印刷用紙:A4縦 1ページの行数:50 1行の文字数(半角で):110   −−以下 指導案本文−−   第6学年 国語科学習指導案 日 時  平成8年10月30日(水)5校時         児童数 男子4名 女子4名 計8名 授業者 平 井 良 明 1.単元名 豊かに想像して   教材名 やまなし  宮沢賢治 作 2.教材について (1)学年の理解目標   第6学年の理解領域においては、「目的に応じて効果的に話を聞いたり、目的や文章の種類などに応じて正確な読み方  で文章を読んだりすることができるようにするとともに、適切な読み物を選んで読む習慣をつけること」が指導内容の中  心である。物語の前単元「石うすの歌」では、登場人物の心情の読み取りを通して主題について考えるとともに、人間の  生き方について自分の考えをもつ学習をしてきた。そして、これが物語の次単元「海の命」では、文章の叙述に即して細  部に注意しながら読み取り、作者の考えと自分の考えと対比したり、自分自身の生き方について考えを深めたりする学習  へと発展する。 (2)作品について   この作品の主題は、「谷川の底で恐怖や死の不安に恐れを抱きながらも、やがてそれをくぐり抜け、静かで平和な喜び  の生活を迎えるというかにの親子を通して、明るく生き喜びに満ちた世界への願望」である。   この作品は、生命の躍動感あふれる季節に死の恐怖が訪れる「五月」と、物みな静止する冷たく厳しい季節にやまなし  に象徴される生の喜びを感じさせる「十二月」とによって、対比的に構成されている。また、この二つの世界は、かにの  親子を通して描かれているが、それはそのまま現実世界を象徴している。さらに、作者の独特な表現や比喩表現などが駆  使され、象徴的・幻想的であり、しかも深い思想性も合わせ持つ作品である。   児童たちには容易に読みこなせる作品とは言い難い。しかし、作品のもつ想像力を誘う表現や作者独特の優れた表現、  さらにかにの親子のふれあいを通して、叙述にそった確かな読みからイメージ豊かな読みに広げることができる作品であ  る。また、この物語を読み終えたとき、作者の願いを感じ取りつつ自分自身の生き方について考えをもつことができると  ともに、作者の他の作品を読むきっかけになる作品である。 3.児童について  児童は6年生になってから、「赤い実はじけた」と「石うすの歌」の2つの物語文を学習してきた。これらの学習では、 表現の細部に注意して心情や情景を読み取ったり、主題について考えたりする学習をしてきた。その中で見られた児童の傾 向は次の通りであった。 (1)言語事項の知識(事前テストの結果から)  A.「やまなし」の重要語句の意味が概ね分かる。         3名  B.「やまなし」の重要語句の意味が大体分かる。         4名  C.「やまなし」の重要語句の意味が説明されると分かる。          1名 (2)音読 A.聞き手に心情や情景描写がよく伝わるように、抑揚・速さや強弱を工夫して音読することができる。  1名 B.聞き手に心情や情景描写がよく伝わるように、抑揚・速さや強弱に気をつけて音読することができる。    6名  C.聞き手に心情や情景の変化がよく伝わるように、適切な音量や速さで音読することができる。 1名 (3)確かな読みへの手がかり  視写力 A.常に正しくていねいに1分間に30字以上視写することができる。   2名   B.正しくていねいに1分間に30字程度視写することができる。 5名  C.1分間に25字程度視写することができる。           1名  書き込み内容   A.主題や内容価値にかかわる言葉に着目し、自分の考えを書き込むことができる。        3名   B.主題や内容価値にかかわる言葉に着目し、想像したことを書き込むことができる。 4名  C.人物の心情や様子を表す文の中心的な言葉に着目し、想像したことを書き込むことができる。        1名   書きまとめの内容   A.心情の変化や場面の情景描写を細かい点に注意しながら読み取り、作品の主題や場面の内容価値にかかわらせて、     課題についてわかったことと自分の考えをまとめることができる。              2名   B.作品の主題や場面の内容価値を考えながら、心情の変化や場面の情景を細かい点に注意して読み取り、課題につい     てわかったことや自分の考えをまとめることができる。                  5名  C.作品の主題を考えながら、人物の気持ちやそれと響きあう情景描写を細かい点に注意して読み取り、課題について     わかったことや自分の考えをまとめることができる。                          1名 4.指導にあたって 本教材の読み取りの中心は、谷川の底でかわせみなどの出現によって恐怖や死の不安に恐れを抱きながらも、やがてその 世界をくぐり抜けて静かで平和な生活を迎えるかにの親子の様子や谷川の中の情景描写を通して、明るく生き喜びに満ちた 世界実現への作者の願望をとらえることである。その手がかりとして、かにの親子兄弟の会話や水中の情景などを視写させ たい。さらに,視写部分の言葉からかにの兄弟の心情を想像させて書き込ませることによって内容を叙述に即して確かに読 み取らせたい。その後,書き込みしたことや想像したことなどを発表によって練り合い、最後にはかにの兄弟の心情を自分 のことばでまとめて書かせることによって、構造的に確かに読み取らせたい。  この単元を通して、「五月」と「十二月」の谷川のできごとや情景をとらえることを課題として読み取らせたい。また、 各場面では場面の課題をもとにして個人の課題を設定させたい。その際、「かにの兄弟の言動」の視点と、「谷川の情景」 の視点を選択させたい。このことを通して、児童一人一人に課題意識を明確にさせるとともに、自分の課題解決の際には視 写・書き込みを手がかりにして想像させたい。そして、自分が想像したことを発表して話し合わせることによって、自分の 読みと友達の読みを比較検討させ、最後に自分の考えや読み取れたことを書きまとめさせたい。また、単元のまとめでは各 場面でまとめたことをもとにして単元の課題を解決し、主題を含めた全体の感想を書かせたい。 5.指導目標 《国語への関心・意欲・態度》 ・作者独特の優れた表現からイメージを広げ、自分なりに想像する読みの楽しさを味わい、文学に対する興味関心を一層   高める。 《表現》 ・作品の主題を中心にして、自分の考えのはっきりとしたまとめや感想文を書くことができる。      (表現エオ) 《理解》 ・川の水底の情景やかにの親子の言動を視写したりして、叙述に即してかにの兄弟の心情や水の中の情景を読み取るとと   もに、作品のイメージを豊かに広げ、主題をとらえることができる。            (理解エカキケコ) 《言語についての知識・理解・技能》 ・造語、色彩語、擬態語、比喩表現などの言葉の持つイメージを大切にしながら読み取ることができる。 (言語イ(ア)(イ)エ(オ)) 6.指導計画(11時間:第4章 単元指導構想表を参照) 7.本時の指導 (1)本時の目標  〈関心・意欲・態度〉自分なりに想像したことを進んで発表しようとする。  〈表現〉共通課題と個人課題について分かったことや考えたことを書きまとめることができる。  〈理解〉谷川の情景やかにの親子の言動を視写したりして、やまなしによってもたらされた穏やかで平和な谷川の底の情      景や喜びを感じるかにの親子の幸福感を読み取ることができる。  〈言語事項〉やまなしやかに、水中の様子が想像できる擬態語や比喩表現に気づくことができる。 (2)展開 +−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−− |過程| 学 習 活 動 | 主 な 発 問 | 予 想 さ れ る 反 応 | 留 意 点 +−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−− |意 1.本時の学習課題を確認 ・今日の共通課題は何ですか。 | |・「十二月」の後半 |を|する。 |+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+| 部分であることを |つ| ||「十二月」の谷川の中のできごとや情景を想像しよう。 || 確認させたい。 |1| || || |分| |+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−+| +−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−− |見通 2.学習の見通しを持つ。 ・個人課題を発表しながら、今日 ・かにの兄弟の会話、様子や行動 ・共通課題を解決す |しを| | の場面で気をつけて読んでいく| から気持ちを想像する。 | るための個人課題 |持つ| | ことを確かめましょう。 ・川の中の情景を想像する。 | と視写部分を確認 |4| | | | し、見通しを持た |分| | | | せたい。 +−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−− |深 3.学習場面を読む。 |・かにの兄弟の行動や会話、水の| | |め| | 中の様子が分かるように、強弱| | |る| | に気を付けて音読しましょう。| | | 4.学習場面を読み深める | | |35 ・かにの兄弟の心情を想 ・自分の課題を解決する手がかり| |・視写と書き込みの |分| 像する。 | になる文を見つけて視写し、想| | 時間は15分ぐら | | | 像したことや考えたことを書き| | い与えたい。 | | | 込みましょう。 | | | | |+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+ | | | 視写文 | | | | ・会話文は5カ所。 | | | | ・かにの行動が分かる文は、5カ所。 | | | | ・水の中の情景が分かる文は、4カ所。 | | | |+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+ | ・やまなしが落ちてきた ○落ちてきたものを見たかにの兄 ・トブンと音がしたとき。 |・かにの兄弟たちが | | ときのかにの兄弟の様 弟たちは、どの時点でかわせみ ・黒い丸い大きなものの動きを見 飛び込んできたも | | 子を読み取る。 | だと思ったのでしょう | ながら。 | のの様子をよく見 | | | ・きらきらっと黄金のぶちが光っ ていたことに気づ | | | | たとき。 | かせたい。 | | |・黒い丸い大きなものが水に落ち ・柔らかな感じ。 |・情景@(ゆったり | | | た時の音や、水中での動きから ・かわせみが飛び込んだときの音 とした感じをつか | | | どんな感じがしますか。 | と違って、穏やかな感じ。 | ませたい。) | | | ・かわせみの時は速いスピードだ | | | | ったけど、今度はゆったりした | | | | 感じ。 | | | |○かにの兄弟はなぜ首をすくめた ・飛び込んできたものが光ったか ・かにの気持ち@ | | | のでしょう。 | ら、かわせみだと思ったから。 (かわせみに対する | | | ・魚がかわせみに食べられたこと の恐怖感を想起さ | | | | を思い出して、こわくなったか せたい。) | | | | ら。 | | | | ・何か分からないものが落ちてき | | | | て、かわせみのことを思い出し | | | | 今度は自分が食べられると思っ | | | | たから。 | | | |・お父さんにやまなしだと教えら ・お父さんがよくよく見てくれた ・かにの気持ちA | | | れたかにの兄弟は、どんな気持| から本当だ。 |(安心、平穏をつか | | | ちだったでしょうか。 ・襲ってくるものでなくてよかっ ませたい。) | | | | た。 | | | |・やまなしがいいにおいだと感じ ・お父さん。 | | | | たのは誰でしょう。 ・いいにおいでいっぱいだったか | | | | ら、子がにたちも感じた。 | | ・やまなしを追うかにの ・どうして三びきはやまなしの後 ・あまりにもいいにおいが広がっ | | 兄弟たちの様子や、そ を追いかけたのでしょうか。 | て、もっともっとにおいをかい | | の時の水の中の様子を | でいたかったから。 | | | 読み取る。 |○やまなしを、「おどるようにし ・「おどるようにして」は踊って ・情景A(石を越え | | | て」追いかけるのと「おどりな| はいないが、踊っているように ながら歩くので踊 | | | がら」追いかけるのでは同じで| 見える。 | っているように見 | | | しょうか。 ・「おどりながら」はかにたちが えることをつかま | | | | 踊っていること。 | せたい。) | | |・どうして「おどるように」なの ・川底の小石を乗り越えるのが踊 | | | でしょう。 | るように見える。 | | ・引っかかって止まった ・やまなしが引っかかったところ ・天井の波が青いほのおを上げた ・情景B(美しい表 | | やまなしを見るかにの の様子から、川の中の情景をど| り、月光のにじが、もかもか集 現が喜びを表し、 | | 兄弟たちの様子や、そ のように感じますか。 | まったりするので、川の中いっ 平和な川の中の情 | | の時の水の中の様子を | ぱいに喜びがあふれてきたよう 景をとらえさせた | | 読み取る。 | | だ。 | い。) | ・穴に帰っていくかにの ○自分らの穴に帰っていくかにの ・「やまなしで良かった。安心し ・かにの気持ちB | | 兄弟たちの様子や、そ 兄弟は、会話を交わしただろう| て暮らせるよ。」 |(安心、期待、楽し | | の時の水の中の様子を か。 ・「いいにおいがするやまなしの みなどをつかませ | | 読み取る。 | | おかげで楽しみができた。」 たい。) | | | ・「あと二日ぐらいたったらまた | | | | 来てみよう。楽しみだな。」 +−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−− |ま 5.学習のまとめをする。 | |・確かな読みは、次 |と ・友達の考えのよさを確 ・十二月の谷川の中のできごとや| | の三観点でとらえ |め| かめる。 | 情景について考えましたが、な| | たい。 |る| | るほどと思った友達の考えがあ| | 静かで穏やかな川 |5| | ったら発表しましょう。 | | の中 |分 ・単元の課題と個人の課 ・今日の課題について分かったこ ・やまなしや月明かりの様子から 安心して喜んでい | | 題について書きまとめ とや考えたことを書きまとめま| 穏やかな感じがする川の中にな るかにたち | | る。 | しょう。 | った。 | 穏やかで平和な水 | ・表する。 | ・かにたちが安心して楽しそうに の中で、安心し喜 | 6.次時の学習について確 ・次回は、この作品の主題につい| 過ごしている。 | びと期待にあふれ | | 認する。 | て考えましょう。 ・五月と違い、やまなしによって るかにたち | | | | 川の中も穏やかになり、それに | | | | 合わせるようにかにたちも安心 | | | | して過ごす平和な川になった。 +−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−+−− (3)評価  〈関心・意欲・態度〉自分なりに想像したことを進んで発表しようとしたか。  〈表現〉共通課題と個人課題について分かったことや考えたことを書きまとめることができたか。  〈理解〉谷川の情景やかにの親子の言動を視写したりして、やまなしによってもたらされた穏やかで平和な谷川の底の情      景や喜びを感じるかにの親子の幸福感を読み取ることができたか。  〈言語事項〉やまなしやかに、水中の様子が想像できる擬態語や比喩表現に気づくことができたか。