印刷用紙:B4縦 1ページの行数:56 1行の文字数(半角で):90 第6学年 理科学習指導案                                   指導者 小 野 國 彦 T 単元名    人と動物のからだ U 単元について  これまでに子どもたちは,飼育・栽培の経験から生き物は呼吸をしたり養分をとったりしなければ 生きていけないことを理解している。また,赤インクを吸引させたホウセンカの組織の観察や植物体 内の水のゆくえの追究をしながら,根から取り入れた水などは,管を通って茎,葉などまでいきわた ることやその水はやがて主に葉から蒸散していくことなどの植物のからだのしくみについても理解し ている。しかし,動物が活動するために必要なエネルギーを呼吸や消化を通して得ていることや呼吸 や消化のしくみ,運搬手段としての血液循環などの人や他の動物のからだのしくみやはたらきについ ては気がついていない。  この単元では,魚などの動物が呼吸していることから,その呼気や吸気に含まれる成分を調べ,い ずれもが酸素を取り入れて二酸化炭素を排出していることをとらえること。また,動物の体内の観察 などを通して,食べたものがどろどろとした水のような形に消化されながら腸から吸収されたり,不 要になったものが排出されたりすることなどをとらえること。さらに,心臓の働きで血液が取り入れ た養分や酸素を体内に循環させ,二酸化炭素を運び出していることをとらえさせるようにすることが ねらいである。  学習の進め方は,はじめに,人の呼気と吸気の性質の違いを調べさせ,呼気は吸気に比べ酸素が減 り二酸化炭素が増えていることに気づかせる。そして,他の動物の呼気と吸気についても調べること を通して呼吸は酸素を取り入れ二酸化炭素を排出する生理現象であるという見方や考え方を培うよう にする。さらに,この生理現象が起こる場所やそのしくみについて考えさせ,呼吸におけるガス交換 現象を理解させる。次に,からだの中に取り入れられた食べ物が形を変えて排出される事実に疑問を 抱かせ,からだのどの部分で消化,吸収されていくのかについて追究させる。このとき,胸やけ,嘔 吐,下痢などの経験からからだの中での食べ物の変化を想像させながら,食べ物を分解する唾液や胃 液などの消化液や養分の吸収について考えさせる。実際の消化管でのようすや消化管の食べ物の変化 のようすは,魚の解剖を通して調べさせ,そこで得た見方や考え方を人の消化のしくみの追究に役立 てさせる。そして,呼吸器官や消化器官から離れている体の隅々まで酸素や養分などを送るしくみと して,血液が循環しているという見方や考え方ができるようにする。最後に脊椎動物の骨格のつくり と働きや機能などを比較させ,人や動物のからだのつくりをまとめさせる。  指導にあたっては,視聴覚機器や絵図を用いたりイメージボードで自己の考えを伝えたりさせるこ とで,一人一人の子どもが抱いている問題に対する想像的イメージを他の子どもと共有できるように したい。この共有化を通して,一人一人が抱いている人や動物のからだのつくりや機能などに関する イメージをさまざまなイメージとかかわらせながら,個にあった見方・考え方で追究できるようにし たい。特に,身近な動物の呼吸,消化,血液循環の学習では帰納的に追究をさせ,そこで得た見方や 考え方から,人のからだのしくみを演繹的に追究させたい。  なお,魚の解剖は,真理を追究するための方法としての必要性を明確にさせ,短絡的な考えや興味 本位で行わないようにさせたい。 V 目 標 1 関心・意欲・態度  @ 人や他の動物のからだのしくみや機能について問題意識をもとうとする。  A 方法を工夫しながら協力して自己の問題を追究しようとする。  B 人のからだのしくみや機能を動物のそれらから類推しようとする。  C 実験・観察で用いる動物を生命のあるものとして取り扱おうとする。 2 問題解決の能力  @ 人や身近な哺乳類の呼吸のようすを,石灰水や気体検知管などを使って調べることができる。  A 植物中のデンプンが唾液によって変化していくことを調べることができる。  B 魚を解剖して,消化管の内部を観察し,食べ物が消化されていく過程を調べることができる。  C 脈拍や体表の血管のようすの観察から,血液り循環について考えることができる。  D 人やその他の脊椎動物のからだのつくりやはたらきを比べて,その共通点・相違点を調べるこ   とができる。 3 科学的な見方や考え方  @ 呼気と吸気の組成の違いから,動物は呼吸によって酸素を体内に取り込み,二酸化炭素を体外   に排出しているという見方や考え方ができる。  A 唾液によるデンプンの変化の観察から,動物は食べ物を変化させて吸収しているという見方や   考え方ができる。  B 脈拍や体表の血管のようすの観察から,血液は心臓を中心として体内を循環し,酸素や栄養分,   二酸化炭素や不要物を運んでいるという見方や考え方ができる。  C 人やその他の脊椎動物は,呼吸,消化,排出,循環のはたらきが似ていることから,人の脊椎   動物の仲間であるという見方や考え方ができる。  D 人とその他の脊椎動物では,骨格のつくりが違うことから,人とその他の脊椎動物では生活の   仕方が違うという見方や考え方ができる。 4 知識・理解  @ 動物は,酸素を体内に取り入れて,二酸化炭素を排出していること。  A 動物は,体内に取り入れた食べ物を水のような形に消化して,必要なものを腸から吸収し,不   要になったものを体外に排出していること。  B 動物は,血液が取り入れた養分や酸素を心臓のはたらきによって循環させ,二酸化炭素を運び   出していること。  C 人やその他の脊椎動物は,呼吸,消化,排出,循環のはたらきが似ていること。  D 人とその他の脊椎動物では,骨格のつくりが違うこと。 W 指導計画  第1次   呼吸と肺のはたらき --------------------------------4時限   @ 呼気と吸気の違い      (本時2/15)   A 呼吸のしくみと肺のはたらき  第2次   消化とそのはたらき --------------------------------4時限   @ 唾液によるデンプンの変化   A 消化のしくみ   B 魚の解剖:消化管のようす  第3次   血液と血液の循環  --------------------------------3時限   @ 酸素や養分の通り道   A 血液の流れとそのはたらき  第4次   人と動物のからだ  --------------------------------3時限   @ 人と脊椎動物の呼吸,消化,血液のはたらきの共通点   A 人と脊椎動物の骨格のつくりとそのはたらきの相違点  学習のまとめ  ------------------------------------------------1時限 X 本時の指導  1 教材と子ども  子どもは,マラソンや水泳をしたときや深呼吸をしたとき等に呼吸について意識することが多い。 実際,1日に約6000〓もの空気を吸気しているにもかかわらず,呼吸が困難な状態になったときでな いと意識されない。また,金魚が水面で口をパクパクしている姿やアメリカザリガニがからだを横に して胸を水面に出している姿を見て,水中の空気量の減少とかかわらせて観察する者はほとんどおら ず,苦しそうにしているという現象に注視しているにすぎない者が多い。アンケート調査によると, 肺の形や機能について知っている者は10%,呼吸について調べてみたいと思っている者は約50%にす ぎない。したがって,呼吸が外界から酸素を取り,体内に生じた二酸化炭素を排出するガス交換現象 であり,全ての動物がおこなっている生きるための生理現象であるという見方や考え方がなされてい ないと言っていい。そこで,呼気が二酸化炭素を白濁させることや酸素ボンベの使われ方などの再生 的イメージから呼気と吸気の組成の違いに気づかせれば,呼吸が生き物の生命現象に不可欠な生理現 象であるという見方や考え方に沿って追究が行われると思われる。 このような見方や考え方に沿った追究は,次の2つの考え方で行われると思われる。 A群:呼気と吸気の組成の違いを酸素と二酸化炭素の量の違いという現象だけで追究する子ども。 B群:呼気と吸気の組成の違いを呼吸のしくみや機能とかかわらせて追究する子ども。  2 ねらい  ウサギやコオロギなどの身近な動物の呼気と吸気に含まれる酸素と二酸化炭素の違いを気体検知管 を用いて調べさせる活動を通して,身近な動物も人と同じように呼吸をして,酸素と二酸化炭素を交 換しているという見方や考え方ができるようにする。  3 展 開 +-------+------------------------------------+---+-------------------------+-------+ | 学習 |         学習活動        | 時|   指導上の留意点   | 準備等| |  段階| 教師のはたらきかけ| 子どもの活動・反応| 間|              |    | +-------+-----------------+------------------+---+-------------------------+-------+ | 問題の| 1 本時の学習につい| 他の動物も呼吸し | 3| ◎問題は多くの子どもが疑問|    | |  確認|  て確認させる。 |  ているのだろうか|  |  に思っていたことを踏襲し|    | |    | +--------------------------------+ |  |  たものとする。     |    | |    | | 身の回りの動物も人と同じように吸っ| |  |              |    | |    | | た空気とはいた空気の性質はちがうの| |  |              |    | |    | | だろうか。            | |  |              |    | | | +--------------------------------+ | | | | | 予想と| 2 呼気と吸気による| 飼育には空気が必 | 5| ◎生き物を飼育するときの条| アメリ| |  方法|  酸素と二酸化炭素|  要だ。     |  |  件について考えさせる。 | カザリ| |    |  の含まれ方の違い| 人と同じように酸|  |              | ガニ | |    |  を考えさせる。 |  素を吸って二酸化|  | ◎人の呼気と吸気の性質の違| コオロ| |    |          |  炭素をだしている|  |  いをヒントにさせる。  | ギ  | |    | 3 酸素と二酸化炭素| 酸素と二酸化炭素|  | ◎人に比べると呼気と吸気の| ウサギ| |    |  の検出方法につい|  の含まれる方の違|  |  量が少ないことに気づかせ|    | |    |  て考えさせる。 |  いを比べればよい|  |  石灰水では正確に調べられ|    | |    |          |  ・石灰水    |  |  ないことを分からせる。 |    | |    |          |  ・気体検知管  |  |              |    | | ★イメ| 4 友達に自己の考え| 各自の考えを分か| 5| ◎予想や方法の話し合いでは| イメー| | ージの|  を理解させるとと|  り合い,呼気と吸|  |  呼吸をしている場所と呼気| ジボー| | 共有 |  もに,友達の考え|  気の組成の違いの|  |  と吸気の成分の違いを比べ| ド  | |    |  も理解させる。 |  比べる方法のイメ|  |  る方法について,イメージ|    | |    |          |  ージを共有する。|  |  を共有させるようにする。| 気体検| |    |          |          |  |              | 知器 | | 確かめ| 5 発見したことをノ| ウサギの呼気では| 20| ◎検知までの時間は7分とす| 酸素・| |    |  ートにまとめさせ|  吸気に比べ酸素が|  |  る。気体検知管への空気の| 二酸化| |    |  ながら,自分の予|  減り,二酸化炭素|  |  注入は50ccとする。   | 炭素用| |    |  想を確かめさせる|  の量が増えた。 |  | ◎呼気と吸気の酸素と二酸化|    | |    |          | ザリガニでも二酸|  |  炭素の量の違いを相対的に|    | |    |          |  化炭素の量が増え|  |  比較させる。      |    | |    |          |  た。      |  | ◎アメリカザリガニとコオロ|    | | 話し合| 6 一人一人が発見し|  どの動物も呼気は| 12|  ギの吸気と呼気の酸素量の| 気体検| | い・広|  たことを全員に広|  吸気に比べ,二酸|  |  違いが明瞭に測定されない| 知器の| | め合い|  めさせる。   |  化炭素の量が多く|  |  理由を考えさせる。そのこ| 絵図 | |    |          |  なり,酸素の量が|  |  とを確かめるために,約50|    | |    |          |  少なくなっている|  |  分間管びんに入れておいた|    | | まとめ| 7 学習をまとめさせ|          |  |  材料を用意しておく。  |    | | 振り返|  る。      |          |  | ◎黒板上でそれぞれの実験結|    | | り  | +--------------------------------+ |  |  果を整理することで,動物|    | |    | |  身近な動物も人と同じように呼吸を| |  |  の呼吸についての一般化が|    | |    | | している。            | |  |  図られるようにする。  |    | |    | |  はいた空気はすった空気に比べ  | |  | ◎まとめは分かったこととし| 振り返| |    | |  〓 酸素が少ない。       | |  |  て,問題と対応させながら| り用紙| |    | |  〓 二酸化炭素が多い。     | |  |  自分なりの言葉で書かせる|    | |    | +--------------------------------+ |  |              |    | +-------+------------------------------------+---+-------------------------+-------+