印刷用紙:A4縦 1ページ行数:58 1行の文字数(半角文字で90) 第6学年算数科学習指導案・・・・・・・・・・・・    授業実践期間 平成7年9月19日(火)〜10月7日(土)    授業実践学級 花巻市立太田小学校 第6学年・・・・・・・・・・       男19名,女17名,計36名・・・・・・・・・・    授  業  者 一 井 直 樹 (長期研修生)・・・・・・・・ 1 単 元 名  「比例」(東京書籍「新しい算数6下」) 2 単元の目標 (1) 比例の関係の有用性に気付き,身の回りの事象のなかから比例の関係を進んで見いだそう   とする。(関心・意欲・態度) (2) 比例する二つの量の関係を,比例のきまりや性質に着目して,みたり考えたりすることが   できる。(数学的な見方・考え方) (3) 比例する二つの量の関係を,表や式やグラフに表したり,その特徴をよみとることができ   る。(表現・処理) (4) 比例の意味,表や式やグラフによる比例の関係の表し方が理解できる。(知識・理解) 3 単元設定の理由 (1) 単元について 本単元「比例」は,小学校における関数の学習のまとめとして,位置付いている。また,   導入の素材は,児童の生活経験の範囲でとらえられる伴って変わる二つの量を取り上げ,次   単元「反比例」での対比的な比較をとおして関数的な考えを深める構成になっている。    関数的な考えは,場面のなかに,伴って変わる二つの量を見いだし,その二つの量につい   て,一方の量が決まれば他方の量が決まるというあるきまりを明らかにし,その関係を利用   して考察を進めていくという考えである。この関数の関係に含まれる関係として比例や反比   例がある。比例は,二つの量xとyがあるとき,xの値が2倍,3倍,……になると,それ   に伴ってyの値も2倍,3倍,……となる関係で,「yはxに比例する」という。これは,   低学年の乗法の学習で養われた倍の概念を素地とし,中学の関数へと発展するものである。    本単元は,比例の関係に着目してみたり考えたりすることにより,身の回りの多くの事象   を能率よく処理することができる有用性を含んでいる。このことは,児童が身の回りの問題   に主体的にかかわり,算数のよさを進んで活用する態度を育成するうえでふさわしい教材で   あると考える。 (2) 児童について    児童は,学習意欲が高く,基礎的な知識や技能がおおむね定着している。諸検査の結果か   ら,知的水準が全国基準値より高く,標準偏差は全国基準値とほぼ同じである。    また,これまで,1年で「10の構成におけるたす数とたされる数の関係」,2年で「九   九におけるかける数と積の関係」,3年で「数量関係の言葉の式」,4年で「折れ線グラフ   における伴って変わる二つの数量の関係」,5年で「周や面積などを求める公式」等,関数   的な考え,関数表,xやyを用いた式表示及びxとyの変わり方の考察などにもふれてきて   いて,比例の学習の素地もおおむね育っている。    しかし,これまでの学習では,気付いたきまりや性質のもつよさを,進んで活用する態度   に高められないでいるように思われる。これは,算数のよさを見いだして活用してみたいと   いう思いを深めたり,活用できる身の回りの場面をみたり考えたりできるような指導が十分   ではなかったためと考えられる。 (3) 学習にあたって    単位時間の学習にあたって,学習指導過程の「まとめる」段階で,きまりや性質の活用に   ついて児童なりにまとめることができる記述を取り入れる。この記述は,次の四つの設問に   答える形式にし,学習指導過程の各段階で手だてを考える。   ア 「学習したことを使って問題練習をしてみて,どのように思いましたか」    (ア) きまりや性質のもつよさに気付くことができるように,「調べる」段階での自力解決     をとおしてもった自分の考えを,「確かめる」段階で友達の考えと比較できるようにす     る。また,気付いたよさを活用してみたいと思うことができるように,問題練習をする     「広げる」段階の時間を十分にとり,成就感や満足感を記述できるようにする。    (イ) 第1時では,1)水の量と深さ,2)おもりとばねの長さ,3)時間と道のり,4)もえるろ     うそくの時間と長さ,5)面積18の長方形の縦と横の長さ,それぞれの関係を具体的     操作をとおして調べ,自分の考えをもてるようにする。そして,今まであいまいにとら     えていた二つの量の関係のなかにきまりの有無を見いだし,二つの量の関係がよりはっ     きり分かるよさを再確認して感得できるようにしていきたい。   イ 「新しく分かったことは何ですか」 (ア) 「まとめる」段階では,「つかむ」段階と「確かめる」段階をとおして,既習事項と     新しく分かったこととをとらえ直して記述できるようにする。「つかむ」段階では既習     事項の分かっていることをもとに,求めることをとらえられるように課題を設定する。     また,「確かめる」段階では課題に対して言葉や式などにまとめる。    (イ) 第1時では,伴って変わる二つの量には,一方の量が増えると,他方の量が減るもの     と,他方の量も増えるものとがあることをとらえられるようにしていきたい。   ウ 「伴って変わる二つの量を簡単に見付けるとき,どこに気を付けたいですか」(第1時) (ア) きまりや性質の活用方法を児童なりに自己決定できるように,「見通す」段階と「広     げる」段階とで求答方法を比べて,能率的になっている原因を振り返って記述できるよ     うにする。    (イ) 第1時では,児童の経験をもとに伴って変わる二つの量の関係を判断できるようにす     る。一方の量が1と2のときに,他方の量が増えているか減っているかを区別する考え     にも,気付くことができるようにしていきたい。 エ 「あなたの身の回りから,伴って変わる二つの量をさがしてみましょう」(第1時)    (ア) 「広げる」段階での適用問題の内容を児童の身近な生活場面のなかから取り上げ,具     体的な活用場面を思い浮かべて記述できるようにする。 (イ) 第1時では,36人の児童名が入った36問の学習シートで問題練習をし,活用場面     を具体的に思い浮かべられるようにする。問題の内容は,児童の生活場面のなかで起こ     り得る36とおりの伴って変わる二つの量から構成し,見方・考え方を広げられるよう     にしていきたい。 4 教材の関連と発展     5 年 6 年 中 学 +−−−−−−−−−−−−+ + −−−−−−−−−−−− + +−−−−−−−−−−+ |O□や○の代わりに具体的++|O比の意味と表し方 |++O二つの集合の要素間| | な数値の代表として,文||| 比の値の意味と求め方 ||| の対応関係 | | 字xやyを用いて式に表|||O比の相等関係とその利用 ||| ・変数と変域の意味| | すこと ||+ −−−−−+−−−−−− +|| ・関数の意味 | |O文字xを用いて題意に即||+ −−−−−+−−−−−− +||O関数を表す表,グラ| | して方程式を立てること||+O変化する二つの量の対応す||| フ,式 | |O未知数xの値の求め方 ||| る数値間の関係の考察 |||O二乗,三乗,積に比| +−−−−−+−−−−−−+||O比例の意味と用語,性質 ||| 例,反比例 | +−−−−−+−−−−−−+||O比例の式 ||+−−−−−−−−−−+ |Oy=1.2×x の式の意+||O比例のグラフ || | 味と関数表による考察 |||O比例の関係に着目した問題 || +−−−−−+−−−−−−+|| の解決 || +−−−−−+−−−−−−+|+ −−−−−+−−−−−− +| |Oy=x×3.14 の式の+++ −−−−−+−−−−−− +| | 意味と関数表による考察| | 反比例の意味と用語,性質++ +−−−−−−−−−−−−+ | 反比例の式,グラフ | +−−−−−−−−−−−− + 5 単元の学習指導計画(13時間扱い)    1) 身の回りの事象のなかから,伴って変わる二つの量を見いだし,関数的な見方・考え      方を知ること  2) 伴って変わる二つの量の関係と比例の意味についての理解    3) 二つの量が比例の関係にあることの判定    4) 比例する二つの量について,xの二つの値の割合とそれに対応するyの値の割合との      関係の理解 5) 比例する二つの量について,xの値がn分の1になったときのそれに対応するyの値      の関係の理解    6) 学習内容の適用と習熟    7) 比例する二つの量について,対応する数値間の商の関係の理解    8) 比例する二つの量について,二つの量の関係を式に表すことの理解    9) グラフによる比例する二つの量の関係の表現やその特徴のよみとり    10) 学習内容の適用と習熟    11) 比例の関係に着目することによる,能率のよい問題の処理    12) 学習内容の適用と習熟    13) 学習成果の診断 6 本時の学習指導(第1時) (1) 目標 ア 身の回りのなかから伴って変わる二つの量を見いだそうとする。(関心・意欲・態度)   イ 一方の量を変えて,他方の量がどのように変わるかみたり考えたりすることができる。     (数学的な見方・考え方)   ウ 伴って変わる二つの量の変わり方を類別することができる。(表現・処理)   エ 伴って変わる二つの量にはいろいろあることが分かる。(知識・理解) (2) 展開 +−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | |学習活動と主な発問| 予 想 さ れ る 反 応 |児童理解(方法)と支援| +−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | |1問題の場面を思い| |O問題の場面を思い浮か| | | 浮かべる。 | | べることができたか。| |つ|・問題をよもう。 | |(挙手) | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+|・1)〜5)の具体物を提示| | ||1)水の量と深さ,2)おもりとばねの長さ,3)時間と道の|| し,一方の量が1の場| | ||り,4)もえるろうそくの時間と長さ,5)面積18の長|| 合に,他方の量はそれ| | ||方形の縦と横の長さで,一つの量が増えるに伴って,も|| ぞれいくつになるかを| | ||う一つの量はどのように変わっていくのだろう。 || 確認する。    | |か|+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+|  | | | |・すべての場面を思い浮かべることが| | | | | できる。 | | | | |・3),5)の二つの量の関係を思い浮か| | | | | べることができずにいる。 | | | | |・二つの量を見いだせずにいる。 | | |む|2課題をつかむ。 |・変わり方のきまりに着目する。 |O課題の意味を理解でき | | | 変わり方は,同じ |・増減の関係に着目する。 | たか。 | | | だろうか。 |・二つの量を混同している。 |(観察) | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+|・1)の水の量と深さが変 | | ||変わり方のきまりをくわしく調べてみよう。 || わる二つの量であるこ | |7|+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| とを説明する。 | +−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | |3伴って変わる二つ|・はかった二つの量を表にかいて比べ|O調べ方が分かったか。| |見| の量の調べ方と変| ればいい。増減のきまりはある。 |(挙手) | |通| わり方を予想する|・二つの量をものさしなどではかって|・1)の水の量が1高フと| |す| きまりがあるか,| 比べればいい。きまりはある。 | きと2高フときに深さ| | | どのように調べれ|・一つずつはかっていけばいい。きま| が何pになるか実際に| |5| ばよいだろう。 | りはある。 | はかってみせる。 | +−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | |4自分の見方・考え|・1)〜5)すべての増減の関係に気付き|O児童なりに調べること| |調| 方で調べる。 | 特に,1)の倍関係にきまりを見いだ| ができたか。 | | | 1),2),4)は班で| す。 |(操作の観察) | |べ| 調べ,3),5)は一|・1)〜4)の増減の関係に気付き,5)の|・机間指導をしながら一| | | 人で調べよう。 | 縦と横の長さを混同する。 | 方の量が1のときと2| |る|  |・1),2),4)の増減の関係に気付く。| のときとの他方の量の| | | | 3),5)の伴って変わる二つの量を見| 値を確認し,変化に気| |10| | いだすのに時間を必要とする。 | 付くようにする。  | +−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ +−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | |5二つの量の変わり| 1)水の量が増えると深さも増える。|O1),2),3)は,一方の| | | 方について,似て| | 量が増えると他方の量| |確| いるものどうしを| 2)おもりが増えるとばねの長さも増| も増える関係で,4),| | | 分類し整理する。|  える。 | 5)は,一方の量が増え| | |・変わり方が似てい| 3)時間が増えると道のりも増える。| ると他方の量は減る関| | | るものどうしに分| | 係であると分類し整理| | | けてみよう。 | 4)もえるろうそくの時間が増えると| できたか。 | | | |  長さは減る。 |(挙手) | |か|  | 5)面積18の長方形の縦の長さが|・一方の量が1のときと| | | |  増えれば横の長さは減る。 | 2のときとを実際には| | | | | かって,表に表して確| | | | | 認する。(特に3),5))| | |6言葉でまとめる。| 伴って変わる量は,たくさんある。|Oよさに気付き,まとめ| | | ほかに伴って変わ| 変わり方のきまりが,はっきり分か| ることができたか。 | |め| る量はあるだろう| る。表から,倍の関係も分かる。 |(学習ノート) | | | か。 | 伴って変わる量は,ある。 |・1個100円のりんご| | |・伴ってどのように| 増えたり減ったりする変わり方が分| を売る場合を例にし,| | | 変わるかとみると| かる。 | 「個数が増えると代金| | | きは,みないとき| 伴って変わる量は,ある。 | も増える関係が分から| | | よりもどんなよい| 増えるものと減るものがあることが| ないと,商売で困るこ| |る| ところがあるだろ| 分かる。(または,難しいと思う。)| とになるので」,伴っ| | | う。 | | てどのように変わるか| | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| とみると,変わり方が| | ||伴って変わる二つの量には,一つの量が増えるともう一|| はっきり分かるよさを| | ||つの量も増えるものと,もう一つの量は減るものがある。|| 確認する。また,増え| | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| る場合と減る場合とが| |7| | | あることを確認する。| +−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | |7伴って変わる二つ|・問題の場面を思い浮かべて,一方の|〇いろいろな変わり方に| |広| の量の変わり方を| 量が1増えると他方の量はどのよう| ついて,問題をとくこ| | | 考える適用問題で| に変わるかを考えて,問題をとく。| とができたか。 | | | 練習をする。 |・問題の場面を思い浮かべて,一方の|(学習シート) | |げ| | 量が増えると,他方の量は増えるか|・机間指導をとおして,| | | | 減るかを考えて問題をとく。 | 問題の場面が思い浮か| | | |・比較的理解しやすい1),2),4)の関| べられるように,一方| |る| | 係と関連付けて考え,問題をとく。| の量が1のときと2の| | | | | とき他方の量がどのよ| | | | | うに変わるかを,表や| |6| | | 図に表して確認する。| +−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | |8学習を振り返って|(1)・できた。分かった。はっきりする。|〇児童なりに学習を振り| |ま| 記述する。 | ・できた。分かった。たくさんある。| 返ることができたか。| | | (1)練習してどのよ| ・できた。分かった。難しい。 |(学習シート) | | |  うに思ったか |(2)・伴って変わる変わり方のきまり。|・どのようなことを記述| |と| (2)新しく分かった| ・伴って変わる変わり方。 | すればよいか,机間指| | |  ことは何か |  ・伴って変わるものがあること。 | 導をとおして,個別に| | | (3)簡単に見付ける|(3)・一方の量が1増えると他方の量は| 問答をする。 | |め|  とき,どこに気|   どうなるかに気を付ける。 | | | |  を付けたいか |  ・増えるか減るかに気を付ける。 | | | | (4)身の回りから,|  ・問題の場面を思い浮かべること。| | |る|  伴って変わる二|(4)・かかった時間と作業量。 | | | |  つの量をさがそ| ・使った(食べた)量と残りの量。| | |10|  う | ・買うものの個数と代金。 | | +−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ (3) 評価 ア 身の回りの事象のなかから伴って変わる二つの量を見いだそうと,「まとめる」段階の  (1)と(4)に記述できたか。(関心・意欲・態度) イ 一方の量を変えると他方の量がどのように変わるか,身の回りのもののなかからみたり    考えたりしたことを「まとめる」段階の(4)に記述できたか。(数学的な見方・考え方) ウ 適用問題の学習シートで,一方の量が増えると他方の量も増えるものと,他方の量は減    るものとに,類別することができたか。(表現・処理) エ 伴って変わる変わり方を「まとめる」段階の(2)に記述できたか。(知識・理解)