印刷用紙:A4縦 1ページの行数:50 1行の文字数(半角で):90   −−以下 指導案本文−−          第3学年 国語科学習指導案                                児童 3年2組 男16名女11名                                指導者  菊 池 浩 子 1.単元名  場面の様子に気をつけて 2.教材名  ちいちゃんのかげおくり 3.単元について  (1)教材について      この教材は,家族と引き裂かれ再会を願う幼い子の命まで奪ってしまう残酷な戦争と,平和へ     の願いを描いた作品である。      出征する前の日,ちいちゃんの家族はみんなでかげおくりをする。かげおくりは家族の絆の象     徴である。父の出征,空襲の混乱の中で母や兄とはぐれ,ちいちゃんは一人ぼっちになってしま     う。衰弱したちいちゃんが最期に見たものは家族みんなでやったかげおくりであった。楽しかっ     たあの頃のようにもう一度みんなでかげおくりをしたい,という願いもこの世でかなえることは     できなかった。そして,ちいちゃんと同じように数え切れない子供達が命を失った。ちいちゃん     の平和への願いを,戦後何十年とたった今日でも忘れてはならない。      登場人物の心情は,場面の様子との関連や,会話文,登場人物の行動や様子の描写からとらえ     ることができる。また,体言止めの表現,切迫感が感じられる短文による表現は児童に場面の様     子鮮やかに思い描かせるだろう。  (2)児童の実態    ○単元の目標にてらして      本単元の目標にせまり,主体的な読みの力の形成を図るために次のような観点で事前テストを     行い,児童の実態を調査した。    ○主体的な読みの力の形成にてらして       @場面の様子を表す言葉に着目する。       A場面の様子を表す叙述から人物の気持ちを想像する。       B登場人物の会話の前後の様子に着目する。       C人物の言動や場面の様子を表す叙述から人物の気持ちを想像する。       D主述関係をとらえる。       E言語事項について反対の意味の言葉の使い方が分かる。      その結果,@Aについては,場面の様子をとらえ気持ちを想像することは8割の児童ができて     いる。      しかし,細かい叙述にまで,気をつけて読むことのできる児童は少ない。Bについては,3割     の児童しかできてなかった。会話文を読むときに叙述の前後から人物の様子に着目できないため     である。Cについては,ちいちゃんの会話から楽しかった思い出をに触れて,想像している児童     は,ほとんどいなかった。これは場面の状況や言動と結び付けて心情を想像している児童が少な     いためである。Dについては,主述関係は6割の児童がとらえている。3割の児童が「おばさん」     と答えていた。これは,ちいちゃんが一人ぼっちであるという状況をとらえていないためである。     Eについては,9割以上の児童がとらえていた。    ○主体的な読みの形成にてらして     ・叙述に即して内容を読み取る力       課題解決学習として全文視写と登場人物の気持ちや様子を表している言葉や文に線引きし,      考えたことや想像したことを書き込む。課題解決につながる言葉の書き抜き,中心文の視写と      書き込みを授業で行っている。その結果,言葉や文を手がかりに場面の状況をとらえたり,登      場人物の心情を考えたりすることができる児童が増えている。しかし,どの言葉から想像した      のかを考える力は,個人差がある。言葉や文から,内容を読み取ることはできるがしかし,そ      れらをつなげてより的確な心情や,様子を読み取る力は,不十分である。     ・課題を解決する力       課題設定の際は,人物の心情や場面の状況把握を目的とした個人課題を作ることのできる児      童が増えてきた。そして,課題に対する答えを予想し,一斉学習後に答えをまとめると言う活      動を行う中で,予想を大きく外れる児童が少なくなってきている。       児童は,課題解決のための方法として,中心文を視写し書き込みをするという活動を行って      いる。しかし助言なしで中心文を探し書き込みをし,課題を解決する力については,個人差が      ある     ・自他の考えや取り組みの良さに気付き,自分を向上させていこうとする力       課題の答えを予想し解決後の変容を評価するという活動を3年生からしている。簡単な言葉      や,文で予想と答えを比べてどうであったか,頑張った友達は誰かなどを書くことができる。  (3)指導にあたって      本教材の目標は,「場面の移り変わりを押さえながら,会話文に気をつけて読み,情景や人物     の気持ちを豊かに想像する。」ことである。しかし,児童の実態からすると場面の情景を叙述に     即して想像することは容易なことではない。そこで,想像豊かに読み取るために読み取りの視点     を明確に持たせたい。視点を持つことで言葉や文を選ぶ力がつき,断片的読みをつなげて,様子     や気持ちをより的確にとらえられると考える。今回の視点は,@場面の情景描写Aちいちゃんの     気持ちBちいちゃんの行動や様子の3点である。この視点で読み進めるように働きかけたい。一     人読みの段階で実態をあらかじめとらえて,発問の組み立てを工夫していきたい。         ○主体的な読みの力を育てるために     ・叙述に即して,内容を読み取る力を付けるために       意味の分からない言葉については,直接教えたり前後のつながりから考える活動を組んで内      容をとらえさせる。戦争を時代背景とする作品であるため場面の状況を想像することが児童に      とって難しい言葉もある。それらは,様子を具体的にとらえられるように発問を工夫していき      たい。内容の豊かな文を視写し様子や気持ちを表す言葉に着目させる働きかけを行ったり音読      で心情を表現したりしながら,叙述に即して読み取る力を育てていきたい。     ・課題を解決する力を育てるために       課題を設定する際「ちいちゃんの気持ち」ついて考える問題をつくるという,視点を与える。      個人課題を設定する場を設け,それらを共通課題にまとめることによって,中心価値にせまる      課題を作る力を付けていきたい。中心文を探す活動や,課題解決にかかわる重要語句を書き抜      く活動を行うことによって,課題を解決する力を付けていきたい。     ・自己を評価する力を育てるために       授業中の取り組みはどうだったか,予想と学習後分かったことを比較し新しく分かったこと      がふえたか,ということを主な内容とする項目を設けて評価させる。予想を持たせることによ      って自分自身の考えのよさに気付くし,新しく分かったことを書き入れることで,友達の良さ      にも気付いていくことができる。 4.目標  《関心・意欲・態度》   ○主人公の気持ちや場面の情景を読み取り,文学など読み物に親しもうとする。  《表現》   ○ちいちゃんの運命について一人一人が自分の感想をもち,表現することができる。  《理解》   ◎場面の移り変わりを押さえながら,会話文に気をつけて読み,情景や人物の気持ちを豊かに想像し,    文学など読み物に対する関心を深めることができる。  《言語》   ○同じ行動を表すにもいろいろな言い表し方があることを理解し,自分の表現に使うことができる。 5.学習指導計画(12時間扱い) □第一次(4時間)  ○題名について考えながら全文を読み,学習課題を設定する。 (1)全文を通読し,粗筋を確認して場面分けをする。−−−−−−−−−−−−−−−−−1 (2)場面ごとに,自分の課題を作り,グル−プで話し合い共通課題にまとめる。−−−−−3    □第二次(6時間)  ○学習課題に従って,場面の様子や人物の気持ちを想像豊かに読み進める。 (1)仲むつまじくかげおくりをする家族の様子や気持ちを読み取る。−−−−−−−−−−1 (2)悪化する戦況を読み取る。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−1   (3)空襲の中を逃げまどい,独りぼっちになってしまう,ちいちゃんの様子や気持ちを 読み取る。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−1   (4)母や兄の帰りを信じて,待ち続けるちいちゃんの様子を読み取り,気持ちを想像 する。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−1(本時) (5)独りぼっちでかげおくりをするちいちゃんの様子や願いを読み取る。−−−−−−−−1   (6)現在の公園の様子と比べながら,ちいちゃんの命が消えていく様子について感想 をもつ。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−1 □第三次(2時間)  ○読み取ったことを生かして音読発表会をする。 (1)発表会をするために全場面を振り返り表現に気をつけて音読の練習をする。−−−−−1 (2)音読発表会をする。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−1 6.本時の指導 (1)ねらい     空襲の中を逃げまどい、独りぼっちになってしまうちいちゃんの姿を読み取ることができる。 (2)指導にあたって     児童個々の言葉や文に着目する力と着目した言葉や文をつなげて内容を読む力を付けることをね    らいとして,本時の活動を組んだ。     主人公の気持ちを主人公の言動・様子からも読むことができるように,「ちいちゃんの言動」    「ちいちゃんの様子」を表す言葉に注意させる発問を組んで授業を進めたい。さらに,場面の様子    を表す言葉にも着目させ,「場面の様子」「ちいちゃんの言動や様子」をつなげて内容を読み取る    ような発問を組むことによって,様子や気持ちをより的確にとらえさせていきたい。     最初にはぐれてしまった状況を読み取らせる。まず場面の様子を表す言葉に着目させる。「赤い    火があちこちに上がっていました。」「風の強い日でした。」から、火の勢いがまし「風があつく    なって」きた様子を想像させたい。「ほのおのうずが追いかけてきます。」から火が近くまで迫っ    てきている様子を想像させたい。お母ちゃんとはぐれたときのちいちゃんの様子を「追いぬかれた    り、ぶつかったり−−」のダッシュに入る言葉を考えさせ空襲の混乱の中で母とはぐれてしまった    状況を想像させたい。     お母ちゃん達とはぐれて心細い気持ちを「お母ちゃんお母ちゃん。」の叫び声から想像させたい    お母ちゃんらしい人が見えたときの気持ちとお母ちゃんではないことが分かったときの気持ちを考    えちいちゃんの心細さがさらに強まったことを心情曲線に表し、視覚によってはっきりとつかませ    ていきたい。     ひとりぼっちでねむるちいちゃんの様子を視写させる。「ひとりぼっち」「たくさんの人たちの    中で」に着目させお母ちゃんとはぐれ心細いちいちゃんの気持ちを書き込ませたい。   学習のまとめとして,一人ぼっちになったちいちゃんに対する感想を手紙の形でまとめさせたい。 (3)展開                                                                                           +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |段 階| 学 習 活 動 | 教 師 の 働 き か け | 期 待 す る 児 童 の 反 応 | 指 導 上 の 留 意 点 |活動形態| 評 価 | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |つかむ|1,本時課題を確認|+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |・学習課題に対する予想を書かせ,把握してお|全 | | |(5分) すること ||おかあさんとはぐれてひとりぼっちになったちいちゃんはどんな気持ちだろう。 | |く。 | | | +−−−+−−−−−−−−−++−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |深める|2,本時場面を読む|○ちいちゃんの気持ちがよく表れている会話文や、様子に線を引きながら読みまし |・課題を解決するためにちいちゃんの言動・様子を調べることを確認し,読ませながら,線 個 |(30分)| こと | ょう。 | | 引きをさせる。指名読みでゆっくりと読ませ線引きしやすくする。 | | | | | | | | | | |3,読み深めること| | | | | | | |(1)はぐれた状況|○どんな夜ですか。 |・空しゅうがあった夜。・赤い火が、あちこちに上がっていた。 ・風が強くふいてい ・「赤い火が,あちこち上がっていました。」「風が強くふいていました」から火の勢い 全 | | を読み取る。 | | た。・風が、あつくなってきた。・ほのおのうずが追いかけてきた。 が強まり,風があつくなった理由を読み取らせる。「ほのおのうずが追いかけてきまし | | | | | た」の文に着目させ、火が近くまで迫っている様子を読み取らせる。 | | | |○ちいちゃんは,なぜ,お母ちゃんたちと|・たくさんの人に追いぬかれたり,ぶつかった|・ダッシュに入る言葉を考えさせ,はぐれた時|全 | | | | | はぐれたのですか。 | りしたから。 | のちいちゃんの様子を,読み取らせたい。 | | | | | | | | | | | | | |○はぐれて「お母ちゃん,お母ちゃん。」|・お母ちゃん,どこにいるの。 |・ちいちゃんの不安,心細さを読み取らせたい|全 | | | | | とさけんだとき,ちいちゃんはどんな気|・心細いよ。 | | | | | | | 持ちでしたか。 |・こわいよ。 | | | | | | | | | | | | | | |○お母ちゃんらしい人が見えて「お母ちゃん。」とさけんだとき、ちいちゃんはど ・やっと会えた。 ・やっと会えたと思ったのに,お母さんではな 全 | | | | | んな気持ちでしたか。 |・ここにいたんだ。 | いことが分かり心細さが強まったちいちゃん| | | | | | | | の気持ちを心情曲線で表し視覚によってはっ| | | | | |○お母ちゃんではないことが分かったとき|・心細くなった。 | きりとつかませたい。 | | | | | | ちいちゃんはどんな気持ちでしたか。 |・やっと会えたと思ったのにお母ちゃんじゃないのでがっかりした。 | | | | | | | | | | | | | |○はぐれてひとりぼっちになったちいちゃ|・だれも知っている人がいない。さびしい。お母ちゃん、どこにいるのかな。無事かな。 ・机間巡視をし,言葉に着目して気持ちを書いている児童を把握する。また,着目できない 個→全 ○ちいちゃんの気持ちが書けたか | | | んの様子がわかる文を視写して気持ちを| | 児童には教える。 | |+言葉に着目して気持ちが書けた | | | 書き込みましょう。 | | (ひとりぼっち,たくさんの人たちの中で) | |0気持ちが書けた | | | |○発表し、ちいちゃんの気持ちを、話し合いましょう。 | | |−書けない | | | | | | | | | | |4,課題を解決する| | | | |○手紙を書く | | | こと | | | | |+ちいちゃんの不安,心細さにふれて感想 | |(1)解決した課題|○空襲でひとりぼっちになったちいちゃん|・空しゅうのときとても、こわかったでしょう。しかも、お母ちゃんたちともはぐれて一人 ・板書したことをもう一度ふりかえり,言葉や文を,おさえた上で,書かせたい。 を書くことができた | | をまとめること| の気持ちにふれて,手紙を書きましょう。 ぼっちになり、さみしいし心細いよね。でも、なかないでがまんしてるね。がんばって。 ・ちいちゃんの不安,恐れ,心細さにふれさせて手紙を,書かせたい。 0ちいちゃんの気持ちにふれて感想を書く | |(2)発表すること|○発表しましょう。 | | | | ことができた | | | | | | | |−気持ちを書くことができない +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |広げる|5,本時学習を振り|○今日の自分の学習について振り返ってみ|・新しく分かったことは〜です。 |・予想と比べて・新しくわかったこと・友達の| |・簡単に予想と比べる ・学習への取り組み |( 5分)| 返ること | ましょう。 |・友達の考えで良いと思ったことは〜です | 発表をきいてなどを書かせたい。 |個→全 |を自己評価する ・友達の良かった所 +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ (4)評価   空襲の中を逃げるちいちゃんの不安,恐れ,心細さを読み取り,感想を手紙に書くことができたか。