印刷用紙:B4縦 1ページの行数: 1行の文字数(半角で):54   −−以下 指導案本文−−   第五学年 国語科学習指導案 日 時  平成八年十月二日(水) 2校時 対 象  五年一組 男十八名 女十五名 計三十三名 指導者  米 澤 功 司 、単元名  人物の結び付きを    教材名   「大造じいさんとガン」 、単元について ()教材について 第5学年の理解領域における目標は「話し手の意図をつかみながら聞いたり、主題や要旨を理解しながら文章を読んだり することができるようにするとともに、読書を通して考えを深めるようにする。」である。本単元では、「場面が移り変 わるとともに、人物の結び付きや気持ちが変化する様子を読み取り、読み取った情景や気持ちが聞き手によく分かるよう に音量や速さを工夫して朗読することができる。」ことを主目標としている。 これまでに子どもたちは、「ヤドカリ探検隊」でノート作りや読み取ったことを全体で深める学習を、「麦畑」では人物 の気持ちを考えながら情景描写を読み味わい、作品の主題に迫り感想を持つ学習をしてきた。また、「いたいいたい虫」 では主人公が先生との交流を通して本当の強さや本当の優しさに気づいたことを読み取り、自分を振り返る学習をしてき た。本単元では、これらの学習をさらに発展させ、情景の中に描かれた人物の気持ちやその変化を読み取り、主人公の人 間味あふれる姿、すばらしいものに感動する心をとらえさせていきたい。情景描写の中から豊かな心情表現を確実にたど ることは、後の教材「わらぐつの中の神様」での主人公の変容と主題の読み取りにつながっていく。 本教材は、物語の世界に自然に誘い込まれるような前書きから始まる。ガンの頭領である残雪と対立関係にある大蔵じい さんの心情が憎しみから感動へと変化していく様子を、起―大造じいさんと残雪の戦いに始まり、承―二度目の策略の失 敗、転―ハヤブサの出現、結―残雪を放つ大造じいさんの四場面による構成で劇的に生き生きと描かれている。捕まえる 方法が「うなぎつりばり」「タニシ」「おとり」と変わっていき、それにつれて苦しい状況に追い込まれていくじいさん の焦りや意欲を、情景の中から読み取ることができる。さらには、残雪を放すことから正々堂々と自然に立ち向かってい く人間の生き方について考えることもできる。本教材は、叙述に即して情景を読み取る力をつけたり、たとえ鳥ではあっ てもすばらしいと思ったことに感動する心を育てたりするのに適した教材であると考える。 ()子供の実態について 「一人学び」は、視写・書き込み・心情曲線などのほか、これらを生かした独自のノート作りを始めた子供も折り、確実 に書く力をつけてきている。また、主観や想像に頼りながら登場人物の気持ちなどを捕らえる傾向にあった子供もしだい に語句や文章に着目して考えることができるようになってきた。取り掛かりの遅い子がいるものの、一度作業に取り掛か ると、決められた時間内は集中してノートに向かうことができる。会話文から登場人物の気持ちを読み取るのが得意な子 、さらに情景からも気持ちを読み取れるようになってきた子、自由に想像をふくらませることが得意な子など、それぞれ 自分の得意とする活動が違うことが「一人学び」のノート作りから見て取れる。 「学びあい」は、叙述に即して根拠のしっかりした自分の考えを持てるようになってきたところである。また、自分の考 えを主張するだけでなく、友達の考えから学んでいこうとする姿勢も多くの子供に見られるようになってきた。自分の考 えを発表することに、やや抵抗を感じている子供も若干見られるが、班ごとの話し合いなどを通して自分の考えを纏めさ せてから全体の学び合いに入るなどの活動を取り入れたことで、少しずつではあるが積極的な発表が出きる力を身につけ はじめている。書くことを得意とする子供の中には、友達の考えをノートにメモしながら聞き、自分の考えを膨らませる ことに役立てようとする子供も出てきた。 ()指導にあたって 心情と情景が一体となって描かれ、余韻の残る最終場面を迎える本教材は、心情を読み取ること、情景から心情を読み取 ること、想像を膨らませることなど、それぞれが持っている得意な活動を、生かすことができる内容であるといえる。個 々が得意とする活動によって物語に触れ、話し合いで活躍していく中から、学習に対する意欲と教材に対する興味を深め させていきたい。そして、得意とする活動を一つでも増やし、それによって自分の考えを自由に表現できるようにするこ とを目指していきたい。 また、一の場面の「たかが鳥」など、課題作りの段階から場面ごとに大造じいさんの気持ちを考える上でキーワードとな るも野を考えさせるようにしていきたい。子供たち自身の手で課題を作っていく際、このキーワードが主題に近づいてい くための道標的役割を果たすようにしていきたい。そして課題解決に向かって「一人学び」や「学び合い」を進めていく 中では場面の中心点を押さえさせるために役立てていきたい。 三、単元の目標 関心意欲態度 一人学びにおいて自分なりの考えを持ち、学び合いで自分と友達の考えの類似点・相違点をはっきりさせて、さらに自分 の考えを深めようとする。 理解 残雪の知恵や頭領らしい勇気と責任感を感じさせる行動・態度に感動する大造じいさんの心の動きを通して、美しいもの 、すばらしいものに感動する心を読み取る事ができる。 表現 ・主題を考えながら感想をまとめ、整理して文章に書くことができる。 言語 慣用的表現、熟語、擬声語、擬態語、色彩語などの効果がわかる。 、学習指導計画 (十一時間扱い)   本時…九時間目 学習活動 教師の支援 次一第 、前書きから、大造じいさんの人物像と、物語の背景をおさえる。 、全文を通読し、初発の感想を書く。      、話のあらすじをとらえ、キーワードをつかむ。 、学習課題を作り、計画を立てる。語句のイメージすることを豊かに話し合わせ、物語の雰囲気に浸ることがで      きるようにさせる。情景と大造じいさんの言動に着目することを確認する。 読んだ感想を話し合わせ、違いや      疑問をもとに学習計画を立てられるようにする。 次二第 、残雪にしてやられた大造じいさんの気持ちを読み取る。     、またしても残雪にしてやられた大造じいさんの気持ちを読み取る。     、残雪との戦いが大造じいさんの思惑と異なり、意外な方向へ変わっていく様子を読み取る。     、残雪に対する気持ちが感動へと変わる大造じいさんの気持ちの変化を読み取る。     、飛び去っていく残雪の姿を見守る大造じいさんの心情を読み取る。     、主題について話し合い、読後の感想をまとめる。 「今年も」という表現に気づかせ、すでに数年来の戦いと      して話が始まっていることに気づくことができるようにする。 一の場面の「ううむ」と二の場面の「ううん」      を比較させて、大造じいさんの気持ちの変化を読み取ることができるようにする。 ガンを獲る方法が「うなぎ      つりばり」「タニシ」「おとり」と変化してきたことをとらえさせ、今回の策略にかける大造じいさんの意気      込みを読み取れるようにする。 一の場面では「たかが鳥」であった残雪を「ただの鳥」ではないと受け止めた      大造じいさんに触れ、気持ちの変化が読み取れるようにする。 物語が終わった後の大造じいさんと残雪の関係      を想像させ、読み取った大造じいさんの心情を更に深めることができるようにする。      個々の読みを大切にし、意欲を持って話し合いができるようにする。 次三第 、発展読書として、他の椋鳩十の作品を読む。      ・椋鳩十の作品を紹介し、読書の意欲付けをはかる。 五、本時の指導 ()ねらい 「たかが鳥」だった残雪を「えらぶつ」として認め、見守っている大造じいさんの思いを読み深めることができる。 ()展開 学習活動と内容 教師の支援(◇ 評価) つかむ 、前時の学習を想起する。     、本時の課題を確認する。   「たかが鳥」と「ただの鳥に対しているような気」がしないこととの比較を                     振り返らせ、大造じいさんの気持ちの変化を想起できるようにする。 みとおす 三、見通しを持つ本時の学習場面を音読する。          なぜ、大造じいさんはおりをいっぱいに開けて残雪を放してやったのか、考える。           ・会話文以外にも、行動や情景描写が、大造じいさんの思いと深く関わっていくことが分かるように            する。 かんがえる 四、一人学びをする。           会話文や情景描写を手がかりに、大造じいさんの思いを読み取る。本文に即した読み取りをし、自分           なりノート作りができているか。 本文の語句や文章をもとにして考えることを助言し、根拠のしっ           かりしたまとめができるようにする。     五、学び合う。           一人学びしたことをもとに考えを話し合う。 一直線 らんまんとさいたすももの花 清らかに、はら           はらと 晴れ晴れ いつまでも、いつまでも 英雄 えらぶつやってこいよ おれたち 堂々と 大造じい           さんと残雪は今までのように戦い続けるのかどうか考える。       一つの語句や文章からできるだけ多くの意見を引きだし、考えに広がりが持てるようにする。 おとり          に使ったガンは「鳥小屋」で、残雪は「おり」の中で飼ったことを比較させ残雪の野生の心を失わせ          まいとした大造じいさんの思いを読み取れるようにする。 「見送る」ではなく「見守る」と表現され          ていることに気づかせ、再び残雪がやってくることを強く願っている大造じいさんの思いを読み取れ          るようにする。          ◇自分の考えを発表するだけでなく、つけたしや質問など、友達の考えに関わらせた発表ができたか           。 まとめる 六、課題についてまとめる。          課題について自分の考えをまとめ、ノートに書く。 学習場面を音読する。          次時の学習について知る。          学習課題や板書を振り返り、大造じいさんの思いを書きまとめられるようにする。 学び合いをと押し          て自分の考えを膨らませ、まとめることができたか。