印刷用紙:B4縦 1ページの行数:55 1行の文字数(半角で):100 第 6 学 年 国 語 科 学 習 指 導 案   盛岡市立城北小学校   教諭  吉 田 信 也 1 単元名 「情景を想像して」      教材名 「やまなし」 2 教材について    この物語は、幼いかにの兄弟の目を通して「五月」と「十二月」の世界を描いたもので、子がにの反応が   幼く純粋であるだけに、二つの世界のもつ本質的なものが効果的にイメージ化されやすい。芳酵なやまなし   に象徴される恵の世界、みんなが幸せに平和に暮らせる世界が主題となっている。    第1話と第2話の両話において、かにの親子が住んでいる小さな谷川の底に、天井から侵入してきたもの   が語られている。第1話がかわせみ、第2話がやまなしである。そのかわせみとやまなしがそれぞれの小話   の内容を代表しており、しかも対立的に設定されている。すなわち、かわせみは自分が生きるために魚を襲   い、その結果、谷川の住人を恐怖に陥れる。逆に、やまなしは自分の生命を失うことによって、谷川に平和   と豊かさをもたらす。作品のはじめに、現実から非現実の世界への通路になっている「小さな谷川の底を写   した、二枚の青いげん灯です。」から自分なりの谷川のイメージをしっかり作らせ、想像を広げさせながら、   非現実の世界へと読み進めさせたい。児童は、「クラムボン」「イサド」等の造語、「かぷかぷ」「トブン」   「ぼかぼか」などの擬態語、そして、比喩表現から賢治の描きだしている二枚のげん灯場面のかかわり合う   世界を興味を持って読み取り味わっていくことができるのではないかと思われる。    第6学年の理解領域の目標は「目的に応じて効果的に話を聞いたり、目的や文章の種類などに応じて正確   な読み方で文章を読んだりすることができるようにするとともに適切な読み物を選んで読む習慣をつける。」   ことである。児童は6年生になって「赤い実はじけた」の学習で主人公の気持ちが中心人物の会話や行動や   様子からとらえられるばかりでなく、対象人物のそれからもとらえられることを学習してきた。また、「石   うすの歌」では、語り手の目を通して状況を読み取るという観点から主人公の気持ちを読み取る学習を進め   てきた。その結果、自分なりの観点から一人読みをしていくことには大分意欲的になってきてはいるもの、   まだ全員できるところまでは至っていない。また、その一人読みを出し合い比べ合いながら友達の読み取り   のよさを取り入れたり、自分の読み取りのよさに気づいていける子は少ない。しかも、その読み取りの内容   が言葉にこだわったものではなく、感覚的な読みに止まっており明確な根拠を持っていないことが多い。    そこで指導に当たっては、一人読みが成立するための個別指導を徹底するとともに、それを使っての比べ   合いを意欲付けながら友達の読み取りのよさを取り入れた学習のまとめをさせていきたい。そのためには、   青いフィルターという救いの色を通して物語を見ている視点を明確に意識させながら情景を客観的に読み取   らせ、個々の読みを大切にした話し合いを組織していくことで、賢治の独特の世界を理解させていきたい。 3 指導目標 (1) 造語、色彩語、擬態語、比喩表現などを効果的に使った優れた表現を読み味わい、イメージを豊かに広げ   ることができる (2) 聞き手にも場面の情景がよく伝わるように、抑揚、強弱、間などに注意して朗読することができる (3) 二つの場面を対比させ、その関連を考えることを通して主題に迫ることができる 4 指導計画(8時限)                                         第1次 全文を通読し感想を書き学習計画を立てる−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−2時限   ・ 新出漢字、読み替え漢字、難語句を調べ全文を読み通し感想を200字程度にま    とめる                                      (1)   ・ 感想をもとに話し合い学習計画を立てる。                     (1)  第2次 かにの行動や会話、美しい表現に着目しながら水底の情景の変化を読み取る−−−−−−−−4時限   ・ 「五月」の情景を読み取る (2)   ・ 「十二月」の情景を読み取る                           (2)本時 2/2  第3次 「五月」と「十二月」の情景を対比しながら作品の主題に迫る−−−−−−−−−−−−−−2時限   ・ 「やまなし」という題と結びつけ「五月」から「十二月」へと展開させた作者の 意図を考える (1)   ・ 「五月」と「十二月」について場面や情景を想像しながら朗読する          (1) 5 本時の指導 (1) ねらい カニの親子の会話や水底の情景描写、やまなしから、「十二月」の救いの世界を読み取り、まと       めることができる (2) 展 開 +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+ |段| | |時| | | |  学習活動・・・・・・・・・・  |   教師の働きかけ・・・・・・・・ | | 指導上の留意点・・・・・・ | |階|      |   |間| | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+ | |1 学習課題を把握する  |・ 前時の学習のまとめを発表さ|3|・ 季節が移り変わりかにの子| | | ・ かにの兄弟が泡のはき| せ、かにの親子が青い世界に存| | 供らが成長したこと、青い月| | |  比べをしている月の明る| 在していることを確認させる | | 光に包まれた冬の水底である| | |  い情景を想起し、そこへ|               | | こと、そのような情景の中で| | |  飛び込んできた象徴的な|               | | 家族のやり取りが行われてい| | |  やまなしをとらえる  |               | | る安心感をまとめている子を| |導|    | | | 発表させる        | | | +−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−+    | | | | やまなしが落ちてきた十二月は、どんな世界になっていっ|     | | | |たのだろうか。                    |     | | |        +−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−+      | |入|2 読み取りの観点を設定す|               |2|              | | | る           |               | |              | | | ・ 人物(かにの親子)、|・ 本時では、人物、状況から読| |・ 2つの観点のうちどれで読| | |  状況(やまなし、谷川の| み取っていけることを確認す | | んでもいいことにするが、1| | |  情景)の2つの観点で読| る             | | つに限定しないで時間があれ| | |  む          |☆ 時間内に2つ目の観点にも着| | ばさらに他の観点でも取り組| | |             | 手できるように励ます    | | ませるようにさせる    | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+ | |3 本時の学習場面の音読を|・ 指名読みをさせ、他の子には|5|・ サイドラインは基本的に全| | | する          | 自分の観点にあてはまる部分に| | 部引けなくても構わない。た| | |             | サイドラインを引かせながら読| | だ、次の一人読みの段階では| | |             | ませる           | | 個人の作業として必ず引くこ| |展|             |☆ 指名読みした子への、読み方| | とを指示する       | | |             | についての賞賛を与える   | |              | | |             |☆ サイドラインを引けた子への| |              | | |             | 賞賛と、さらに箇所をふやせる| |              | | |             | ように励ましを与える    | |              | | |4 一人読みをする    |               |10|              | | | ・ 学習課題について、自|・ 自分が選んだ観点で書き込み| |・ 制限時間を意識させ、その| | |  力で読み取る     | をすることを指示する    | | なかで作業が終われるように| | |             |               | | 机間巡視をしながらペースを| | |             |               | | 作っていく        | |開|             |・ 状況の観点では、かにの親子| |・「トブン」「ぼかぼか」「月| | |             | が平和で穏やかな世界に存在し| | 光のにじがもかもか」「青い| | |             | ていることを読み取らせる  | | ほのお」「金剛石の粉」など| | |             |               | | の言葉を手がかりにさせる | | |             |・ 人物の観点では、幸福な時の| |・「おどるように」「いいにお| +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+ +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+ |段| | |時| | | |  学習活動・・・・・・・・・・ |   教師の働きかけ・・・・・・・・ | | 指導上の留意点・・・・・・ | |階|      |   |間| | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+ | |             | 流れる世界として読み取らせ | | い」「待つ」「お酒」などの| | |             | る             | | 言葉を手がかりにさせる  | | |             |☆ 書き込みへの努力を認め、発| |              | | |             | 表へ結びつけるように励ます | |              | | |5 学び合う       |               |15|              | |展| ・ 一人一人の読み取りを|・ 視写部分に根拠を求めなが | |・ 自分と同じ読み取りには赤| | |  出し合い、友だちの読み| ら、それぞれの観点から読み取| | ペンで線を引かせながら、ま| | |  取りのよさに気づく  | ったことを発表させる。   | | た、違う読み取りで取り入れ| | | ・ やまなしが落ちてきた|・「トブン」という音から、かわ| | たいことは赤ペンで挿入させ| | |  時の情景を読み取る  | せみの時とは違う静寂な感じを| | たりして、友達の発表を自分| | |             | 読み取らせる        | | の書き込みと比べさせる  | | | ・ やまなしが流れ、木に|・「ぼかぼか」というゆっくり浮| |              | | |  引っかかるまでの情景を| いたり沈んだりしている様子か| |・ 児童は他にも多くの言葉か| | |  読み取る       | ら、安心感を読み取らせる。ま| | ら読み取ると思われるが、そ| | |             | た、「青いほのお」に象徴され| | れも取り上げふくらませなが| | |             | る平和な世界を読み取らせる | | ら、最低これらの言葉は手が| | | ・ やまなしを追いかける|・「おどるように」という様子か| | かりとして落とさないように| | |  かにの親子の気持ちを想| ら、楽しさを読み取ると共に、| | 話し合いを組織する    | | |  像する        | かにの親子の会話から、期待感| |              | | |             | を読み取らせる       | |              | | | ・ 共通部分を探しまとめ|☆ 発表できたことが話し合いに| |              | | |  への見通しを立てる  | 役立っているという喜びが得ら| |              | | |             | れるように評価する     | |              | | |6 自分の読み取りを深める|・ みんなの読み取りをもとにし|7|・ 話し合いの結果としての板| |開|             | て自分なりに課題の答をまとめ| | 書を手がかりにまとめさせる| | |             | ることができる       | |  弱肉強食の掟が支配する世| | |             |☆ 発表して確かめようとする態| | 界とは違って、月の光のさす| | |             | 度に賞賛を与え、友だちの発表| | 美しい、実りの豊かな、かぐ| | |             | のよさを取り入れるように配慮| | わしい世界になっていったこ| | |       | する            | | とを捉えさせる     | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+ | |7 まとめの音読をする  |・ 十二月の情景が現れるように|2|              | | |             | 音読させる         | |              | |終|             |☆ 読みの変わった部分について| |              | | |             | 賞賛を与え励ましていく   | |              | | |8 学習を振り返る    |・ 振り返りカードを使って、本|1|・ 前時との比較も加え、賞賛| | |             | 時の学習での自己のがんばりを| | を与える         | | |             | 評価させる         | |・ 授業後ノートにコメントす| |末|             |☆ 自分の努力したことを、肯定| | る            | | |             | 的にとらえている子の価値を認| |              | | |             | めてやる          | |              | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−+