印刷用紙:A4縦 1ページの行数:47 1行の文字数(半角で):90                  第6学年社会科学習指導案                                                                   日 時 平成6年9月7日〜12日                           場 所 花巻市立湯本小学校6年1組                           指導者 浜尾信一(長期研修生)                           児童数 男14名,女17名,計31名    1 単元名『近代国家をめざした日本と人々のくらし』教材「富国強兵をめざす国づくり」  2 単元について                                       児童はこれまでに,第1単元「おおむかしの人々のくらし」から第3単元「農村に住む武士   の世のくらし」までで,我が国の歴史の黎明期から大和朝廷による国土統一を経て天皇中心の   中央集権国家が確立していったことや,貴族の世の中の様子,さらに武士が勢力をもつに至っ   た頃の様子や戦国の世の統一について学習してきた。これを受けて,第4単元「士と農工商の   世の中」では,江戸幕府により武士による政治が安定し,新しい学問や文化が起こったことや   黒船の来航をきっかけとして我が国が開国し,国内の政治の激動によって江戸幕府が倒れたこ   とを学習してきた。                                     そこで,本単元では,前単元までの学習をもとに,明治時代に入り天皇を中心とした新政府   が成立し,廃藩置県や四民平等などの諸改革が行われ,文明開化によって欧米の文化を取り入   れつつ我が国の近代化が進められたことや,明治中・後期において大日本帝国憲法の発布,日   清・日露の戦争,条約改正などをとおして国力が次第に充実し,国際的地位が向上したことを   理解させることになる。                                   児童は,歴史学習やそこに登場する人物について興味をもっているが,それを過去の単なる   事実として受け取るにとどまり,その意味や自分だったらどうするかを考え,自ら判断する力   が乏しい傾向にある。また,この単元で学習する明治時代については,歴史の中で政治や社会   の仕組みが大きく変わった転換期であったという認識は薄く,それを推進する活躍をした人物   についてもほとんど知らない状態である。                           そこで,本単元の指導にあたっては,明治維新や文明開化等の歴史的事象を網羅的に取り上   げるのではなく,我が国の近代化や国際的地位の向上にとって中心的な役割を果たした歴史上   の人物の働きに着目させ,その人物の働きを学習することをとおして明治時代の特色を具体的   に把握させるようにしていきたい。その際,明治維新と国会開設の学習では,立場や考え方の   異なる二人の人物についてのシナリオ作りを取り入れていきたい。そして,シナリオ作りを学   習活動の核として位置づけ,そのための追究活動や話し合い活動を展開させることによって,   歴史的事象に対する判断力を育てていくようにしていきたい。   3 単元の目標                                       o 明治の新しい世の中の様子や人物の働きに関心をもち,我が国の近代化や国際的地位の向    上について進んでとらえようとすることができる。[関心・意欲・態度]            o 我が国が近代国家としての形態を整えていった様子や問題点,及び国際的地位が高まって    いった様子や問題点について,人物の働きや国内・国外の様子をもとに考え,判断すること    ができる。[思考・判断]   o 明治維新や文明開化,大日本帝国憲法の発布,日清・日露の戦い,条約改正などについて    人物の働きを中心にして調べることができる。[観察・資料活用]   o 明治維新を契機として我が国の近代化が進められたことや国際的地位が向上したことを人    物の働きを中心に理解することができる。[知識・理解]  4 指導計画(14時間)    *第一次 オリエンテーション −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1時間   *第二次 西郷隆盛・大久保利通と明治維新(本時) −−−−−−−−−−−− 4時間   *第三次 板垣退助・伊藤博文と国会開設 −−−−−−−−−−−−−−−−− 4時間    第四次 東郷平八郎と日清・日露の戦い −−−−−−−−−−−−−−−−− 2時間    第五次 農村の女子工員と工業の発達 −−−−−−−−−−−−−−−−−− 1時間    第六次 陸奥宗光・小村寿太郎と条約改正 −−−−−−−−−−−−−−−− 1時間    第七次 学習の振り返り −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 1時間   * なお,指導計画14時間中,本研究にかかわる授業実践は第三次までの9時間であり,      「人物の働きに着目したシナリオ作り」は,第二次と第三次の2回行う。            5 本時の指導     (1) 「西郷隆盛・大久保利通と明治維新」第1,2時    ア 目 標     o西郷隆盛と大久保利通の関係に関心をもち,第一幕のシナリオ作りに進んで取り組むこ      とができる。[関心・意欲・態度]     o明治維新における西郷隆盛と大久保利通の行為から,二人の願いを当時の世の中の様子      と結びつけて考え,判断することができる。[思考・判断]     o西郷隆盛と大久保利通の行為を,新政府の政治とそれに反対する運動を中心に資料から      調べることができる。[観察・資料活用]     o大久保利通が,近代国家をめざして富国強兵政策を進めていったのに対して,西郷隆盛      ら武士の中にはその政策に不満をもつ者が多かったことがわかる。[知識・理解]    イ 展 開 +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |段階| 学 習 内 容・学 習 活 動 | 指 導 上 の 留 意 点 |資    料| +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |  |1西南戦争の場面から,その状況や|・西南戦争の概略や二人の立場,|・絵    | | つ | そこにかかわる西郷隆盛と大久保| 関係をとらえさせ,二人に対し|「西南戦争」| |   | 利通の関係をとらえる。    | て興味をもたせる。     |・写真と作文| | |2二人の関係について感想や疑問を|     [関心・意欲・態度]| 資料   | |   | 出し合い,学習課題を決める。 |・同じ薩摩藩出身で幼なじみであ|「西郷と大久| | |+−−−−−−−−−−−−−−+| った二人が対立するようになっ| 保」   | | か ||幼なじみであった西郷隆盛と大|| たことに目を向けさせ,疑問や|      | |   ||久保利通は,なぜ,西南戦争で|| 問題意識をもたせる。    |      | |   ||戦うことになったのだろう。 ||               |      | | |+−−−−−−−−−−−−−−+|               |・図    | |   |3シナリオ作りをとおして学習課題|・劇化までの見通しをもたせ,シ|「シナリオ作| | | を解決していくことを知り,シナ| ナリオ作りへの意欲を高める。| りの手順と| | む | リオ作りの手順と内容を理解する|     [関心・意欲・態度]| 内容」  | |  +−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |  |                                |      | |   |4第一幕のシナリオ作りのための学|・幕の役割と書き込みの内容から|      | | つ | 習活動を確かめ,めあてを決める| 第一幕のシナリオ作りのために|      | |  |+−−−−−−−−−−−−−−+| は,二人の行為とその願いを調|      | | か ||西郷と大久保は明治の新しい国|| べなければならないことをおさ|      | |  ||をつくるために,どういう願い|| えさせる。         |      | | む ||でどんなことをしたのだろう。||               |      | |   |+−−−−−−−−−−−−−−+|               |      | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |  |5明治維新における西郷と大久保の|・二人の行為を新政府の政治とそ|      | |  | 行為を調べ,その願いを探る。 | れに反対する運動を中心に調べ|      | |  | (1)大久保の行為とその願い   | させる。 [観察・資料活用]|      | |  |  o明治政府の政治の基本方針や|・関連人物として木戸孝允を取り|・写真   | |  |   諸改革について調べる。  | 上げる。          |「木戸孝允」| |  |  ・天皇中心の中央集権国家  |・五ケ条の御誓文や廃藩置県,四|・文章資料 | | 調 |                | 民平等などの諸改革から,天皇|「五ケ条の御| |  |                | 中心の中央集権国家をめざした| 誓文」  | |  |                | ことをとらえさせる。    |・作文資料 | |  |  ・富国強兵策        |・徴兵令や地租改正から富国強兵|「廃藩置県」| |  |                | 策をとらえさせる。     |・グラフ  | |  |                |        [知識・理解]|「新しい身分| |  |  o調べたことをもとに大久保の|・西欧と肩を並べられるような近| の割合」 | |  |   願いを考える。      | 代国家をめざした大久保の願い|・作文資料 | | べ |                | を考えさせる。[思考・判断]|「徴兵令と地| |  | (2)西郷の行為とその願い    |・西郷は倒幕運動で中心的な役割| 租改正」 | |  |  o倒幕運動や征韓論と士族の反| を果たしたが,征韓論に破れ,|      | |  |   乱について調べる。    | 大久保と対立する立場に立って|      | |  |   ・倒幕運動        | いったことをとらえさせる。 |      | |  |                |・明治政府は薩長の出身者で占め|・作文資料 | |  |   ・征韓論と士族の反乱   | られていたが,明治6年頃にそ|「征韓論と西| |  |                | れらの多くの人が辞職している| 郷隆盛」 | | る |                | ことに気づかせる。     |・表    | |  |  o調べたことをもとに西郷の願|・大久保の行為や願いに対し,不|「明治政府の| |  |   いを考える。       | 平士族の側に立った西郷の願い| 中心となっ| |  |                | を考えさせる。[思考・判断]| た人々」 | |  |6調べたことをもとに第一幕のシナ|・各自で書かせた後,班の中でそ|・シナリオ | |  | リオを書く。         | れを持ち寄って練り上げ,一つ|      | |  | (1)各自で           | にまとめさせる。      |      | |  | (2)班で            |               |      | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |めま|7まとめをノートに記入する。  |・本時のめあてに対するまとめを|・ノート  | |ると|                | させる。          |      | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+   (2) 「西郷隆盛・大久保利通と明治維新」第3時    ア 目 標     o西郷隆盛と大久保利通の果たした役割に興味をもち,進んで第二幕と第三幕のシナリオ      作りに取り組むことができる。[興味・関心・態度]     o西郷隆盛と大久保利通の行為が,明治初期の世の中の変化や人々の生活に与えた影響か      ら,我が国の近代化に果たした二人の役割や問題点を考え,価値判断や意思決定するこ      とができる。[思考・判断]     o新政府の政策やそれに対する武士や農民の不満の内容を資料から読み取り,近代国家と      しての形態を整えていった様子や問題点などを調べることができる。[観察・資料活用]     o大久保利通を中心とする新政府の諸改革により急速な近代化が成し遂げられたが,同時      に農民や武士の間に政府に反対する運動が広がっていったことがわかる。[知識・理解]    イ 展 開 +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |段階| 学 習 内 容・学 習 活 動 | 指 導 上 の 留 意 点 |資    料| +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |  |1前時の学習を想起し,西郷と大久|・前時に作った第一幕のシナリオ|・シナリオ | |  | 保の行為と願いを振り返る。  | を発表させ,本時の第二幕と第|      | | つ |                | 三幕のシナリオ作りへの意欲を|      | |  |2第二幕と第三幕のシナリオ作りの| 高める。[関心・意欲・態度]|      | |  | ための学習活動を確かめ,めあて|               |・図    | | か | を決める。          |・第二幕と第三幕の役割と書き込|「シナリオ作| |  |+−−−−−−−−−−−−−−+| みの内容から,シナリオ作りの| りの手順と| |  ||西郷と大久保が世の中の変化や|| ためには,二人の行為の結果,| 内容」  | | む ||人々に与えた影響を調べ,二人|| 世の中の変化や人々の生活にど|      | |  ||の果たした役割や自分だったら|| のような影響を与えたかを調べ|      | |  ||どうするかを考えよう。   || なければならないことをおさえ|      | |  |+−−−−−−−−−−−−−−+| させる。          |      | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |  |3西郷と大久保が,世の中の変化や|・明治政府の諸改革の与えた影響|      | |  | 人々の生活に与えた影響を調べ,| や政府に反対する運動の広がり|      | |  | 二人の果たした役割を考える。 | について調べさせる。    |      | |  | (1)大久保の与えた影響と果たした|      [観察・資料活用]|      | |  |  役割            |               |      | | 調 |  o明治政府の諸改革の与えた影|・新政府の諸改革により急速な近|・文章資料 | |  |   響を調べる。       | 代化が成し遂げられたが,同時|「徴兵反対一| |  |                | に農民や士族の間に政府に反対| 揆」   | |  |                | する運動が広がっていったこと|・絵    | |  |                | をとらえさせる。      |「地租改正反| |  |                |        [知識・理解]| 対一揆」 | |  |  o大久保の果たした役割を考え|・大久保の果たした役割について|      | |  |   る。           | 考えさせる。 [思考・判断]|      | | べ | (2)西郷の与えた影響と果たした役|・倒幕運動で中心的な役割を果た|・文章資料 | |  |  割             | したが,不平士族の不満をそら|「倒幕運動と| |  |  o倒幕運動や政府に反対する運| すため征韓論を主張した,西郷| 西郷隆盛」| |  |   動が与えた影響を調べる。 | の果たした役割について考えさ|      | |  |  o西郷の果たした役割を考える| せる。    [思考・判断]|      | |  |4二人の立場に自分を置き換えて,|・二人の働きを認めつつ,残った|      | |  | 自分だったらどうするか考える。| 問題点について,よりよい結果|      | |  | (1)もし,大久保だったら    | を得ることができるようにする|      | | る | (2)もし,西郷だったら     | には,どうしたらよいかを考え|      | |  |                | させる。   [思考・判断]|      | |  |5調べたことをもとに第二幕・第三|・各自で書かせた後,班の中でそ|・シナリオ | |  | 幕のシナリオを書く。     | れを持ち寄って練り上げ,一つ|      | |  | (1)各自で           | にまとめさせる。      |      | |  | (2)班で            |               |      | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |めま|6まとめをノートに記入する。  |・本時のめあてに対するまとめを|・ノート  | |ると|                | させる。          |      | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+   (3) 「西郷隆盛・大久保利通と明治維新」第4時    ア 目 標     o劇化学習に関心をもち,進んで発表や鑑賞をすることができる。[関心・意欲・態度]     o各班の劇化を見て,シナリオの内容を相互評価することができる。[思考・判断]    o学習したことを劇化により表現することができる。[観察・資料活用の技能・表現]     o第二次で学習した内容をまとめることができる。[知識・理解]    イ 展 開 +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |段階| 学 習 内 容・学 習 活 動 | 指 導 上 の 留 意 点 |資    料| +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |   |1本時のめあてを確かめる。   |・劇化だけでなく,シナリオの内|      | | つ |+−−−−−−−−−−−−−−+| 容を評価することが本時のねら|      | |   ||学習したことを劇化して発表し|| いであることを意識させる。 |      | | か ||シナリオの内容を評価しよう。||               |      | |  |+−−−−−−−−−−−−−−+|・劇を発表する態度,見る観点に|      | | む |                | ついて説明し,意欲づけを図る|      | |   |                |     [関心・意欲・態度]|      | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |  |2シナリオに基づき,「西郷隆盛・|・班の中で役割分担をさせ,協力|・シナリオ | | 調 | 大久保利通と明治維新」について| して発表させる。      |      | |  | 学習したことを劇化により発表す|[観察・資料活用の技能・表現]|      | | べ | る。             |               |      | |  |                |               |      | | る |3劇化を見て,シナリオの内容を評|・評価の観点を示したカードによ|・評価カード| |   | 価する。           | り,シナリオの内容に着目させ|      | |  |                |  て評価させる。[思考・判断|      | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |めま|4自分の作ったシナリオについて振|・第二次のまとめをさせる。  |・評価カード| |ると| り返り,学習のまとめをする。 |        [知識・理解]|      | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+