印刷用紙:B4縦 1ページの行数:46 1行の文字数(半角で):116   −−以下 指導案本文−−    第六学年国語科学習指導案 日 時 平成八年九月二十七日(金) 二校時 児童  男子七名  女子四名   計十一名 指導者 及 川  博 幸 一、単元名   豊かに想像して 二、教材名   やまなし(宮沢 賢治 作 光村図書下) 三、単元の目標 ○価値目標 ・優れた表現を読み味わい、日本語の表現効果に関心を深め、物語のイメージを豊かに広げることができる。 (表現エ 理解カキコ) ○技能目標 ・聞き手にも内容がよく味わえるように、抑揚や強弱などを工夫して朗読することができる。          (表現ウ 言語ア・)  ○言語事項 ・色彩語や擬音語・擬態語などに着目し、その役割や効果について理解することができる。            (言語エ・) 四、教材について  教材「やまなし」は、二枚の幻灯に写し出された谷川の情景や出来事をかにの視点から描いたファンタジーである。描写と会話 を巧みに生かした表現面や構成面において特徴のある作品で、描写や叙述を味わいながら想像力を働かせて読ませる教材として適 切である。「五月」と「十二月」の谷川の世界を、詩的な描写表現を駆使してリアルに、かつ幻想的に描き、読者の想像をかき立 てる。そして、かにの視点から写し出される世界は、自然の美しさや不思議さ、生き物の生死等について、読者に問いかけてくる。  この作品は、「小さな谷川の底を写した、二枚の青い幻灯です。」で始まり、それに照応して、「私の幻灯は、これでおしまい であります。」と威儀を正した表現の結びで終わる額縁型の構成になっている。第一話「五月」と第二話「十二月」である。この 二話によって一編の物語「やまなし」は構成されている。「二枚の青い幻灯」というように、文章は視覚的・絵画的なとらえ方で 表現されている。幻灯は静止画像であるが、基調となる青の上で色と光と、ときににおい、音を放ちながら生き生きと動き始めて しまう。読み手は、常に表現を映像化させながら場面の情景や物語の展開を読み取っていけばよいことになる。また、二枚の幻灯 としていることから、異なった世界であることを念頭に置き、「五月」も「十二月」も谷川の底に暮らすかにの兄弟の視点に浸っ て、谷川の様子、繰り広げられる出来事を見つめていくことになる。この対比構造が、題名の持つ意味と響き合って、主題と関連 していると考える。  作者の独特な表現、比喩表現などが駆使された象徴的、幻想的な作品で、深い思想性を持っているので、それらをすべて読みこ なすことは難しい。しかし、一つ一つの言葉の持つ響き、リズム、イメージなどを大切にした読みの学習を進めることにより、こ の作品の持つよさは、読み取れるものと思われる。朗読・書き込み・話し合いを通して、イメージをさらに広げ、少しでも主題に 迫れるようにしていきたい。 五、児童の実態  子どもたちは、四月に物語文「赤い実はじけた」、六月に「石うすの歌」で、主人公の心情をとらえながら、読み進める学習を してきた。人物の気持ちが分かるところを見つけ出し、書き込みをする活動を通して、言葉を手掛かりにして読み進められるよう になってきている。しかし、文中に書かれていないことを想像する力は全体的に不足しているため、重要語句一つ一つをていねい に扱っていかなければ、特に、今回のような独特の文章表現から内容を把握することは難しいものと考えられる。比較的想像力豊 かな児童の発表を軸に読み取りを深めていきたい。  一人学びについては、課題に迫るところを見つけ出すところまではできても、根拠づけまでできる子どもは、まだ半数程度であ る。そこで、話し合いの場での練り合いによって考え方のパターンに気づかせ、根拠づけまでできる子どもを増やしていきたい。  また、朗読については、 この作品の場合、会話文以上に擬態語や擬音語の読み方に気をつけさせ、少しでも聞き手にも、この 作品に出てくる場面が、思い浮かぶように読ませ、主題が伝わるようにしていきたい。 六、指導計画(九時間扱い) +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 到 達 目 標(時 間) 学  習  活  動 (時 間) 着 目 さ せ た い 語 句 な ど  | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ る 全文を読み、学習の計画を立 ・全文を読み、第一次感想を書く。 | | え てる。 ・新出漢字・難語句を調べる。 | | ら | ・学習課題を立てる。 | | と | 2 | | | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 「五月」「十二月」の情景を、・かわせみの出現までの五月の谷川の ・二ひきのかにの子供ら◇青白い水の底◇クラ | | 朗読・対比読み、書く活動な | 情景を読み取るとともに、五月が美 ムボン・かぷかぷ笑ったよ・はねて笑ったよ | | どをしながら豊かに読み取る。 しく明るい季節でありながらも不気 ・鋼のように◇つぶつぶ暗いあわ・ぽつぽつぽ | | | | 味さを予感させていることを読み取 つ・水銀のように・死んだよ・殺されたよ◇日 | る | | る。             1 光の黄金・夢のように・鉄色に・黒く静かに | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | ・かわせみの出現により、死の恐怖に ・ぎらぎらする鉄砲玉・コンパスのように黒く | | | | おののくかにの様子と、何事もなか とがって◇居すくまったまま・かわせみ・こわ | | | | ったように流れる谷川の五月の情景 い所◇白いかばの花びら・こわいよ◇光のあみ | | | | をイメージ豊かに読み取る。  1 はゆらゆら、のびたり縮んだり | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ べ | ・やまなし落下前の「十二月」の場面 ・白いやわらかな丸石・小さなきりの形の水晶 | | | | を読み、冷たく透き通る水中の情景 のつぶや金雲母のかけら◇ラムネのびんの月光 | | | | とその中のかにの家族の穏やかさや がいっぱいにすき通り◇波が青白い火を燃やし | | | | 温かさを、「五月」と対比しながら たり消したりしているよう◇ぼくのあわは大き | | | | 読み取る。 いね◇大きくはけるよ・イサドへ連れていかん | ら | | 1 ぞ | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | ・やまなし落下後の「十二月」の場面 ・トブン・天井から〜黄金のぶちが光りました | | | | を読み、期待をもって楽しそうにや ・お父さんのかには〜あらん限りのばして◇や | | | | まなしを追いかけるかにの親子の幸 まなし◇ああ、いいにおいだ・そこらの月明か | | | | 福そうな様子と、それを包んで月光 りの水の中・ぼかぼか流れていく◇その横歩き | し | | に輝く谷川の情景を読み取る。 と〜追いかけました・月光のにじがもかもか | | | | ・待て待て〜おいで・波は、いよいよ青白いほ | | | 4 | (本時)1 のおをゆらゆらと・金剛石の粉をはいているよう +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ る 作品の主題についてまとめる。・「五月」と「十二月」が対比的に描 | | め | | かれていることを整理してまとめ、 | | か | | このことをもとにして、主題につい | | ふ | 1 | て話し合う。 | | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 学習後の感想をまとめる。 ・主題をもとに、感想を書く。 | | る | | | | め 作品「やまなし」の表現の素 ・好きな場面・情景・表現を発表し合 | | ろ 晴らしさを改めて読み味わう | い、味わったり、理解や味わいが深 | | ひ とともに、情景が伝わるよう | まったところを発表しあったりする。 | | に朗読することができる。 ・聞いている人にも情景が豊かに伝わ | | | | 2 | っていくように工夫して朗読する。 | | +−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 七、本時の指導 (一)目標     ・やまなし落下後の「十二月」の場面を読み、期待をもって楽しそうにやまなしを追いかけるかにの親子の幸福そうな様      子と、それを包んで月光に輝く谷川の情景を読み取ることができる。 (二)展開 +−+−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ 程 間 | 指  導  内  容 | 予 想 さ れ る 児 童 の 反 応 | 指導上の留意点 | 過 時 | | | | +−+−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ る | 一、前時の学習を想起し、本時 ・日光の世界から月光の世界になった。 ・「五月」と異なる様子 | え | | の学習課題を確認させる。 ・かにの兄弟はあわ比べを楽しんでいる。 | について想起させる。 | ら 5 | ・恐怖の世界から平和な世界になった。 | | | | |+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | | と | ||やまなしを追いかけるかにの親子の気持ちを考えよう。| | | | | |+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | | | | | | | | +−+−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | | 二、本時の学習場面を読み取ら | | | る | | せる。 | | | | 2 | @学習の見通しを持たせる。 ・会話文 ・一人学びへの見通しを | | | | ・どんなところに着目して ・様子を表す言葉 | 持たせる。 | | | | 読み進めればよいかを考 | | | | | | えさせる。 | | | べ | | | | | | 4 | A課題について考えさせなが ・指名読み(2名) ・課題に迫る部分にサイ | | | | ら、本時の学習場面を音読 | | ドラインを引かせなが | | | | させる。 | | ら聞かせる。 | | | | | ・様子が分かる部分を意 | ら | | | | 識した読みを心掛けさ | | | | | | せる。 | | | | | | | | 10 | B課題について一人学びをさ ・会話文に着目しながら、視写・書き込み ・着眼点を見つけられな | | | | せる。 ・擬態語や擬声語に着目しながら、視写・書き込み | い児童には視点を与え | し | | | | 一人学びを続けられる | | | | | | ようにする。 | | | | | | (評価@ ノート) | +−+−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | | | | | | | 14 | C一人学びしたことをもとに ・「その横歩きと、〜やまなしの円いかげを追いまし ・話し合いを通して、や | | | | 話し合わせながら読み深め | た。」の表現から本当に楽しそうな親子の様子が浮 | まなしをめぐるかにの | る | | させる。 | かぶ。 | 親子の気持ちを深く読 | | | | ・「おいしそうだね〜。」の表現から楽しみにしてい | みとらせる。 | | | | | る兄弟の思いが伝わる。 (評価A 発表、挙手) | め | | ・「月光のにじがもかもか集まりました。」の表現か | | | | | | ら、やまなしやまわりをきれいに照らし出す月の光 | | | | | | が浮かぶ。 | | か | | ・「待て待て。〜。」の表現から、やまなしがおいし | | | | | | くなる日を待ち望みながら幸せな気分で帰っていく | | | | | | 親子の様子が浮かぶ。 | | ふ | | | | | | 5 | D課題について分かったこと | ・考えを比べて明らかに | | | | をノートに書かせる。 | | なったことをまとめさ | | | | | | せる。 | | | | | | (評価B ノート) | +−+−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | | | | | | る | 三、まとめの音読をさせる。 ・指名読み(二名) ・擬態語や擬声語の読み | | | | | | 方に気をつけて読ませ | め 5 | | | 情景が聞き手に伝わる | | | | | | 音読をさせる。 | ろ | | | ・読み方について感想を | | | 四、次時の学習課題を確認させ | | 発表させる。 | ひ | | る。 | | | | | |+−−−−−−−−−−−−−+−−−−+ | | | | ||やまなしの主題について考えよう。 | | | | | |+−−−−−−−−−−−−−+−−−−+ | | | | | | | | +−+−+−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ (三)評価   @一人学びにより課題に対する自分の考えを持つことができたか。   A一人学びしたことをもとに話し合い、考えを深めることができたか。   B谷川の情景と関連付けながら、かにの親子の気持ちを読み取ってノートにまとめることができたか。 (四)板書計画 +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | | | やまなし | | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | |やまなしを追いかけるかにの親子の気持ちを考えよう。| | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | | トブン やまなしが静かに | | 落ちて | | 上へ | | | | その横歩きと〓やまなしの円いかげを追いました。 | | 平和 | | 幸せそう | | 楽しみ | | | | 月光のにじがもかもか | | | | いいにおい | | | | おいしそうだね | | 早く食べたい | | | | 待て待て。 | | 急がなくてもだいじょうぶ | | +−−+ | | |平和| おいしくなる日を待とう | | +−−+ | | | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 9/27 教材名「やまなし」 第6時 +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |評価@一人学びにより、課題に対する自分の考えを持つことができたか。 評価A 一人学びしたことをもとにし話し合い、考えを深めることができたか。 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 記 1 待て待て。〜。 評 1 他の意見と自分の意見を比べながら発表する。 | 述 2 その横歩きと、〜やまなしの円いかげを追いました。 価 2 自分の考えを根拠を加えながら発表する。 | 内 3 おいしそうだね〜。 内 3 自分の考えを発表する。 | 容 4 ああ、いいにおいだな。 容 | | | ○ ねらいに近い | ○ ねらいに近づいた発表 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+