受ける など ・組み合わせた言葉 ゆか+下↓ゆか下 消す+ゴム↓消しゴム など 四、指導計画(十二時間扱い) 第一次 全文を読んで感想をもつための読み 二時限 ・全文を読んで感想をまとめる 1 ・学習計画を立てる 1 第二次 課題を追求するための読み 五時限 ・さびしい山おくの小学校についての読み 1 ・太郎の性格の二面性についての読み 1 ・しのちゃんの消しゴムを探しにいく太郎についての読み 1 ・こおろぎの鳴きまねをする太郎についての読み 1 本時 ・楽しい山の小学校の思い出についての読み 1 第三次 まとめのための読み 三時限 ・全文を読む通して主題について考える 1 ・感想をまとめる 3 第四次 練習と評価 一時限 五、本時の指導 1 ねらい 「しのちゃんの後を受けて」に着目させ、自分をかばってくれたしのを助けようとして、懸命 にこおろぎの鳴き声をまねする太郎の優しさを読み取らせる。 A 賢男など十名 会話、様子を補って読ませる。 B 早女など九名 人物の行動や気持ちを想像しながら読ませる。 C 智男など七名 人物の性格や人柄を想像しながら読ませる。 2、展 開                            個 個に応じた指導 +-------------+---+---------------------------------------------------------------------+ | 学 習 活 動 | 時|          指   導   の   要   点 | +-------------+---+---------------------------------------------------------------------+ | 前時想起を  | 1| ・消しゴムを取るために、太郎が床下に入っていったことを想起させる。 | | する     |  | | | 本時の学習  | 3| ・本時学習場面を確認し、「しのちゃんの後を受けてこおろぎの鳴きまねを | | 課題を把握す |  | した太郎は、どんな子なのだろう。」を課題として学習を進めていくこと | | る      |  | を確かめる。 | |        |  | 個 これまで読み取ってきた太郎の人柄をもとに、今日の読みでさらに深め | |        |  | ていくことをおさえ、A段階の子にも課題意識を持たせたい。  | | 課題を解決  | | | | するために読 | 3| | | む      |  | ・しのと太郎の言動に着目していくことを読み取りの視点とし、@「なぜな | | 1解決の見  |  | みだをためるようなことになったのか」A「後を受けて鳴いたことから、 | | 通しを持つ | 3| 太郎のどんな人柄が分かったか」の順序で読み取って行くことを解決の見 | |        | | 通しとしてとらえさせる。 | | 2 学習場面 |  | ・課題について考えながら音読させる。 | |   の音読  | 4| | | 3太郎の優し |  | ・太郎の優しさが読み取れる場面として、太郎が見過ごすことのできなかっ | | さについて |  | た『「リ、リ  。」と、しのちゃんは言いかけましたが、〜下をむいて | | の読み   |  | しまいました。』の文と、太郎が必死にかばおうとする『ところが、その | | ○自己学習  | 0| とき、〜「リリ、リリ、リリ  。」と、声がしてきたのです。』の文を | |        |  |  視写させ、自力で課題について考えさせる。 | |        |  | 個 読み取りの手引きを手掛かりに、自力で課題の解決を図らせる。 | |        |  | A「みんながどっとわらったので」に着目して、しのの困り果てた様子と | |        |  |   それを察知したであろう太郎の様子を想像する。 | |        |  | B「後を受けて」に着目して、続けて鳴くことで何とかしのちゃんを助け | |        |  |   ようとする、太郎の優しい思い付きを読み取る。 | |        |  | C「リリ、リリ、リリ  。」に着目して、懸命にこおろぎのまねをする | |        | |   太郎の様子を想像し、優しさを読み取る。 | | ○読み深め合 | 7| ・自己学習で読み取ったことを出し合いながら、太郎の優しさとおおらかさ | | い     |  | に気付かせる。 | |        |  | 個 「目になみだをためて」などの言葉に着目させて、しのの困り果てた様 | |        |  |   子をAの子を中心に読み取らせ、そんなしのを助けようとする太郎の楽 | |        |  |   しい思い付きと優しさをB・Cの子を中心に読み取らせる。 | |        |  | ・「太郎こおろぎだっ。」と言って笑い出す学級の子どもたちや先生の姿か | |        | | ら、太郎の明るさや優しさをちゃんと認めてくれていることに気付かせ、 | |        |  |  太郎の人間性に深くふれさせる。 | | 学習のまと  | 6| ・課題について分かったことをノートにまとめさせる。 | | めと次時学習 |  | ・次時の学習課題を確かめる。 | | 課題の確認  |  | | +-------------+---+---------------------------------------------------------------------+