印刷用紙:B4縦 1ページの行数:50 1行の文字数(半角で):98   −−以下 指導案本文−−   第六学年 国語科学習指導案                              児 童 男十五名 女十八名 計三十三名                            指導者  菅 原 る み 子 一、単元名  豊かに想像して    教材名 「やまなし」 二、単元について  「やまなし」は、五月と十二月の二話に別れている。春五月。まばゆい陽光の中で生命を謳歌し始める。し かし、その生命は外の生命を奪うことによって維持されていくという冷酷な事実をも含んでいる。弱肉強食は 自然界の厳しいおきてであり、さけて通ることのできない事実である。そしてそれは、いつ自分たちに襲いか かってくるか分からないという恐怖と悲しみとをかにの兄弟は考える。十二月。万物が枯渇し、死に絶えるか と思われる冷たく寂しい冬。しかし、その中で次の生命をはぐくみながら躍動のときを準備する。奪うことも 奪われることもない穏やかさ、温かさ、平和もある。そこに落ちてきた「やまなし」は、熟して落ち、自らの 存在を他の豊かさ、喜び、希望としている。不安、恐怖、争いをのりこえた、明るく喜びに満ちた幸福な世界 のすばらしさを「やまなし」の主題として押さえたい。 この作品は、作者の独特な表現、比喩表現などが駆使された象徴的、幻想的な作品である。六年生にとって は、それらを読みこなすことは、難しいと思われるが、作品の持つ柔軟な発想や豊かな想像力を養う表現が子 供たちの意欲をかきたてる魅力を持った作品になっている。  したがって、優れた表現を読み味わい、物語のイメージを豊かに広げながら読み深め、主題にせまることの できる作品である。 三、学習指導目標  (一)関心・意欲・態度    ・優れた表現を読み味わい、日本語の表現効果に関心を深める。  (二)表現    ・根拠をもとに、イメージ豊かに話し合い、自分の考えをさらに深めて発表することができる。    ・聞き手にも内容がよく味わえるように、抑揚や強弱を工夫して朗読することができる。  (三)理解    ・優れた表現を味わいながら、自分自身の考えをしっかりとまとめることができる。  (四)言語事項    ・色彩語や擬音語・擬態語などに着目し、その役割や効果について理解することができる。 四、音声言語指導  (一)児童の実態  物語の読み深めについては、「赤い実はじけた」で、文章の叙述の細かいところまで注意しながら気持ちや 情景を読み取ることの学習をしてきた。この学習を通して、一つ一つの言葉を大切にして読もうとする意識が でてきた。「石うすの歌」の学習では、一人学びの時に、根拠となる言葉や叙述をもとに千枝子の気持ちを自 分なりにノートにまとめることができるようになった子は三分の二ほどである。また、それをもとに自分の考 えをまとめて話し合うことのできる子は半分ほどである。この話し合いをする中で、自分と友達の考えを比べ ながら聞き、自分の考えをまとめたり友達と関連させて話し合ったりすることもできるようになってきている。  話し方では、話の内容が分かりやすいように、ほとんどの子が短文を意識している。しかし、学習中の話し 合いになると、その内容を考えることに意識がいくため、話す文が長くなり、話の意図が伝わりにくいことが ある。  また、そよかぜスピーチでは、スピーチの内容を聞き取り、それについての感想や意見を交流している。こ のとき自分の経験や家族から聞いた話、新聞やテレビで見たことなど具体的な場面を挙げて感想を述べるので 分かりやすく、子供たちは、興味を持って聞いている。また、スピーチをした人や感想を述べた人との感想の 交流もできるようになってきた。  (二)教材の特性  「やまなし」は、「小さな谷川の底を写した、二枚の青い幻灯です。」で始まり、それに照応して「私の幻 灯は、これでおしまいであります。」という結びで終わる額縁型の構成になっている。二枚の幻灯に映し出さ れたこの作品の世界は、徹底した対比構造によって構成されている。そのため、何と何を対比させるか、対比 させることによってどんなことがわかってくるかなど考えさせることができる教材である。  また、擬音語・擬態語については、宮沢賢治の造語とも思える独特の表現も使っている。これらの言葉の持 つ響き、リズム、イメージなどが鮮やかに浮かんでくる。比喩表現についても、情景や様子を生き生きと鮮や かに表現しているものが多く見られる。何度も読むことによってそれがたとえているものや事柄を明らかにし ていくことができる。色彩表現については、青を基調にして、不吉なことは「黒」や金属色が使われ、「明」 の場面では、「白」「光」など明るいイメージの言葉が使われている。この色についても「明」「暗」を対比 的に使っている。  これらの対比的な表現を根拠に一人学びをした後、話し合いをするのに適した教材である。  (三)音声言語活動    ア 聞く・話す活動  教材文を読み味わう中で、五月の「躍動」「明るさ」と十二月の「枯渇」「暗さ」を比べてみる、「かわせ み」の与える影響と「やまなし」の与える影響を比べてみる他にも、五月の中で「かわせみ」が現れる前と後 、十二月の中で「やまなし」が落ちてくる前と後を比べてみるなど、対比的な表現を根拠に一人学びさせ、一 人一人が自信を持って学び合いに参加できるようにさせたい。  学び合いでは、自分と違う考えの発表をよく聞き、自分の考えと比較する中で友達の考えのよさを学ばせた い。また、お互いの考えを交流させて話し合う中で、自分の考えを確かめたり、深めたりさせたい。    イ 聞く・話す活動と「楽しさ」との関わり ・自分の一人学びをもとに、相手に自分の考えが伝わるように話せた喜びを味わわせたい。          (自分を表す楽しさ) ・友達の考えを聞き、自分の考えと違う考えや新しい考えを知る楽しさを味わわせたい。         (新しいことを知る楽しさ) ・対比する表現をもとに、主題について学び合いをする中で、自分の考えをよりはっきりさせたり、  深めたり、考えが変わったりする楽しさを味わわせたい。                          (自分の考えを深めることができる楽しさ) 五、学習指導計画 (十一時間扱い) +−+−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+ 段階時間   学 習 活 動 | 指 導 内 容 | 評  価 | +−+−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+ |す| |○全文を読んで、疑問に思った|○二つのまとまりに気をつけながら音読し ○感想を持ち、読 | |お|2| ことや感動したことを感想に| 内容、表現、言葉など疑問を中心に感想| みの視点を押さ | |と| | まとめ、学習のめあてを持つ。 を書く。 | えることができ | |み| | |○学習課題を設定し学習計画を立てる。 | たか。 | +−+−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−+−−−−−−−−+ | |6|○場面ごとに詳しく読む。 |〇五月と十二月の情景をイメージ| | | | | | | 豊かに読み取る。 | | | |る|@|1五月の谷川の情景とかにの兄|・五月の明るさと兄弟がにの無邪| 〇五月の川底の情 | | | | 弟の気持ちを読み取る。 | 気さを読み取る。 | | 景をかにの気持 | | +−+ +−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | |A| |・魚が殺された様子や兄弟がにの| | ちと結び付けな | | | | | 恐怖を読み取る。 | と | がら読み、明る | | | | | | こ | さの中に恐ろし | | | | | | う | さがあることを | |め| | | | 合 | 想像できたか。 | | +−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−+ | |B|2十二月の谷川の情景とかにの|・十二月と五月の川底の様子と比| し 〇十二月の川底の | | | | 兄弟の気持ちを読み取る。 | べ、のどかなかにの兄弟の様子| 話 | 情景をかにの気 | | | | | を読み取る。 | に | 持ちと結び付け | | | | +−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | |C| |・美しい川底の様子と「やまなし」| と | ながら読み、平 | | | | | を追いかけるかにの喜びを読み| も | 和な世界を迎え | |か| | | 取る。 | を | る美しい川底の | | | | | | 拠 | 様子を想像でき | | | | | | 根 | たか。 | | +−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−+ | |D|○主題を読み取りまとめる。 | | | | | | |1二つの場面を対比しながら、|・二つの場面を対比させて整理し| ○主題を自分でま | |ふ| | 「やまなし」という題につい| 「やまなし」という題の意味を| | とめることがで | | | | て一人学びする。 | 読み取る。 | | きたか。 | | +−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−+ | |E|2一人学びをもとに「やまなし」・二つの対比表現から主題をつか| ○話し合いをもと | | |時| に込められた思いを考える。| み、題「やまなし」に込められ| | に主題をつかむ | | |本| | た思いを読み取る。 | | ことができたか。 +−+−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−+−−−−−−−−+ | |3|○やまなしを朗読や新聞にまと|○場面の情景やかにの気持ちなど、グルー ○相手に場面の情 | |る|@| める。 | プごとに、朗読、群読、新聞、チラシな| 景やかにの気持 | |め|A| | どにまとめる。 | ちが伝わるよう | | +−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |と|B|○発表会をする。 |○自分たちがまとめたものを、情景や気持| に、朗読や新聞 | |ま| | | ちが伝わるように発表する。 | にまとめ、発表 | | | | | | できたか。 | +−+−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+ 六.本時の指導  (一)目 標 ◎「五月」「十二月」の世界を対比しながら、題名が「やまなし」であることの意味を考えるこ     とができる。 〇根拠をはっきりさせ、自分の考えを深めながら話し合うことができる。  (二)展 開 +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+ 段階     学 習 活 動 時間 教師の関わり ●音声言語活動 主たる音声言語活動| 評 価 +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+ | |一.五月と十二月の川底のようすなど| |〇対比的な表現に着目して、題につい ・対比的な表現 | |時| 対比的に書かれている表現をもと| | て考えさせる。 | を根拠に、自 | | | に、題について一人学びする。 | |・五月と十二月 | 分の考えをま | |前| |5|・かわせみが現れる前と後 | とめることが | | | |4|・やまなしが落ちる前と後 | できたか。 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+ | |一.本時の学習課題を確認し、見通し| |〇「やまなし」という題がついたわけ| | |す| を持つ。 | | を考えるなかで、作者の言いたいこ| | |お|+−−−−−−−−−−−−−−−−+ | とを考えていくことを確認する。 | | |と|| どうして「やまなし」という題 |5|〇五月と十二月の川底のようすなど対| | |み||なのだろう。 | | 比的に書かれている表現をもとに話| | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−+ | し合うことを確認する。 | | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+ | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | |二.「五月」と「十二月」の対比表現| |●根拠に着目して「やまなし」という| | | | をもとに「やまなし」という題に| ||題の意味について話し合わせる。 | | | | ついて話し合う。 | |●友達の考えと比べながら聞き合い、| | | | ・どうして「やまなし」という題に| ||友達の考えのよさを知り、自分の考| | | | なったのだろう。 | ||えを発表させる。 | | | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |る| | |・冷たく寂しい冬に、熟して谷川に落| | | | | | ちてきた「やまなし」は、かにの親| | | | | | 子に豊かさ、喜び、希望を与え、逆| | |め| | | に「かわせみ」の存在は、死や恐怖| | | | |5| を与えるものであり「やまなし」の| | | | |3| 存在を際立たせていることを話し合| | |か| | | いを通して見つけさせていきたい。| | | | | |・色彩語、擬声語、擬態語、比喩表現 ・根拠をしっか | | | | | さし絵からも、「やまなし」が与え| りとらえ、五 | |ふ| | | る明るく喜びに満ちた世界を考えさ| 月と十二月を | | | | | せていきたい。 | 対比して話し | | | | |・話し合いをすることにより、自分の| 合うことがで | | | | | 考えをさらに深めさせていきたい。| きたか。 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+ | |三.本時の学習をまとめる。 | |○「やまなし」の与える豊かさ、喜び| | |る| ・情景を豊かに想像しながら、最後| | 希望などを豊かに想像しながら、朗| | |め| の部分の朗読を聞こう。 |5| 読を聞かせたい。 | | |と|四.本時の学習について自己評価する。 | (P L 〓P L ) | | |ま|五.次時の学習課題の確認をする。 | | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+