印刷用紙:A4縦 1ページの行数:40 1行の文字数(半角で):80   −−以下 指導案本文−−          第5学年 国語科指導案                          児童  5年1組 男16名女12名                          指導者 小綿 幸子 1.単元名 大切なものは 2.教材名 わらぐつの中の神様 3.単元について  (1)教材について      この教材はわらぐつや神様に対して「みったぐない」「そんなの迷信でしょ」     といっていたマサエが,祖母ミツの若い頃の思い出話を聞いて祖父母の温かい真     心や生き方の感動し,変容していく姿を描いた作品である。不格好だがはく人の     身になって丹精込めて編んだわらぐつを介して,本当に大切なものをしっかりと     とらえて心を通い合わせたおミツさんと大工さんの真摯な生き方・考え方が,見     かけのかっこよさ(表面的なもの)を重視するマサエの価値観を揺さぶり,マサ     エの心に変化をもたらしていくのである。全編を通じて,登場人物が皆深く心を     通わせて生活していることが,しみじみとしかも温かく伝わってくるこの物語は,     マサエと同じような価値観を持つ児童たちの心をも揺さぶらずにはおかないであ     ろう。この教材を通して児童は,物の真の価値や人間が生きていくことに誠実さ     がどんなに重要な価値をもっているのかを考え,自分の物の見方・考え方につい     ても考えを深めることができるであろう。現在→過去→現在の三場面によって描     くという額縁方式によって祖母の昔語りを前後から包み込む構成の下,全体がや     さしい物語体で書かれ,温かな雰囲気をかもし出している。また,昔語りの中で     のおみつさんと大工さんが,実は自分の祖父母であったのだと,最後には種明か     しするといった推理小説に似た手法をとっていて,三人称で語られていた人物が     最後の場面で語り手に変わるというおもしろさもある。児童は,読者を物語に引     き込むような作品の構成や登場人物の心情を生き生きと描いている表現からマサ     エに自分を重ね共感し,推測しながら深く読み進め,人物の考え方や人柄を読み     取り,主題を考えることができると思われる。作者の仕組んだ構成,擬声語・擬     態語・比喩・慣用句等を効果的に使った登場人物の心情描写や情景描写,会話の     多用等の優れた叙述の工夫に気付かせることにより児童の語句の範囲を広げ表現     力の向上を促すことができる教材である。  (2)児童の実態    ○単元の目標に照らして本単元の目標に迫り,主体的な読みの力の形成を図るため     に次のような観点で事前テストを行い,児童の実態を調査した。       @叙述に即して内容を読み取る。       A叙述から登場人物の心情を読み取る。       B登場人物の心情の変化や人柄を読み取る。       C慣用句の使い方と意味をとらえる。      その結果@については約9割の児童ができていた。できた。ABについて深く     読み取ることができていた児童は約3割程度であり,わらぐつを通して二人の心     が通い合ったことをとらえられた児童はわずかであった。また,おみつさんの心     の変化をよくとらえていた児童は,2.5割であり,およそ半数の児童はいくつ     かの叙述をつなげて心情や心情の変化を読み取る力はまだ十分とはいえない実態     である。従って,二人のもつ価値観とおみつさんの心情の変化を細かい叙述から     読み取らせていく必要がある。Cについてはどちらにも正しい言葉を入れた児童     は6割,どちらも間違った児童は3名であった。しかし,その意味をどちらもと     らえられていた児童は2割であった。体の一部を使った慣用句は本文中に12例     見られるので,具体的なイメージを喚起させながら扱っていきたい。    ○主体的な読みの力に照らして     ・叙述に即して内容を読む力       児童の大部分は事柄の推移をつかみ,叙述に即して場面の情景や人物の心情      を把握することができるようになっている。しかし,情景描写から心情を読み      取ることやいくつかの事柄をつないでより深い心情へと迫る力には個人差が大      きい。     ・自分で課題を追究する力       書き込みや初発の感想をもとに物語の読み深めに関わる課題は内容的に差は      あるものの,殆どの児童が作ることができる。個人課題を吟味し合う活動を行      う中で,自分で中心価値に迫る課題を設定できる児童も半数以上になっている。      複数学習方法で課題に対して一人ひとりが自分の考えをもつ活動をさせ,話し      合いでそれを修正したり読み深めたりして中心価値に迫るという指導過程を取      り入れて課題追究の力をつけようとしてきた。その結果,意欲的に課題解決に      取り組み,解決のための根拠となる語句や文への着目度も増してきている。し      かし,自分の考えと他との相違点,類似点を区別して根拠をもった発言をしな      がら学び合う力はまだ十分とは言えない。また,自分で方法を選択して独自で      中心価値に迫れるように追究できるまでには至っていない。従って,個々の課      題追究力を育てる支援の在り方や育てる場の工夫を検討していかなければなら      ない。     ・自他の考えや取り組みの良さに気付き,自分を向上させていこうとする力       課題に対する予想に照らしてその変容をとらえるという自己評価活動を重ね      てきたことにより自分の学習を振り返ることができるようになってきている。      またお互いの良さに気付く力も高まってきている。しかし,やや形式的になっ      ており学び合いへの意欲を持たせるような評価項目を検討していく必要がある。  (3)指導にあたって      この教材の主たる目標は,「作品に描かれている物事と人物との関係に気をつ     けて,人物の考  え方や心の動き,人柄を味わいながら,主題を読み取る」こ     とである。指導にあたっては,まず,現在→過去→現在という昔話をはさんだ作     品構成を押さえながら児童にも,祖父母の生き方を通して変容するマサエの視点     に立って読み取らせていきたい。      次に,おみつさんと大工さんを結びつけた「わらぐつ」に着目させ,優れた心     理描写から二人の考え方や人柄,心の通い合いを読み取らせ,昔語りで伝えよう     としたおばあさんの心に気付かせていきたい。そして,次第に変化していったマ     サエのわらぐつや神様に対する考え方を読み取らせ,わらぐつの中にいる「神様」     に迫ることによって,作品の主題を明らかにしていきたい。また,大切なものと     して描かれている「雪げた」や「わらぐつ」をイメージさせ,そこに込められて     いる「心」をとらえられるように支援しながら学習を進めたい。その中で,児童     一人ひとりの読み取りが主題とする方向へ読み深められるよう,個々の感想も大     事にしていきたい。      主題を追究する整理の段階では,対比されている物や考えを問うことによって     主題に迫るという方法を取り,児童に物の見方・考え方を考えさせるようにした     い。更に,「自分の大切な物について書く」という活動を設定して,読み取った     ことを基に内容的には,物の形・色・感じ,なぜ自分にとって大切なのかなどを,     叙述の工夫では,色彩などの描写,比喩,慣用句の使い方,心情表現などを,表     現面では構成の仕方などを自分の作文に生かして書く活動へつなげていきたい。     これにより,作品のとらえを一層深めていきたい。児童が,既習の経験を生かし     てこれまでにみにつけた力を伸ばし,一人ひとりが自ら解決の視点をとらえ,自     力で中心価値に迫る読み取りができるようにするために,指導計画を柔軟に組み,     複数課題複数学習方法による学習活動を取り入れていきたい。一人読みを基に学     び合いをするという流れで学習を進め,学び合いでは,自分や自分たちの読みを     否定するのではなく,より良いものへと高めるという意識をもって行うようにさ     せたい。そのため学習プリントは加筆・修正できるようなものとし,その時間を     保障して次の活動に生かせるようにしたいと考えた。 4.目標  《関心・意欲・態度》    ○物の本質的価値に対する人物の考え方や心の動きを読み取り,物の見方,人に対     する見方を深め,自分の生き方を考えようとする。  《表現》    ○聞いたり読んだりした内容から素材を選び,読み手に良くわかるように構成や叙     述を工夫して書くことができる。  《理解》    ◎作品に描かれている物事と人物との関係に気をつけて,人物の考え方や心の動き,     人柄を味わいながら,主題を読み取ることができる。  《言語》    ○常体と敬体の違いを理解し,使い分けて文章を書いたり,慣用句への関心を深め,     語句の範囲を広げることができる。 5.学習指導計画(13時間扱い)  第一次(3時間)  ○題名について考えながら全文を読み,学習課題を設定する。 (1)全文を通読し,粗筋を確認して場面分けをする。目的・目標を設定する。 1 (2)第一次感想と自分の課題を書き,学習方法を決定する。 1 −−−−−−−−−−−−−−− (3)学習課題を設定する。 1  第二次(7時間)  ○学習課題に従って内容を読み取る。 (1)わらぐつの対するマサエとおばあちゃんの考えの違いを読み取る。 1 (2)雪げたに引きつけられるおみつさんの気持ちを読み取る。 1 (3)心を込めて編んだわらぐつが町の人たちに笑われたおみつさんの気持ちを読み取る。2 (4)おみつさんと大工さんの心の通い合いを読み取る。2(本時) (5)おばあちゃんの話を聞いたマサエの感動と変容をを読み取る。 1  第三次(3時間)  ○作品の主題について考え,作文を書く。 (1)文章構成をとらえ,主題について考える。 1 (2)自分の大切なものについて作文を書く。 2 6.本時の指導  (1)ねらい      複数課題複数学習方法による学び合いを通して自分の読みを拡大・深化させ,     わらぐつを介してのおみつさんと大工さんの心の通い合いを読み取り,感想を持     つことができる。  (2)指導にあたって      本時は,課題追究力を育てることをねらいとして,課題を複数にして複数学習     方法での一人読みをもとに学び合いでの加筆・修正を通して自分の考えを再構成     し,中心価値に迫らせる活動を組んだ。2単位時間扱いとし,複数学習方法での     一人読みや,学び合いでの加筆・修正がスムーズにできるように学習プリントを     用いて進めたい。また,自分の初めの読みを学び合いで深め広げることを導入で     意識づけて,学び合いに意欲的に参加させたい。中心価値に迫る解決を解決をす     るために着目させたいのは「わらぐつ」であるが,事前テストの結果から,わら     ぐつに同じ価値を見い出したことに気付けた児童はわずかであった。また,おみ     つさんと大工さんの心情を深く読み取ることやおみつさんの心情の変化をとらえ     ることがよくできていなかった。そこで,学び合いでは,不格好さに引け目を感     じていたおみつさんが大工さんの考えと自分がわらぐつを編んだときの考えと同     じだと気付き,大工さんに好意を持つようになっていくという気持ちの変化を読     み取らせていきたい。同時に,大工さんもまた同じ価値観をわらぐつに見い出し,     それを作ったおみつさんにプロポーズしたことを読み取らせたい。      また,児童が初めの読みで気付かなかった細かい叙述の工夫にも目を向けさせ     て,二人の心の通い合いをとらえられるように支援していきたい。学び合い後は,     自分の読みに加筆・修正をする時間を設定して児童一人ひとりが自分の読み取り     を再構成し,二人が一番大切に考えていたことについても入れてまとめさせたい。     そして,作文を書くための内容的な素材となる「その物がなぜ自分にとって大切     なのか」を考えることへとつなげていくようにさせたい。自己評価では,自分の     初めの読みを学び合いでどのくらい深め広げられたかや,学習への取り組み(学     習方法,学び合いなど)について振り返らせ,次への意欲を持たせたい。 (3)展開(2時間扱いの2時間目) +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |段 階| 学 習 活 動 | 教 師 の 働 き か け | 期 待 す る 児 童 の 反 応 | 指 導 上 の 留 意 点 |活動形態| 評 価 | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+ | | | | |つかむ|1.本時学習課題を|@おみつさんの大工さんに対する気持ちはどう変わっていったのだろうか。| |・二つの課題で読み進めていくことを確認する| 全 | | | (5分)| 確認すること |Aなぜ大工三は,おみつさんにおよめに来てくれといったのだろうか。 | | | | | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+ | | | | | |2.学習方法と読み|○自分の選んだ方法で二人の気持ちを読み|・大工さんの会話文 ・文末表現 |・自分の初めの読みを学び合いで加筆・修正で| | | | | 取りの着眼点を| 取っていくのにどんなことに目を向けて|・おみつさんの様子や会話文 ・表記方法 | きるように取り組み,まとめに生かせるよう| | | | | 確認すること | 読み取りましたか。 |・言葉遣い ・気持ちの表れている文 | にすることを意識づける。 | | | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |深める|3.学習場面を読む| | | | | | | (20分) こと | | | | | | | |4.読み深めること| | | | | | | | ○根拠とした言葉|○それぞれの方法でどの言葉や文から考え|@について |・自分が根拠とした言葉や文と友達が出したも| 全 | | | | や文を発表する| たか発表しましょう。 |・顔を見るのが楽しみ ・不思議 | のとの共通点・相違点を学習プリントでチェ| | | | | こと | |・「まあそりゃどうも−−。だけど−−。」 | ックさせる。 | | | | | | |・きょうしゅくする | | | | | | | |・こっくりこっくりうなずきながら | | | | | | | |・とてもたのもしくてえらい人 | | | | | | | |・白いほおが夕焼けのように赤くなりました。| | | | | | | |Aについて | | | | | | | |・次の市の日にも,−−市へ出るたびに−−。| | | | | | | |・「ああ,そりゃ,じょうぶでいいわらぐつだ| | | | | | | | から−−−−買ってやったんだよ。」 | | | | | | | |・「−−−仕事のよしあしは分かるつもりだ。| | | | | | | | いい仕事−−いなりたいと思ってるんだ。」| | | | | | ○一人読みで読み|○一人読みで読み取ったことを出し合って|@について |・友達の読み取りとの共通点や相違点について| 全 | | | | 取ったことを基| 課題を解決していきましょう。 |・いつも不細工なわらぐつを買ってくれるやさ| 意見を交換できるように,児童が出した言葉| | | | | に学び合うこと| | しい人だ。 | や文を手がかりにして読み深めていく。 | | | | | |《支援発問》 |・ありがたい人だ。 |・@とAの課題を別々に読み進めるのではなく| | | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−+| ↓ (大工さんの話を聞いて) | 二人の気持ちを関わらせながら読ませていき| | | | | ||『おみつさんは大工さんの顔を見るの||・自分と同じ考え方で仕事をしている人だ。 | たい。 | | | | | || が楽しみになっていました〜。』と||・たのもしくて,えらい人だ。 |・学び合いの途中でも加筆・修正ができるよう| | | | | ||『うなずきながら聞いていました。』||・しっかりした考えをもっている真面目な人だ| に学習プリントを工夫したい。 | | | | | ||ではおみつさんの気持ちがどう違うの||・自分の考えをはっきり言い切っているからと|・おみつさんの気持ちが大きく変化する前と後| 全 | | | | ||でしょう。 || ても尊敬できる人だ。 | をとらえることにより,二人の心の通い合い| | | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−+|・信頼できる人だ。 | をはっきりととらえさせたい。 | | | | | | |・自分の仕事に自信を持っている素敵な人だ。|・読みが不足している時は教師が《支援発問》| | | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−+|Aについて | をして進めたい。 | | | | | ||二人とも一番大切に考えていることは||・おみつさんのわらぐつに本当の価値を見抜き|・うなずきの理由を深めさせ,大工さんの話を| |○学習プリントに加筆| | | ||何でしょう。 || 自分と同じ考え方をしている人だと分かった| おみつさんがどう受け止めているかをとらえ| | 修正ができたか | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−+| から。 | られるように支援していきたい。 | | ++まとめで入れた| | | | |・働き者で正直な,人の心を気遣ってくれる心| | | | いことについて| | | | | 温かい人だと思ったから。 | | | | 記入できた | | (5分)|5.加筆・修正をす|○自分の考えを見直し,学習プリントに書| |・加筆・修正をする時間を保障して自分の読み| 個 | +0記入できた | | | ること | き加えや修正をしましょう。 | | を深めさせたい。 | | +−記入できない | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | |広げる|6.まとめること |○学習のまとめをして感想を書きましょう||二人は「外見でなく使う人の身になって心を|・まとめには二人の一番大切に考えていること|個→全 |○初めの読みを増やし| | (15分) | |込めて作ることを一番大事にする」という同じ| も入れさせて自分の作文へつなげていく。 | | てまとめられたか | | | | |考え方をしていた。大工さんはおみつさんの心| | | ++心の通い合いと価値観を入れて | | | |をわらぐつから見抜いていて,人柄も分かり,| | | | まとめ,感想を書けた | |7.学習を振り返る|○今日の学習について振り返りましょう。|おみつさんにプロポーズした。おみつさんも自|・何名かのまとめ・振り返りを発表させて,次| | +0心の通い合いを入れてまとめ, | | こと | ・初めの読みと比べてどの位増やせたか|分と同じ考えを自信を持って言い切り,自分の| の学習への意欲を持たせられるようにしたい| | | 感想を書けた。 | | | | ・友達から学んだこと |ことを分かっていてくれた大工さんを信頼でき| | | +−感想のまとめを書けた。 | | | ・学習方法や態度 |る素晴らしい人だと思い,ひかれていった。 | | | | | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ (4)評価   自分が選んだ方法で読み取ったことを学び合いで加筆・修正し,おみつさんと大工さんの心の通い合いを読み深められたか。