印刷用紙:B4縦 1ページの行数:62 1行の文字数(半角で):98          小学校算数科(第5学年)指導プログラム                  学校名  北上市立仙人小学校 対象学級 5年生(男子1名、女子2名、計3名) 指導日時 平成3年9月4日 第3校時 指導者  石山則夫 (1)単元名  文字と式 (2)単元設定の理由  ア 文字と式の指導について,学習指導要領の小学校第5学年算数科の目標では,「文   字などを用いて式を簡潔に表したり,式の表す数量の関係を調べたりすることができ   るようにする。」と述べている。日常の事象の中にある数量の関係を表現する方法と   して,図や表及びグラフなどがあるが,式は,簡潔にかつ一般的に表すことができる   という点ですぐれた表現方法である。    この数量の関係を表現する方法として,児童は,第4学年までに,ことばの式で一   般化を図り,未知数や変数としての□や○を使った式でさらに簡潔に一般化を図る式   表現の仕方を学習してきている。    本単元で扱う文字はxの一つで,「任意の定数」や「未知数」を表す文字である。   任意の定数としてのxは,5×xのようなフレーズ型の式で取り上げ,文字に数を当   てはめて調べる活動をとおして,文字の使用に漸次慣れさせることをねらいとしてい   る。未知数としてのxは,5×xの式を等号で結んだ5×x=35のようなセンテン   ス型の式で取り上げている。この未知数を求めるときは,等式の性質は用いないので   ,xの値は逆算で求めることになる。この他,5学年の円や速さの学習の際に,xと   yの二つの文字を用いて「変数」として取り上げるが,本格的な取り扱いは6学年に   なる。  イ 文字は,児童にとって理解しにくい教材といわれている。□ならば,そこに何か数   がはいるということが感覚的につかみやすいが,xの方は,数を表すと理屈ではわか   っても,実感としてなかなかつかみにくい面がある。また,文章題を解く場合,答え   を出すことに意識が集中し,式が答えを出すための手段としてしかみられていない傾   向がある。未知数としてxを用いて式が書けるようになるには,まず数量の関係がよ   くわかっていることが前提となる。文章題の解決の過程を筋道を立てて説明できれば   ,かなり内容を理解しているといえるが,自分の思考過程をことばで説明するのは難   しいようである。xの使い方に慣れさせるとともに文章題における解決の過程を説明   する根拠となる図式についての理解を深めさせていきたい。 ウ 文字と式の指導事項を大きく分けると次のようになる。 (ア) 「任意の定数」としての文字(フレーズ型の式における文字使用) (イ) 「未知数」としての文字(センテンス型の式における文字使用) (ウ) センテンス型の式におけるxの求め方(逆算の練習) (エ) 問題の構造をつかみ説明の根拠ともなる図式の理解(加減,乗除,加乗) (オ) 式と図式及び問題の要素の関連づけを図る解決方法の確かめ(加減,乗除)   本単元における問題は,xを用いることを除けば既習問題である。これらの問題につ  いて,レディネスとして,問題の構造をつかみ立式する力が既にあるという前提のもと  に,xを用いた式(関係式)を立てる学習を進める。しかし,この前提条件が必ずしも  十分とはいえないため,ことばの式や公式の想起と求答事項に対するxの置き換え以前  の問題の構造についての理解が必要であると考える。   そこで,「任意の定数」としての文字xの学習については,具体物としてマッチ棒を  操作させ,使ったマッチ棒とできた図形の数の関係を式に表すことをとおして,理解を  図らせたい。「未知数」としての文字xについては,文字xへの抵抗を考慮し比較的簡  単な構造の加減の問題から順に(乗除,連乗,加乗の問題)学習を進める。このとき,  これらの問題の解決過程において,図式に表す段階を入れて問題の構造をつかませたい。  単位時間毎に用いる図式は,加減の問題では線分図,乗除の問題では数直線(連乗の問  題は,容積に関する問題なので公式),加乗の問題では構造図である。   このうち,線分図と数直線を扱うときにCAI教材を利用する。本校児童はパーソナ  ルコンピュータ(以下,パソコンと略記する)を使うのが初めてなので,まず,理解を  図りやすい加減の線分図に用い,その操作に慣れさせておく。乗除の問題については,  児童の実態から,いくら分(何倍)に当たる量が純小数の場合を取り上げ,問題を解決  した後に,問題の解決方法を確かめる段階でCAI教材を用いる。この中には,問題の  構造は変えず,児童に式の数値等を変えさせ,それに応じて図式の長さが自動的に変わ  るようにしたシミュレーション的な練習をさせるフレーム(画面)などを入れ,問題の  構造の性質を視覚的につかめるようにしたい。    (3)単元の指導目標  ア 具体的な数値の代表としての文字xを用いて,数量の大きさを式で一般的に表した   り,文字に数値をあてはめて式の値を求めたりすることができるようにする。   イ 未知の数量を表すのに文字xを用い,題意に即した式をたて,逆算によってxの表   す値を求めて,問題解決の能力を伸ばす。   (4)単元の教材構造 《要素の抽出》 +-------------------------------------------+ +---------+ | +-----------------+ +-------------------+ | +---------+ | 同一構造| | | 過剰な条件を除く| | 求答事項をxと表記| | | 具体操作|   | の問題 | | +-----+-----------+ +-----+-------------+ | +-+-------+ | | +-------+-------------------+---------------+ | +---+-----+ 《図式化》| +---------------+---------------+ +-+-+ | +-------+---+---------------+-------+ | | | +---+---+ | +-----+---+---+ +-------+-----+ | +-----+-------+ | 表| | 図式化| | | 図式−線分図|  | 図式−構造式| | | 公式(容積)| +-+-+ +---------------+ +---+---+ | | 数直線| +-------+-----+ | +-----+-------+ | | 具体的な数値の| | | +-----+-------+ | | | +---+ 代表としてのx| | +-------+-------------------+-------+ | | | | | 《立式》 | | | | +---------------+ | +-------+-------------------+---------------+-----------+ | +---+-------+ | +-----+---------+ +-------+-------+ +-----+---------+ | +-+-------------+ | 式の数値等| | | xを用いて立式| | xを用いて立式| |xを用いて立式 | | |xを用いて立式 | | を変える | | | (基本型) | | (総合式) | | (連乗の式) | | |(フレーズ型) | +---+-------+ | +-----+---------+ +-------+-------+ +-----+---------+ | +---------------+ | +-------+-------------------+---------------+-----------+ | +-------------------+---------------+ | +-----+---------+ +-------+---------+ +-----------+ 問題の解決方法| | 逆算でxを求める| | の確かめ | +-----------------+ +---------------+ (5)単元の指導計画    第1時 xを用いた数量の一般的な表し方    第2時 xを用いた立式と問題の作成(加減の場合)−CAI教材    第3時 xを用いた立式と問題の作成(乗除の場合)−CAI教材    第4時 xを用いた立式(連乗の場合)    第5時 xを用いた立式とxを逆算で求める練習問題   第6時 xを用いた立式(加乗の場合) (6)本時の学習指導(3時間目)  ア 主題「xを用いた立式(乗除)」  イ 指導目標   問題の要素を図式で表示させ,xを用いて立式させて逆算により答えを求めさせた   り,解決方法の確かめで,式の数値や求答事項を変えさせて,図式や問題の要素がど   のように変わるのかを考えさせ,xを用いた式への関心を高める。  ウ 目標行動   問題の要素を図式に表し,xを用いて立式して逆算により答えを求めたり,式の数   値や求答事項を変え,それに応じて図式や問題の要素を変えたりすることができる。  エ 下位目標行動   G 目標行動に同じ   G1 問題の要素を数直線に表し,求答事項をxで表して立式し,逆算によりxを求め    ることができる。   G2 式の数値や求答事項を変え,それに応じて図式や問題の要素を変えることができ    る。    (1) xを用いて,ことばの式にあてはめ立式することができる。   (2) 図式上に位置づけたxや他の要素の関係を,矢印で示すことができる。 (3) 求答事項をxとして,要素を図式に表すことができる。   R(4) 問題の要素の関係をことばの式でいえる。 R(5) 過剰な条件を除いて,求答事項と既知事項を抽出できる。    (6) 乗除法におけるxを逆算で求めることができる。        R(7) □を用いた乗除法の式で,□の数を逆算を用いて求めたことがある。 (8) 図式を基にして,式で変えた要素が問題のどこに位置づくか指摘できる。   (9) 式で変えた要素を図式に位置づけることができる。    R(10)図式上の要素の関係を説明できる。   R(11)式の数値や求答事項を変えることができる。 オ 形成関係図 ----------------------------    | (6) (7)R   |  |    |xを用いた立式            G1 | (1)   (2)  (3)   (5)R|    | |   G   |     (4)R | ---------------------------- --------------------    G2 | (8)  (9) (11)R| 式と図式及び問題 | | |    (10)R| の要素の関連 -------------------- カ コースアウトライン  (5)R→(3)→(4)R→(2)→(1)→(7)R→(6)→G1→(11)R→(10)R→(9)→(8)→G2→G (7)本時の学習指導(3時間目)における展開過程の振り付け表   これまで述べてきたことをもとに評価や学習形態等を入れた振り付け表を以下に示す。 【展開過程の振り付け表】  +-----+-------------------------------------+---------+-------+---------+-----+ | 段階|     指導・評価の内容 | 下位目標| 学習教| 学習・評| 学習| | 時間|   | 行動 | 材 | 価方法 | 形態| +-----+-------------------------------------+---------+-------+---------+-----+ | | 1 問題提示 | | ワーク| | 集団| | 導入| ・1mあたり45kgのまほうのじゅう | | シート| | | | 3分|   たん,558kgでは何mか?  | | | | | +-----+-------------------------------------+---------+-------+---------+-----+ | | 2 問題の要素の抽出 | (5)R | | | | | | ・わかっているもの,求めるものにア | | ワーク| 作業 | 個人| | | ンダーラインを引く | | シート| | | | +-------------------------------------+---------+-------+---------+-----+ | 展開| 〔評価〕問題の要素は? | | | 問答法 | 集団| | +-------------------------------------+---------+-------+---------+-----+ | | 3 問題の要素の関係を図に表す | (3) | ワーク| 作業 | 個人| | | | | シート| | | | | ・問題の要素を数直線上に位置づける | (2)(4)R | | | | | | | | | | | | | 4 要素の関係を式に表す |(1)(6) | | 作業 | 個人| | | |(7)R | | | | | +-------------------------------------+---------+-------+---------+-----+ | 20分| 〔評価〕図式及び式は? | G1 | | 発表・問| 集団| | | | | | 答法 | | +-----+-------------------------------------+---------+-------+---------+-----+ | | 5 解決方法の確かめ | | CAI| 多肢選択| 個人| | | | | 教材 | 法 | | | | ・式の要素の再確認 | (11)R | | | | | | | | | 構成法 | | | | ・式と図式の関連づけ(練習・問題) | (10)R(9)| | | | | | | | | | | | 15分| ・式と図式及び問題の要素の関連づけ | (8) | P11〜 | | | | | ※ 早く終わった児童はワークシート | G2 | P14| | | +-----+-------------------------------------+---------+-------+---------+-----+ | まと| 6 適用問題 | G | ワーク| 作業 | 個人| | め | | | シート| | | | | ・1mあたり85円のリボンが2.5m | | | | | | | だと何円か? | | | | | | 7分| 7 まとめ,次時の予告 | | | | | +-----+-------------------------------------+---------+-------+---------+-----+ +---+ (注)| | で囲んだ部分の学習教材の内容は【図−2】(P11〜P14)に示す。 +---+