印刷用紙:A4縦 1ページの行数:50 1行の文字数(半角で):94   −−以下 指導案本文−−          第6学年 国語科学習指導案                                      児童 6年2組 男15名女16名                                      指導者   八幡 美奈子 1.単元名  豊かに想像して 2.教材名  やまなし 3.単元について  (1)教材について      この教材は,「小さな谷川の底を写した二枚の青い幻灯です。」の一文で,読者を幻想的な谷川の世界に     誘うことから始まり,「私の幻灯は,これでおしまいであります。」と読者の心に余韻を残した一文で終わ     っている。二枚の幻灯とは,第一話「五月」と第二話「十二月」である。      この二話によって一編の物語「やまなし」は構成されている。「五月」は,あらゆる生物がまばゆい陽光     の中で,自らの生命を謳歌し始める季節である。その中では春の息吹きと共に生命の躍動する様子や情景が     描かれている。しかし,そこにはかわせみ,魚,クラムボンに象徴されているように弱肉強食の争いがあり,     厳しい生存競争が繰り返される世界がある。「十二月」は,すべてが枯れ果て,冷たく寂しい季節である。     冷たい静寂の月夜,その美しい月光の中で,のんびりと豊かに時を楽しむかにたち。ここには奪うことも奪     われることもない世界の穏やかさ,温かさ,平和がある。そこに落ちてきた「やまなし」は,自らを与える     ものであり,自然の豊かな恵みである。自らの生をまっとうし,機熟して落ち,自らの存在を他の豊かさ喜     び,希望とする「やまなし」である。この作品は,色彩語・擬態語・擬音語・比喩表現が随所にちりばめら     れており,作者自身の造語もある。それらが反復・対比・象徴・暗示されながら,効果的にかにの親子の住     む谷川の世界を詩情豊かに描いている。これらの優れた表現を読み味わいながら,児童一人ひとりが     「二枚の幻灯」の世界をイメ−ジ豊かに広げることができるであろうと考える。   (2)児童の実態     ○単元の目標にてらして       本単元の目標にせまり,かつ主体的な読みの力の形成を図るために,次の観点で事前テストを行い児童      の実態を調査した。         @叙述に即して場面の内容を読み取ることができるか。         A叙述から情景を想像することができるか。         B比喩表現や擬態語から情景を想像することができるか。       その結果@については,ほとんどの児童が読み取ることができている。しかし,Aの情景の想像につい      ては,言葉に着目しながらイメ−ジ豊かに想像しているのはほんの数名であった。これは,言葉や文に着      目しているものの,イメ−ジが広げられず単語で表現している児童が多く,断片的な読み取りであった。      そのため,言葉や文を結びつけ,関連づけながらイメ−ジ豊かに読み  取る力が不十分であると考えら      れる。       Bについては,7割の児童が比喩表現や擬態語に着目することができるものの、そこからイメ−ジを広      げて書ける児童は少ない。     ○主体的な読みの力の形成にてらして      ・叙述に即して内容を読む力        これまで児童は,言葉や文から内容を読み取り,それをもとに主題を考える学習を行ってきた。その       結果,叙述に即して事柄の大体を読み取る力は身についてきている。主題把握にかかわる言葉や文への       着目も良くなってきた。      ・自分で課題を追究する力        物語の読み深めに関わる課題は,書き込みや初発の感想をもとに,内容に差はあるものの9割の児童       が作ることができる。このうち半数は中心価値にせまる課題を作ることができるようになっている。課       題解決の手順については大体わかっており,解決の見通しをもって読み取れるようになってきている。       しかし,読み取ったことを再構成し,中心価値にせまる力は不十分である。      ・自他の考えや取り組みの良さに気付き,自分を向上させていこうとする力        全体で課題を解決する前に予想を立てておき,その変容をとらえるという自己評価活動により,予想       に照らして自分の学習を振り返ることができるようになってきている。また,お互いに意見を発表し合       うことで,自分の読み,全体の読みが深まったかどうかを考えるようになってきている。  (3)指導にあたって      同一課題複数学習方法を通して,自分たちで学習方法を選択し,自分たちの課題で中心価値に迫れるよう     にしていきたい。そのために,読み取りの視点を明確に持たせたい。書き込みを中心とした一人読みの後,     読み取ったことをグル−プでまとめ,さらに,それをもとに全体での学び合いへとすすめていきたい。学び     合いでの読み取りが浅い場合は,教師の発問で深めていきたい。      学び合い後は,加筆修正して読みを広げていきたい。また,作品には,賢治独特の造語・色彩語・擬音語     ・擬態語・比喩表現がいたるところにある。それらの一つひとつの言葉が,情景描写のなかでどのような働     きをしているか,しっかりとおさえながら情景を想像させていきたい。しかし,児童の実態からすると,こ     れらの言葉から情景を豊かに想像することは容易なことではない。そこで,一つひとつの事柄について情景     を思い浮かべることができるように,かにから見た谷川の情景という視点を与えたり,「明暗」,「静動」     「生死」など,対比する言葉に着目させながらイメ−ジを持たせていきたい。そして,学び合いのなかで友     達のイメ−ジにふれながら,自分のイメ−ジを広げていくようにしたい。また,「五月」と「十二月」の構     成生物や情景の対比,題名などから作品の主題についても考えさせていきたい。 4.目標  《関心・意欲・態度》   ○同一作者の作品と読み比べて,作者のものの見方や考え方について気がついたことをまとめることにより,自    分の考えを深めようとする。  《表現》   ○聞き手にも内容がよく味わえるように,抑揚や強弱などを工夫して朗読することができる。  《理解》   ◎優れた表現を読み味わい,日本語の表現効果に関心を深め,物語のイメ−ジを豊かに広げることができる。  《言語》   ○色彩語や擬音語・擬態語などに着目し,その役割や効果について理解することができる。 5.学習指導計画(12時間扱い)  第一次(4時間)  ○疑問や感想,読みの目的をもとに,学習計画を立てる。 (1)全文を通読し,2枚の幻灯に映っているものをさがし,あらすじを確認する。 1 −−−−− (2)第1次感想と自分の課題を書く。 1 (3)共通学習課題を設定し,グル−プごとに学習方法を選択する。 2  第二次(5時間)  ○グル−プや全体での学び合いを通じて学習課題を解決する。 (1)「五月」の情景を読み取る。 (本時2/2)2 (2)「十二月」の情景を読み取る。 2 (3)「五月」と「十二月」の情景を対比して読み取る。 1  第三次(1時間)  ○主題について考え,感想をまとめる。 (1)読み取ったことをもとに,主題と題名「やまなし」の関わりについて話し合い,主題をと −−−−−−−−−−−−−−−−−− らえた感想文を書く。 1  第四次(2時間)  ○賢治の他の作品にふれ,感想を発表し合う。 (1)他の作品を読み,作品から受けた印象,感じたことなど,自分なりの表現の仕方でまと −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− め,発表し合う。 2 6.本時の指導  (1)ねらい      同一課題複数学習方法により,「五月」の谷川の情景について構成する生き物や,水の中の様子に関する     叙述を読み取ることにより,自分なりにまとめることができる。  (2)指導にあたって      自分の読みをしっかり持たせ,学び合いでの加筆修正がスム−ズにできるように学習プリントを用いて進     めたい。自分の初めの読みを学び合いで増やしていくことを導入で意識づけて,学び合いに意欲的に参加さ     せたい。本時ではグル−プ活動を多く取り入れている。これはグル−プ内で読み取りの学習を進めることで,     読み取りの力が不十分な児童や,自分の読みに自信のない児童が学び合いの中で力を高め自分の読みを進め     られるようにという意図がある。また,学習における主体性を高めるために,学習プリントの形式は児童自     身の考えたものを取ることにした。学習は,個の読み取り,グル−プの読み取り,全体での学び合い,とい     う流れで行う。全体の学び合いでは,グル−プ毎に読み取ったことを,発表をもとに話し合い,加筆・修正     して一人ひとりの読みが深められるようにしていきたい。そして、自分たちの読みを否定するのではなく,     よりよいものをめざすという意識を持たせるようにしていきたい。そのため,学習プリントは加筆・修正で     きるものとし,学び合い後は,児童一人ひとりが自分の読み取りを整理してまとめられるように,時間を十     分に保障したい。各グル−プ毎に課題を設定したところ,個々に細かな課題はあったが,ほとんどが「谷川     の情景を読み取ろう。」という包括した課題であった。そこで、かにから見た谷川の情景,五月を構成する     生き物の関係,水の中の様子などの読みの視点を持たせていろいろな角度から「五月」の谷川の底の情景を     想像させたい。学習方法は,今まで経験したものを選択させたい。これまでに経験したことは,部分視写,     書き込み,書き抜き,文図,日記,手紙などがある。学び合いでは,なぜ,そのように読み取ったかという     根拠をはっきりと述べ合うことを前提にすすめていきたい。その際,各グル−プが,どの言葉や文を根拠に     どのような読み取りをしたかを事前に評価しておき,話し合いが膠着したり,読み取りが浅い場合は,教師     の発問を入れて読みが深められるように支援していきたい。学び合い後は,自分の考えに加筆修正する時間     を設定して,児童一人ひとりが自分の読み取りを整理してまとめられるようにしていきたい。また,何人か     にまとめの発表をさせ,友達の発表からも学ばせたい。自己評価では,「自分の読みはどのグル−プのどん     な読みで深まったか。」,「自分の選択した学習方法は課題解決するのに適切であったか。」の二つの観点     から振り返らせ,自分の読みの変容に気づかせていきたい。 (3)展開 +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |段 階| 学 習 活 動 | 教 師 の 働 き か け | 期 待 す る 児 童 の 反 応 | 指 導 上 の 留 意 点 |活動形態| 評 価 | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |つかむ|1.本時の課題を確|+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+ |・五月を構成する生き物の関係,五月の水の中| 全 | | |(3分) | 認すること ||かにから見た「5月」の谷川の情景を読み取ろう。| | の様子(光,色,動きなど)の二つの視点か| | | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+ | 読み取っていくことを確認する。 | | | | | | | | | | | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |深める|2.本時の場面を読|○課題解決の根拠となりそうな文を確認し| |・二つの視点から読み取ったことをもとに,「| 個 | | |(22分)| むこと | ながら読みましょう。 | | 五月の谷川の情景を読み取る。」という話し| | | | | | |・五月の水の中の様子 | 合いの目的を確認してから音読にはいる。 | | | | |3.全体で読み深め|○どのような視点で,どの言葉や文を根拠|+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | |○グル−プ内で読み取| | | をすること | に読み取ったのかを発表しましょう。 ||・まわりは青く暗いけど,かにのいるところは青白くそこだけ明るい。 ・なぜ,そのように読み取ったのか根拠をはっ 全 ったことをもとに, | | | ||・日光の光が黄金の雨のように降ってくる。光のあみがゆらゆらゆれ,夢のように きりさせて発表させる。 加筆・修正できたか | | | || 美しい。・静かでゆったりとしている。 || | |+−+ 記入できた | | | |○他のグル−プの読み取りに質問や意見が|+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+|・話し合いが膠着してしまうときや,読み取り|グル−プ|| | | | | あったら出し合いましょう。 | 青白い・青く暗く鋼のように・日光の黄金は| が浅い場合は,教師の発問を入れて,全体あ| |+−− 記入できない| | | | | 夢のように・波から来る光のあみ・白いかば| るいはグル−プで考えさせ,読みを深めるよ| 全 | | | | | | の花びら・静かに砂をすべり。 | うにしたい。 | | | | | | |・五月を構成する生き物の関係。 |・弱肉強食の関係がでないときは,「殺された| | | | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| 」「取ってる」「鉄砲玉のようなもの」「い| | | | | | ||・最初は,クラムボンが笑ったりして明るく楽しい感じがするが,殺されたりして きなり」「それっきり」「かわせみ」「魚は | | | | ||不気味な感じがする。そのうえ,かわせみが魚を捕ったりしてとても恐ろしい。 こわい所へ」「こわいよ」「だいじょうぶだ | | | | ||あとから,お父さんがにが「おれたちにはかまわない。」と教えてくれる。 」などの言葉から,不気味,怖い,恐ろしい | | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| などのイメ−ジを持たせたい。 | | | | | | | 笑った・殺された・何か悪いこと・取ってる| | | | |(5分) |4.加筆・修正をす|○学習プリントに書き加えや修正をして答| 鉄砲玉のような・いきなり・かわせみ・こわ|・学習プリントに加筆・修正させて読みの拡大| 個 | | | | ること | えをまとめましょう。 | い所へ・だいじょうぶだ。 | 深化を図る。 | | | +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ |広げる|5.まとめること |○加筆修正した学習プリントを基に自分の|+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+|・時間を保障し,学習プリントを見ながら自分|個→全 |○読み取ったことを | |(15分)| | 考えを再構成して課題の答えをまとめま|| 春の明るい日差しのなかで生き物たちが|| の予想から読みが広がったことを書かせたい| | まとめることがで | | | | しょう。 ||それぞれ活発に活動をはじめ,水の中は明||・うまくまとめることのできない児童には書き| | きたか | | |6.本時の学習を振|○今日の自分の学習について振り返ってみ||るく美しい。しかし,その中ではクラムボ|| 方を指導したい。 | |+−+ 読み取ったことを再構成 | | り返ること | ましょう。 ||ンが魚に食べられ,その魚もかわせみに食||・何人かのまとめを発表させ,友達のまとめか| || できたか | | | |・初めの読みを増やすことができたか。 ||べられるという恐ろしい世界でもある。 || らも学ばせたい。 | |+−0 初めの読みにつけたし | | |・自分の読みは,どのグル-プのどんな読みで深まりましたか。−−−−−−−−−−−−−+|・自分の読みが,学び合いで深まったことを意| || 程度 | | | |・学習方法は課題解決するのに適切であったか。 | 識させる。 | |+−− 初めの読みだけ +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−+ (4)評価   学習プリントに加筆・修正し,「5月」の谷川の情景について構成する生き物や,水の中の様子に関する叙述を読み取ることにより,自分なりにまとめることができたか。