印刷用紙:B4縦 1ページの行数:44 1行の文字数(半角で):90 第4学年 社会科学習指導案 指導者 小 向 和 秀 T.単元名 交通事故をふせぐ U.単元について ○ 子どもたちは,前単元「火事をふせぐ」の学習で,学校や地域には防火に必要なさまざまな施設  が設置されていること,消防署では,火災発生に備え,緊急に対応できるような訓練や火災防止の  対策を行っていること,火災発生時には,関係機関が相互に連絡を取り合いながら火災を最小限に  とどめる努力をしていることなどを学んできた。この過程で,子どもたちは,防火施設が予想以上  に設置されていることや火災が発生したときの消防署員の行動の素早さに驚くとともに,いろいろ  な機関の人たちが協力し合って火災に対処していることに関心をもつようになってきた。 そこで,本単元では,交通事故から人々の安全を守るための関係機関の働きとそこに従事してい  る人々の学習を通して,交通事故から人々の安全を守るため関係機関が相互に連絡を取り合いなが  ら緊急に対処する体制をとっていることやそこに従事している人々の工夫や努力について理解させ  たい。 ○ 交通事故は,現代における深刻な社会問題である。我が国では,昭和30年代後半から車社会を本  格的に迎えて交通事故が増加し続け,昭和45年には発生件数も718,080件,そのうち死者 16,765人  傷者 981,096人を記録しピークに達した。このような状況に対処するために,昭和45年に交通安全  対策基本法が制定され,これに基づき累次の交通安全基本計画が策定された。そしてそれらの施策  は,地方公共団体や関係団体等が一体となって総合的・計画的に推進されてきた。その結果,道路  交通事故は,昭和50年代半ばには事故死者数がピーク時の約50%,負傷者も約40%減少した。しか  し,50年後半からは,再び交通事故件数が増加し,それに伴い事故死者数や負傷者数も増加傾向に  転じた。特に,昭和63年には死者が1万人を突破した。平成元年には,交通事故は48秒に1件(66  1,363件),死者は47分に1人(11,086人),負傷者は39秒に1人(814,832人)の割合で発生し,今  や「第2次交通戦争」の様相を呈しているといわれる。 このような第2次交通戦争時代が到来した背景として,第一に自動車の保有台数・免許保有者数  の増加にともなう道路交通量の増大,第二に異車種・高齢者・女性ドライバーなど多様化による道  路交通の混合化・複雑化,第三に人々の生活様式の変化による夜間交通量の増大とレジャーの活発  化による休日の道路交通量の増大,第四に交通安全に対するマナーや考え方の低下による若者の無  謀運転,第五に現状の交通安全対策や安全施設の限界等が挙げられる。 岩手県においてもこの傾向は同様であり,交通事故の防止が最大の課題となっている。この対策  として警察署では,交通安全施設の整備,交通指導取り締まり,交通安全教育に取り組んでいる。  交通安全施設の整備としては,道路整備,交通規制標識や信号機の設置などがあげられる。また,  岩手県では,交通混雑をなくし交通事故をなくすために昭和57年に交通管制センターを設置した。  このセンターは盛岡,花巻,北上,水沢,一関などにおかれ,相互に連絡を取り合って交通流の円  滑化を図っている。交通指導取り締まりとは,街頭指導,交通違反の取り締まりなどである。交通  安全教育は警察署を中心に交通指導員,交通安全協会,交通安全母の会,教育委員会などが協力し  合い,「交通安全市民のつどい」や「交通安全教室」「交通安全ポスターコンクール」等を開催し,  工夫や努力を重ねながら地域ぐるみで交通事故防止の活動を行っている。  ○ 子どもたちの中には,交通事故にあったり交通事故になりそうになったりしている子どももいる 。 また,自分の身近の人が交通事故にあったという子どももいる。そして,テレビなどの報道を通 し て毎日のように交通事故のニュースを耳にしている。しかし,それにもかかわらず交通事故の現 状 や交通事故を防ぐしくみや関係諸機関の工夫・努力に関心を示す子どもは少ない。 そこで,本単元では,交通事故から人々の安全を守るため,関係機関が相互に連絡を取り合いな  がら緊急に対処する体制をとっていることを見学させたり調べさせたりすることを通して,関係機  関の働きとそこに従事している人々が地域住民とも協力,連携しながら,様々な工夫や努力をして  いることをにわからせる。 V.単元目標 1 現在,交通事故が多く発生していることや年々増加していることをわからせる。 2 交通事故の原因は,加害者や被害者の不注意にあることに気付かせるとともに,これらの事故   は,人々の生命や財産の安全をおびやかす恐ろしいものであることをわからせる。 3 交通事故から人々の安全を守るために,関係諸機関が相互に連絡を取り合いながらいつでも緊   急に対処できる体制がとっていることをわからせる 4 交通事故を防ぐために,関係諸機関に従事している人々や地域住民は,協力,連携しながら様   々な工夫や努力をしていることをわからせる。 5 交通事故を防ぐために,自分たちも協力しようとする態度を育てる。 6 交通事故から人々の安全を守るための施設や人々の働きを観察したり調べたりして,それを表   現し活用できるようにする。 W.指導計画(10時間) 第1次 ふえる交通事故    3時間  ・交通事故のおそろしさ (1)  ・ふえる交通事故       (1) ・身の回りで起きている交通事故 (1) 第2次 交通事故への対処  1時間 第3次 交通事故をふせぐしくみ 4時間 ・一方通行にしたわけ (1) 本時 ・交通安全のための施設設備 (1) ・交通管制センター    (2) 第4次 交通事故をふせぐための協力  1時間 第5次 学習のまとめ 1時間 X.本時の指導 1 教材と子ども 交通事故を防ぐ対策の一つとして,施設整備の充実がある。施設整備とは,道路の整備,道路   標識や信号機・横断歩道・ガードレールの設置などである。交通規制標識などの交通施設は,設   置する場所の道路状況や交通量,市全体の車の流れ(交通流)などを考慮して設置されている。 本時で取り扱う仁王小学校の周辺である本町通や本町通付近には,一方通行と進入禁止の規制   標識が数多く設置されている。この付近が一方通行となったのは,昭和46年ごろに都市総合交通   規制が制定されたあと,様々な検討がなされてから,昭和51年のことである。この規制が制定さ   れた理由としては,昭和45年に交通事故の件数がピークを迎えたことがあげられる。それを受け   て盛岡市内全体の交通流が見直され,昭和48年ごろから徐々に各地域の道路に一方通行が設置さ   れたのである。すなわち,一方通行の規制をすることによって盛岡市内の交通流を整序化し,交   通事故の防止と交通の円滑化を図ろうとする目的をもって設置されたのである。しかし,一方通   行の規制をする際は,その地域の住民への説明会が何度となく行われ,住民の協力のもとにはじ   めて施行されるのである。 道路標識は,いたるところに設置されているものであり,日常,子どもたちもよく目にしてい   るものである。しかし,それがどのような意味をもっているかについてはあまり関心をもってい   ない。    そこで,子どもたちの身近な場所である上田通や本町通付近の一方通行を取り上げ,その意味   を考えさせることによって,交通事故を防ぐためにいろいろな工夫や協力がなされていることを   わからせたい。そして,そのほかにもカーブミラーなど,多くの安全施設が設置されていること   に気付かせ,交通事故を防ぐための施設についてさらに調べてみようとする意欲をもたせたい。   また,安全施設を設置した人々の願いにもふれながら,交通事故をふせぐための協力についても   考えさせたい。 2 本時のねらい ・ 交通事故防止や交通の円滑化を図るために,一方通行を設置したことをわからせ,安全施設    についてさらに調べようとする意欲をもたせる。   ・ 安全を守る人々の願いについて考えさせることを通して,交通事故をふせぐために協力しよ    うとする気持ちをもたせる。 3 展 開 +---+-----------------------+-----------------------------------------------+-----------+ | 段| 学習内容と学習活動 |     指 導 上 の 留 意 点     | 資 料 | | 階| | | | +---+-----------------------+-----------------------------------------------+-----------+ | | 1 進入禁止と一方通行 | ・ 仁王小学校から上田通りに車で買い物に行くこ | ・仁王小学| | 問| の規制標示について話 | とを仮定して,その道順について話し合わせなが | 校周辺の| |  |  し合い,本時の追究問 | ら,最短距離である本町通二丁目からの道路には | 地図 | | 題|  題を把握する。 | 一方通行の標示があり,車では通られないことを | | |  | | わからせる。 | | | の| | ・ 一方通行の意味は,知っている子に説明させる | ・規制標示| |  | | ・ このほかに学区内のいたるところに設置されて | (一方通行)| | 把| | いる一方通行を発表させ,地図の中に示す。 | | | | | ・ 道路の様子は,VTRで具体的にとらえさせる | | | 握| | ・ 一方通行や進入禁止の標示で規制されたのは, | ・グラフ | |  | 一方通行にしたのは | 昭和51年であることを補説し,これらの規制標示 | 「交通事故| |  | なぜだろう。 | の設置理由の布石とする。 |  数の移り| | |             | ・ 一方通行や進入禁止は,車にとって不便である | わり」 | | |       | ことから,これらの標示を設置したことに疑問を |     | | | | もたせ,本時の追究問題を把握させる。 | | +---+-----------------------+-----------------------------------------------+-----------+ | | 2 一方通行にしたわけ | | | | | を考え,話し合う。 | | | | | (1) 自分の考えをノー | ・ 自分の考えをノートにまとめさせ,机間巡視に | | | | トにまとめる。 | より,問題把握の状況をとらえる。 | | | | | ・ 考えつかない子には,登下校の車の流れなどを | | | 問| | 想起させ,一方通行でない場合の交通量や危険性 | | | | | について助言を与えて考えさせるようにする。 | | | | (2) 考えたことを発表 | | | | | し,話し合う。 | | | | | ・ 交通量が多い | ・ 発表させる場合は,考えた根拠も具体的に話さ | | | 題| ・ 道路がせまい | せる。 | | | | ・ 交通事故が多い | ・ 発表された内容は,板書で整理し,子どもの思 | | | | ・ 混雑をふせぐ | 考の一助とする。 | | | | ・ 交通事故をふせぐ | ・ にも発表させ,その内容を認めることによ | | | |             | って,発表への意欲をもたせる。 | | | の| (3) 予想の吟味をする | ・ それぞれの予想に対して意見を述べさせ,個々 | | | | | の考えを全体のものとするとともに,確かめる方 | | | | | 法について考えさせ,検証への関心を高める。 | | | +-----------------------+-----------------------------------------------+-----------+ |  | 3 資料をもとに,一方 | ・ 確かめには,交通量,交通事故調べ,道路の幅 | ・ビデオ  | | | 通行にしたわけについ | と車の幅などをもとに,子どもの興味関心のある | ・道路の幅 | | 追| て確かめる。   | ものから調べさせ,その結果を発表させる。   | 車の幅 | | | ・交通事故の防止   | ・ 交通量と道路の幅については,ビデオで朝の通 |       | |  |  ・盛岡市内の交通流の | 勤,通学の様子を視聴させたり,道路幅の数値を | | | | 整序化 | 知らせたりして具体的にとらえさせる。 | ・プリント | | | | ・ 警察のおじさんの話を自分たちの予想と比較さ | 「警察のお | | 究|             |  せながら聞かせ,わかったことを発表させる。 | じさんの | | | | ・ 警察のおじさんの話から,一方通行が交通事故 |  話」   | | | | の防止,盛岡市内の交通の流れを円滑にするため | | | | | に実施された対策であることをわからせる。 | | | | | ・ 市内には,他にも多くの一方通行があることを | ・市内一方 | | | | 補説する。  | 通行図 | | +-----------------------+-----------------------------------------------+-----------+ | | 4 地域の人々の協力に | ・ 一方通行の設置にかかわる経緯について考えさ | ・地域の人 | | | ついて考え,話し合う | せ,それを地域の人の話によって確かめさせ,交 | の話 | | | | 通安全を願う地域の人の気持ちに気付かせる。 | | | | | ・ どんな願いで設置されたのか考えさせ,自分も | | | | | 交通事故防止のために協力しようとする気持ちを | | | | | もたせる。 | | +---+-----------------------+-----------------------------------------------+-----------+ | ま| 5 本時の学習内容や方 | ・ 一方通行にしたわけや自分の協力という面から | | | | 法についてまとめる。 | 自分の言葉でまとめさせ,学習方法についても自 | | |  |             |  己評価させる。 | | | と| | ・ まとめたことを発表させ,それを | | | | | 認め,評価してやることによって,次時の学習へ | | | | | の意欲化を図る。 | | | め| 6 他の標識や施設につ | ・ 他にもたくさんの交通標識や安全施設があるこ | ・交通標識| | | いて話し合い,次時の | とを子どもたちから引き出し,1〜2の例を提示 | ・カーブミ| | | 学習への方向をつかむ | して,標識や施設への関心を高め,さらに調べて | ラー | | | | みようとする意欲をもたせる。 | | | | | ・ 調べ活動は,課外にさせ,次時は調べてきたこ | | | | | とを発表し合い,その意味を調べる学習であるこ | | |  |             |  とを確認する。 | | +---+-----------------------+-----------------------------------------------+-----------+