印刷用紙:A4縦 1ページの行数:50 1行の文字数(半角で):92   −−以下 指導案本文−−          第5学年 国語科指導案                                児童 5年2組 男15名女12名                                指導者 佐々木 得洋 1.単元名 人物の結び付きを 2.教材名 「大造じいさんとガン」 椋鳩十作 3.単元について  (1)教材について      本教材は,狩人の大造じいさんとガンの頭領残雪との間に繰り広げられる生存をかけた厳し     い戦い(知恵比べ)と,好敵手残雪への大造じいさんの素直な感動が描かれた作品である。      教材文は,前書きと四つの場面からなっている。一年間という単位の中で一つずつの出来事     を丹念に描き,それを次の戦いへの伏線として設定し,その上に次の年の出来事を積み上げて     いくという形式を取っている。物語は次の五つの場面から構成されている。前書き 大造じい     さんの人物紹介とともに,この物語成立の背景を語っている。主題を考える手がかりとなる場     面でもある。さらに,締めくくりの「さあ,大きな・・・」という表現によって,読者を物語     へと引き込んでいく働きをする場面       @ 特別な仕掛けが失敗する場面       A 慎重な策略も見破られて失敗する場面       B 頭領らしい残雪の態度に強く心を打たれる場面       C 春の朝,残雪を空に放す場面      Bの場面の前半までは,大造じいさんと残雪との駆け引きによって話が展開する。「今年こ     そは」と狩人としての長年の経験を生かして計りごとをめぐらす大造じいさんと,それを見事     に見破る残雪との戦いが,大造じいさんの行動を写す細かな描写と,秋の空や日の光を中心に     した巧みな自然描写によって生き生きと描かれている。期待する心と,それを見破られいまい     ましく思う心とが織り成す大造じいさんの心情が読者に伝わってくる。後半は,思いがけない     展開の連続である。ハヤブサとの熾烈な戦いの中で,大造じいさんは仲  間のために命をか     ける残雪の崇高な姿に,心を打たれてしまうのである。作者の構成の妙と美しい情景描写や擬     声語・擬態語等の生き生きとした表現は,物語を読む楽しさを味わわせ,心情の動きや人間性     について読み取り,心の交流について考えるのにふさわしい教材である。  (2)児童の実態    ○単元の目標に照らして本単元の目標に迫り,主体的な読みの力の形成を図るために,次の観点     で事前テスト・実態調査を行い,児童の実態を把握した。       @叙述に即して内容を読み取る。       A叙述から心情を読み取る。       B慣用句の意味をとらえる。       C学習課題を設定する。      その結果@については多くの児童がとらえることができた。Aの選択問題においてはほとん     どの児童が正しい解答を選択することができたが,「ただの鳥に対しているような気がしなか     った」大造じいさんの心情を記述で答える問題については正確にとらえていた児童はわずかだ     った。読み取りの中でガンの実態についてもふれ,残雪の傑出した  リーダーシップを際立     たせるような展開を考えていく必要がある。Bについて2問とも正しい解答をしたのは半数程     度であった。大造じいさんの心情と慣用句を結びつけながら学習活動の中で扱っていきたい。      Cについては,ほとんどの児童が残雪の行動についての課題を設定していた。気持ちが変化     していくのは残雪ではなく大造じいさんであることを意識させながら学習課題を設定していく     必要がある。    ○主体的な読みの力に照らして     ・叙述に即して内容を読む力       物語文の学習にはいる前に全文視写を行い,登場人物の心情や場面の様子などについて書      き込みを行ってきた結果,どのような言葉に着目して考えれば良いのかということが分かっ      てきた。ただ,場面の様子から心情を自力で読み取れる児童は約半数程度であり,助詞など      の細かい表現にも気をつけて読み取っている児童はわずかである。また,いくつかの事柄を      つなげて登場人物の心情をとらえる力は十分とはいえない。     ・自分で課題を追究する力       一人読みの段階で,疑問に思ったことやみんなで考えたいことを書き留めていくことでほ      とんどの児童は抵抗なく課題を作ることができる。ただグループでの話し合いの中で根拠や      考えたいこと,相違点をはっきりさせて考える力はまだ不十分である。課題解決の方法とし      ては,自分で学習方法を考えたり,場面によって適切な方法を選択する段階には至ってない      が,全体の学習で学んだことを自分の中で再構成しまとめることができるようになってきた。     ・自他の考えや取り組みの良さに気付き,自分を向上させていこうとする力       学習活動の中に自己評価活動を取り入れてきた結果,自分の考えの変容に気づいたり,友      達の良さに気づくことができるようになってきた。友達の良さを自分の活動の中に取り入れ      ていくことを意識付けていきたい。  (3)指導にあたって      本教材で残雪との戦いの中で,残雪の仲間を救おうとする姿,威厳に満ちた態度に心を打た     れ,心を通わせていく大造じいさんの心情の変化を読み取っていくことが中心となる。したが     って各場面の学習は大造じいさんの心情を追って行くことになるが,文章の中で度々表れる空     の様子などの情景描写と関連づけて考えさせていくことでより深く心情の把握ができるように     導いていきたい。特に大造じいさんの自分の作戦に対する絶対の自信とガンに対する見方をし     っかりと学び取らせることで残雪の偉大さを際立たせ,大造じいさんの感動を読み取れるよう     にするとともに,児童が物語の世界に浸ることができるようにしていきたい。また,学び合い     の際の自分の考えを書く活動では,根拠をはっきりさせて予想を立てさせることで課題を解決     する力を高めていきたい。 4.目標  《関心・意欲・態度》    ○自然描写の美しい表現に気付き,情景描写と心情との関わりに関心を持って物語を読み味わお     うとする。  《理解》    ◎場面が移り変わるとともに,人物の結びつきや気持ちが変化する様子を,主題や要旨について     考えながら読み取ることができる。  《表現》    ○読み取った情景や気持ちが聞き手にもよくわかるように,音量や速さなどを工夫して朗読する     ことができる。    ○主題について考えながら感想をまとめ,話し合ったり,整理して文章に書くことができる。  《言語》    ○慣用的表現,熟語,動きを表す語,様子を表す語,色彩語についての理解を深め,自分の文章     に生かすことができる。 5.学習指導計画(12時間扱い)  第一次(4時間)  ○題名について考えながら全文を読み,学習課題を設定する。 (1)粗筋を確認し,場面ごとに小見出しをつける。 1 (2)第一次感想を書き,学習の見通しを持って個人課題を設定する。 1 (3)学習課題を設定し,学習計画を立てる。 2(本時〓)  第二次(5時間)  ○場面ごとに情景や人物の気持ちを深く読み取り,学習課題を解決する。 (1)残雪の知恵の素晴らしさを改めて思い知らされた大造じいさんの心情を読み取る。 1 (2)自信を持っていた作戦が失敗に終わり,来年こそはと意気込む大造じいさんの心情を読み −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 取る。 1 (3)大造じいさんがおとりのガンを使う作戦を取るに至った背景と,ガンの群れを待つ大造じ −−−−−− いさんの心情の高まりを読み取る。 1 (4)残雪の誇り高い態度にふれた大造じいさんの心情の変化を読み取る。 1 (5)これまでの戦いを振り返りながら,英雄と呼びかけながら残雪を見送る大造じいさんの気 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 持ちを読み深める。 1  第三次(3時間)  ○主題について考え,感想をまとめる。 (1)大造じいさんの気持ちの変化を読み取り,主題について考える。 2 −−−−−−−−−−−−−−−−− (2)感想を深めて書く。 1 6.本時の指導  (1)ねらい      グループでの話し合いを振り返りながら,より中心価値に迫る課題の作り方について理解を     深めることができる。  (2)指導にあたって      本時では個人で作った課題をグループで話し合い,グループの課題を吟味し合って全体課題     を設定する。実態調査によれば,三の場面の課題を残雪の行動について注目したものにする児     童が多かった。そこで,「大造じいさんの気持ちの変化読み取っていこう」という単元全体の     課題を設定し,読みの方向性を持たせ,場面ごとだけではなく単元全体を通して大造じいさん     の心情について考えていくことを意識づけたい。特に個人課題課題を作る際には,「大造じい     さんの気持ちについて考えられる学習課題を作ろう。」,「大造じいさんの言動に注目して課     題を作ろう。」という学習の目当てを設定し,読みの方向性に沿いながら,中心価値に迫るこ     とができるような課題を作ることができるようにしたい。      また,その課題を作った根拠はっきりともち,学習プリントに記入させておくことで,話し     合いの時に根拠に基づいた議論ができるようにしたい。本時においても,まず先述の目当てを     確認して話し合いの方向を確認する。グループでの話し合いの際には,学習プリントを基に根     拠をはっきりさせて発表することを意識けながら話し合いを進めることができるよう机間巡視     をしながら助言していきたい。話し合いが不活発な場合には,学習プリントを見せ合って他の     児童の考えに気づかせるなどの方法を指導していきたい。      また,全体課題を設定した後で自分の作った課題について振り返る活動を取り入れることで     中心価値に迫る課題を自力で設定する力を育成するとともに,次の場面の課題について話し合     う際の材料としたい。      なお,学習課題が一つにまとまらないときは無理に一つに収束せずに複数の学習課題を設定     し,複数課題学習方法での読み取りを行うようにしたい。 (3)展開 +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |段 階| 学 習 活 動 | 教 師 の 働 き か け | 期 待 す る 児 童 の 反 応 | 指 導 上 の 留 意 点 |活動形態| 評 価 | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |つかむ|1.前時の学習を想|○前の学習では場面ごとに個人で課題を作| |・「大造じいさんの気持ちの移り変わりについ| 全 | | | (5分)| 起し,本時の学| りました。今日はそれを班で話し合って| | て考えよう」という単元を通しての課題を提| | | | | 習の目当てを確| 共通課題を作りましょう。 | | 示し方向性を持たせる。 | | | | | 認すること |○学習の目当てを確認しましょう。 | |・大造じいさんの言動に注目して課題を設定す| | | | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+ | | | | | | | 大造じいさんの気持ちの変化について考えられる学習課題を作ろう。| | ることを確認することで中心価値に迫る課題| | | | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | | | | | 大造じいさんの言動に注目して課題を作ろう。 | | を作りやすいようにする。 | | | | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+ | | | | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+ | |深める|2.1の場面を音読|○大造じいさんの気持ちが,1の場面の中|◎「ううむ。」と思わず感たんの声をもらして|・前時までにワークシートに自分の考えた課題| | | | (30分) し,学習課題を| でどんなふうに変わっていくのか考えな| しまった大造じいさんの気持ちを考えよう。| とその根拠を書き込ませ,話し合いの際に根| | | | | 設定すること | がら聞きましょう。 |・わけは,この言葉の中に大造じいさんの気持| 拠をはっきりさせながら課題を設定できるよ| | | | | | | ちが強く表れているから。 | うにしたい。 | | | | | |○自分の考えた課題をその課題に作った理|・「感たん」という言葉から大造じいさんの気|・グループでの話し合いの際には,根拠や考え|グループ|○根拠をはっきりさせ| | | | 由をはっきりとさせながら出し合い,グ| 持ちがわかるから。 | たいことをはっきりさせて話し合えるように| | て話し合いに参加す| | | | ループの課題を作りましょう。 |・はじめはたかが鳥と思っていたのが,見破ら| 机間巡視をしながら指導したい。話し合いが| | ることができたか。| | | | | れてしまって,大造じいさんの気持ちが変化| 不活発な場合には,ワークシートを見せ合う| 全 |++根拠をはっきりさ| | | | | しているのが分かるから。 | などの方法を指導していきたい。 | || せて参加していた| | | | | | | ||0話し合いに参加し| | | |○グループで話し合った課題を発表してく| | | || ていた | | | | ださい。 | |・作戦に失敗して,改めて残雪の知恵に感心さ| |+−話し合いに参加で| | | |○1の場面の課題は「・・・」で,感たん| | せられる大造じいさんの心情を読み取ること| | きない | | | | の声をもらしてしまった大造じいさんの| | ができる課題を設定させたい。 | | | | | | 気持ちについて考えていきましょう。 | |・本時の学習の目当てに沿って自分の課題がど| 個 | | | | |○自分の作った課題について学習の目当て| | うだったか振り返らせるとともに,次の場面| | | | | | にあったものだったか振り返りましょう| | の課題についてもう一度考えさせ,自分の課| | | | | | | | 題をより学習の目当てに沿った課題に修正で| | | | | | | | きるようにしたい。 | | | | |3.2の場面を音読|○大造じいさんの気持ちが1の場面と比べ|◎「ううん。」とうなってしまった大造じいさ| | | | | | し,共通課題を| てどうなったか考えながら聞きましょう| んの気持ちを考えよう。 | | | | | | 設定すること |○自分の考えた課題をその課題に作った理|・わけは,また作戦を見破られてしまった気持|・グループでの話し合いの際に,自分の課題を|グループ| | | | | 由をはっきりとさせながら出し合い,グ| ちがわかるから。 | 修正した理由などを明らかにしながら話し合| | | | | | ループの課題を作りましょう。 |・1の場面と比べて,悔しい気持ちが強くなっ| いに参加させたい。 | | | | | |○グループで話し合った課題を発表してく| てきていると思ったから。 | | 全 | | | | | ださい。 |・来年こそ絶対に残雪をやっつけてやるという| | | | | | |○2の場面は「・・・」にして,作戦を見| 気持ちが強くなって来ていて,それがこの言|・自分の作戦に対する自信と,それを見破られ| | | | | | 破られて「ううん。」とうなってしまっ| 葉に表れていると思うから。 | てしまったがために高まっていく悔しい気持| | | | | | た大造じいさんの気持ちについて考えて| | ちを読み取って行けるような課題を設定させ| | | | | | いきましょう。 | | たい。 | | | | | |○自分の作った課題について学習の目当て| | | 個 | | | | | にあったものだったか振り返りましょう| | | | | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+ | |広げる|5.学習を振り返る|○今日の学習について自己評価をしましょ| |・自己評価カードを用いて記入させる。 | 個 |○分かったことや出来| | (10分) こと | う。 | | 評価項目 | | るようになったこと| | | | | | ・課題作りで分かったことや,出来るように| | があったか | | |6.次時の学習につ|○次の時間には,3の場面・4の場面・5| | なったこと | |++2つ以上 | | | いて確かめるこ| の場面の学習課題をみんなで決めていき| | ・話し合いの中で発言することができたか | ||01つ | | | と | ましょう。 | | ・自分の考えの参考になった人(意見) | |+−なし | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ (4)評 価   学習の目当てに沿って,根拠をはっきりさせながら話し合いに参加し,課題作りの仕方について理解を深めることができたか。