印刷用紙:A4縦 1ページの行数:50 1行の文字数(半角で):100   −−以下 指導案本文−−          第3学年  国語科学習指導案                          児童 3年1組 男16名女12名                          指導者  平山壽雅子 1.単元名  感想を大切に 2.教材名  モチモチの木 3.単元について  (1)教材について      豆太は,じさまと二人,峠の猟師小屋に暮らす五才の子どもである。彼は大変な臆病者で,     夜中に小便に行く時もじさまについて行ってもらわなければならないほどであった。じさまは,     そんな豆太を心底慈しみ,勇気のある子に育ってほしいと願っていた。ある夜,突然の病がじ     さまを襲う。じさまの苦しみようを見た豆太は,夜道の怖さにもめげず,たった一人で医者様     を呼びに行くのである。臆病者の豆太を勇敢な行動に駆り立てたものは,じさまを思う「やさ     しさ」であった。情愛の持つすばらしさを描いて心に迫る作品といえよう。      物語は語りの文体で進められ,展開のおもしろさや劇的な行いをする主人公の設定とあいま     って,読み手である児童の心を最後まで引きつけることと思われる。モチモチの木の描写に代     表される幻想的な表現や緊迫した場面での短文を重ねた叙述は,児童に生き生きとした情景を     思い描かせることであろう。じさまと豆太との心あたたまる交流は琴線に触れ,語り手の存在     も加わって,様々な思いを児童の胸に抱かせるにちがいない。  (2)児童の実態   ○単元の目標にてらして     本単元の目標に迫り,主体的な読みの力の形成を図るために次のような観点で事前テストを行    い,児童の実態を調査した。      @叙述から人物の性格を読み取ること      A叙述から情景を想像すること      B叙述と叙述をつなげて人物の心情や性格を読み取ること      C接続語の役割に注意して読むこと      D−(ダッシュ)を適切にとらえること      E場面の中心となることを読み取る学習課題を作ること     この単元における主目標は「場面の情景や,じさまと豆太の心情を想像しながら感動をもって    内容を読み取り,自分なりの感想をまとめることができる」ことである。すなわち,豆太とじさ    まの心の結び付きと言動の背景にある心情や状況をとらえて,自分なりの感想を持つことが学習    の中心となる。     実態調査によれば,具体的な言動から豆太とじさまの性格をとらえている児童は7割強であっ    た。豆太の臆病であること,じさまの優しさはほとんどの児童がつかんでいたが,じさまが勇敢    であることについては4割の児童が指摘できなかった。これらの児童は,描写からモチモチの木    の様子を想像することを求めた項目でも十分な解答を出すことができず,したがってモチモチの    木を恐ろしいと思う豆太の心情も把握できないでいた。しかし,叙述へは着目していることから    みて,これは,言葉の意味や役割を十分に理解していないため叙述から情景や心情を想像する力    が弱いことを示していると考える。     単元の目標の一つである「音読の工夫」については,今までの学習を通じて力を付けてきてい    る。言葉や文を根拠に会話文にこめられた心情をとらえて表現する活動を重ねるうちに,楽しさ    を感じて意欲的に取り組む児童が多くなっている。     視写,読み取りのまとめ,感想のまとめといった書く活動は継続的に行ってきた。これまでは    全員が抵抗感なく取り組むことを主眼に行ってきたため,力は徐々についてきているものの個人    差があり,質の向上を図る上では一人一人に応じた支援が必要である。   ○主体的な読みの力の形成にてらして   ・叙述から内容を読み取る力     様子や言動に関する叙述に着目して人物の心情を読み取ることは,7割ほどの児童ができるよ    うになってきた。     しかし,叙述から情景を想像する力は十分ではない。また,心情のとらえも浅かったり断片的    であったりしている。修飾語や接続語,指示語の役割や意味を理解させて,叙述をより的確によ    り豊かに読み取る力を育てて行きたい。   ・課題を追究する力     今回の調査によれば,人物の言動や心情に焦点をあてる課題を作った児童は7割強であり,人    物同志のつながりにふれる課題を設定した児童も3〜4割にのぼった。小問作り等の活動を重ね    ることで,除々にではあるが,中心となる内容把握に迫る課題設定力が付いてきたといえよう。    課題追究においては,教師の発問や助言に沿って解決に向けた読みを進めている段階である。読    み取りの深さは不十分ながら,課題解決にかかわる叙述への着目力は伸びてきている。学び合い    では「自分の考えをふやす」という評価項目を設定し,友だちの考えを取り入れて自分の考えを    深化・拡充する活動を進めている段階である。   ・自他の取り組みの良さに気付き,自分を向上させていこうとする力     1単位時間の学習の終わりに自己評価活動を設けている。1学期の後半から,課題の答えを予    想しそれが学習によってどのように変わったかを記述している。個々の児童が自分の活動を肯定    的に評価し意欲的に学習できるように,予想の是非とともに「わかったことをふやす」ことを重    視して評価している。現在はこの活動の進め方がわかってきたという段階であるが,目的意識や    向上心が芽生えてきている。 (3)指導にあたって     指導にあたっては次の3点に重点を置く。      @情景や言動から人物の心情を読み取り性格をとらえること      A叙述から情景を想像すること      B言動から豆太とじさまの心の結び付きをとらえること    着目した叙述から人物の心情や性格をとらえ,情景を想像することができるように「『モチモチ    の木』の脚本作り」という目的を設定する。豆太・じさま・語り手の台詞に書き足しやト書き作    りを行い,音読を工夫したり舞台背景を考える活動を通して細かい叙述への着目を高め人物の心    情や性格,情景をとらえさせる。     叙述に即した読み取りの力を高めるために,修飾語・接続語・指示語・ダッシュの役割や意味    について指導の場を設け,各場面で理解したことを使っていく活動を組む。     学習課題は場面によって複数にする。豆太とじさま二人について考えていきたいという児童の    関心を生かすとともに,これによって二人の心の結び付きについても気付いていけると考える。    しかし,児童が個々に異なる課題で読み進める段階にはないので,全員で同じものに取り組むこ    とにする。     自己評価は,課題の答えと解決予想を比較して「わかったことがふえたか」という点を中心に    行う。今回は学習したことをト書きにまとめて音読表現に生かしたり,感想を書く活動に力点を    置くので,自己評価は簡略した形式を用いる。 4.目標     《関心・意欲・態度》    ○登場人物の気持ちや語り手の思い,場面の様子を想像して表現する活動を通し,物語に親しも     うとする。  《表現》    ○心に残った言葉や優れた描写の部分を視写して,いろいろな表現の仕方があることに気付き,     自分の作文に生かすことができる。  《理解》    ◎場面の情景や,豆太とじさまとの心情を想像しながら感動をもって内容を読み取り,自分なり     の感想をまとめることができる。    ○登場人物の行動や語り手の思いが分かるように,音読を工夫することができる。  《言語》    ○その場の状況に応じて適切な声の大きさや速さを考えて音読することができる。    ○文の中における修飾と被修飾との関係を理解しすることができる。           ○指示語や接続語の役割と使い方に注意することができる。     5.学習指導計画(13時間扱い)   第一次 前文を読み,課題を設定し学習の見通しをたてる。(3時間) (1)全文を読んであらすじをつかむとともに学習の目的を知る。………………………………2 (2)感想をもとに学習課題を設定する。……………………………………………………………1   第二次 場面の情景や豆太とじさまの心情を読み取り,感想を書く。(6時間) (1)「おくびょう豆太」を読み,豆太の臆病さとじさまの優しさを読み取る。………………1 (2)「やい,木ぃ」を読み,豆太のモチモチの木に対する気持ちと,じさまの豆太に対する   優しさを読み取る。…………………………………………………………………………………1 (3)「霜月二十日のばん」を読み,じさまの気持ちやモチモチの木に灯がともる話を聞いた   時の豆太の気持ちを読み取る。…………………………………………………………(本時)1 (4)「豆太は見た」の前半の,じさまのために医者様を呼びに夜道を走る豆太の様子と気持   ちを読み取る。………………………………………………………………………………………1 (5)「豆太は見た」の後半を読み,医者様におぶわれて小屋へ上る豆太の気持ちと,灯がつ   いているモチモチの木の様子を読み取る。………………………………………………………1 (6)「弱虫でも,やさしけりゃ」を読み深めたあと,全文を通して心に残ったことを中心に   感想を書く。…………………………………………………………………………………………1   第三次 「モチモチの木」の朗読会をする。(2時間) (1)グループで「モチモチの木」の朗読練習をし,発表する。…………………………………2   第四次 まとめの学習をする。(2時間) (1)短作文を書いたり,文字や言葉の練習をする。………………………………………………1 (2)斉藤隆介の他の作品を読む。……………………………………………………………………1 6.本時の指導  (1)ねらい      会話文とその前後の叙述から,じさまの豆太に対する願いと,灯のともったモチモチの木を     見たいと思いながら自分の勇気のなさからあきらめてしまう豆太の気持ちを読み取ってト書き     を作り,音読表現することができる。  (2)指導にあたって      この場面の指導は,「叙述をつなげて内容を読む力」と「課題を追究する力」の育成に重点     をおいて手立てを組んでいく。即ち,課題解決に向けて叙述を読んでいく力を育てることがね     らいである。      それにはまず,児童が目的意識を持って学習に取り組むことが重要である。今回,学習課題     を複数とし内容も具体的なものにしたのは,      ・児童の問題意識が豆太とじさまの二人に集まっていたこと           ・追究内容が具体的になることで目的意識を持てること      ・最後の場面のじさまの言葉に凝縮される主題を把握させるための伏線として扱いたい意図       があること      という3つの理由からである。追究にあたって言葉に着目することはできるので,読み取り     の目安も示して目的意識と課題解決意欲の持続を図っていきたい。      3年1組の児童のうち読み取りの力の弱い者が接続語・指示語・ダッシュ・修飾語の意味や     役割を十分把握していないことは実態でものべた。そこで,これらの語句に対する理解を高め     るために意味や役割を考える場を設け,これらに着目することが内容を読んでいくうえで大切     であることに気付かせていく。      また,読み取ったことをト書きとしてまとめ音読表現に生かす活動を組んで,達成感を味わ     わせ次の活動への意欲を喚起していきたい。      学習形態にグループを取り入れて学び合いによる読みの拡大を図るとともに,個別指導を加     えてどの子の力も伸ばしていきたい。  (3)展開 +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |段 階| 学 習 活 動 | 教師の働きかけ | 期待する児童の反応 | 指導上の留意点 |活動形態| 評価 | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |つかむ|1.前時学習を想起|・「やい、木ぃ」ではモチモチの木に対する豆太の気持ちと、じさまの豆太に対す ・豆太は昼のモチモチの木には威張るけど、夜のモチモチの木に対してはこわがっています ・教師が簡単にふれる程度とする。 全 |(5分) | すること | る優しさが分かりました。 |・臆病な豆太にじさまはとても優しいです。 | | | | | |2.本時学習課題を|・今日学習する「霜月二十日のばん」の課| | | | | | | つかむこと | 題は | |・じさまと豆太の気持ちを読み取って脚本にト|全 | | | | | +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | | | | | |・じさまが豆太に「起きててモチモチの木に灯がともるのを見てみろ」と言ったのはなぜでしょう 書きを入れていくことを確認し,目的意識を | | | | |・豆太がじさまの言葉に泣きそうな声で返事をしたのはなぜでしょう。 || 持たせる。 | | | | | | +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |広げる|3.学習課題を追究すること | | | | | |(20分)|(1)本時場面を読|・自分の予想を確かめながら「霜月二十日|・自分はこの言葉から〜と予想しました。 |・予想を確認させて課題追究の意欲を促す。 |全 | | | | むこと | のばん」を読みましょう。 | | | | | | | (2) じさまの豆太|○じさまが「夜中まで起きててモチモチの|・灯のともったモチモチの木はとてもきれいだ|・じさまの言葉を確かめてから願いが複数ある|個→グ |・じさまや豆太の気持| | | に対する願いを| 木に灯がともるのを見てみろ。」と言っ| からです。 | ことを助言し,サイドラインを引いた後,グ| →全| ちのわかる言葉にサ| | | 読み取ること | たのはなぜでしょう。 |・灯のともったモチモチの木は枝の先まで明る| ループで話し合わせて着目を広げる。 | | イドラインを引くこ| | | | | く輝いて夢のようにきれいだからです。 |・「モチモチの木の美しさを見せたい」という| | とができたか。 | | | | |・自分や豆太のお父も見たので見せたかったの| 願いをとらえさせるためにモチモチの木の描| |+それぞれ2か所以上にサイドライン | | | | です。 | 写に目を向けさせ,じさまの言葉に付け足し| |0それぞれにサイドライン | | | |・豆太に勇気を持って欲しかったからです。 | をしていく。 | |−片方の気持ちにサイドライン | |(3)じさまの話を|○じさまの言葉に豆太は泣きそうな声で返|・「-それじゃあ」→勇気のある子どもしか見られないなんて ・「それじゃあ」という言葉がじさまの言葉を|*豆太については語り| | | 聞いた豆太の気| 事をしました。それはなぜでしょう。 |・「……おらは、とってもためだ-」→だっておらは勇気がないもの 受けてのものであることを助言してダッシュ 手の言葉に手掛かり | | 持ちを読み取る|・豆太の会話文のダッシュに言葉を入れて|・自分は臆病で勇気がないから見られないと思| を考えさせていく。 | | があることを補足す| | | こと | 考えてみましょう。 | っているからです。 |・「とってもだめだ」の次に「だって」という| | し,机間巡視して個| | | |・「勇気がないからだめだ」という気持ちの他に ・モチモチの木に灯がともったところを見たい 言葉を入れて気持ちを考えやすくする。| | 別指導を加える。 | | | | もう一つ思っていることがありますよ。| なぁと思っています。 |・あきらめだけでなく本当は見たいということも押さえさせたい | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |深める|4.学習課題を解決すること | | | | | |(20分)|(1)読み取った気|○じさまと豆太の気持ちをト書きにしまし|・じさまの気持ちは |・気持ちがまとめやすいように,必要に応じて|個→全 |・じさまと豆太の気持ちをト書きにしたか | | 持ちをト書きに| ょう。 | *灯のともった夢のように美しいモチモチの木を見せたい 言葉を補足してやる。 | | 0それぞれ2つ以上の気持ち | | すること | | *豆太に勇気を持って欲しい |・机間巡視をして,作業の進まない子には手助| | −それぞれ1つ以下 | | | | |・豆太の気持ちは | けする。 | |*-の児童には机間巡視して個別指導する | | | *すごく見たいけれど自分は勇気がないからだめだ |・簡単でもよいので,じさまと豆太の双方に感 個→全 | |(2)豆太やじさま|・豆太やじさまの思っていることについて|・じさまは豆太に勇気を持ってほしい,美しいモチモチの木を見 想を書くよう指示する。 | | | | | について感想を| 自分の感想を書いてみましょう。 | せてあげたいと思っていました。とってもいいじさまだなとまた思いま | | | | | まとめること | | した。本当は見たくてたまらないのに自分は勇気がないとあきらめ | | | | | | | てしまう豆太がかわいそうでした。豆太,頑張って。 | | | | |(3)学習したことを生かして音 ・ト書きを生かして音読してみましょう。 ・音読 |・じさまと豆太の気持ちを確認して声の大きさ|全 | | | | 読すること | | | や明るさを工夫し音読するように指示する。| | | | |5.学習活動を振り返ること ・今日の学習について振り返ってみましょう。 ・自分の今日の学習は〜 |・自分の読みをふやすことができたかという視点でカードに記号で記述させる。 個 | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ (4)評価   じさまの願いと豆太の気持ちを読み取り,ト書きにして音読できたか。