印刷用紙:A4縦 1ページの行数:40 1行の文字数(半角で):84   −−以下 指導案本文−−   第6学年 国語科学習指導案 平成8年9月11日(水) 公開授業2校時 3組 男子 16名女子 11名 計27名 指導者 佐 藤 嘉 宏 1 単元名 「豊かに想像して」 教材名 「やまなし」 2 単元について (1)教材について 第6学年の理解領域の目標は、「目的に応じて効果的に話を聞いたり、目的や文    章の種類などに応じて正確な読み方で文章を読んだりすることができるようにする とともに、適切な読み物を選んで読む習慣をつける」である。 本単元の主な指導事項は、「優れた描写や叙述を味わいながら読むこと」「話し   手や書き手のものの見方、考え方、感じ方などについて、自分の考えをはっきりさ せながら理解すること」「表現の優れている文章を視写して、理解や鑑賞を深めた り、自分の表現にも役立てたりすること」である。 この物語は、幼いかにの兄弟の目を通して「五月」と「十二月」の対照的な二つ   の世界を描いたもので、「自然の中では、様々な苦しみ、悲しみ、安らぎがあるが、    その中で、様々な生命は美しい光彩を放ちながら生きている」という主題になって いる。さらに賢治は、天命をまっとうした死が他の生命の中に生き続けるという、 理想的な死、幸福な死をも描いている。 第一話と第二話の両話において、かにの親子が住んでいる小さな谷川の底に天井   から進入してきたものがそれぞれ語られている。第一話がかわせみ、第二話がやま なしである。そのかわせみとやまなしとがそれぞれの小話の内容を代表しており、 しかも対立的に設定されている。すなわち、かわせみは自分が生きるために魚を襲 い、その結果、谷川の住人を恐怖に陥れる。逆にやまなしは自分の生命を失うこと によって、谷川に平和と豊かさをもたらす。作品冒頭の「小さな谷川の底を写した、 二枚の青い幻灯です。」はこうした二つの象徴的世界へ誘う現実世界からの通路と なっている。児童は対照的に描かれた二つの場面や、すぐれた叙述、描写の工夫に 触れることによって、それぞれのイメージを広げながら賢治の世界を味わうことが できるであろう。 (2)児童について 「赤い実はじけた」は6年生になって最初の物語文で、児童と同年代の登場人物    の行動や考え方、心の動きに共感を持って読み進めた。次の物語文「石うすの歌」 では、石うすと登場人物との関わりを通して、石うすの歌に込められたひき手の思 いや願いを読み取り、作品の主題に迫る学習を進めてきた。ともに、登場人物の心 情やその変化を叙述に即して読み取っていく学習であり、大部分の児童は、課題解 決につながる語句や文を見つけたり、自分の考えを書き込むことはできるようにな ってきている。しかし、書き込んだことをもとに自分の意見を発表したり、その根 拠となる部分をはっきり示す力についてはまだ十分ではないところもある。 「やまなし」のような作品を味わうには、色彩、音、香り、明暗等のイメージを   表す叙述や描写の巧みさ、作品の中でそのことばの果たす役割などをとらえる力が 要求されてくるが、児童は生活経験や読書の量、質などが異なるので、それぞれが 抱くイメージや感じ方を大事にしながら読み進めていきたい。 (3)指導について 指導にあたっては、書く活動を通した一人読みを取り入れながらすぐれた叙述や    描写の巧みさをとらえさせていきたい。また、「クラムボン」「イサド」等の造語、    「かぷかぷ」「トブン」「ぼかぼか」等の擬態語、「日光の黄金」「ラムネのびん の月光」等の比喩表現、さらには色彩語など賢治独特の表現に着目させ、その言葉 の響き・語感を大切にしながら自分なりの谷川のイメージをしっかり持たせ、発表 し合い友だちの考えを取り入れることで、さらに想像を広げさせながら読ませたい。 児童は、これまでの物語文の学習では、主に心情をとらえる読みが中心であり、   「やまなし」の学習のように情景をとらえることで作品を理解する読みはあまり経 験したことが無いため、情景を読み取るにはどのようなことばや表現に着目すれば よいのかを理解させながら学習を進めていきたい。 また、間違いを恐れたり恥ずかしさから挙手を避ける傾向が出てきているため、    書き込みの際に個別指導をして自信を持たせる、発表したことを認め励ます等の配 慮をしながら指導していきたい。 3 単元目標 (1)関心・意欲・態度 進んで学習課題の解決に取り組み、主題を読み取るとともに、物語文についての興   味・関心を持ち、意欲的に表現しようとすることができる。 (2)表現 情景描写の優れているところを自分の作文や音読表現に生かすことができるように   する。 (3)理解 二つの場面を対比させ、その関連を考えることを通して主題に迫ることができるよ   うにするとともに、物語のイメージを叙述に即しながら豊かに広げることができる。 (4)言語事項 造語・擬態語・色彩語・比喩表現などに着目し、その役割や効果について理解する   ことができるようにする 4 指導計画(全9時間) 第一次 全文を通読し感想を書き学習計画を立てる。・・・・・・・・・・・2時間 ・新出漢字、読み替え漢字、難語句を調べる。 ・全文を通読し、感想を書く。 (1) ・個人課題を作る。 ・個人課題をもとに学習課題を決め、学習計画を立てる。 (1) 第二次 かにの言動や優れた表現に着目しながら川底の情景を読み取る。・・5時間 ・「五月」の情景を読み取る。 (2) ・「十二月」の情景を読み取る。 (2)本時2/2 ・「五月」と「十二月」を対比して読む。 (1) 第三次 「五月」と「十二月」の情景を対比しながら作品の主題に迫る。・・2時間 ・「やまなし」という題名と関連付けながら、「五月」と 「十二月」を対比し、作品の主題を考える。 (1) ・「五月」と「十二月」の情景を想像しながら朗読する。 (1) 5 本時の展開 (1)本時の目標 冷たく暗く静かな季節である十二月の夜の谷川にも、あたたかさ、明るさがあるこ   とを読み取ることができるようにする。 (2)展 開 +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | 学 習 活 動 ○主発問 | 教 師 の 支 援 ☆評価 | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |1 前時の学習を想起する。 |・ 十二月の谷川の静かで美しい様| |導 |○十二月の谷川はどんな世界でしたか。| 子とかにの兄弟の無邪気な様子を| | | | 想起させる。 | | |2 学習課題を把握する。 | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | ||やまなしが落ちてきたあとの十二月||☆ 学習課題をとらえ、読みの見通| |入 ||の谷川はどんな世界だろう。 || しを持つことができたか。 | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−+| | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |3 本時の学習場面を音読する。 |・ 指名読み(3人) | |展 | (P14L1〜P16L9) |・ 擬態語、色彩語に注意させ、こ| | | | とばから受けるイメージを思い描| | | | かせながら読ませたい。 | | | | | | |4 十二月の谷川(後半)はどんな世界|・ 最初に描いたイメージを簡単に| | | かを読み取る。 | 発表させ、色々な受け取り方があ| | |○ 音読を聞いて抱いた十二月のイメー| ることを感じさせたい。 | |開 | ジを一言で言ってみよう。 |・ 色彩、音、情景を表すことばに| | | | 注目させながら、そこから受ける| | |○ やまなしが落ちてきたあとの十二月| イメージを、自分のことばで書か| | | の谷川はどんな世界なのか、色、音、| せていきたい。 | | | 様子を表すことばに注目しながら書い|・ 書き込めない児童には個別に助| | | てみよう。 【一人読み】|言することで、どの子も書き込むこ| | | |とができるようにする。 | |展 | |☆ 自分の考えが書けたか。 | | | | | | |5 やまなしが落ちてきたあとの十二月|・ 「ずうっとしずんで」「きらき| | | の谷川はどんな世界か話し合う。 | らっと黄金のぶちが光りました」| | | 【学び合い】| 「月明かりの水の中」「ぼかぼか| | | | 流れていく」「水はサラサラ鳴り」 | | |○ 自分が描いた十二月の谷川のイメー| 「いよいよ青いほのおを上げ」 | | | ジを、どの様なことばや表現からその| 「月光のにじがもかもか集まり」| | | 様に感じたのか明らかにしながら発表| 「金剛石の粉をはいているよう」| | | しよう。 | 等のことばから、深く薄暗いけれ| | | | ども、月光が差し込み揺れ動く、| | |○ 自分が受けたイメージと違いがあっ| 透明感に満ちた美しい水中の様子| | | たら発表しよう。 | を感じ取らせたい。また「首をす| | | | くめ」「あらん限りのばして」 | | |○ 十二月のイメージは一つでいいのだ| よくよく見てから」「かげ法師」| | | ろうか。 | 「おどるように」等から、かにの| | | | 動きもつかませる。また、やまな| | | | しとの関わりで変化していった心| | | | 理にも触れるようにする。 | | | |・ 自然界は静と動、明と暗、冷と| |開 | | 温が共存していることに気付かせ| | | | たい。 | | | |☆ 自分の考えを深めることができ| | | | たか。 | | | | | | |6 学習のまとめをする。 |☆ 友達の描いたイメージや考えも| | |○ やまなしが落ちてきたあとの十二月| 参考にして十二月の世界をまとめ| | | の世界をまとめよう。 | ることができたか。 | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |8 まとめの音読をする。 |・ 指名読み(3人) | |終 | |☆ 十二月の情景を思い描きながら| | | | 読んだり聞いたりできたか。 | | | | | | |9 次時の学習を知る。 |・ 「五月」と「十二月」の様子を| |末 | | 比べながら学習することを知らせ| | | | る。 | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+