印刷用紙:B4縦 1ページの行数:51 1行の文字数(半角で):122   −−以下 指導案本文−−                    第6学年 国語科学習指導案                                    日 時 平成8年10月18日(金)5校時                                    児 童 6年3組 男17名 女13名 計30名                                    指導者 斉藤 由佳理 1 単元名   豊かに想像して   教材名   やまなし(宮沢 賢治) 2 単元・教材について  (1) 教材について      本単元は「優れた表現を読み味わい、日本語の表現効果に関心を深め、物語のイメ−ジを豊かに広げることができる。」こ     とが指導の重点である。      教材「やまなし」は「二枚の青い幻灯」に映し出された谷川の底を舞台に、自然の厳しさや豊かさが描かれている作品であ     る。      「五月」は、動植物が繁殖し、成長が盛んな時期であり、生命力あふれる月である。しかしそこでは、クラムボン、魚、か     わせみによる弱肉強食の厳しい世界が展開されている。ここで描かれている死は、生命を奪われる死であり、恐怖感を感じさ     せるものである。      「十二月」は、動植物が静かな眠りにつき、新しい生命の息吹を待つ月である。冬の暗くて冷たい静寂さの奥に、やまなし     に象徴される幸福や平和を感じとることができる。ここで描かれているやまなしは生命を与え、生きる喜びを感じさせるもの     である。      この教材文は大きく四つの場面で構成されている。     @ 五月   クラムボンと魚が動きまわる情景     A 五月   かわせみの出現により変化していく谷川の情景     B 十二月  かにの兄弟があわのはき比べをしている月の明るい情景     C 十二月  やまなしの落下により平和な世界となる谷川の情景      「五月」と「十二月」の二枚の幻灯は、かにの親子を中心とし、川の中のゆらめきや輝きを限りなく美しく見せてくれる。      また、二枚の幻灯に映し出されたこの作品の世界は、対比構造によって構成されており、何と何を対比させるか、対比させ     ることによってどんなことが分かってくるかなどを考えさせる学習が可能である。また、作者の独特な造語・色彩語・擬音語     ・擬態語・比喩表現などが豊富にちりばめられており、言葉を大事にしながら印象を深め、イメ−ジを広げていくのに適した     教材である。  (2) 児童について      児童はこれまでに、人物の気持ちの移り変わりや場面の様子を読み取る学習や、物語の構成に目を向け主題に迫る読みの学     習をしてきている。6学年では「赤い実はじけた」で表現の細部に注意して心情や情景を読み取る学習、「短歌と俳句」で言     葉一つ一つのイメ−ジやリズムを味わいながら読む学習、「石うすの歌」で主題を考える学習をしてきた。      大事な文や言葉に着目させて、人物の心情や情景を読み取る指導をしてきたことにより、書かれている言葉からの読み取り     は出来るようになってきた。しかし、使われている言葉に深く切り込んで読み、描かれている情景のイメ−ジを豊かに広げ読     み味わうような、鑑賞の力はまだ不十分であり、主題のとらえかたも浅い面が見られる。      課題を追究していくために、どこに注目して読めばいいのかを毎時間確認し、それに基づいて一人学びをさせる指導をして     きたことにより、中心語句や中心文などを見つけ出す児童が多くなってきた。また、見つけられない児童も、他の人の意見を     聞いて見通しを持って学習に取り組むようになってきている。      学び合いでは、友達の意見を聞くときには、自分と比較して似ている点や違っている点をはっきりとさせて聞くようになっ     てきている。出された意見を学び合いによってまとめたり、分類したりする力はまだ育っていないが、友達の意見によって自     考えが変わったり、深まったりすることが分かってきたところである。  (3) 指導にあたって      本教材を指導するにあたって、見通し読みの段階では、題名から想像して話し合ったり、「五月」「十二月」の相違点や共     通点について着目させ、二つの季節を対比させて感想を書かせたりして、関心を持たせたい。深め読みの段階では、学習の過     程を教室に掲示し、対比的に描かれている構成や、擬音語・擬態語・色彩語・比喩表現などに着目させることにより、作品の     持つイメ−ジを豊かに広げさせたい。まとめ読みの段階では、二つの月を対比させて、自分の感じたことを自由に発表させた     り、題名の持つ意味について考えさせたり、情景が伝わるように朗読をさせたりすることで作品を十分に味わわせたい。      本時は、五月と十二月が対比的に描かれていることを整理してまとめ、それぞれの月が描き出している世界をとらえること     がねらいとなり、主題に大きく関わる部分である。まわりの様子や登場するもの・侵入するもの・かにの反応などの対比の視     点に着目することで、五月と十二月で対比的に描かれているものが読み取れることをおさえ、学習課題解決の見通しを持たせ     る。また学び合いでは、まわりの様子から五月の生き生きとした昼の日光の美しい世界と、十二月の冷たく静かな夜の月光の     美しい世界をおさえさせたい。その上で侵入するものから「かわせみ」のもたらした「死」の恐怖と「やまなし」のもたらし     た「生」の安らぎをとらえさせ、それぞれの月が描き出している世界はどういうことなのかを話し合わせたい。 3 指導目標  (1) 関心・意欲・態度      作者の表現の工夫に興味を持ち、自分の感じたことを進んで表現しようとする。  (2) 表現      聞き手にも内容がよく味わえるように、抑揚や強弱などを工夫して朗読することができる。  (3) 理解      自然描写の優れた表現を読み味わい、日本語の表現効果に関心を深め、五月と十二月のイメ−ジを豊かに広げることができ     る。  (4) 言語      色彩語や擬音語・擬態語などに着目し、その役割や効果について理解することができる。 4 指導計画(9時間扱い) 第一次 見通し読み ○全文を読み通し、学習の見通しを持つ。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−2時間 (1) 全文を通読し、初発の感想をまとめる。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(1) (2) 感想をもとに、課題を設定する。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−(1) 第二次 深め読み ○場面ごとに、情景を想像豊かに読み取る。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−5時間 (1) 「五月」の谷川の情景と、美しく明るい季節でありながらも不気味さを予感させていることを読み取る。−−(1) (2) かわせみの出現により、死の恐怖におののくかにの様子と、谷川の五月の情景を読み取る。−−−−−−−−(1) (3) 「十二月」の谷川の冷たく透き通る水中の情景と、かにの家族の穏やかさや温かさを読み取る。−−−−−−(1) (4) やまなしの落下した後のかにの親子の幸福そうな様子と、谷川の十二月の情景を読み取る。−−−−−−−−(1) (5) 「五月」と「十二月」が対比的に描かれていることを整理し、それぞれの月が描いている世界を読み取る。−(1)本時 第三次 まとめ読み ○全文を読み通しまとめる。−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−2時間 (1) 「五月」と「十二月」の世界を対比しながら、自分の感じたことを話し合い、まとめる。−−−−−−−−−(1) (2) 「五月」「十二月」の情景が聞き手にもよく味わえるように朗読する。−−−−−−−−−−−−−−−−−(1) 6 本時の指導  (1) 目標      「かわせみ」と「やまなし」の対比表現を手掛かりに、動植物の成長期である五月の「死」の側面と、活動が不活発になる     十二月の「生」の側面をとらえ、情景を思い浮かべながら朗読することができる。  (2) 展開 +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |段| 学 習 活 動 | 教 師 の 支 援 | |階| ( ◎ 基 本 発 問 ) | ( ◎ 評 価 ) | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |1 前時の学習内容を想起する。 |・かにの親子が幸せや喜び、安らぎを感じながらやまなしを追いかけたこと| |つ| | を確認させる。(掲示) | | |2 本時の学習課題を確かめる。 |・一斉読をさせることにより学習課題を把握させる。 | |か|+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | || 五月と十二月を対比させ、それぞれがど|| | |む||んな様子なのか考えよう。 || | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+|・前時までの学習をふり返らせ、まわりの情景・登場するもの・上から来る| | |3 学習課題解決の見通しを持つ。 | もの・かにの子どもの反応が対比の視点となることを、掲示やノ−トなど| |6| ・音読をする。 | をもとにしておさえ、児童に発表させる。 | |分| |◎学習課題解決のための見通しを持つことができたか。(発表) | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |4 学習課題を解決するためにくわしく読み深| | | | める。 | | |10|(1) 課題について自分の考えを書く。(一|・対比の視点の中からどれかを選び、五月と十二月を対比させて自分の言葉| |分| 人学び) | で違いやイメ−ジをまとめて書かせる。 | +−+ |◎自分の考えを書くことができたか。(机間巡視) | | |(2) 五月と十二月が対比的に描かれている|・五月は生物が生き生きとする日光の美しい世界であり、十二月は生物のい| |追| ことを発表する。(学び合い) | ない静かな月光の美しい世界であることを押さえている児童に発表させる| |究| ◎五月と十二月は、それぞれどのような世界| また五月は生命あるものが登場するのに対して、十二月は生命を持たない| |す| として描かれているのでしょう。 | ものが登場することを押さえている児童に発表させることにより、五月と| |る| | 十二月がそれぞれ動と静の世界であることをおさえさせる。 | | | ◎五月はただ生き生きとしている世界なので|・次に、かわせみにより、かにの兄弟が死の恐怖を知るのが五月であり、や| | | すか。また十二月はただ静かな世界なので| まなしにより、かにの親子が生の喜びを感じるのが十二月であることを押| |13| すか。 | さえている児童に発表させることにより、五月は生物が生き生きと活動す| |分|(3) 課題についてまとめる。 | 季節であるが、死の恐怖が存在し、十二月は静寂の中に、生の喜び・安ら| +−++−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| ぎが存在することを読み取らせたい。 | | || 五月は生き生きとした世界の中に存在す||◎二つの月を対比させて描かれている世界をおさえ、考えを深めることがで| | ||る「死」の恐怖が、十二月は静寂の中にあ|| きたか。(発表) | | ||る「生」の喜び・安らぎがある。 ||・学習してきた五月と十二月の様子について、板書をもとにしてふり返る形| | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| でまとめる。 | |8| | | |分| |・どちらの月に好感を持つかを書かせ、発表させる。 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |ま|5 本時の学習についてまとめる。 |・情景を思い浮かべながら工夫して朗読をさせ、作品を味わわせる。 | |と| | (自由読み→指名読み) | |め|6 次時の学習課題を確かめる。 |・次時は題名について考え、感じたことをまとめることを確認する。 | |る| | | |8| | | |分| | | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 5.文章構造図 +−+−−+−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−+−+ |材|面 |題 | 構 成 の 要 素 | |題| | | | +−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+ 重 要 語 句 | | |教|場 |課 | かわせみ・やまなし | 川 の 様 子 | かにの親子・兄弟 | |主| +−+−−+−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−+−+ | |前 書 き|小さな谷川の底を写した、 二枚の青い幻灯です。 |・二枚の幻灯 | | | +−−+−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−+ | | | | | |●青白い水の底 |・クラムボンは笑ユたよ。|・クラムボン | | | | | | |●青く暗く鋼のよう |・クラムボンはかぷかぷ笑|・かぷかぷ笑ったよ| | | | | | |●なめらかな天井 | ユたよ。 |・殺されたよ | | | | | | |●つぶつぶ暗いあわ |・クラムボンははねて笑ユ|・悪いことをしてる| | | | | | |●ゆれながら水銀のように| たよ。 | んだよ | | | |景 |う | | 光って | | | | | |情 |ろ | |魚 |・クラムボンは死んだよ。| | | | |る |だ | | つうと銀の色の腹をひる|・クラムボンは殺されたよ| | | | |わ |子 | | がえして |・クラムボンは死んでしま底 | | | |ま |様 | | つうともどユて、下の | ユたよ。 の | | | |き |な | | 方へ行きました。 | 水 | | | |動 |ん | 日○日光の黄金は、夢のよう| い | | | |が |ど | に水の中に降ユてきまし| 白 |る| | |魚 | | 光 た。 | 青 |い| | |と |は | |○光りのあみが、美しくゆ| | |て| | |ン |川 | | らゆらのびたり縮んだり| | |き| |し|ボ |谷 | | 黄金の光をまるユきりく|・何か悪いことをしてるん| |生| | |ム |の | | ちョくちョにして | だよ。取ユてるんだよ。| |杯| | |ラ |月 | | 鉄色に変に底光り | | |一| | |ク |五 | | かげは、黒く静かに | | |精| | +−−+−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−+ら| | |く |ユ |そのときです。 | | |・そのときです |が| | |い |ま |かわせみ |白い腹がぎらっと光って一|・まるで声も出ず、居すく|・にわかに |な| | |て |し | 青光りのまるでぎらぎら|ぺんひるがえり、上の方へ| まユて |・青光りのまるでぎ|ち| |な|し |て | する鉄砲だま |上ったようでした。 |・そいつは鳥だよ。だいじ| らぎらする鉄砲玉|放| | |化 |ユ | コンパスのように黒くと| | ラうぶだ。おれたちはか|・コンパスのように|を| | |変 |ま | がって | | まわないんだから。  界 黒くとがって |彩| | |り |く | | |・こわいよ。お父さん。 世・居すくまって |光| | |よ |すう| | |・ごらん、きれいだろう。の・ぶるぶるふるえて|い| | |に |居ろ| |○あわといユしラに、白い| 怖・こわい所 |し| | |現 | だ| | かばの花びらが、天井を| 恐・こわいよ、お父さ|美| | |出 |がぜ| | たくさんすべユてきまし| | ん |は| |ま|の景|弟な| | た。 | | |命| | |み情|兄 | |○光のあみはゆらゆら、の| | |生| | |せの|のは| | びたり縮んだり、花びら| | |な| | |わ川|にの| | のかげは静かに砂をすべ| | |々| | |か谷|かた| | りました。 | | |様| | +−−+−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−+ | | |す景|川様| |○白いやわらかな丸石 |・やっぱり、ぼくのあわは底・イサド |で| | |を情|谷な| 月○ちいさなきりの形の水晶| 大きいね。 の |中| |や|べい|のんう のつぶや金雲母のかけら|・もうねろねろ。イサドへ水 |の| | |比る|月どろ 光○ラムネのびんの月光 | 連れていかんぞ。 い |ぎ| | |わ明|二 だ |○波が青白い火を燃やした|・ぼくのほう、大きいんだた |ら| | |ある|十は子 | り消したりしているよう| よ。 冷 |安| | +−−+−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−+や| | |谷 |な |そのとき、トブン。 | |・かわせみだ。 |・そのとき、トブン|怖| | |る |ま |やまなし |○いいにおいでいユぱい |・そうじョない。あれはや|・黒い丸い大きなも|恐| | |な |や | 黒い丸い大きなもの | | まなしだ。ああ、いいに| の |な| | |と | | ずうユとしずんで、また| | おいだな。 |・いいにおい |々| | |界 |て | 上へ上ユていきました。| | |・ぼかぼか |様| | |世 |し | きらきらユと黄金のぶち| | |・おどるようにして| | | |な |にう| が光りました。 | | |・ひとりでにおいし| | | |和 |うろ| ぼかぼか流れていく | |・やまなしの後を追いまし界 いお酒 | | | |平 |よだ| | | た。 世 | | | |り |るぜ| | |・おどるようにして な | | | |よ |どな| 横になって木の枝に引っ|○水はサラサラ鳴り、天井| 和 | | | |に |お | かかって止まり、月光の| の波はいよいよ青いほの|・よく熟している。 平 | | | |下 | は| にじがもかもか集まりま| おを上げ、 |・おいしそうだね。 | | | | |落 |がの| した。 | |・待て待て。ひとりでにお| | | | |の |子た| | | いしいお酒ができるから| | | | |し景|親ユ| |○波はいよいよ青白いほの| | | | | |な情|の追| | おをゆらゆらと上げ | | | | | |まの|にを| |○金剛石の粉をはいている| | | | | |や川|かし| | よう | | | | | +−−+−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−+ | | |後 書 き|私の幻灯は、これでおしまいであります。 | | +−+−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+