印刷用紙:A4縦 1ページの行数:40 1行の文字数(半角で):96   −−以下 指導案本文−−                第2学年国語科指導案                                    平成8年9月9日(月)                                   男15名 女13名 計28名                                    指導者 佐 藤 政 幸 1,単元名 「名前を見てちょうだい」(あまん きみこ) 2,単元について (1)教材について     この教材は、母親からもらったぼうしをこのうえもなく大事に思うえっちゃんの純真な気持ち    と母子の強い絆を描いており、どこにでもいるような親しみのある主人公えっちゃんが不思議な    世界へと入り込んでしまうファンタジー作品である。     物語は、現実ー空想ー現実の場面で展開されており、風に吹き飛ばされた帽子をもとに6つの    場面で構成されている。     一の場面  お母さんに青い糸で刺繍された赤い帽子をもらい、うれしくてたまらないえっち           ゃんはさっそく外に出る。     二の場面  非情な風が吹いてきて、大切な帽子をさらわれ帽子を追って野原へいく。     三の場面  野原で赤い帽子をかぶったきつねに出会う。     四の場面  黄金色の畑で赤い帽子をかぶった牛に出会う。     五の場面  七色の林で赤い帽子をもった大男に出会う。     六の場面  帽子を取り戻し、遊びにいく。     「名前を見てちょうだい」と叫ぶえっちゃんの言葉には、母親への純真な親愛の情と、母と子    の絆から生まれた自信がうかがわれる。それは自分は正しいという信念となって、どんな相手に    も臆することなく主張し、行動する。そんな主人公えっちゃんのいささかおませだが明るくて、    まっすぐなものの見方をする女の子像が、いきいきと描かれている。登場人物は、児童をひきつ    ける魅力をもっているし、幻想的な話の筋の展開も児童をひきつけてはなさない作品である。ま    た、叙述や用語の程度もこの期の児童に適しており、好教材と言える。 (2)児童について     これまでに児童は、「あの子はだあれ」「いちごつみ」の学習を通して、人物の行動や様子を    考えて学習に取り組み、おもしろさを味わってきている。     また、一人学びの学習として、「あの子はだあれ」では、登場人物の様子や心情が表れている    言葉や文に線を引く活動をしてきた。「いちごつみ」では、さらに、登場人物の気持ちを想像さ    せ、役割読みにも取り組んできた。     本単元の学習の「つかむ」段階で事前テストを行った結果、児童の実態について次のことが分    かった。     [新出漢字の読み]       「風」「走る」「食べる」は、比較的読むことができる。生活に結びついているからであ       ろう。しかし、その他の漢字についてはあまり読めない     [語句の意味]       難語句については日常生活に関わりのある語句であり、よく使われているので意味も理解       されている。       擬態語も日常使われている語句については意味がよく理解され、正しく使われている。       「しぶしぶ」「きりりと」は、普段あまり使う機会がないので様子も想像できないでいる。     [読み取り]       サイドラインを引いた語句については断片的にとらえることができる。しかし、文章全体       に気をつけていく力が足りないため、細かく注意していくことができない。そのため、気持       ちを想像することに支障をきたしている。       吹き出しには、好んで取り組もうとする傾向がみられる。しかし、読み取りが浅く、想像       力に乏しい内容である。     [生活経験]       大切にしているものは既製のおもちゃ類が多く、家族の手が加えられたものを大切にして       いる児童はいない。     [1次感想]       (強く心に残ったこと)         5の場面を中心に大男に対するえっちゃんの行動に焦点をあてて書いているものが多         く、中には、えっちゃんのとった行動に感心している児童も見られる。       (不思議に思ったこと)         帽子の名前が次々に代わっていくこと、えっちゃんが大きくなっていったこと、大男         がしぼんでいったことに関することが多かった。       (好きな言葉や文)         繰り返し出てくる「名前を見てちょうだい。」や「へんねえ。」などの会話文や情景         を表す言葉をあげて児童が多い。       (みんなと考えたいこと)         「えっちゃんの気持ち」に焦点をあてようとしている児童が見られる。ただ、どんな         時の気持ちなのかまではとらえきっていない。     児童は、読むことの経験も豊かになってきつつあり、絵本・童話・物語といろいろな本にも親    しむようになってきている。このような時期をとらえ、童話や物語を場面の展開や筋を追って読    むことから、人物の性格や気持ちを考え、面白かったところを抜き出すことができる読みへと発    展させたいところである。しかし、読みの個人差もあり、表面的な読み取りや根拠のない想像を    することもある。文の中における主語・述語の関係及び修飾・被修飾との関係に注意しながら、    叙述に即した読み取りの技能を育てていきたいと考える。 (3)指導について     単元全体を「つかむ」「ふかめる」「ひろめる」の段階に分けて学習を展開する。     「つかむ」段階では、「心に強く残ったこと」「不思議に思ったこと」「好きな言葉や文」    「みんなと考えたいこと」の観点から、初発の感想を書かせたい。次に、あらすじを十分に把握    させ、場面分けをさせたい。そして、初発の感想をもとに場面ごとの学習課題を作らせたい。そ    の際、えっちゃんの様子がわかる言葉を手がかりにさせたい。     「ふかめる」段階では、課題解決の手がかりとなる部分を視写させたい。一人学びでは中心語    句・重要語句に着目させたい。その際、登場人物の言動や心情をとらえさせ、想像豊かに読みと    らせたい。また、主人公の気持ちをとらえるために吹き出しや音読にも取り組ませ、読み取りを    深めていきたい。     「ひろめる」の段階では、物語全体を通してえっちゃんの人柄をつかませたい。そして、まと    めの感想につなげたい。また、語句練習や発展読書を行うことにより、児童の積極的な読みへ発    展するように指導していきたい。 3,単元の目標(観点別目標一覧表は別添)    話の順序に気をつけ、場面の様子や人物の気持ちを想像しながら読んでお話を楽しむ。 4,教材分析表(別添) 5,指導計画                                   (13時間) (1)第1次  ・全文を通読し、初発の感想を持つ。…………………………………………(1)   (つかむ) ・あらすじをつかみ、場面分けをする。………………………………………(1)         ・場面ごとの学習課題を考える。………………………………………………(1) (2)第2次  ・ぼうしをもらったえっちゃんの気持ちと風に飛ばされたときの様子   (ふかめる) を読み取る。……………………………………………………………………(1)         ・野原でのえっちゃんときつねの様子や気持ちを読み取る。………………(1)         ・畑でのえっちゃんたちと牛の様子や気持ちを読み取る。…………………(1)本時         ・大男に出会ったえっちゃんたちの様子や気持ちを読み取る。……………(1)         ・大男に立ち向かうえっちゃんの様子や気持ちを読み取る。………………(1) (3)第3次  ・えっちゃんの人柄をまとめ、感想を書き、発表する。……………………(1)   (ひろめる)・短文作りを通して、語句の練習をする。……………………………………(1)         ・好きな場面を選んで音読や劇の練習をし、発表し合う。…………………(2)         ・発展読書をする。自己の学習を振り返る。…………………………………(1) 6,本時の指導 (1)目  標     えっちゃんたちと牛との出会いを地の文や会話文を手がかりに読み取り、「へんねえ。」と思    っているえっちゃんの気持ちを想像し書く。 (2)一人学びの構想   ア 一人学びの見通しの持たせ方      「つかむ」段階で場面のあらましを確認する。その際、前時学習を想起させながら、またし     てもぼうしを飛ばされてしまった場面であることを理解する。これにより、学習範囲の見通し     を持つことができるであろう。      次に、本時学習課題について予想をする。そして、予想を確かめるためにえっちゃんの気持     ちに視点を当て、読み深めていくことを確認する。その際、えっちゃんたちと牛との出会いを     地の文や会話文を手がかりにして読み進めていけばよいことに気づく。これにより、学習内容     の見通しを持つことができるであろう。      一人学びとして、次の2つの活動を行う。牛の様子が分かる語句にサイドラインを引くこと、     中心部分にサイドライン、全体確認後視写しそれを手がかりに読み進めていけばよいことに気     づく。特に牛の様子や会話文に着目すると、えっちゃんの気持ちを読み深めることができるこ     とに気づく。これにより、学習方法の見通しを持つことができるであろう。      学習課題を解決するために、牛の様子をとらえた上で中心部分を視写し、えっちゃんの気持     ちを読み取ることを示唆する。これにより、学習順序の見通しを持つことができるであろう。   イ 一人学びの場における支援の方法      はじめに、学習範囲を指名読み・各自黙読している間に牛の様子が分かる言葉ににサイドラ     インを引かせる。教師は、机間指導をしながら児童の活動の様子を確認する。サイドラインが      引けないでいる児童には、個別支援を行う。また、中心部分にサイドラインを引く活動も行う。     全体確認をし、中心文を視写する。その後、大事だと思われる語句に書き込みをする。そして、     それをもとに吹き出しや音読に取り組む。そこで本時では、A・B・Cの3つのタイプを次の     観点と基準で類別し、それぞれ支援を行う。      タイプ分けの観点:語句へ着目をしながら一人学びができるかどうか。(学習能力) +−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ | | A タ イ プ | B タ イ プ | C タ イ プ | +−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ |基| 中心文を探すことができ| 大事な語句を探すことが| 大事な語句を探し、書き| |準|る。 |できる。 |込みをすることができる。| +−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ |支| 牛がどんな様子でぼうし| 動作化を教師と一緒に行| 書き込みをもとに、それ| |援|を脱いだか分かる言葉を探|いながら、吹き出しのつも|を見ているえっちゃんの気| |の|すために微音読をさせ、 |りで書き込みをさせ、牛の|持ちを想像させながら、音| |内|「しぶしぶ」をとらえる。|様子をとらえる。その際、|読する。特に、「へんねえ| |容|なかなかとらえることがで|「しぶしぶ」を別の言葉に|。」と言っているのはなぜ| |と|きないのであれば、「ぼう|変えるとどんな言葉があて|かを考えさせた上で音読を| |方|しをぬいで」の前に注目さ|はまるのか、考えさせる。|させたい。 | |法|せる。 | | | +−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ (3)展 開 +−+−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+ | | | 学    習    活    動 |・留意点 | |段階 学 習 過 程| |○支援の方法 | | | +−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+ | | | | 主な教師の働きかけ | 期待する児童の反応 |◎評価の内容と方法 +−+−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+ | |1,前時の想起 (1) えっちゃんは、きつね|・まちがいなくわたしのぼうし|・本時の学習への| | | | にぼくのだよと言われて| なのに、どうしてきつねさん| 意欲づけをする。 |つ| | どう思ったでしょう。 | の名前が書いてあるのだろう| | | | | | と不思議に思った。 | | | |2,学習課題の (2) 今日の課題を読みまし|・一斉読み |・課題内容をしっ| | | 確認 | ょう。 | | かりつかませる。 | | | +−−−−−−−−+−−−−−−−−−+ | | | | | | 牛に「わたしの名前だよ。」と言われ| | | |か| | |たえっちゃんの気もちをかんがえよう。| | | | | | +−−−−−−−−+−−−−−−−−−+ | | | |3,課題解決の (3) 四の場面は、どんな場|・牛に出会った場面です。 |・課題解決のため| | | 見通し | 面ですか。 | | に何に気をつけ| | |(学習範囲)| 何に気をつけて読んで|・えっちゃん、きつね、牛の様| て読んだらいい| | |(学習内容)| いけばいいでしょう。 | 子や会話文に気をつけて読ん| かおさえさせる。 |む|(学習方法)| | でいきます。 | | | |(学習順序)| どんな一人学びをして|・様子がわかる部分を視写した|◎課題解決の内容| | | | いけばいいでしょう。 | り、大事な言葉を探したり、| 方法をつかむこ| |7| | | 書き込みをしたりします。 | とができたか。| | | | | | (観察)| +−+−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+ | |4,内容の読み (4) 4の場面を音読しまし|・指名読(2名) | | | | 取り | ょう。(P7L9〜P9L5) | | | | | (5) 畑の中の牛の様子が分|・赤いぼうしをちょこんと |・牛ののんびりし| | | | かる言葉にサイドライン|・青い空をまぶしそうに見上げ| た態度をとらえ| |ふ| | を引きましょう。 | て | させる。 | | | | (一人学び)|・すまして答えました。 | | | | (6) 「名前をみてちょうだ|・P8L8〜L11にサイドラインを引 ・どんな様子でぼ| | | | い」と言われて牛はどう| く。(視写) | うしをぬいだか、 | | | しましたか。 | | 話したかを「し| | | | (一人学び)| | ぶしぶ」からと| |か| | | | らえさせる。 | | | | | |○支援の方法と内| | | | | | 容 | | | | | |A:どんな様子でぼ| | | | | | うしをぬいだか| | | | | | 分かる言葉を探| |め| | | | すために微音読| | | | | | をさせる。 | | | | | |B:動作化を教師と| | | | | | 一緒に行いなが| | | | | | ら、吹き出しの| | | | | | つもりで書かせ| |る| | | | る。 | | | | | |C:えっちゃんの気| | | | | | 持ちを想像しな| | | | | | がら、音読させ| | | | | | る。 | |ふ| | | |・牛の様子をしっ| | | | | | かりおさえさせ| | | | | | た上で、えっち| | | | | | ゃんの気持ちを| | | | | | 深めさせる。 | |か| | | |◎語句をとらえ、| | | | | | 一人学びに意欲| | | | | | 的に取り組むこ| | | | | | とができたか。| | | | | | (観察)| |め|5,学び合い (7) 書き込みしたことを発|・牛はのんびりしているけれど、 | | | | 表しましょう。 | えっちゃんに信じてもらえな| | | | | | いので、ちょっとおもしろく| | | | | | ない。 | | | | (8) 牛の様子を見たえっち|・赤い帽子は、やっぱりわたし|・えっちゃんの正| |る| | ゃんは、どんな気持ちに| のだよ。 | 正堂々とした態| | | | なったでしょう。 | | 度をつかませる。 | | | | |◎牛の様子をもと| | | | | | に、えっちゃん| | | | | | の気持ちを読み| |28| | | | 取ることができ| | | | | | たか。(発表)| +−+−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+ | |6,課題のまと (8) 「へんねえ。」と言っ| |◎不思議に思いな| | | め | たえっちゃんの気持ちを| | がらも母親から| |ひ| | 吹き出しに書いてみまし| | もらった帽子だ| | | | ょう。 | | と確信している| | | | +−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+ | | | | | | へんねえ。たしかにわたしの名前がしし| | えっちゃんの気| |ろ| | |ゅうしてあったのに、牛さんの名前がある| | 持ちを書くこと| | | | |なんてふしぎだわ。でも、やっぱりわたし| | ができたか。 | | | | |のぼうしよ。 | | (ノート・発表)| | | | +−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+ | | |め|7,まとめの読 (9) 学習した場面を読みま|・指名読(2名) | | | | み | しょう。 | | | | |8,自己評価 (10) 今日の学習の反省をし| | | |る| | ましょう。 | | | | |9,次時の予告 (11) 次の時間の課題は何で|・大男にぼうしを食べられたえ| | |10| | すか。 | っちゃんの気もちをかんがえ| | | | | | よう。 | | +−+−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+ (4)評  価     えっちゃんたちと牛の様子を読み取り、「へんねえ。」と思っているえっちゃんの気持ちを想    像して書くことができたか。