印刷用紙:B4縦 1ページの行数:55 1行の文字数(半角で):102   −−以下 指導案本文−−   第6学年 国語科学習指導案 日 時 平成八年十月二日(水)二校時 対 象 六年四組 男十七名 女十五名 計三十二名  指導者 吉田 悟 一、単元名   成長の姿を      教材名 「海の命」 二、単元について  (一)教材について  第六学年における理解の目標は、「目的に応じて効果的に話を聞いたり、目的や文章の種類などに応じて正確な 読み方で文章を読んだりすることができるようにするとともに、適切な読み物を選んで読む習慣をつける。」であ る。  六年生になり子供たちは、最初の教材「赤い実はじけた」で主人公の微妙な心の動きをとらえながら心の成長に ついて考える学習をした。次に「石うすの歌」で主人公の心情と石うすの歌の変化とを合わせて読み、逆境を乗り 越え人間としてひたむきに生きることの大切さについて考える学習をした。また二学期になってからは、「やまな し」で情景をイメージ豊かに想像しながら読み味わって朗読に生かす学習をした。本単元は小学校で学習する最後 の物語教材であり、これまでの学習の集大成として、文学作品の主題に迫る読みを自らの力で行い、自らの成長も 見つめながら深く広く読み味わわせることをねらっている。本教材は、六つの場面で構成されている。それぞれの 場面を貫いて描かれているものは、一人の少年太一の父親、祖父、またそのずっと先の祖先が生きた生命の母なる 海に寄せる熱い思いであり、父の死を乗り越え、父のような漁師をめざした太一の成長の姿である。また作品の底 には、「人間は自然とともに生きていかなければならない」という自然観と、「永遠性を象徴する自然界の命とし ての転生輪廻」の生命観が流れている。この壮大なテーマに、自分たちと同じ年頃の少年の成長の姿を通して、気 付かせ、考えさせることは、まさに小学校最後の物語文としての学習にふさわしいと考える。  (二)子供の実態について  これまで子供たちは、文章に即して人物の気持ちを読み取ったり、読み取ったことを生かしながら音読したりす る学習をしてきた。また、「一人学び」においては視写、書き込み、抜き書き、図式化等、今まで身につけてきた 方法をもとにそれぞれ創意工夫して自分なりのノート作りをすることに喜びを感じている子供が増えてきた。  「学び合い」では、自分の読みを持ちながら他人の意見と比べ合って読みを深めていこうとする活動を行ってき た。当初は三〜四人の少人数での話し合いはスムーズにできたものの、全体のなかでの話し合いになると一部の子 供だけの意見交流になる傾向が強かったが、最近は徐々にその輪が広がりつつあり、深まる場面も増えてきた。ま た、「学び合い」の最中でも友達の発表を聞きながら自分の考えを修正したり膨らませたりしてノート作りができ るようになってきた。さらには、意見交流から一歩進んで自分が検証した事実や考えを相手に納得してもらえるよ うな確かな論拠をもちながら、相違点を主張し合ったり納得のいくまで議論したりして、全員で高まったという実 感を味わうようになることが今後の課題である。  (三)指導にあたって  この教材は「海の命」という題名に象徴されている主題について考える学習、すなわち「海の命」とは一体何を 表しているのかを考えることを大きな学習の柱として読み深めさせたい。「海の命」については子供たちは多様な とらえ方をするものと思われるが、それらの感じ方、考え方の違いを大切にして「学び合い」で深め、広められる ような展開を図りたい。  学習を進めていくにあたって、第一次の段階で「作品全体を包む言葉」としての大きなテーマと文章中に出てく る「大切な文」、「光る言葉」をキーワードとして押さえ、見通すことによって、第二次、第三次で広い視野から 細部を見渡すことと、細部をつなげて一つの世界を作り上げていくという両方向の読みの活動を結びつけていける ようにしたい。教師の支援としては、子供一人一人の作り上げるノートによく目を通し、学習活動を承認(認め励 ますこと)し、子供の意欲を喚起し子供と教師の交流を図り、これを土台に活発な子供同士の交流へとつなげ、「 学び合い」の充実を図りたい。また、最終的に主題に迫るまでの過程を重視し、なぜそこに至るまでになったのか を子供自身が確固たる根拠をもって「学び合い」に臨めるよう発問やノートへのコメント等で支援したい。その際 、従来の赤ペンを子供のノートへ入れるという方式はあえてとらず、付箋紙へのコメントという形で支援していき たい。そして単元の最後には、子供たちが自分だけの思いがたくさんつまったノートとしてまとめさせたい。 三、単元の目標 ○関心・意欲・態度 主人公の心情の変化や成長していく様子を通して、大自然の中で生きる命の永遠性に気付き、主題に迫ろうとする 。 ○表  現 ・聞き手にもよくわかるように朗読するとともに、主題や意図をはっきりさせながら表現することができる  ○理  解 文章の叙述に即して、細かい点にまで注意しながらキーワードを探り、作品の主題を追究し、自分自身の生き方に ついて考えを深めたりすることができる。 ○言語事項 優れた表現や叙述に着目してそれが表している世界をとらえ、語感や言葉の使い方についての関心を広めることが できる。 四、学習指導計画(  時間扱い)   本時・・・9時間目         学 習 活 動        教 師 の 支 援 次 一 第 1 全文を読み、一次感想を書く。 2 物語の展開を理解し、キーワードをつかむ。 3  学習課題を作る。 ・題名の「海の命」という言葉を単元を通して意識 していくことを押さえる。 ・作 品の根底に流れる大きなテーマを自分なりにと らえ、そのテーマに迫るための読み取りをしていく ということ を意識させる。またそれが、最終的に主 題を考える時の軸となることを知らせておく。 次 二 第 4 父親たちの住んでいた海に対する太一の強い憧  れや、村一番のもぐり 漁師であった父に対する太  一の尊敬の気持ちを読み取る。 5 与吉じいさに弟子入りした太一の気持ちや 、太  一の成長をたくましく思っている与吉じいさの気  持ちを読み取る。 6 母の悲しみさえも背負お うとしていた太一の思  いを太一の夢とつなげながら読み取る。 7 追い求めていた夢が実現した時の太一 の感情の  動きを読み取る。 8 漁師としての太一の成長を読み取る。 ・「海のめぐみだからなあ 。」という父の言葉から 父の漁師としての生き方を考えることができるよう にする。 ・「与吉じいさも海 に帰っていったのだ。」という 表現の意味するところにも視点を向けるようにする ・父の海にやってきた太 一の心情を、美しい情景描 写へも目を向けながら読み取っていけるようにする ・対比的な表現を手がかりに して、見通しを持って 課題を追究できるようにする。 ・「殺さないですんだ。」の意味するところを考え させ、書く時間を十分に与える。 ・「千びきに一ぴきしかとらない。」という言葉の 意味を十分に考える時 間を与える。 次 三 第 9 全文を振り返り自分なりの根拠を明らかにしな  がら、海の命が象徴するものを考え、 主題へとつ  なげる。(本時)   主題とあわせながら二次感想をまとめる。 ・多様な読み取りが出て くることが予想されるが、 その一つ一つを認めながら、テーマとキーワードが 結びつくように考えを深めてい けるようにする。 ・一次感想と比べることにより、自分の読みの深ま りを確かめることができるようにする 。 五、本時の指導  (一)ねらい  全文を振り返り自分なりの根拠を明らかにしながら、海の命が象徴するものを考え、主題へとつなげることがで きる。  (二)展 開