小学校6年 算数(拡大図と縮図) 指導案 仁王小学校 用紙は A4 縦  1行 90字(半角) 1ページ 49行に設定してください。 第6学年 算 数 科 学 習 指 導 案 指導者 阿 部 修 志 T 単元名  拡大図と縮図 U 単元について   拡大図・縮図は、数学的には相似の概念の一部である。相似形は一般的に次のように定義され   ている。  1 一つの図形を形を変えずに一定の割合に縮小または拡大したとき、その図形と元の図形とは互   いに相似である。  2 二つの図形において対応する辺の比が等しく、対応する角が等しいとき、二つの図形は相似で   ある。  3 相似の位置にある二つの図形は相似である。    相似において対応する辺の比を相似比と呼び、相似比が1より大きい図形を拡大図、相似比が   1より小さい図形を縮図と呼んでいる。また、合同な図形は相似比が1の図形である。本単元に   おいては、拡大図、縮図の意味は相似形の定義の1に当たる部分でおさえ、性質として2の部分   をおさえる。拡大図、縮図の作図の方法としては、方眼を利用してかく方法(目盛りが相似比に   なっているもの、同じ目盛りのもの)と方眼を用いないでかく方法(三角形の決定条件からかく   方法、相似の位置においてかく方法など)がある。どちらかといえば、前者は定義1、後者は定   義2.3を基にした方法である。拡大図、縮図の面積は、相似比の2乗の比になる。小学校の段   階では、具体的に面積を分割したり面積を計算したりして、その事実に気付かせる程度の扱いと   なる。拡大図は、原図が小さい場合に拡大して見やすいようにし、細部の検討や計画に便利なよ   うにする長所を持っており、縮図は、元の大きさのままではいろいろなことを調べたり、長さや   面積を求めたりするのに困難なときに、大きさが手ごろで簡単に処理できる長所を持っている。    子どもたちは、これまでの図形学習で、平面図形については、個々の図形の定義にあたるもの   や性質、特徴など基本図形の概念を明らかにすることを中心に学習してきた。その際、これらの   形の性質は、大きさや位置に関係ないことを学んできている。図形の学習で、形の大小と関係し   て学習してきたのは、5年の「合同」である。そこでは、きちんと重ね合わすことのできる二つ   の図形は合同で、形も大きさも同じ形であること、その場合対応する辺、角がそれぞれ等しいこ   となどを学んできている。本単元は、こうした学習の発展として位置づけられており、形は同じ   であるが大きさの違う図形について比較考察させ、拡大図、縮図の概念を明らかにすることを主   要なねらいとしている。そして、ここで学習した内容は、中学校の相似形の学習に発展していく   のである。    子どもたちは、日常生活においてOHPや写真の引き伸ばし、地図などを通して、すでに、拡   大図・縮図の基礎となる経験を得ている。しかし、子どもたちの「形が同じ」という概念は、合   同のことを意味したり相似形ではない形まで含んでいたりするなど数学的には明確でなくあいま   いであるのが実態である。また、形全体が引き伸ばされたり縮められたりしたものという受けと   め方をしている子どもも多く、辺や角など図形の構成要素には視点が向かず、どちらかといえば   面積の拡大や縮小としてとらえている子どももいる。一方、子どもたちのこれまでの学習の様子   から見ると、数学的な言葉を使って論理的に考えを表現するまでに至っていない子どもが多く、   学習したことを比較検討し、統合的に見ていく力も不足している。どちらかというと感覚的に理   解していく子どもが多く、既習の学習内容を基にして見通しを持って課題解決にあたったり、自   分の課題解決の様子を見直したりする態度は十分育っているとは言い難い。また、既習の学習内   容の定着度や技能面での速度も一人一人によってかなり違いがある。    そこで、指導にあたっては、一人一人の子どもの学習の様子を把握し、個人差に応じた指導を   加えていきたい。特に、課題解決の見通しを立てる段階では、図をかいたり簡単な場面に置き替   えたりさせながらより事象を具体化するとともに、それに関連ある既習事項を段階的に想起させ、   既習の学習内容と課題との結びつきを手がかりにして課題解決の見通しを持たせていきたい。ま   た、自分の学習を見直す場を設定し、できるだけ自分の力で課題の解決が図られるようにしてい   きたい。具体的には、子どもたちに拡大図・縮図の意味の理解を図るために事例を多く提示し、   それらの共通点を探らせていきたい。作図の指導においては、子どもたちに抵抗が少ない方眼を   用いた方法から入り拡大図、縮図の意味理解をより確かにさせながら、徐々に方眼を用いなくて   も作図できるようにしていきたい。これらの具体的な活動を通して、拡大図・縮図の概念の形成   を図るとともに、合同な形との関係も明確にし、統合的なものの見方も育てていきたい。また、   拡大図や縮図の弁別をするときには、根拠を明確にして行うようにさせ、論理的な考え方も身に   つけさせていきたい。 V 単元の目標  ・ 拡大図や縮図、縮尺の意味や性質がわかる  ・ 拡大図や縮図を見つけたり、かいたりすることができる。縮尺を用いて縮めて表したり、縮図   から実長などを求めることができる。  ・ 2つ以上の図形について、その形や大きさに着目して図形の相互関係を考察することができる。  ・ 課題解決の見通しを立てて、自分の学習の様子を見直しながら、進んで学習しようとする。 W 指導計画(8時間)  第1次 拡大図・縮図の意味・性質・作図の方法の理解 -----------------------------4時限      ・拡大図における対応する辺の長さ・角の大きさの比較(1)      ・拡大図・縮図の意味、方眼による拡大図・縮図の作図(1)      ・拡大図や縮図の性質、拡大・縮小による図形の弁別(1)      ・拡大図、縮図と原図との面積の比較(1)本時  第2次 「縮尺」の意味のその表し方、縮図を利用した測量のしかたの理解------------2時限  第3次  まとめと練習----------------------------------------------------------2時限 X 本時の指導  1 教材と子ども    本時では、拡大図・縮図の面積と原図の面積の関係について学習する。    子どもたちの中には、対応する辺の比と面積の比は同じになっていると考えている子が多い。   そこで、具体的に図形を分割したり、それぞれの面積を求め比較したりすることを通して、対応   する辺の比は面積の比と一致しないことに気付かせていきたい。その際、上位の子どもには多数   の例を提示し相似比と面積比を対応付けて考察させることにより、拡大図、縮図の面積は相似比   の2乗の比になりそうであるということまで気付かせ、一般化の考えや関数的な見方も伸ばして   いきたい。下位の子どもには、具体的な活動を通して面積比と相似比の違いについて実感させる   ようにしたい。 そこで、事象提示においては、比較的面積が求めやすく、図形的な操作も容易   な長方形と正方形を取りあげる。どちらの問題も原図に比べて面積がどのように変わるかを聞い   ている問題であることより、本時は相似比と面積の関係について考察していくことを意識付けた   い。下位の子どもたちには提示した長方形をもう一枚提示し、2倍の拡大図の面積は2倍以上に   なりそうであることに気付かせ、課題意識を強めていきたい。    課題解決の見通しを立てる段階では、大切な考えとして拡大図・縮図の辺の長さに着目させて   いきたい。子どもたちの中には、長方形の縦横一方だけ拡大されたり縮小されたりしていると考   える子どももいる。そこで、このような子どもたちには見通しの見直しの段階でヒントカードや   補助カードを与え、2倍、3倍の長方形は、縦も横もそれぞれ2倍、3倍となっていることに気   付かせていきたい。課題解決の方法としては、拡大・縮小された辺の長さを計算によって求め面   積の公式にあてはめて求める方法、図をかいて辺の長さを実測し公式にあてはめて求める方法、   図を基にして面積が何倍になっているか考える方法などが考えられる。どの方法で課題解決の実   行するかは子どもたちの考えにまかせていくが、課題解決の見直しの段階で他の方法により自分   の課題解決が正しくできたか確かめさせていきたい。    まとめの段階で、対応する辺の比と面積の比を関連付けて表現することは、子どもたちにとっ   てかなり抵抗がある。そこで、この段階では原図の面積と拡大・縮小された面積の関係について   まとる。そして、比較検討の段階でこれまでの拡大図・縮図の考察の視点と対応付けて学習内容   を振り返らせ辺の比とのかかわりについてまとめていきたい。  2 ねらい   ・ 拡大図・縮図において相似比と面積比は一致しないことがわかる。   ・ 拡大図・縮図の面積を求めることができる。   ・ 拡大図・縮図の面積と原図の面積を比較し、その関係について調べることができる。   ・ 自分の学習の様子を見直しながら、拡大図・縮図の面積と原図の面積の関係について進んで    調べようとする。  3 展開 +-----+----------+--------------------+-----+------------------------------+-------+ | 段階| 学習内容 |  学習活動     | 時間|   指導上の留意点        | 準 備| +-----+----------+--------------------+-----+------------------------------+-------+ | 導入|      | 1.提示された問題に| 10 | ・2つの問題を同時に提示し、それ| 問題文| |   |      | ついて話し合う。  |   | らの共通性を探ることにより何の問|    | |   |  右の長方形の2倍・3倍の拡大図|   | 題かとらえさせる。       |    | |   | の面積は何倍になりますか。   |   | ・割合の概念がまだ十分定着してい|    | |   |  右の正方形の■,■の縮図の面積|   | ないKTらに何をもとにしているの|    | |   | は何分の一になりますか。    |   | か確認し、原図と拡大図・縮図の関|    | |   |      | ・何の問題か    |   | 係を明確に把握させる。     |    | |   | 要素抽出 | ・わかっていることは|   | ・長方形の縦の長さは変えないで横| 既習の| |   | 関係把握 | ・求めることは   |   | の長さだけ変えた問題を想起させ、| 問題図| |   |      | ・似ている学習をした|   | 本時の問題との類似点・相違点を探|    | |   |      | ことはないか    |   | らせることから本時の学習課題を設|    | | 展開| 課題把握 | ・今日勉強することは|   | 定していきたい。        |    | |   | 課題解決の| 2.課題解決の見通し| 20 | ・学習プリントをもとにして各自に| 学習プ| |   | 見通し  | を立てる。     |   | 学習を進めさせる。       | リント| |   |      | ・大切な考えは   |   | ・長方形・正方形の面積は辺の長さ|    | |   |      |           |   | が分かれば求められるので拡大図・|    | |   |      |           |   | 縮図の辺の長さに着目させていく。|    | |   |      | ・方法は      |   | ・原図や拡大図の辺の長さを測り、|    | |   |      | ・順序は      |   | 面積の求積公式にあてはめて面積を|    | |   |      |           |   | 求めていく方法や拡大図・縮図をか|    | |   |      |           |   | き図を分割して求める方法等が考え|    | |   |      |           |   | られるが、方法・順序については各|    | |   |      |           |   | 自に自由に選択させる。     |    | |   |      | ◇見通しを見直す  |   | ・長方形の縦横一方だけに着目して| 情報カ| |   |      |           |   | いる子どもに対しては既習の問題図| ード | |   |      |           |   | を情報カードにより提示し、拡大図|    | |   |      |           |   | の意味をもう一度確認させる。  |    | |   | 課題解決の| 3.見通しに従って各|   | ・特に縮図との関係についてつまず|    | |   | 実行   | 自課題解決を図る。 |   | きが予想されるので、その子どもに|    | |   |      |           |   | 対しては、補助カード等を与え自分|    | |   |      |           |   | で解決ができるようにさせる。  |    | |   |      |           |   | ・早く終わった子どもには、練習問|    | |   |      |           |   | 題まで進めさせ、問題  で明らか|    | |   |      |           |   | になった関係が他の場合でもあては|    | |   |      |           |   | まるか調べさせ、一般化を図らせる|    | |   | ◇見直し | ◇課題解決の結果を見|   | ・はじめに自分で解決した結果と答|    | |   |      |  直す       |   | えの見当とを比べさせおおよその判|    | |   |      |           |   | 断をさせる。つぎに他の方法で確認|    | |   |      |           |   | させるようにする。       |    | |   |      | 4.考えを発表しあい| 15 | ・図を用いて解決した結果と計算に|    | |   |      | 原図と拡大図・縮図の|   | よって解決した結果を発表させ、二|    | |   |      | 関係をまとめる。  |   | つの方法を対応付けて確かな理解を|    | |   |      |           |   | 図りたい。           |    | |   |      |           |   | ・発展として、2倍・3倍・4倍--|    | |   |      |           |   | ----と変化させたときの面積の変わ|    | |   |      |           |   | り方についてKSらに予想させ、算|    | |   |      |           |   | 数に対する関心を高めさせたい。 |    | |   | 比較・検討| 5.前時までの学習内|   | ・拡大図や縮図の学習の視点と比べ|    | |   |      | 容との共通点・相違点|   | させ、対応する辺の比と面積の比の|    | |   |      | を明らかにする。  |   | 違いについて理解させる。    |    | | 終結| まとめ  | 6.学習のまとめをす|   | ・板書をもとに本時の学習の様子を|    | |   |      | る。        |   | 振り返らせる。         |    | +-----+----------+-------------------+-----+-------------------------------+-------+