印刷用紙:B4縦 1ページの行数:66 1行の文字数(半角で):122            ・第・3・学・年 ・理・科・学・習・指・導・案                                   指導者 阿 部 祐 基 T.単元名   こん虫のからだをしらべよう U.単元について  これまでに子どもたちは,採集や飼育の経験を通して,身近な動物の食べ物,体の形,動きの特徴や住んでいる場所に違いがあること に気付いている。また,あたたかくなると,虫などの小動物の出現する個体数が多くなったり,活動が活発になることに気付いている。 さらに,モンシロチョウなどの飼育を通して,チョウの育ち方や体のつくり,チョウのような体のつくりをしているなかまを昆虫という ことをとらえている。しかし,チョウと同じ程度の大きさの生き物を全て昆虫のなかまと考えていて,虫が昆虫とそうでないものに分け られることには気づいていない。  この単元では,昆虫の飼育・観察を通して,昆虫の体は,種類によって特徴があるが,全体として見れば頭,胸,腹というきまったつ くりをしていることをとらえさせるようにすることがねらいである。  学習の進め方は,はじめに,1学期から飼育してきたスズムシや採取しておいたバッタやトンボを教室などで放し,これらの虫の動き 方の特徴を調べさせる。ここでは,1学期に観察させたモンシロチョウの動きとどう違うかに着目させて調べさせ,動きかたの違いが体 のつくりにあることに気づかせる。次に,体のつくりが違うからバッタやトンボ,チョウは違うなかまなのか考えさせ,同じ虫であれば ,同じ体のつくりをしているところがあるという考えから,これらの昆虫の体のつくりの同じところを見つけさせる。この観察を通して ,バッタやトンボは体の口や足の形は違うが,体の分かれ方,足や羽の数は同じであり,バッタやトンボも昆虫のなかまであるという見 方や考え方を培うようにする。この観察では体の各部の形が細かく見られるように,必要に応じて虫めがねなど拡大して調べられる器具 を使わせる。また,口や足などの形の違いから,食べ物や生活の場所がそれぞれ違い,その昆虫が生きていくのに都合のいいような体の つくりになっていることに気づかせる。そして,今までの昆虫の学習のまとめとして,体の分かれ方や足,羽根の数などに着目させなが ら,粘土やモールなどを 使って昆虫の模型を作らせる。最後に,今まで観察してきた昆虫のなかまに入らないダンゴムシやクモなどを採取し,体の分かれ方や足 の数などを昆虫と比較させて,虫の中には昆虫と体のつくりが違うなかまがあるという見方や考え方を培う。  指導にあたっては,既習の事項と本単元の学習内容とを比較させながら追究させていくようにする。つまり,バッタやトンボを使った 学習ではモンシロチョウの体のつくりと比較させながら,ダンゴムシやクモを使った学習では昆虫の体のつくりと比較させながら,それ ぞれの虫の体のつくりのどこが,どのように違うかを明らかにし,虫の体のつくりに対する科学的な見方や考え方を培っていくようにす る。また,バッタやトンボの体のつくりを調べる学習では,各自の調べたい観点ごとにグループを編成し,個の追究したい問題に応じて 活動させ,追究意欲を高めていきたい。グループでの学習では,お互いの観察の観点を同じグループの友だちに伝えさせることで,調べ ようとする虫の体のつくりに対するイメージを共有できるようにしたい。さらに,本単元で観察する虫を継続して飼育させたり,学習後 に採取してきた場所に返してやったりすることを通して,身の回りの生物を愛護する態度を育てていきたい。 V 目 標 1 関心・意欲・態度  o 昆虫やその他の種類の虫の体のつくりについて調べようとする。  o 同じグループの友だちと情報を交換しながら,自己の問題を追究しようとする。  o 虫の生活のようすを,観察する虫の体のつくりや各部の形から類推しようとする。  o 観察で用いる虫を生命あるものとして取り扱おうとする。 2 問題解決の能力  o 昆虫の体のつくりを調べて頭,胸,腹の3つの部分に分けることができる。  o 虫の体のつくりを比較して,昆虫と昆虫でないものに分けることができる。 3 科学的な見方や考え方  o 昆虫の体は頭,胸,腹の3つの部分に分かれていて,足が6本あるという見方や考え方ができ  る。  o 昆虫やその他の種類の虫の羽,足や口の形の違いから,動きや食べ物が違うという見方や考え  方ができる。 4 知識・理解  o 昆虫の体は,頭,胸,腹の3つの部分からできていること。  o 頭には,目,口,触覚などがあること。  o 胸には6本の足と,多くには4枚の羽があること。  o クモやダンゴムシなどの虫は,昆虫の特徴と違うので別ななかまに分けられること。 W.指導計画         (5時間)  第1次   昆虫の体のつくり                   4時限   ・ バッタやトンボの動き方   ・ バッタやトンボの体のつくり(本時 3/5)   ・ 昆虫の模型づくり  第2次   他の虫の体のつくり                  1時限   ・ ダンゴムシやクモの体のつくり X.本時の指導  1 教材と子ども  本学級のほとんどの子どもは,虫好きである。しかし,その嗜好には傾向があり,好まれているのは,きれいな声を出す,動き方や形 がおもしろい,色がきれいと考えている虫であり,嫌われているのは,形が気味悪い,害を与える(さす,毒を持っているなど)という 虫である。しかし,2年生のときに飼育したダンゴムシ・ハサミムシ・アリや3年生になってから飼育したモンシロチョウ(幼虫も含む )を嫌いな虫としてあげている子は一人もいない。このことから,虫を継続して観察してきたことで,抵抗なく接することができるよう になったことが分かる。実際,モンシロチョウの飼育をしているときには,幼虫を手の上にのせて観察をしたり,飼育容器を毎日忘れず に掃除していた子が多くみられた。  しかし,事前調査でモンシロチョウと同じように体が3つに分かれている虫の名前をあげさせたところ,どの子も20種類前後の虫の 名前を上げているが,その中に必ず1ないし2種類,昆虫類ではない虫の名前をあげている。それは,クモ,ダンゴムシをはじめ,ケム シ,アオムシのような幼虫類,中にはカタツムリやナメクジ,ザリガニなど,いわゆる虫とはいえない生物も含まれている。これは,愛 情を持って接してきてはいても,虫の体のつくりにまでは注意深く観察がなされていないことを表している。  前単元「チョウを育てよう」でモンシロチョウを観察したときの観点(幼虫の観察も含む)は,次の4点である。   o体のつくり  体の分かれ方,足や羽の数 など   o体の形    足先や口の形 など   o食べ方    食べる物,ふん など   o動き方    動きの特徴  この観察を継続して行ったことで,子どもたちはチョウの体のつくりを正しく指摘することができるようになった。そこで,本単元で は,子どもたちの好まれている傾向にありながら,チョウとは羽や口,足の形が著しく異なるバッタ,トンボを取り上げる。そして,飼 育活動に継続してあたらせながら,モンシロチョウの観察で学習した観察の観点を本単元の観察でもあてはめ,さらにチョウの体のつく りと比較すれば,昆虫の体のつくりには共通するところがあるという見方や考え方に沿った追究が行われると思われる。  このような見方や考え方に沿った追究は,次の2つの考えで行われると思われる。   A群: バッタやトンボの体のつくりを,体の分かれ方や足の数に着目して追究する子ども。   B群: バッタやトンボの体のつくりを,体の各部の細かいところにも着目して追究する子ども。  2 ねらい  バッタやトンボの体のつくりをモンシロチョウの体のつくりと比較しながら調べる活動を通して,昆虫の体は頭,胸,腹の3つの部分 に分かれていて,足が6本あるという見方や考え方ができる。  3 展 開 +-------+-----------------------------------------+---+-------------------------------+-----------+---------+ | 学習 |  学 習 活 動        | 時| 指導上の留意点    | 準 備 等 | 段 階 | +-------+---------------------+-------------------+---+-------------------------------+-----------+---------+ | | 教師のはたらきかけ | 子どもの活動・反応 | | | | | | | | | | | | | +-------+---------------------+-------------------+---+-------------------------------+-----------+---------+ | 問題の| 1 本時の学習につい  | ・バッタやトンボの | 5| ◎ 問題は前時に設定しておく。 | | | | 確認 | て確認させる。   |  体でモンシロチョ | | | | | |    |            |  ウと同じところは | | | | | |    |            |  どこだろう。 | | | | | | | +-------------------------------------+---+-------------------------------+-------+ | | +-------+  | バッタやトンボのからだのつくりをモンシロチョウとくらべて,同じところを発見しよう | | | | | +-------------------------------------+---+-------------------------------+-------+ | | | 観察の| 2 本時の観察の観点  | ・体の分かれ方を調 |  | ◎ 追究のグループは,A群・ | | | | 観点の|  を確認させる。   |  べよう。     |  |  B群の子が混合している編 | | | | 確認 |           | ・足を調べよう。  |  |  成にする。 | | | | |            | ・頭を調べよう。  |  | ◎ 体のつくりのどんなところ | | | |    |            | ・腹を調べよう。  |  |  が同じと考えるかを発表さ | | | |    |            | ・体についているも |  |  せながら,観察する観点を | | | |    |           |  のの数を調べよう |  |  明確にさせる。 | | | | ★イメ| 3 グループの中で観  | ・各自の考えを分か |  | ◎ 観察の観点の話し合いでは, | | | | ージの|  察の観点を出し合  | り合い,体のどこ |  |  各自が同じつくりになって | | | | 共有 |  い,お互いの考え  | を調べるかのイメ |  |  いると考えるところを出さ | | | | |  を分からせる。   | ージを共有する。 |  |  せ合い,観察するところの | | | +-------+---------------------+-------------------+---+  イメージを共有させる。 | | | | 観察 | 4 バッタやトンボの  | ・体はモンシロチョ | 25| ◎ バッタは透明なカセットケ  | カセット |    | | | 体のつくりを観察 |  ウと同じで3つに |  |  ース ,トンボはチャックつ | ケース | | |    |  させ,発見したこ  |  分かれている。  |  |  きのビニール袋に入れて体  |      | | | | とを観察カードに | | | を固定し観察させる。 | チャック | | | | まとめさせる。 | | | | つきビニ | | | | | ・足の数は6本だ。 | |        | ール袋  |     |   | |   | ・羽の数は4枚だ。 | | ◎ 飼育容器から昆虫を出すと  | | | |    |            | ・腹がふくらんだり |  |  きは,胸のところをもつよ  | 観察カー |     |       |   | | しぼんだりしてい |  |  うに注意させる。      | ド | | |    |            |  る。呼吸している |  | ◎ モンシロチョウの体のつく  | モンシロ |     |       | | | ようだ。     | |  りのイメージの再生が行わ | チョウの |     |      | |     | ・頭にはひげみたい | |  れやすいように,黒板にモ  | 絵図 | | |    |            |  なものが2本つい | |  ンシロチョウの絵図を掲示 | 虫めがね |     |       | |    |  ている。     |  |  しておく。        | | | |    |            |          |  | ◎ 机間巡視をしながら,体の | | | |    |            |           |  |  形の違いから生活の違いに | | | |    |            |          |  |  目を向けた観察をしている | | | |    |            |           |  |  子の記述を全体に紹介し, | | | |    |            |           |  |  観察の内容をふくらませる | | | +-------+---------------------+-------------------+---+  ようにする。       | | | | まとめ| 5 学習をまとめさせ  |         | 15| ◎ 黒板にバッタとトンボの絵  | バッタと | 振り返 |      | | る。 | | |  図をはり,その絵図にグル  | トンボの | り   |       |   |            | | ープで発見したことを書き  | 絵図 | | |    |  バッタやトンボもモンシロチョウと  |  |  たさせながら,発表させる。 | | | |    |  同じように,からだが頭,胸,腹の3  |  | ◎ 他の昆虫の標本を提示し, | 昆虫の標 |     | | | つに分かれていて,足は6本,はねは   | |  昆虫の体のつくりを一般化  | 本 | | |    |  4まいついている。           | |  させる。 | | | |    |                      | | ◎ 本時の追究のようすを振り | | | | | | |  振り返りカードに記入させ | カード  |     |       |    | | | る。 |   | | | | | | | | | +-------+-----------------------------------------+---+-------------------------------+-----------+---------+