印刷用紙:A4縦 1ページの行数:40 1行の文字数(半角で):90   −−以下 指導案本文−−              第 6 学 年 国 語 科 学 習 指 導 案                                6年1組男16名女12名計28名 指導者 齊藤 法 1 単元名 『豊かに想像して』  教材名『やまなし』 2 単元について  (1)教材について     第6学年の理解領域の目標は、『目的に応じて効果的に話を聞いたり、目的や文章の種類    などに応じて正確な読み方で文章を読んだりすることができるようにするとともに、適切な    読み物を選んで読む習慣をつける』である。     本単元の主たる指導事項は、『優れた描写や叙述を味わいながら読むこと』『話し手や書    き手のものの見方、考え方、感じ方などについて、自分の考えをはっきりさせながら理解す    ること』『表現の優れている文章を視写して、理解や鑑賞を深めたり、自分の表現にも役立    てたりすること』である。     この物語は、幼いかにの兄弟の目を通して『五月』と『十二月』の対照的な二つの世界を    描いたもので、芳醇なやまなしに象徴される恵みの世界、だれもが幸福に、平和に暮らせる    世界が主題となっている。     第一話と第二話の両話に於いて、かにの親子が住んでいる小さな谷川の底に天井から侵入    してきたものがそれぞれ語られている。第一話がかわせみ、第二話がやまなしである。その    かわせみとやまなしとがそれぞれの小話の内容を代表しており、しかも対立的に設定されて    いる。すなわち、かわせみは自分が生きるために魚を襲い、その結果、谷川の住人を恐怖に    陥れる。逆に、やまなしは自分の生命を失うことによって、谷川に平和と豊かさをもたらす。    作品冒頭の『小さな谷川の底を写した、二枚の青い幻灯です。』はこうした二つの象徴的世    界へ誘う現実世界からの通路となっており、『クラムボン』『イサド』等の造語、『かぷか    ぷ』『トブン』『ぼかぼか』等の擬態語、『日光の黄金』『ラムネのびんの月光』等の比喩    表現、さらには色彩語など、賢治独特の表現に着目させ、その言葉の響き・語感を大切にし    ながら自分なりの谷川の世界のイメージをしっかり持たせ、また想像を広げさせながら非現    実の世界へと読み進めさせたい。  (2)児童について     児童は六年生になって、『赤い実はじけた』では中心となる人物の会話・行動・様子から    主人公の心の動きを読み取りつつ、自分自身を見つめる事を、『石うすの歌』では語り手の    視点から状況をとらえ、石うすと登場人物との関わりを通して心情を読み取り、主題に迫る    事を学習してきた。     その結果、児童は登場人物に感情移入しながらその心情を読み取っていける場合には意欲    をもって読み進めるが、一人読みの段階で、明確な根拠を持てずに感覚的な読みに止まって    しまっている子がまだ少なからずおり、その後の学び合いの段階でそうした根拠の後ろ盾を    補っている姿が見られる。従って、語にこだわりながら分析的に読むという部分には若干の    弱さがある。     また、学び合いの際、互いに考えを戦わせながら読みを深めていこうとする意欲は高まっ    てきており、要所で教師側の若干の支援(論点・対立点の確認、類型化等)があれば、自分    たちで討論を形作る事ができるようになりつつあるが、その一方で自らの読み取りを最大公    約数的に他の子の考えに同化させたがる傾向が一部にまだ残っており、議論の広がりという    点では物足りなさが残る。     ただ、児童は、他者の優れた考え・取り組みを積極的に評価し、自らにも取り入れてゆこ    うとする姿勢・意識は比較的高く、今後の高まりには希望が持てる。  (3)指導について     これまで扱ってきた作品へのアプローチと同様のスタンスで臨もうとすると、『何を言お    うとしているのかよく分からない』といった類の児童の反応が返ってくることは想像に難く    ない。     そこで、情景を叙述に基づいてしっかりと把握させる事を留意したい。一つ一つの語句、    表現から根拠を持って、その上での各自の自由な想像を豊かに広げさせるようにしたいので    ある。     そのため、一人読みの際の個別指導を徹底し、物語を『二枚の青い幻灯』という客観的な    視点から見つめていることを明確に意識させながら、具体的なイメージを書き込ませるよう    にしたい。さらにそのことによって学び合いでの議論の広がりも期待したい。     また、語感や語句の持つ響きを体得させるため、音読も多く取り入れるようにしたい。 3 単元目標  (1)関心・意欲・態度     進んで学習課題の解決に取り組み、主題を読み取るとともに、物語文についての興味・関    心を持ち、意欲的に表現しようとすることができる。  (2)表現     情景描写の優れている所を自分の作文や音読表現に生かすことができるようにする。  (3)理解     二つの場面を対比させ、その関連を考える事を通して主題に迫ることができるようにする    とともに、物語のイメージを叙述に即しながら豊かに広げる事ができるようにする。  (4)言語事項     造語・擬態語・色彩語・比喩表現などに着目し、その役割や効果について理解することが    できるようにする。 4 指導計画(全9時間)   第一次 全文を通読し感想を書き学習計画を立てる。・・・・・・・・・・・・・・2時間       ・新出漢字、読み替え漢字、難語句を調べる。       ・全文を通読し、感想を書く。                  (1)       ・個人課題を作る。       ・個人課題をもとに学習課題を決め、学習計画を立てる。      (1)   第二次 かにの言動や優れた表現に着目しながら川底の情景を読み取る。・・・・・5時間       ・『五月』の情景を読み取る。                  (2)       ・『十二月』の情景を読み取る。                 (2)本時2/2       ・『五月』と『十二月』を対比して読む。             (1)   第三次 『五月』と『十二月』の情景を対比しながら作品の主題に迫る。・・・・・2時間       ・『やまなし』という題名と関連づけながら、『五月』と『十二月』を        対比し、作品の主題を考える。                 (1)       ・『五月』と『十二月』の情景を想像しながら朗読する。      (1) 5 本時の指導  (1)目標     かにの親子の会話ややまなし、川底の情景描写から『十二月』の世界を読み取る事ができ    るようにする。  (2)展開 ++−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ || 学 習 活 動 〇主発問 | 教 師 の 支 援 ☆評価 | ++−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |1前時の学習を想起する。 ・『十二月』の川底の静かで透明感のある情景| ||〇『十二月』の川底の様子はどのようなもの|と、そこでのかにの親子の安心感に満ちたや| 導| でしたか。 |りとりをおさえさせ、転(やまなしの侵入)| || |への備えとさせたい。 | |2本時の学習課題を確認する。 | | || +−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+ | || やまなしが落ちてきた事で十二月はどんな世界になっていったのだろう。| | || +−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+ | || ・関連する個人課題があれば、ここでふれてお| 入| |く。 | || ☆学習課題をとらえ、読みの見通しを持つ事が| || |できたか。 | ++−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |3本時の学習場面を音読する。 ・一文読み | ||(P14L1〜P16L9) ・読みの視点を | || | 人物(かにの親子) | || | 情景(やまなし、谷川の様子) | || |の二つに設定し、音読の際に自分の選択した| || |視点にかなう部分にサイドラインを引かせな| || |がら読ませる。なお、視点はどちらを選択し| || |てもよいが、出来れば二つ目の視点にも手を| || |着けられるよう励ます。 | 展| ☆正しくはっきりと音読できたか。 | || ☆自分の読みの視点に沿って、サイドラインを| || |引く事ができたか。 | |4やまなしが落ちてきた十二月の世界を読み取・音読の際サイドラインを全てに引けなかった| ||る。 |子も、一人読みの段階で必ず引いてから書き| ||〇自分の選んだ視点に基づいて、やまなしが|込みをさせ、根拠を持った読みをさせたい。| || 落ちてきてからの十二月の世界がどのよう・人物の視点に於いては、『首をすくめて』 | || になっていったのか、書き込んでみよう。|『おどるようにして』『いいにおい』『待つ| || 《一人読み》 |』などの言葉を手掛かりに、恐怖から期待感| || |幸福感への変容を読み取らせたい。 | || ・情景の視点に於いては、『トブン』『ぼかぼ| || |か』『青いほのお』『月光のにじがもかもか| || |』『金剛石の粉』などの言葉を手掛かりに、| || |穏やかで平和な世界である事を読み取らせた| || |い。 | || ☆やまなしが落ちてきた十二月がどんな世界で| 開| |あるか、自分の視点を持って読み、書き込む| || |事ができたか。 | |5やまなしが落ちてきた十二月の世界を学び合・二つの視点をさらに時間軸で | ||う。 | やまなしが落ちて来た時 | ||〇書き込んだ事をもとに、十二月がどのよう| 流れるやまなしを追いかけている時 | || な世界か話し合おう。 | やまなしが木に引っかかり止まってから | || 《学び合い》 |の三つに分けて学び合わせ、各々の時、それ| || |ぞれの視点からの読みが指し示すベクトルを| || |もって、十二月の世界が『恐怖』→『安心・| || |好奇心』→『期待感・幸福感・平和』と移り| || |変わっていく事を押さえていきたい。 | || ・学び合いの際に、自分と違う読みを取り入れ| || |る場合には赤ペンで補い書きをさせる事で、| || |自分の読みと他者の読みとを主体的にとらえ| || |させ、学び合いへの取り組みの広がりを促し| || |たい。 | || ☆自分の考えをもとに、他者の考えとの違いに| || |も気を付けながら話し合う事ができたか。 | |6十二月がどのような世界になっていったかを・学び合いの結果として、板書をもとにまとめ| ||まとめる。 |させたい。 | || ☆学習を振り返り、十二月の世界を多面的にと| || |らえ、ノートにまとめる事ができたか。 | ++−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |7まとめの音読をする。 ・指名読 | 終| ・十二月の情景が表れるように音読させたい。| || ☆十二月の情景が表れるように音読できたか。| 末8次時の予告をする。 ・次時で『五月』『十二月』を対比的に読む事| || |を確かめる。 | ++−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+