印刷用紙:A4縦 1ページの行数:40 1行の文字数(半角で):84   −−以下 指導案本文−−         第3学年国語科学習指導案                 日 時 平成8年9月11日(水) 公開授業1校時                 児 童 1組 男子17名 女子18名 計35名                 授業者 佐藤 弘子 1.単元名  場面の様子に気をつけて(教材名「ちいちゃんのかげおくり」) 2.単元について (1)教材について    第3学年の「理解」に関する目標は、「内容の要点を押さえながら話を聞いたり、   内容の要点を正しく理解しながら文章を読んだりすることができるようにするととも   に、いろいろな読み物を読もうとする態度を育てる」である。    本単元の主たる指導事項は、「文章の叙述に即して内容を正しく読み取ること」   「人物の性格や場面の情景を想像しながら読むこと」である。大事な語句や文に着目   しながら事柄の意味内容を読み取り、人物の性格や場面の情景を想像しながら内容を   読み深めていくことを主なねらいとしている。    本教材は、空襲によって一人取り残されたちいちゃんが、家族をしのびながらかげ   おくりをする哀しい姿を通して、温かな家族の絆の尊さを描いた物語である。この物   語は、@家族とかげおくりを楽しむちいちゃん Aお母さんとはぐれてしまうちいち   ゃん B防空壕でお母さんを待ち続けるちいちゃん C空に迎えられるちいちゃん   D平和になったちいちゃんの町 の五場面で構成されている。@からBの場面は、空   襲によって一人取り残されたちいちゃんが、母と兄の帰りをひたすら防空壕で待ち続   ける姿を通して、ちいちゃんの家族の絆の強さが描かれている。さらに、Cのかげお   くりの場面は@の場面と、Dの平和になったちいちゃんの町で遊ぶ子どもたちの様子   は、それまでのちいちゃんの様子と対比されて描かれており、家族が一緒に暮らすこ   とのできる幸せや家族の絆の尊さが感じ取れるような構成となっている。    主人公ちいちゃんの気持ちに十分共感させながら、ちいちゃんの言動や各場面の様   子を表す語句に着目し心情を読み取る学習を通して、家族の絆や平和の尊さという主   題について考えを深めていくことができる教材である。 (2)児童について    児童は、3年の国語学習の出発にあたって、「森に生きる」という教材では1年間   の学習のめあてを理解し、意欲的に学習に取り組むようになった。そして、写真と文   をもとにフクロウの親子の動きや表情を読み取り、心情豊かに想像する学習をした。   また、「エルマー、とらに会う」という読書教材では、登場人物の行動を通して、物   語の展開のおもしろさについて考えながら読む学習をした。さらに、「つり橋わたれ」   という物語教材では、主人公の気持ちの移り変わりを、場面の変化とともに想像豊か   に読み取る学習をした。    このような学習の中では、サイドライン・吹き出し・視写・書き込みなどの書く活   動を取り入れた一人読みを行ってきた。それによって児童は、まだ叙述に即して表現   の細部まで気付くことはできないものの、少しずつ言葉を大事にしながら考えようと   意識するようになってきた。そして、学習課題について自分なりの考えを持って授業   に臨むことができるようになってきた。    しかしながら、情景や言動から人物の気持ちの変化や場面の移り変わりを豊かに想   像しながら読み取る力は、まだ不十分である。したがって、自分の考えや感じたこと   を書く一人読みでは、表面的な内容に終わりがちである。さらに、学び合いの段階で   は、自分の考えを発表するのにまだ抵抗を感じる子もおり、お互いの考えを交流し合   いながら十分な読み深めができていない。相手を意識して根拠を明確にして話す力や   話の内容を正確に聞き取る力、友達の考えを自分の考えに取り入れ、学び合いを生か   してまとめる力も、これからの学習を通して、より一層鍛えていかなければならない。 (3)指導について    戦争をモチーフとした作品との出会いは、本単元が最初である。戦争の悲惨さを直   接に生々しく訴えた作品ではないが、「みんなでかげおくり」から「ちいちゃんのか   げおくり」になってしまう対照的な二つの場面は、淡々と描かれながらも家族への愛   情や思いが感じられ、それと同時に大切なものを奪い去ってしまう戦争の悲惨さを痛   感させる。ちいちゃんに自分を重ね合わせて読ませることによって、平和の大切さ、   家族の絆を心から感じ取らせていきたい。    また、この物語は、人物の行動が生き生きと描写されているのでその行動を支える   心情もとらえやすく、場面設定も明確であることから、場面の様子との関連のもとに   人物の心情を豊かに想像することができる。児童は、ともすれば叙述から離れて自分   勝手な想像で文章を読み取りがちであるが、一人読みの段階では、できるだけ叙述に   即して重要な語句や文にサイドラインを引かせたり、視写・書き込みをさせたりしな   がら、語句や文の持つ意味に気付かせていきたい。学び合いの段階では、一人一人の   考えを交流し合いながら、多様な考えのあることに気付き、叙述にそったより深まっ   た考えに高めていけるよう支援していきたい。    ただ、この作品は戦争を時代背景としており、今の児童には理解することが困難な   語句もあるので、事前に戦争当時のことを家の人に聞いたり調べたりという作業を取   り入れたり、授業の中で説明を加えたりしながら、児童の理解がより図られるよう支   援していきたい。    さらに、この作品には多様な表現が巧みに使われている。「ました」で淡々と重ね   ていく過去形の文末表現の中に時おり用いられる「〜しています」などの現在形の表   現は、読者を緊迫したその場に立たせ、読者の視点をちいちゃんの視点と重ね合わせ   る効果を生み出している。その他、体言止め、ダッシュなどの表現が生み出す効果に   ついても考えさせながら、そのような表現に親しませるとともに、自分の表現に生か   していけるようにしたい。    そして、ここでの学習を「感想を大切に モチモチの木」の学習へと発展させてい   きたい。 3.単元の目標 (1)関心・意欲・態度   ・各場面におけるちいちゃんの気持ちに関心を持ちながら読み、意欲的に主題につい    て考えようとすると共に、あまんきみこの他の作品を進んで読もうとする態度を育    てる。 (2)表現   ・ちいちゃんの運命について一人一人が自分の感想を持ち、表現することができるよ    うにする。 (3)理解   ・場面の移り変わりを押さえながら、会話文に気をつけて読み、情景や人物の気持ち    を豊かに想像することができるようにする。 (4)言語事項   ・同じ行動を表すにもいろいろな言い表し方があることを理解し、自分の表現に使う    ことができるようにする。 4.指導計画(13時間扱い)  第1次 全文を読んで感想をまとめるための読み………………………………2時間      ・全文を読んで感想をまとめる。               (1)      ・場面分けをし、学習計画を立てる。             (1)  第2次 課題を追及するための読み………………………………………………7時間      ・家族とかげおくりを楽しむちいちゃんの気持ちを読み取る。  (2)      ・お母さんとはぐれてしまうちいちゃんの気持ちを読み取る。  (1)      ・防空壕でお母さんを待ち続けるちいちゃんの気持ちを読み取る。(1)本時      ・死の間際で家族の幻影を見て、空に迎えられる                     ちいちゃんの気持ちを読み取る。(2)      ・平和になったちいちゃんの町の様子を読み取る。       (1)  第3次 まとめのための読み………………………………………………………2時間      ・学習を振り返り、感想をまとめる。             (1)      ・登場人物の気持ちや情景が表れるよう、音読の工夫をする。  (1)  第4次 練習と評価…………………………………………………………………1時間      ・作品の優れた表現、新出漢字等について学習する。      (1)  第5次 読書へ発展…………………………………………………………………1時間       ・他の作品を読み、感想を発表し合う。           (1) 5.本時の指導 (1)目 標   ・ちいちゃんの言動やまわりの様子に着目して、防空壕の中の情景を想像しながら、    母と兄の帰りをひたすら待ち続けるちいちゃんの気持ちを読み取ることができるよ    うにする。 (2)展 開 +−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |段階 学習活動  ○主発問 | 教師の支援 ☆評価 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |1.前時の学習を想起する。 |・空襲によって一人ぼっちになってしまった| | | | ちいちゃんの気持ちを想起する。 | | |2.学習課題を把握する。 | | | | +−−−−−−−−−−−−−−+ | |導| |ちいちゃんは、どんな気持ちで| | | | お母さんたちをまったのだろう。| | | | +−−−−−−−−−−−−−−+ | | |3.学習方法を確認する。 |・ちいちゃんの言動や様子、防空壕の様子を| |入| | 表す文や語句に着目して考えていくことを| | | | 確認する。 | | | |☆学習課題をとらえ、読みの見通しを持つこ| | | | とができたか。 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |4.本時の学習場面を音読する。 |・指名読(形式段落ごと7名) | | | (P13L3〜P15L8) |・学習内容が分かるように正しくはっきりと| | | | 音読させたい。 | | | |☆正しくはっきり音読できたか。 | | |5.防空壕の中でたった一人で初めて|・朝の町の様子ややけ落ちてなくなってしま| | | の夜を過ごすちいちゃんの気持ち| った家を見て茫然とするちいちゃんが、そ| | | を読み取る。 | れでも家族が帰って来ると信じていること| | |○防空壕の中でたった一人でねむる| に、「深くうなずきました」の語句に着目| | | ことにしたちいちゃんは、どんな| させながら、まず気付かせていきたい。そ| | | 気持ちだったのでしょう。 | して、「少し」「こわれかかった」「暗い」 |展| | などの語句に着目しながら不安で寂しい気| | | | 持ちを、「きっと」の語句に着目しながら| | | | お母さんたちの帰りを信じて待つちいちゃ| | | | んの気持ちを読み取らせていきたい。 | | | |☆防空壕の中でたった一人で初めての夜を過| | | | ごすちいちゃんの気持ちを読み取ることが| |開| | できたか。 | | |6.防空壕の中で次の日もたった一人|・「くもった朝が〜ねむりました。」までを| | | でお母さんたちを待ち続けるちい| 視写し、母と兄の帰りをひたすら一人で待| | | ちゃんの気持ちが分かるところを| つちいちゃんの気持ちを自分なりに読み取| | | 視写し、その気持ちを読み取る。| らせたい。 | | | 〈一人読み〉|☆正しく視写し、自分なりの考えを書き込む| | |○防空壕の中で次の日もお母さんた| ことができたか。 | | | ちを待ち続けるちいちゃんの気持| | | | ちを考えて書きましょう。 | | | | | | | |7.防空壕の中で次の日もたった一人|・時間の経過を読み取らせながら、「また」| | | でお母さんたちを待ち続けるちい| から不安や寂しさの深まり、「少し食べる」 | | ちゃんの気持ちを話し合う。 | と「少しかじる」との比較から、ちいちゃ| | | 〈学び合い〉| んの衰弱してきている様子にも目を向けさ| | |○自分の考えをもとにして、視写文| せ、ひたすらお母さんたちの帰りを待つち| | | からちいちゃんのどんな気持ちが| いちゃんの気持ち、家族の絆を読み取らせ| | | 分かるか、話し合っていきましょ| たい。さらに、「くもった朝」「暗い夜」| | | う。 | という言葉は、ちいちゃんのどんな気持ち| | | | を表しているのかについても目を向けてい| | | | けるよう支援していきたい。 | | | |☆自分の考えをもとに話し合うことができた| | | | か。 | | |8.ちいちゃんの気持ちをまとめる。|☆学習を振り返り、ちいちゃんの気持ちをま| | | | とめることができたか。 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |9.まとめの音読をする。 |・指名読(形式段落ごと7名) | |終| |・ちいちゃんの気持ちが表れるように音読さ| | | | せたい。 | | | |☆ちいちゃんの気持ちが表れるように音読で| |末| | きたか。 | | 10.次時の予告をする。 |・次時の学習内容を確かめる。 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+