印刷用紙:B4縦 1ページの行数:66 1行の文字数(半角で):90 第6学年 社会科学習指導案 指導者  深 田 好 昭 T.単元名  士と農工商の世の中のくらし U.単元について  ○ 子どもたちは,前単元「農村に住む武士の世の中のくらし」において,源頼朝が鎌倉に幕府を   開き武士による政治を行ったこと,元寇の結果,参戦した武士の不満が高まる中で足利尊氏の働   きによって鎌倉幕府が滅び室町幕府が成立したこと,後に群雄割拠の時代になり各地に戦国大名   が台頭したこと,織田信長が鉄砲による新戦術で周辺の大名を征し全国統一に乗り出したこと,   織田信長の後を継いで豊臣秀吉が全国統一を果たしたことなどを学習してきた。その中で,子ど   もたちは,武士の政治や戦いの仕方に驚き,豊臣秀吉の次に天下人になった徳川家康や江戸幕府   の政治に関心を示すようになってきた。 そこで本単元では,江戸幕府の政治に焦点をあてながら,江戸時代の人々のくらしの様子をと   らえさせたい。 ○ 関ヶ原の戦いで勝利をおさめて江戸幕府を創設した徳川家康は,外様大名に対する大規模な改   易・転封を強行すると同時に徳川家臣団の中から親藩・譜代大名を全国に配置し,徳川家による   全国支配体制をつくり上げていった。また,武家諸法度を制定し,大名を厳しくとりしまった。   人々に対しては,士農工商に賎民を加えた身分制度,キリスト教の禁止,五人組の制度,農民統   制などにより,とりしまりを強め,将軍を頂点とした支配体制を確立した。 幕府の政治が安定してくると国内の経済が活発になり,経済の担い手であった町人の文化が栄   え,近松門左衛門や安藤広重,松尾芭蕉などが活躍した。経済活動が活発になるにつれて幕府は   次第に財政難に陥り,徳川吉宗の政治・経済改革があったものの幕府の弱体化は着実に進んだ。 幕府が弱体化するにつれて士農工商の社会を批判する考え方や外国の新しい学問が多く現れた。 そして,浦賀沖に黒船でペリーが来航するにいたって,もはや幕府は自らの力でアメリカと交渉   を進めることが困難となり,ついに開国に及んだ。国内では百姓一揆や打ちこわしが多発し,幕   府に対する不満が起こる中で,薩摩と長州を中心とした勢力によって幕府は倒され,源頼朝以来   続いた武士による政治は終止符を打った。 ○ 子どもたちは,歴史に興味を示し,学習態度も積極的になってきている。しかし,歴史的事象   のとらえかたは,表面的・一面的であり,多面的な見方をする子どもは少ない。また,いくつか   の歴史的事象を変遷や因果関係という視点でとらえる力も不足しているため,発言内容が単なる   思いつきで根拠に乏しいものになることが多い。その要因として,子どもたちが興味・関心をも   った問題に対して,その解決のための活動を十分に保障しなかったため,子どもの追究意欲が低   下したことが考えられる。 そこで,指導にあたっては,次のことに留意しながら学習を進めていきたい。 ・ 子どもの考え方や興味・関心に応じて調べる学習を取り入れ,主体的に追究させること      によって追究意欲を高め,子どもの歴史に対する興味・関心をさらに高める。 ・ 調べる活動の際には,資料集,絵,年表,文章資料などを活用させながら具体的に歴史      的事象をとらえさせる。 V.単元目標 1 徳川家康・家光が大名統制・鎖国キリスト教の禁止・身分制度などを行うことによって,幕藩   体制を確立していったことをわからせる。 2 江戸時代には,農業・交通・学問・文化などが発達したことをわからせる。 3 百姓一揆・打ちこわしなどによって幕府の政治が行き詰まったことや,新しい学問がおこっ  てきたことをわからせるとともに,ペリーの来航を契機とする開国から幕府の崩壊にいたる過 程をわからせる。 4 幕府の政策や主な人物の活躍ぶりについて調べさせることによって,江戸時代の政治と当時 の人々の生活との関係について関心をもち,江戸時代の歴史についてさらに追究しようとする    態度を育てる。 W.指導計画(10時間) 1 将軍となった徳川家康‥‥‥‥‥‥(1)   6 将軍吉宗のなやみ‥‥‥‥‥‥‥‥(1) 2 士と農工商‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(1)   7 はじめて解剖を見た‥‥‥‥‥‥‥(1) 3 キリスト教の禁止‥‥‥‥‥‥‥‥(1)本時   8 黒船がきた‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(1) 4 農民のくらし‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(1)  9 幕府の最後‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(1) 5 天下の台所と将軍のおひざもと‥‥(1)  10 学習のまとめ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(1) X.本時の指導 1 教材と子ども     幕府は,貿易保護のためにキリスト教を黙認していたが,1612年に天領でキリスト教を    禁止したのをはじめとして,次の年には禁教令を全国に拡大した。将軍を頂点とした支配体制    をめざし,大名や人々を統制してきた幕府にとって,平等や人間愛を説くキリスト教の教えは,    統一の妨げだった。また,信長,秀吉,家康の3人が手を焼いた一向一揆は,宗教による強い    団結の現れであり,伝来以来50年足らずで信者が70万人以上になったキリスト教は,幕府     にとって脅威であった。 1637年におこった島原の乱は,苛政に対するキリスト教信者の蜂起であった。島原・天    草の人々3万7千人が天草四郎を中心として堅い団結で結ばれ,原城に立てこもって幕府軍と    対峙した。幕府軍は,3万4千人を動員して攻撃したが,ことごとく敗戦し,最高司令官であ    る上使が戦死するなどさんざんなあり様で退却した。これに驚いた幕府は,上使を老中松平伊    豆守に命じ,12万人を擁して城攻めを開始した。島原の乱の戦闘は悲惨なものであり,原城    に立てこもった3万7千人の内,生き残ったのは,幕府に内通した1人だけであった。 幕府によるキリスト教信者の探索や取り調べ,刑罰は苛酷をきわめた。九州地方を中心にし    て「踏絵」がおこなわれたのをはじめとして,褒賞金による訴人の奨励,五人組連座制などが    行われた。キリスト教信者が見つかれば,改宗を強要したり,強い信仰のもち主であれば,極    刑にして見せしめとしたりした。しかし,このような迫害の中でも,信仰を捨てず,「隠れキ    リシタン」として各地に潜伏した信者はかなりの数にのぼった。 子どもたちは,これまでの学習で,徳川家康や家光が,江戸幕府の支配を長期化・強大化さ    せるために大名にさまざまな負担を負わせたこと,士農工商の身分制度によって人々を支配し    ようとしたことを学んでおり,幕府による支配体制はほぼ確立し,幕府は安定してきたと考え    ている子が多い。貿易とともに伝来したキリスト教が幕府の支配体制を揺るがすものであった    ことや,幕府がその団結力を脅威に感じていたことについてはあまり気付いていない。 そこで,幕府が宣教師やキリスト教信者を弾圧したわけを,キリスト教の急激な増加,キリ    スト教の教えと幕府の考え方の違い,信者の団結の様子などから考えさせていきたい。 2 ねらい   幕府がキリスト教を禁止したのは,身分制度を維持するための幕府の政策とキリスト教の教    えが相入れないものであったことや幕府がキリスト教の広まりを恐れたためであったことをわ    からせる。  3 展開 +---+-------------------------+-----------------------------------------------+---------+ | 段|   学習内容と学習活動 |   指 導 上 の 留 意 点 | 資  料| | 階| | | | +---+-------------------------+-----------------------------------------------+---------+ | | 1.キリスト教信者の弾圧 | ・キリスト教信者が迫害を受けている絵図を提示し | ・絵図 | | 問| の様子について調べ,本 | 表現されている事実からわかることを話し合う。 | 「長崎大| | |  時の追究問題を把握する | ・わかったことへの感想を述べさせる中で,キリス | 殉教」 | | 題| ・火あぶりなっている宣 | ト教弾圧の悲惨さを感じ取らせる。 | | | |  教師    | ・元和8年の大殉教では,ヨーロッパ人宣教師8人 | | | の| ・首を切られている信者 | 日本人キリスト教信者46人が処刑されたことや | | |  | ・刑場を囲む人々 |  この他にもたくさんのキリスト教信者が日本各地 | | | 把|   幕府がキリスト教  | で迫害を受けた事実から,幕府の苛酷な弾圧に疑 | | |  | の宣教師と信者を処  | 問をもたせ本時の追究問題を把握させる。 | | | 握| 刑したのはなぜだろ | | | |  |   う。 | | | +---+-------------------------+-----------------------------------------------+---------+ | | 2.キリスト教の宣教師と | | | | | 信者を処刑したたわけを | | | | | 話し合う。 | | | | | (1) 考えたことをノート | ・机間巡視により,つまずいている子には信長や家 | | | | に書く。 | 康が一向宗に手を焼いたことや,前時の士農工商 | | | | | による身分制度について想起させる。 | | | | (2) 考えたことを発表す | ・発表の際は,考えた根拠も発表させる。 | | | | る。 | ・発表の際は,指名し,学習内容を認 | | | | ○信者の広まり | めてやることにより,学習への関心を高めさせた | | | | ・キリスト教信者の増 | い。 | | | | 加を恐れた。 | | | | | ○神の教えが絶対 | | | | | ・将軍や武士の命令を | | | | | 聞かなくなる。 | | | | | ・士農工商の身分制度 | | | |  | に従わなくなる。 | | | | | ○キリスト教信者の団結 | ・発表を板書で整理し,信者の増加,キリスト教の | | | | ・一向一揆と同じよう | 教えと幕府の考え方,キリスト教信者の団結につ | | |  | な一揆が起こる。 | いて調べることへの関心を高める。 | | +---+-------------------------+-----------------------------------------------+---------+ | | 3.発表された内容につい | 信者の広まり キリスト教の教え | | | | て調べて確かめる。 | ・キリスト教信者が増え ・神のもとではみな平等 | ・教科書 | | 問| | ることを恐れた。   ◎「士農工商」の身分制 | | | | | ◎キリスト教信者の増加 度との違いを考えさせ | ・資料集 | | | | の様子を読み取らせる。  る。 | | | 題| | キリスト教信者の団結 | ・絵図 | | | | ・島原の乱 | キリス| | | | ◎乱のあらましをとらえさせる。 |  ト教の| | の|             | ・自分の調べてみたいことから調べさせ,ノートに | 教え | |  |   | まとめさせて発表させる。 | | | | ・キリスト教信者の広ま | ・信長や秀吉の時代の信者の数と比較して急激に信 | | | 追| り | 者の数が増えていることをわからせる。 | | | | ・キリスト教の教え | ・キリスト教の教えと幕府の政策を比較させ,キリ | | |  |         | スト教の教えは,幕府が人々を支配する上で不都 | | | 究| | 合なものであったことに気付かせる。 | | | | ・島原の乱 | ・島原の乱を調べることを通して,キリスト教信者 | | | | | による一揆が起きた事実と,信者の団結力の強さ | | | | | をわからせる。 | | | | | ・幕府が踏絵によってキリスト教信者の探索を継続 | ・踏絵 | | | | して徹底的に行った事実から,幕府がキリスト教 | | | | | の広まりに対して恐れを抱いていたことに気付か | | |  |              |  せる。 | | | | | ・鎖国がキリスト教信者のとりしまりと関連して行 | | | | | われたことに気付かせる。 | | +---+-------------------------+-----------------------------------------------+---------+ | ま| 4.本時の学習内容をまと | ・本間の学習内容や学習の仕方について自己評価さ | | | と| め,次間の学習の方向を | せる。 | | | め|  つかむ。        | ・発表させ,追究の様子を把握しその | | | | | 内容を認めることによって次時への意欲化を図る | | +---+-------------------------+-----------------------------------------------+---------+