印刷用紙:B4縦 1ページの行数:64 1行の文字数(半角で):122 第5学年  国語科学習指導案 日 時 平成6年9月14日(水) 1校時 児 童 5年3組 38名(男子20名、女子18名) 指導者 皆 川 晃 宏 1.単元名 自然のすばらしさを 教材名 麦畑 (光村 5年上) 2.教材について ア.5年生の理解に関する目標は、「話し手の意図をつかみながら聞いたり、主題や要旨を理解しながら文章   を読んだりすることができるようにするとともに、読書を通して考えを深めるようにする」ことである。本   単元では、「人物の気持ちや、それと響き合う情景の描写を読み味わい、作品の主題を考えることができる」 ことを主目標とする。 教材「麦畑」は、ハリネズミやノウサギ、カワネズミなど小さな動物たちの目を通して、自然のすばらし   さを描いた作品である。 あたたかい、かぐわしい夏の夕べ。ハリネズミは、楽しそうに鼻歌を口ずさみながら月夜の冒険にくり出   す。自動車やトラックが走ってくる広々とした道路を嫌い、でこぼこのせまい小道や、青草の中の細道をた   どってゆくのである。ハリネズミは、まわりのあらゆるものの気配を、一つ一つかぎわけながら、うきうき   と進んでゆく。途中、ノウサギのジャックじいさんに出会い、一緒に麦畑を目指すことになる。歩きながら   二匹は、月について話す。二匹にとって月は「空のランプ」「黄色いほっとする光」である。それに対して、   人間の作り出す光は、「目にこたえる」いやな光なのである。人間のすることは二匹にとって、「まったく   気が知れない」ことなのである。その後、カワネズミも加わり、三匹は小高いおかに行き着く。目の前には、   かがやく小麦畑が広がっている。麦畑がそよぐ音は、「美しい音楽のように」、「ささやいているように」、   「海のひびきのように」、「ひそひそとささやきかわすおしゃべりのように」ハリネズミたちには感じられ   る。そうして麦畑の音に耳をかたむけていると、麦のほの合唱が聞こえ出す。この合唱に聞き入り、ハリネ   ズミたちは、「麦って生きているんだね、ぼくたちみたいに。」と、生きていることを実感し、自然のすば   らしさに感動するのである。 子どもたちは、ハリネズミたち小動物の視点に立って情景を読み取っていくことにより、今まで感じられ   なかった自然のすばらしさに気づくであろう。また、小動物の立場から人間を見ることで、改めて自分自身   の生活を振り返り、考えさせられるであろう。  イ.この物語は、4つの場面から構成されている。(1)の場面は、月夜の冒険にくり出すハリネズミ、(2) の場面は、ジャックじいさんと出会うハリネズミ、(3)の場面は、カワネズミやノウサギの若者と出会う   ハリネズミ、(4)の場面は、麦畑の情景に感動するハリネズミたち、が描かれている。時間の経過に従っ   て展開していく文章である。 ジャックじいさんとハリネズミ、カワネズミとハリネズミそれぞれとの交流を通して、麦畑に対する期待   が高まっていく。2つとも、「・・景気はどう。」というハリネズミの言葉で始まり、最後には一緒に行く   ことになる。その中で、「・・あんなすてきなとこなんて、めったにありゃしないさ。」、「・・そりゃむ   ねがすうっとするものねえ。」と麦畑への期待が高まる。同じような会話の繰り返しによって、麦畑への期   待が高められていく構成になっているのである。 また、場面ごとに、情景が描かれている。「青白い銀のシーツ」、「空のランプ」、「美しい音楽」など、 比喩表現を多く用いて情景を描写しているので、これらに目を向けさせていき、情景をありありと思い浮か   べながら読み進めて行きたい。 ウ.教材構造図 別紙 3.児童について 5年生になって物語文の学習は3度目である。「子ねこをだいて」や「さよならの学校」では、会話文や人  物の様子、情景描写、他の人物の様子から、主人公の気持ちの変化を読み取る学習や主題について考える学習  をしてきた。叙述に即して気持ちを読み取っていくことを意識させてきたが、言葉や文に着目するようになっ  てきた。しかし、まだ表面的な読み取りが多く、児童によって差がある。 また、意識調査からは、ひとり読みの後の学び合いの場での発言に消極的な児童、所属感や貢献感を余り抱  いていない児童が多いことが明らかになった。 以上のような実態をふまえて、指導にあたっては、次のような点に留意したい。 (1) 人物の気持ちや描写を読み味わい、主題を考える学習を中心にしたい。主人公であるハリネズミの気     持ちは、ハリネズミの行動や言葉から読み取れる。それらの叙述をしっかりおさえながら読み進めさせ     たい。そして、(5)の場面のハリネズミの言葉、「・・・。麦って、のびて、実って、取り入れの時     を待つ。麦って、生きてるんだね、僕達みたいに。」に着目させ、主題に迫らせたい。         (2) 麦畑に向かう途中に描かれた美しい情景描写、広々と広がる麦畑の情景をイメージ豊かに読み取らせ たい。比喩を用いて情景を表現しているところが多いので、意識して読み取らせる。また、自然のもの     とは対照的なものとして、人間の作り出す明かりを、小動物の目から見た形で表現されている。小動物     の視点で読み取ることにより、自分の生活を見直させ、自然のすばらしさを感じ取らせたい。 (3) 各自が自分の考えを持ち、それを発表し合うことによって、高まっていく授業を展開していきたい。 自分の読みを持たせるためには、読みの視点を明確にすることが大切である。何を手がかりに読み進め ていけば良いのかを、みんなにはっきり分かるようにしたい。そして、それを発表し合うことによって より高まっていくのだということを実感させたい。そのために、学習の終末段階で、自分の学習に望む 姿勢などを評価する場を設定する。 4.単元の目標 《価値目標》 ◎麦畑をめざすハリネズミの気持ちやまわりの情景を読み取ることを通して、自然のすばらしさの中で、     生命の営みを実感するハリネズミ達の喜びを感じ取ることができる。 《技能目標》 ◎人物の気持ちや、それと響き合う情景の描写を読み味わい、作品の主題を考えることができる。   (理解 ウオカ) ○聞き手にも内容が分かるように朗読することができる。             (表現 ウ) ○比喩表現、語句の役割について理解し、言語感覚について関心を持つことができる。(言語 エ(エ)) 5.学習指導計画 (11時間) ○事前テスト−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−1 ○意識を持つ−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−1 ・全文を読み、初発の感想を書くことができる。 ○見通しをたてる−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−2 ・あらすじをつかみ、学習課題を立てることができる。 ○深め広げる−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−4 ・月夜の冒険にくり出すハリネズミのうきうきした気持ちと、まわりの情景を読み取ること ができる。 (1) ・ジャックじいさんとの会話から、麦畑をめざしているハリネズミの気持ちや、人間とハリ ネズミたちの考え方のちがいを読み取ることができる。 (1) ・カワネズミやノウサギの若者との交流を通して、麦畑への期待が高まっていくハリネズミ の気持ちを読み取ることができる。 (1) ・麦畑のすばらしい情景と、それに見入り、自然のすばらしさに感動しているハリネズミた ちの気持ちを読み取ることができる。 (1)(本時) ○まとめ確かめる−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−2 ・帰るときのハリネズミの気持ちから全体を振り返り、主題について話し合い、感想をまと めることができる。 ○練習と評価−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−1 ・新出漢字、比喩表現について、正しく書いたり使ったりすることができる。 6.本時の指導 ア.本時の到達目標 ◎ハリネズミたちが麦畑を見て感じたことを、次のレベルで読み取り、説明することができる。  ・麦のゆれるのをながめて麦のそよぐ音を聞くだけでいいんだ。麦のほのそよぐ音を聞いていると        心が落ちつくんだ。麦って、のびて、実って、取り入れの時を待つ。麦だって息をしているんだ。        ぼくたちと同じように生きているんだ。 [下位行動目標] 1.「・・・麦って、生きているんだね。ぼくたちみたいに。」から、麦が生きていることをを実感し、感     動している様子を次のレベルで読み取り説明することができる。 ・麦だって息をしているんだ。ぼくたちと同じように生きているんだ。 2.なぜ、「三びきはすわりこみ、息をのんで、さやさや絶え間ない麦のほの合唱に聞き入った」のか、次     のレベルで説明することができる。 ・麦の歌を聞き、自分達と同じで、麦も生きているんだということを感じ、すごく感動したから。 3.「麦のゆれるのをながめて、この音を聞く。それだけでいいんだよ。」から、ハリネズミの気持ちを次     のレベルで読み取り説明することができる。 ・麦のゆれるのをながめて、そよぐ音を聞くだけで満足だ。あとは、何もいらない。 4.麦畑がそよぐ様子を表す言葉として、次の言葉を指摘することができる。 ・おびただしい麦のほの、さやさやという美しい音楽 ・それがまるで、ささやいているようなのです。 ・ほとほがこすれ合うその音は、さながら海のひびきでした。 ・いく千いく万の声の、ひそひそとささやきかわすおしゃべりでした。 5.麦畑を見、麦のそよぐ音を聞いたときのハリネズミ達の気持ちが表れている文として、次の文に傍線を     引くことができる。 ・「見えるぞ、息してるのが。・・・・・。」 ・「麦のゆれるのをながめて、この音を聞く。それだけでいいんだよ。」 ・「ほんとに、聞いているだけでほっとするねえ。」 ・「ね、そうだろ。そう言っているんだよ。・・・・。麦って、生きているんだね、ぼくたちみたいに。」 ・三びきは座り込み、息をのんで、・・・・聞き入りました。 6.麦の歌を、リズミカルに朗読することができる。 7.次の言葉の意味を、次のレベルで説明することができる。 「口ごもる」→なんてこたえてよいか分からず、はっきり言うことができない。 「息をのむ」→麦のほの合唱を聞き、声を出せないほど感動している。 8.前時学習してきたことを次のレベルで説明することができる。 ・ハリネズミたちは、麦ののびるところを見たくて一緒に麦畑をめざしている。 9.本時学習課題「ハリネズミたちは、麦畑から何を感じたのか。」を指摘できる。 A.本時学習場面を音読することができる。 イ.展開 下位行動目標 +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |  学 習 活 動  (○主発問) | 指 導 事 項 (・反応) | | 指 導 上 の 留 意 点 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |意|1.前時を想起する。 |○前時の学習を想起させること。 |8.|・麦畑への期待が高まっていることを| | | ○なぜ、ハリネズミ達は、麦畑に向か|・麦ののびるところを見たいと思って。| | 思いださせ、本時につなげたい。 | |識|  っていたのか。  |・少しは、いいものを見たいと思って。| | | | | | | | | |を|2.本時の学習課題を確かめる。 | | | | | | ○今日の学習課題は何でしたか。 | | | | |持| +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−+ | | | | | |麦畑から、ハリネズミ達は何を感じたのか。| |9.| | |つ| +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−+ | | | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |見|3.読みの視点を明確にする。 |○課題に迫るための読みの視点を明確に| |・麦畑の様子を読み取ってから、ハリ| |通| ○何に気をつけて読んでいけばよいの| させること。 | | ネズミ達が感じたことを読み取るこ| |し|  か。 | ・麦畑の様子 | | を確認する。 | | | | ・ハリネズミ達が感じたこと  | | | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |4.本時の学習場面を読む。 | | | | | | ○麦畑の様子が書かれた所に線を引き|○視点に気をつけて読ませること。 |A.|・指名読 5名 | |深|  ながら読みましょう。 | | | | | | | | | | | |5.麦畑の情景を読み取る。 |○麦畑の情景を読み取らせること。 |4.|・「目で見たこと」、「耳で聞いたこ| | | ○麦畑はどんな様子でしたか。 | | | と」に着目して読み取らせたい。特| | | |・かがやく小麦畑 | | に、そよぐ音をいろいろな比喩表現| | |   |・‥かすかにそよいで | | を用いて表されていることに気づか| | |   |・さやさやという美しい音楽 | | せ、そよぐ音のイメージをふくらま| |め| |・まるでささやいているよう  | | せたい。 | | | |・‥さながら海のひびき | | | | | |・いく千いく万のひそひそとささやき交| | | | | | わすおしゃべり | | | | | | | | | | |6.ハリネズミ達が感じたことについて|○ハリネズミ達が感じたことについて読| |+−−−−−−−−−−−−−−−+| | |  ひとり読みをし、話し合う。 | み取らせること。       | ||意識調査17「ひとり読み後の発表|| |広| ○麦畑から、ハリネズミ達が感じたこ|・「見えるぞ、息してるのが。・・。」|5.||」に、苦手意識・抵抗を持ってい|| | |  とについて、ひとり読みをしましょ|・「麦のゆれるのをながめて、・・。」| ||る児童を励ましたり誉めたりして|| | |  う。 |・「ほんとに、・・ほっとするねえ。」| ||ひとり読みへの自信をもたせたい|| | |  |・「ね、そうだろ。そう言ってるんだ | |+−−−−−−−−−−−−−−−+| | | | よ・・。」 | | | | | ○ハリネズミ達は、どんなことを感じ|・麦のゆれるのをながめて、そよぐ音を|7.|・「さやさや絶え間ない麦のほの合唱| | |  ましたか。 | 聞いているだけでいい。それだけで、|2.| 」の様子を朗読によって捉えさせた| |げ|  | 心が落ちつく。 |3.| い。 | | | |・麦は、自分達と同じように生きている|6.|・「すわりこみ、息をのんで、・・・| | | | んだ。 | | 聞き入りました。」に着目させ、ハ| | | | | | リネズミ達が、麦も自分達と同じで| | | ○麦畑から、ハリネズミ達が感じたこ|・麦のゆれるのをながめて、そよぐ音を|1.| 生きていること感じ、感動している| | | とを、ふき出しに書いてみよう。 | 聞いているだけでいいんだ。それだけ| | ことを読み取らせたい。 | |る| | で心が落ちつく。麦だって、ぼく達と| | | | | | 同じように、息をしているんだ。生き| | | | | | ているんだ。 | | | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |ま|7.本時の学習をまとめる。 |○情景を思い浮かべながら、音読させる| ||意識調査10「貢献感」を持たせる|| |と| ○麦畑の様子と、それを見ているハリ| こと。 | ||ため、他の人の発表など、今日の|| |め|  ネズミ達を思い浮かべながら読みま| | ||授業について感想を書かせる。 || |る|  しょう。 |○本時を振り返り感想を書かせること。| |+−−−−−−−−−−−−−−−+| +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |適|8.次時の学習内容を確かめる。 |・帰る時のハリネズミ達の気持ちを考え| | | |用| | 全体を振り返る。 | | | | | | | | | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ ウ.評価 ○ハリネズミが、麦畑から感じたことを読み取ることができたか。