印刷用紙:A4縦 1ページの行数:50 1行の文字数(半角で):90   −−以下 指導案本文−−            第4学年  国語科学習指導案                                  児童  4年1組 男12名女11名                                  指導者 佐藤 朋子 1.単元名  人物の気持ちの動きを 2.教材名  ごんぎつね 3.単元について  (1)教材について      民話的舞台を背景に繰り広げられるこの物語は.ひとりぼっちのさみしさをまぎらわすためにいつ     もいたずらばかりしていた主人公「ごん」が,自分と同じひとりぼっちになった兵十に,できる限り     の償いをしていくことを軸に展開する。      そんなごんの心情の変化は,読者に手に取るように理解できるが,もう一人の登場人物である兵十     には,まるで通じていない。そこで,兵十によってごんが撃たれるという悲劇的な結末を迎えるわけ     である。      物語の構成からみれば,「死をもってしか通じ合えなかった心の交流の悲しさ」にも主題を求める     ことができるのであろう。が,児童の発達段階としては,「心が通じ合うことは簡単なことではない。     それだけに,何よりも大切にしなければならないことである。」というような内容の「心の交流の大     切さ」に主題を求めていくことが適切である。      この作品の特色は,人物の行動の細かな描写にある。兵十の行動の一つ一つがごんの行動に影響を     与え,ごんの兵十に対する心情を変化させていく。しかし,兵十のごんに対する心情は最後の場面ま     で変わることがない。児童は,ごんと兵十の心の交流を読み取っていく中で,心の一方通行と,心の     通じ合い,それをめぐる悲しみや喜びなど,この物語から様々な思いを持つであろう。      また,聴覚,視覚に訴える生き生きとした情景描写,心情把握のための伏線となる効果的な表現は,     言葉の働きのおもしろさ,言葉の深い意味に気付かせてくれるであろうし,児童の表現力の向上を促     してくれると思われる。  (2)児童の実態    ○単元の目標にてらして      本単元の目標にせまり,主体的な読みの力の形成を図るために次のような観点で事前テストを行い,     児童の実態を調査した。        @叙述に即して場面の内容を読み取る。        A叙述から心情を読み取る。        B登場人物の心の動きを他の人物の行動と関連づけて読み取る。        C効果的な情景描写,比喩表現,会話文を読み取る。        D学習課題について        E学習方法について      その結果,叙述に即して内容を読み取ることはできていたが,叙述から心情を読み取ること,登場     人物の心の動きを他の人物の行動と関連づけて読み取ることができていた児童は6割程度であった。     人物の気持ちの変化の根拠を他の人物の叙述に着目して考えることがまだ不十分である また,情景     描写から,人物の心情を考えたり,全体の様子を想像することができていた児童は半数程度であった。     聴覚・視覚に訴える生き生きとした情景描写や心情把握のための伏線となる効果的な表現について気     付き,自分の表現に生かすことは本単元の目標となるものなので,細かい叙述にも着目させて読み取     らせていきたい。比喩表現,会話文の読み取りはできている。      学習課題の設定については,その場面全体を読み取ることのできる課題「なぜいたずらをするのか,     本当のわけは」「いたずらをしている時の気持ちは」「ひとりぼっちでいるごんの気持ちは」(1の     場面)などが書ける児童は7割程度である。読めばすぐ分かる課題「どんないたずらをしたか」「ど     うしてにげたか」「どうしてびっくりしたか」は2割程度である。想像でしか答えられない課題「な     ぜひとりぼっちか」「何を食べてどうくらしていたか」は1割である。      学習方法については,「ごんの気持ちになって日記を書く」が一番多く,次に吹き出し,部分視写,     ニュースとなっている。    ○主体的な読みの力の形成にてらして     ・叙述に即して内容を読む力       言葉や文に着目する力はついてきている。しかし,情景描写から人物の心情を把握したり,いく      つかの事柄や他の人物と関連させて心の動きをとらえたり,より深い心情へ迫る力については個人      差がある。     ・自分で課題を追究する力       「課題を設定する力」は「何を中心に学習するか」「どのような課題を作れば、その場面の内容      がよく分かるか」という視点を与えることで、一人一人がある程度個人課題を作れるようになって      きた。だが、個々の課題から共通課題へという「課題を選ぶ力」についてはまだ十分ではない。       「課題を解決する力」については、課題解決の手順は大体分かってきており,解決への見通しを      持って,読み取ることができるようになってきた。学習方法については日記,手紙,吹き出し書き      抜きなどによって読み進める経験をしてきた。いろいろな方法で一人読みができるようになってき      ているが,それを話し合いで深めていくという点はまだ十分ではない。     ・自他の考えや取り組みの良さに気付き,自分を向上させていこうとする力       課題に対する予想と学習してみて分かったことを比べさせたりすることを通して,自分の考えや      取り組み方を振り返ることはできるようになってきている。しかし,学び合いで分かったことを加      筆・修正し,自分の考えを再構成することで自分の考えを深めていくことはまだ十分ではない。  (3)指導にあたって      指導にあたっては,ごんや兵十の叙述に目を向けさせたり,登場人物になり切ってお互いの行動の     関わり合いを考えたり,いくつかの事柄や他の人物と関連させて心の動きをとらえたりできるように,     日記,吹き出し,心情曲線などの方法で一人読みをすすめていきたい。それを学び合いの場で,どこ     を根拠に考えたのかを発表し合いお互いの考えを知り磨き合い,加筆・修正することを通して自分の     考えをさらに深いものに再構成させていきたい。そのために学習プリントに加筆・修正する欄を設け     てまとめを充実させていきたい。      自己評価では,初めの読みと比べて深まったこと,加筆・修正する時に参考になった友達の考え,     学習方法や態度面について振り返らせたい。      学習のまとめとしては,場面毎に読み取ったことをもとに「個人新聞」作りをしていきたい。      その中に,日記,吹き出し,心情曲線,手紙,感想,好きな表現,同一作者の他の物語の紹介文な     どを書くことを通して学習全体を振り返らせていきたい。 4.目標  《関心・意欲・態度》    ○ごんや兵十の行動や心の変化を情景描写に重ね合わせながら読むことを通して,想像力を働かせて物     語を読む楽しさを知り,同一作者の作品を進んで読もうとする。  《表現》    ○人物の気持ちの動きが情景描写・表情・行動・会話・内心語などによって表現されることに気付き,     自分の表現に生かすことができる。  《理解》    ◎場面ごとの登場人物の行動や気持ちについて読み取り,自分の考えを深めることができる。    ○ごんと兵十の気持ちの動きや場面の様子が分かるように音読を工夫することができる。  《言語》    ○効果的な情景描写や比喩表現,会話などについて理解することができる。 5.学習指導計画(14時間扱い)  第1次(3時間)  ○題名について考えながら全文を読み,学習の目的,学習課題を設定する。 (1)全文を通読し.粗筋を確認して場面分けをする。−−−−−−−−−−−−−1 (2)第1次感想と,自分の課題を書く。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−1 (3)学習課題を作り,自分の読み取りをする。−−−−−−−−−−−−−−−−1  第2次(9時間)  ○登場人物の気持ちの変化や情景描写に気を付けながら各場面を読み取る。 (1)ごんの境遇と性格のかかわりを読み取る −−−−−−−−−−−−−−−−1 (2)ごんの兵十に対するいたずらについて読み取る−−−−−−−−−−−−−−1 (3)償いをするごんの様子や気持ちを読み取る。−−−−−−−−−−−−−−−1 (4)ごんの失敗と,さらに償いを続けようとするごんの気持ちを読み取る−−−−2 (5)ごんの善意が兵十に通じないもどかしさを読み取る。−−−−−−−−−−−2(本時2/2) (6)死と引き換えに通じ合うごんと兵十の心の動きについて読み取る。−−−−−2  第3次(2時間)  ○読み取ったことをもとにして自分の活動を振り返る。 (1)読み取ったことをもとにして,個人新聞を作る−−−−−−−−−−−−−−2 6.本時の指導 (1)ねらい     「ごん日記」や「吹き出し」,「ごんの心情曲線」の方法で読み取り,学び合いで加筆・修正をして    ごんの善意が兵十に通じないもどかしさややるせなさを読み取ることができる。 (2)指導にあたって     本時では課題追究力を育てることをねらいとして,「ごん日記」「吹き出し」「ごんの心情曲線」の    3つの学習方法で課題解決をする活動を組んだ。     「ごん日記」では「期待を持って加助と兵十の会話を聞こうとするごん」から「つまらないなおれは    引き合わないなと思うごん」までの心の動きをごんになりきって一人読みをさせたい。     「吹き出し」では期待する気持ち,思わぬ方に話がいってしまっておもしろくない気持ち,引き合わ    ないなと思う気持ちや兵十や加助に言いたいことをごんの内心語として一人読みさせていきたい。     「ごんの心情曲線」では,動作や場面の状況,兵十の行動が表れているところを探しながら,ごんの    気持ちの動きを一人読みさせたい。     一人読み後の学び合いでは,自分の読み取りの根拠となる言葉や文を発表し,それをもとにして話し    合いをさせていきたい。その際,自分の初めの読みを学び合いで深めることができるように意識づけを    し,友達の良い考えに気付いたら話し合いの途中でも学習プリントに記入させていきたい。     児童の話し合いが深められるように,支援発問を「ごんの行動の根拠を問うもの」「ごんの期待する    ものを問うもの」「ごんの気持ちの動きとその根拠を問うもの」の三つとし,児童に不足している「い    くつかの事柄や他の人物と関連させて心の動きをとらえる力」をつけさせていきたい。     また,ごんの気持ちの動きをつかませるために,情景を豊かに描き出す聴覚的・視覚的描写や様子を    表す言葉にも目を向けさせ,表現の細部を確かに読み取らせていきたい。     学び合い後は,自分の考えに加筆・修正する時間を設定して,児童一人一人が自分の読み取りを整理    してまとめられるように保障していきたい。     まとめは,課題に対する答え,「兵十と加助の話を聞いてごんが考えたこと」とそれに対してごんに    言ってあげたいことを書かせることで,ごんのもどかしさややるせない気持ちを理解させていきたい。     自己評価では,初めの読みと比べて深まったこと,加筆・修正する時に参考になった友達の考え,学    習方法や態度面について振り返らせていきたい。そこから次の学習で生かしていきたいこと,頑張って    いきたいことを児童に持たせたい。 (3) 展開 +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−+ |段 階| 学 習 活 動 | 教 師 の 働 き か け | 期 待 す る 児 童 の 反 応 | 指 導 上 の 留 意 点 |活動形態 評  価 | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−+ |つかむ|1.本時学習課題を| +−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ | |全 | | | (5分)| 確認すること | |兵十や加助の話を聞いて,ごんはどんなことを考えたのだろうか。| | | | | | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ | | | | | |2.学習方法と読み|○自分の選んだ方法でごんの気持ちを読み| |・自分の初めの読みを学び合いで読み深められ| | | | | 取りの着眼点を| 取っていくのにどんなことに目を向けて| | るように取り組むことを意識づける。 | | | | | 確認すること | 読み取ったかを発表しましょう。 | | | | | | | | | | | | | |深める|3.学習場面を読む| | | | | | |(20分)| こと | | | | | | | |4.読み深めること|○それぞれの方法でどの言葉や文から気持|・ごんは,二人の後をつけていきました。 |・自分が根拠とした言葉や文と友達が出したも|個 | | | | ○根拠とした言葉| ちの動きを考えたか発表しましょう。 |・いどのそばにしゃがんでいました。 | のとの共通点・相違点を学習プリントでチ| | | | | や文を発表する| |・二人の話を聞こうと思って・・・・。・ふみふみ| ェックさせる。 | | | | | こと | |・「へえ,こいつはつまらないな。」 |・月のいいばん,チンチロリン,ぶらぶら,か| | | | | | |・「・・・・・・おれは引き合わないなあ。」 | くれてじっと,話し声はだんだん近く・・, | | | | | ○一人読みで読み|○一人読みで読み取ったことを出し合って| | しゃがんで,ふみふみ,などの情景や様子を|全 | | | | 取ったことをも| 課題を解決していきましょう。 | | 表す言葉にも着目させたい。 | | | | | とに学び合うこ| <学び合いでの支援発問> | | | | | | | と |・ごんはなぜしゃがんでまっていたのです|・二人の話の続きが聞きたくて待っていた。 |・兵十の「 えっ。」( 驚き) ,「 そうかなあ。」( 半信 | | | | | か。 |・自分の名前が出てくるのではないかと期待を| 半疑) ,「 うん。」( 納得) という会話文で分かる | | | | | | していた。 | 心の変化に,ごんの心がどのように動いてい| | | | | |・ごんは二人の話がどうなってほしいと思|・くりやまつたけをもっていってるのは自分だ| ったか心情曲線で読み取った児童の考えを生| | | | | | ってついていったのですか。 | と分かってほしかった。 | かしたい。 | | | | | | | |・つぐないだけから出た行動ではなく,ひとり| | | | | |・二人の話を聞いてごんはどんな気持ちに|・引き合わないな,がっかり,つまらないな,| ぼっちになった兵十を助けてあげたい,親し| | | | | | なりましたか。 | そんをした,おもしろくないなあ,聞かなけ| くなりたいという気持ちを持ってやった行動| | | | | | | ればよかった。悲しいな。 | であることをつかませたい。また,その気持| | | | | |・「引き合う」とはどういうことですか。|・ごんがやったということが兵十に分かること| ちや,苦労したことが兵十に通じることが引| | | | | | |・まえにやったいたずらがつぐなえたこと | き合うことであり,それが通じないごんのも| | | | | | |・いたずらをゆるしてもらえたこと | どかしさややるせない気持ちを深めていきた| | | | | | |・今までの苦労がむくわれること | い。 | | | | | | |・兵十と仲良くなれること |・「思う」と「考える」の違いについて確認さ| | | | | |・ごんは二人の話を聞いてどんなことを考|・自分だと分かってもらえずつまらないな。 | せたい。 | |○学習プリントに加筆 | | | えたでしょうか |・仕方ないのかな。あんなことしたんだから。| | | 修正ができたか。 | | | |・これからどうしようかな。 |・加筆・修正する時間をとり,自分の読みを深| | +記入できた | (5分)|5.加筆・修正をす|・自分の考えを見直し,ワークシートに書| | めさせたい。 | || | | | ること | き加えや修正をしましょう。 | | | | -記入できな | | | | | | | | |広げる|6.まとめること |○学習のまとめを書きましょう | |・学習課題に対する答えとごんに言ってあげた| |○初めの読みを増やし | | | | ・神様がやったなんてつまらないなあ。 | いことを書かせたい。 |個 | てまとめられた。 |(15分)| | | ・とても残念だなあ。おれだと分かってほ | |↓ | | | | | | しかったなあ。仲良しになりたいのにな | |全 | +読み取ったことを | | | | ・こっそり持っていったから気づかれなく | | | もとに加筆・修正 | | | | てあたりまえなのかなあ。 | | | し課題の答えとご | | | | ・もうやめようかな,どうしようかな。で | | | んに言ってあげた | | | | もいつかは分かってくれるかな。 | | | いことが書けた。 | | | | ・あんないたずらをしたんだからそう思わ | | || | | | | | れても仕方ないのかな。 | | | 0読み取ったことを | | | | | | | もとに課題の答え | | | | ・せっかくごんが毎日くりやまつたけを持 | | | とごんに言ってあ | | | | っていってあげていたのに兵十は分かっ | | | げたいことが書け | | | | てくれなかったね。あれからいたずらも | | | た。 | | |7.学習を振り返る|○今日の学習について振り返りましょう。| やめていっしょうけんめいつぐないをし |・何名かのまとめ・振り返りを発表させて,次| | | | | こと | ・初めの読みと比べて | たのにね。ごんあまりがっかりしないで | の学習への意欲をもたせられるようにしたい| |-書けない | | | ・友達から学んだこと | 元気をだしてね。 | | | | | | | ・学習方法や態度 | | | | | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−+−−−−−−+ (4)評価    自分が選んだ方法で読み取ったことを学び合いで加筆・修正し,ごんのもどかしさややるせなさを読み取ることができたか。