印刷用紙:B4縦 1ページの行数: 1行の文字数(半角で):108   −−以下 指導案本文−−                 第 3・4 学 年  社 会 科 学 習 指 導 案                                日 時  平成8年10月1日(火)5校時                                対 象  第3・4学年(男3名、女2名)                                指導者  下 総  直 子 1 単元名  「くらしを高めるねがい」   (あたらしいきょうど岩手) 2 単元について (1)教材観   本単元は、目標の(1)「地域社会における人々の健康や安全を守るための諸活動、地域の地形や産業などの様子及  び地域の発展に貢献した先人の働きを理解できるようにし、地域社会の成員として地域社会の発展を願う態度を育てる  。」を受け、主に内容の(4)「地域の文化や開発などに尽くした先人の具体的な事例を調べて、先人の働きや苦心を  当時の人々の生活の様子や考え方、技術や道具などの面から理解できるようにするとともに、現在にあっても地域の人  々の生活の向上と安定のためにいろいろな努力がなされていることに気付くようにする。」に基づいて設定されている  。本単元では、岩手県最大の用水路である鹿妻穴堰を取り上げている。鹿妻穴堰開発は、北上川西岸の平地に水を供給  するために、慶長2年に工事が始められた。当時の人々の生活の様子や願い、南部信直の藩経営のための開田計画、鎌  津田甚六の業績、土地の様子や工事の苦労の様子などを調べることによって、よりよいくらしを求める人々の願いと結  びつけて考えることができる教材である。また、鹿妻穴堰開発は、現代にいたるまで、新堰の造成、堰の延長、改修が  繰り返され、平成元年からは国営の事業で用水路と排水路の新設と改修が始まっている。このように、現在にあっても  新しい開発が続けられていることに気づくことができる事例でもある。以上のことから、単元の主題である「地域の発  展に尽くした人々」にせまることができ、地域社会の発展を願う態度を育てることができると思われる。 (2)児童観   児童は、これまでの社会科学習において、学習課題を解決するために、資料を調べたり、聞き取りにいったりという  積み重ねをしてきた。体験的活動を好み、上学年の学習をしている3年生も徐々に社会科学習への抵抗感はやわらいで  きたように思われる。4年生の2名は、昨年度の社会科において、地域の人々の生活の変化や、学校の様子の変化で「  昔」を学習してきたが、3年生にとっては初めての「昔」を扱うことになる。大平学区は、米作りよりも畜産や畑作を  している家が多い。4年生女子の家庭では、安家川よりだいぶ高い位置に田があり、ポンプによって水をくみ上げ、田  に供給している。現在における開発の例として取り上げることができる。 (3)指導観   先人の働きや開発に対する苦心や努力を理解させるにあたり、当時の人々が、「水がほしい。米を作りたい。」と、  切実に願っていたことをしっかりつかませる必要がある。文章表現や、地形図から盛岡市南西部の土地の様子を調べさ  せ、荒れ地が多かったこと、北上川より高い位置に平地が広がっていることをとらえさせ、大量に水を取り入れるのが  困難であったことを理解させたい。次に、当時の人々の生活に目を向けさせる。畑を開き、ひえや陸稲を作ってくらし  ていたが、それは貧しいくらしであったことを文章表現から理解させる。米の優位性がわかる表を提示し、「米は、当  時の人々にとってどんな作物なのか」を考えさせ、当時の米を中心とする社会性にふれさせたい。このような人々のく  らしぶりにふれながら、生活を向上させたいという思いに共感させていきたい。鹿妻穴堰の見学が不可能であるため、  写真やVTRなどの視聴覚資料を作成し、有効に活用していきたい。剣長根の岩、人口の川であることがわかる場所、  水田の広がり、記念碑など要所をおさえて提示したい。当時の人々の工事の様子、苦心や努力などを実感としてとらえ  させるために、当時使われた道具を調べたり、実際にふれさせたりしたい。また、実際に岩を掘ったり、土を運んだり  する体験活動を通して、工事の大変さを実感させたい。現在の開発については、鹿妻穴堰だけでなく、自分たちの住む  大平でも、田に水を引く工夫をしている様子を、実際に見たり、写真などでとらえさせ、くらしを高めるために人々が  努力してることに気づかせたい。児童の表情、ふるまい、つぶやきなどに注意し、困っている児童には思考の流れに沿  って、適切な指示を心がけていきたい。 (4)環境教育とのかかわり   鹿妻穴堰作りのきっかけを調べていくと、当時の村人にとって、米作りがくらしを高める手だてであり、「田を作り  たい、そのために水を引きたい」と、強く願っていたことがわかる。そこで「あれ川」と呼ばれた雫石川 +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |時間| 小単元 |目標(※は環境教育とかかわって) | 評価〈観点〉 | +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |第1次 オリエンテ−ション(2時間) | +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 1| 川くるみ沢の水あらそい| 盛岡市南西部の人々は、鹿妻穴堰開|〇水あらそいの様子や用水路に関心を| | | |発以前は、水不足に悩んでいたことを|持ち、鹿妻穴堰について学習していこ| | | |とらえ、鹿妻穴堰について学習してい|うとする意欲を持つことができたか。| | | |こうとする意欲を持つことができる。| 〈関心・意欲・態度〉| | | | |〇水あらそいが起こったわけを、そこ| | | | |に住む人々の悩みや願いから考えるこ| | | | |とができたか。 〈思考・判断〉| +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 1| 鹿妻穴堰を見て | 鹿妻穴堰のVTRや写真を見て、現|〇鹿妻穴堰に関心を持ち、気づいたこ| | | |在の鹿妻穴堰の様子やはたらき、周り|とや疑問を、進んで見つけようとした| | | |の様子をとらえることができる。 |か。 〈関心・意欲・態度〉| | | | |〇鹿妻穴堰のVTRや写真を見て、現| | | | |在の鹿妻穴堰の様子やはたらき、周り| | | | |の様子をノ−トにまとめることができ| | | | |たか。 〈技能・表現〉| +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |第2次 鹿妻穴堰作りへの願い(2時間) | +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 1| 村の人たちのねがい |※盛岡市南西部の土地の様子や村の人|〇土地の様子や文章資料などから、村| | | |々のくらしの様子を調べ、村の人々は|の人々のくらしや願いを理解すること| | | |水田を作るために「水がほしい」とい|ができたか。 〈知識・理解〉| | | |う強い願いを持っていたことをとらえ| | | | |ることができる。 | | +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 1| 南部のとの様のねがい |※南部藩を発展させるために、水田作|〇南部信直の願いを当時の社会の様子| | | |りが必要であることを調べ、南部信直|と関連づけて考えることができたか。| | | |が用水路作りを命じたわけをとらえる| 〈思考・判断〉| | | |ことができる。 |〇南部藩の事情から、用水路作りを命| | | | |じたわけを調べることができたか。 | | | | | 〈技能・表現〉| +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |第3次 穴口工事の苦労(3時間) | +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 1| 用水の取り入れ口 |※土地の様子から、甚六が、雫石川の|〇用水路略図から、用水路工事の良い| | | |剣長根を水の取り入れ口にしたわけを|点を考えることができたか。 | | | |とらえることができる。 | 〈思考・判断〉| | | | |〇土地の様子から剣長根を水の取り入| | | | |れ口にしたわけをとらえることができ| | | | |たか。 〈知識・理解〉| | | | | | +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 1| 穴口工事の様子 | 鹿妻穴堰開削当時使用された道具や|〇工事の道具や方法、苦労などを、当| | | |技術などから、穴口ができるまでの様|時の社会の様子と関連づけながら考え| | | |子やさまざまな苦労の様子をとらえる|ることができたか。 〈思考・判断〉| | | |ことができる。 |〇当時の人々の工事に対する苦労、工| | | | |夫、努力の様子をとらえることができ| | | | |たか。 〈知識・理解〉| +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 1| 穴堰を作ってみよう | 当時使用された道具や技術を体験し|〇剣長根に穴を掘る困難さに関心を持| | | |当時の人々の苦労、工夫、努力をとら|ち、進んで岩を掘ったり、石を運んだ| | | |えることができる。 |り体験することができたか。 | | | | | 〈関心・意欲・態度〉| +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |第4次 水田開発とこれからの鹿妻穴堰(3時間) | +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 1| 穴堰ができて |※用水路がのばされると米の収穫量が|〇用水路の広がりと米の収穫量を、資| |本時| |増えてきている様子を調べ、くらしを|料から読み取り、調べることができた| | | |高めるために人々が自然に働きかける|か。 〈技能・表現〉| | | |努力を続けてきたことをとらえること| | | | |ができる。 |〇用水路の拡大工事が重ねられ、水田| | | | |が広がり、米の収穫量が増大してきた| | | | |ことをとらえることができたか。 | | | | | 〈知識・理解〉 | +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 1| 水をたくわえるために |※鹿妻穴堰の開発や保全が、現在も行|〇水源かん養林の造成、用排分離工事| | | |われていることを調べ、それらは、自|の様子を調べ、現在にあっても開発や| | | |然を守りながら努力が続けられている|保全が行われていることをとらえるこ| | | |ことをとらえることができる。 |とができたか。 〈知識・理解〉| +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 1| したわれる甚六 |※先人の業績に対する人々の感謝の気|〇先人の業績への感謝や願いをこれま| | | |持ちや願いに気付き、地域でも開発や|での学習と関わらせながら考えること| | | |保全の努力が現在も行われていること|ができたか。 〈思考・判断〉| | | |を調べることができる。 |〇地域でも開発や保全の努力が行われ| | | | |ていることを調べることができたか。| | | | | 〈技能・表現〉| +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |第5次 学習のまとめ(2時間) | +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 1| 学習のまとめ | これまでの学習を振り返り、昔の人|〇地域社会の発展を願う気持ちを持つ| | | |達がくらしを高めるために努力してき|ことができたか。 | | | |た足跡を絵や文でまとめることができ| 〈関心・意欲・態度〉| | | |る。 |〇これまでの学習と関わらせながら、| | | | |地域の開発や発展について絵や文でま| | | | |とめることができたか。 | | | | | 〈技能・表現〉| +−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 3 本時の指導 (1)目 標    用水路がのばされ米の収穫量が増大してきた様子を調べ、開発が進められてきたことをとらえることができる。 (2)環境教育とのかかわり   米の収穫量を増やすため、用水路をのばす努力を重ねてきたことをと  らえさせたい。くらしを高めるために自然に働きかけ、自然の恵みを受けていることに気づかせたい。 (3)展 開 +−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−+ |段| | | | | |階|学 習 内 容| 学 習 活 動 | 教 師 の 支 援・評 価 □ |準 備 等| +−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−+ |つ|1 前時学習内|〇穴堰が完成した時の人々の気持ちの| 前時の学習内容を思い出すことによ| | |か| 容想起 |ついて考える。 |って、本時の学習への意欲を喚起した| | |む| | ・トンネルが完成した。 |い。 | | | | | ・水が引けるぞ | 「水がほしい」と人々が強く願って| | | | | ・水田が作れるぞ |いたことを確かめる。 | | | | | | | | | |2 資料提示 |〇「水路の広がり」の資料を見る。 | 穴堰完成時の水路よりたくさんの水|水路の広が| | | | ・間口が広がっている。 |路が伸ばされていることをつかむ。 |り | | | | ・用水路が何本ものばされている。| | | | | | | | | | |3 学習課題の|〇本時の学習課題を把握する。 | | | | | 設定 | | | | |8| +−−−+−−−−−−−−−−−+ | | | |分| |用水路を何本もふやしているわけ| | | | +−+−−−+を調べよう +−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−+ | | +−−−+−−−−−−−−−−−+ | | | |し|4 予 想 |〇どうして用水路を増やしたのか予想| 米作りには、水が必要であることを| | |ら| |する。 |ふまえる。 | | |べ| | ・水田を広くしたい。 | | | |る| | ・もっと米を作りたい。 | | | | | | | | | | |5 調べる内容|〇調べる内容を確認する。 | 調べる観点を考え、何を調べていけ| | | | の確認 | ・米の収穫量の変化を調べる。 |ば課題にせまれるか確認する。 | | | | | | | | | |6 調べ活動 |〇「米のとれ高のうつりかわり」の資|+−−−−−−−−−−−−−−−+|米のとれ高| | | |料を調べ、米の収穫量の変化を棒グラ||資料を見ながら、米の収穫量の変||の移り変り| | | |フに表す。 ||化がとらえられたか。 || | | | |〇資料を見て気づいたことをプリント|| 〈書き込み〉 ||プリント | | | |に書き入れる。 |+−−−−−−−−−−−−−−−+| | | | | | | | | |7 深め合い |〇鹿妻穴堰の工事と米の収穫量につい| 発表内容と教師用の資料を照らし合|水路の広が| | | |て調べたことを発表する。 |わせる。 |り | | | | ・米のとれ高がだんだんふえている| | | | | | ・工事の後には、米のとれ高がふえ| 用水路が伸ばされることによって、|米の収穫量| | | | ている。 |米の収穫量が増えてきていることをと|グラフ | | | | ・用水路がのばされると、水田が広|らえる。 | | | | | がっている。 | | | | | | ・間口が広がると用水路がのばされ| | | | | | 水田が広がり、米のとれ高がふえ| | | | | | ている。 | | | | | | | | | | | |〇人々のくらしの変化について想像す| 水がほしいという強い願いを持って| | | | |る。 |いたことを思い出し、米作りができる| | | | | ・米作りにいそがしくなった。 |喜びをつかむようにする。 | | |30| | ・米作りができることを喜んだ。 | | | |分| | ・くらしぶりもだんだん良くなって| | | | | | きた。 | | | +−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−+ |ま|8 本時のまと|〇資料を見て調べてわかったことをノ| | | |と| め |−トに書く。 |+−−−−−−−−−−−−−−−+| | |め| |+−−−−−−−−−−−−−−−+||米の収穫量を用水路の広がりと結|| | |る| ||用水路をふやしていったのは、米|||びつけて考えることができたか || | |7| ||の取れ高をふやすためである。 ||| 〈書き込み、発表〉 || | |分| |+−−−−−−−−−−−−−−−+|+−−−−−−−−−−−−−−−+| | +−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−+ (4)評 価     @単位時間のねらいに則して    ・用水路がのばされ米の収穫量が増大してきた様子を調べ、開発が進められてきたことをとらえることができたか   A環境教育にかかわって      ・米の収穫量を増やすために、自然に働きかけ努力してきたことに気づいたか。 (5)板書計画 +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | +−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−−−−−−+| |くらしを高めるねがい |水路の広がり | |米の取れ高のうつりかわり || | | | | || |かだい | | | || |+−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | || || 用水路を何本もふやしているわ| | | | || ||けを調べよう。 | | | | || |+−−−−−−−−−−−−−−−+ | | +−−−−−−−−−−−−−+| |よそう | | まとめ | | ・水田を広くしたい。 | |+−−−−−−−−−−−−−−+| | ・もっと米を作りたい。 | || 用水路をふやしていったのは|| | +−−−−−−−−−−−−−+|米の取れ高をふやすためである|| | +−−−−−−−−−−−−−−+| +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+