印刷用紙   :B4 縦 1ページの行数:31 1行の文字数 :100 国語科学習指導案 1 指導期日 平成5年2月19日(金)9時10分〜9時55分 2 指導学級 花巻市立桜台小学校5年1組(男子17名,女子23名,計40名) 3 指 導 者 研究員 佐々木篤 4 教 科 書 大阪書籍『小学国語』5下 5 単 元 名 『表現を味わいながら』 6 教 材 名 「白さぎ」 7 単元設定の理由 (1) 教材観 本出版社における本教材は,9月に指導した「大造じいさんとがん」を受けて,10月中旬に指導にあたる こととなっている。児童は「大造じいさんとがん」において,物語の場面に即して,人物の気持ちの移り変 わりを読み取り,その中から作品の主題に迫る学習を経験している。本教材は,その学習を定着させるため の,補充的役割を果たすものと位置づけることができる。 教材「白さぎ」は,『冬の近い土曜日の午後,少女は田んぼの真ん中に「けんか好きのいじめっ子。とか く仲間にけいえんされているその少年」をみかける。田んぼの中の白さぎを見つめる少年をみた少女は,回 り道をして彼を避ける。しかし,帰り道にもう一度出会った折りの少年の「あの白さぎ,ひとりぼっちじゃ なくなったから,もういいや。」の言葉によって,少女は少年のもうひとつの顔を知ることとなる。「おさ げの先をキュッとひとつひっぱ」られても,「不思議にはらが立たなかった」』という心情に至るまでの心 の様子を読み取ることから主題に迫ることができるものと考える。 叙述面における特色としては次のことが挙げられる。 ア 現在形の常体で描かれている文体は,歯切れの良さとともに,臨場感を醸し出している。 イ 主語の省略や比較的長い修飾関係がある。 ウ 主人公が固有名詞でなく,少年と少女として表現され,感情移入を容易なものにしている。 エ 新出漢字や読み替え漢字が少なく,朗読教材としての配慮がみられる。 よって,指導にあたっては読み取りの段階においてはイに,朗読の段階においてはア・エに,主題把握の 段階においてはウに配慮する必要があるものと考える。 また,本作品の設定は児童の生活経験と共有できる部分が多く,児童は作品世界の中に支障なく入り込む ことができるととともに,それぞれのもつ経験が細部の読み取りを援助してくれるものと考えられる。 (2) 児童観 本学級は,平成4年度研究協力の対象学級として指定を受け,同年10月6日〜21日までの約3週間,指導 にあたったクラスである。 研究主題,単元の学習内容,及び学習に対する意識の調査結果から,次のことが言えるものと考える。 ア 研究主題に関する調査結果から,物語文の主題把握学習における登場人物の心情把握学習では,直接的 表現からの読み取りはほぼできるが,間接的表現からの読み取りはまだ充分とは言えない段階にあるもの と考えられる。 イ 単元の学習内容に関する調査結果から,「言語事項」領域の定着が高く,学習に対する意欲が伺われる。 一方,「理解」領域においては上位群,中位群は学習の有効性が認められたが,下位群において,やや学 習の停滞がみられる。 ウ 学習に対する意識の調査結果から,基本的学習技能の中の「音読」に対して苦手意識が薄らぐ傾向がみ られるが,「視写」「書き込み」については,その学習の有用感は持ちながらも,苦手意識を取り除くま でには至っていないものと考えられる。 これらの課題は持ちながらも,児童の学習への取り組みは前向きで,物語文学習に対する関心も高いも のがある。 (3) 指導観 小学校5年生における物語文教材の指導にあたっての目標は,学習指導要領によるとウ「文章の主題や要 旨を考えながら内容を読み取ること」,エ「文章の叙述に即して,細かい点に注意しながら内容を正確に読 み取ること」,オ「人物の気持ちや場面の情景の叙述を味わいながら読むこと」となっている。 ウは,児童の発達段階に応じた目標の設定と言うことができる。一般的に5年生は主観的な思考から客観 的な思考への移行期と言われている。文章全体に点在する中心的事柄を関係づけ,作品を部分としてではな く全体としてとらえることができるようになる時期と考えられる。 よって,指導にあたってはエに対応した緻密な読み取りや,オに対応した叙述の「よさ」を感得させる学 習を目指すとともに,それらが作品全体の中でどのような役割を果たしているかを学び取らせ,物語文を読 むことへの関心を高めたいものと考える。 また で述べた児童の実態を踏まえ,課題の解消に向けた指導となるよう配慮したいものと考える。 8 単元の指導目標 (1) 物語の展開に即して,情景や人物の心の動きを読み取ることができる。 (2) 読み取ったことをもとにして,主題について考えることができる。 (3) 表現の優れているところを読み味わい,自分の表現に役立てることができる。 9 単元の指導計画 +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+ |時 間| 指 導 内 容 | 備 考 | +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+ |第1時|通読 語句の意味理解 文章構成理解 | 2/15(於:桜台小学校)| +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+ |第2時|第1段落 「少女」の心情把握 | 2/16(於:桜台小学校)| +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+ |第3時|第2段落 「少女」の心情把握 | 2/19(於:センター) | +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+ |第4時|主題把握 学習のまとめ | 2/22(於:桜台小学校)| +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+ 10 本時授業の構想 本時の授業は,主題把握学習の前提となる登場人物の心情の把握についての学習である。最初に,前時学習 内容を想起させ,本時の学習に見通しを持たせる場面を設定した。これは,心情を把握することのみを本時の 目標とするのではなく,「学習の仕方」をも学び取らせようとするものである。 本時授業においては,登場人物の心情を把握させるにあたって,「少女」にその焦点をあてることにした。 これは,「少女」の心情を読み取ることは,必然的に「少年」の心情をも捉える必要があるものと考えるから である。 心情表出箇所の指摘にあたっては,児童の学習実態から「間接的表現」にその中心を置くこととした。その 学習の中で,文章中における句読点の果たす役割や,文面に現れない心情のあることを感得させたいものと考 える。その後,読み取った「少女」の心情を心情曲線として表すことによって,心の変化の様子を客観的にと らえさせその変化の理由を考える契機としたいと考える。 又,授業の最終場面には音読を位置づけ,学習を通して読み取った内容を音声として表現させることによっ て,本時学習に対する「有用感」を持たせるよう配慮したいと考える。 11 本時の目標 (1) 「少女」の心情表出箇所を指摘することができる。 (2) 「少女」の心情が変化していることを読み取ることができる。 (3) 「少女」の心情が変化した理由を読み取ることができる。 (4) 理解したことを,表現に生かすことができる。 12 本時の展開案 +−−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |段階| 学 習 内 容 | 学 習 活 動 | 指導上の留意点 | +−−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |1 前時学習内容の想|1 前の時間に学習した段落にいて,「少女」が|○下位児童から指名 | | | 起 | 「少年」をどのように思っているかを想起し,| | | 導 | | 発表する。 | | | | | | | | |2 本時学習課題の提|2 本時の学習内容を確認する。 | | | | 示 | | | | 入 | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | | 第2段落での「少女」の「少年」に対する心の様子を読み取る。| | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |(5)|3 学習方法の確認 |3 心の様子を読み取るための,学習の仕方を発|○心情表出箇所の指摘| | | | 表する。 | ・直接表現 | | | | | ・会話 | | | | | ・行動 | |−−|−−−−−−−−−−|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−| | |4 はじめの読み |4 本時学習段落を音読する。 |○評価 | | | | | | | | | | | | |5 心情把握 |5 少女の心情を読み取る。 | | | | | 学習段落において,「少女」の心情が現れ| | | | | ているところにサイドラインを引く。 |したしみ|けいえん | | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+|−−−−+−−−− | | 展 | | |指摘箇所 || | ・A | | | | |A 今度は,面と向かって歩いてきただけ|| | | | | | | にさけようもなくて,少女はしかたなく|| | ・B | | | | | そのまま近づいていった。 || | | | | | |B 「白さぎ,みてたの?」 || |C | | | | |C 少女は安心し,このまま−−−− || | | | | | |D 「帰るの?」 || |D | | | | |E 「また!」 || | | | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| ・E | | | 開 | | | | | | | サイドラインを引いた箇所を発表する。 |○一つずつ確認 | | | | | | | | | 指摘箇所を視写する。 | | | | | | | | | | 指摘箇所の心情を捉える。 | | | | | ・ 意見発表 | | | | | ・ 音 読 | | | | | ・ 書き込み | | |(35)| | | | | | | 心情の変化の理由を考える。 |○深入りせず主題把握| | | | | の導入程度に扱う | | | | | | | |6 まとめの読み |6 本時学習段落を音読する。 |○「はじめの読み」と| | | | 読みで工夫する箇所の確認。 | の比較をする。 | | | | 本時学習を生かして音読する。 | | |−−|−−−−−−−−−−|−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−| | 終 |7 学習内容の確認 |8 本時の学習で学んだことを発表する。 | | | | | | | | 末 |8 次時予告 |9 次の時間の学習内容を確認する。 |○最終文の意義づけ | |(5)| | |○主題文表現 | +−−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+