印刷用紙:A4縦 1ページの行数:59 1行の文字数(半角で):104   −−以下 指導案本文−−              第4学年 社会科学習指導案                                平成8年10月22日(火)2校時                                男子15名 女子13名 計28名                                指 導 者   澤 村  里 美 1.単元名    くらしを高めるねがい 2.単元について  1 教材について     第4学年の指導要領の目標に「地域社会における人々の健康や安全を守るための諸活動、    地域の地形や産業などの様子および地域の発展に貢献した先人の働きを理解できるようにし、    地域社会の成員として地域社会の発展を願う態度を育てる。」とあげられている。また、指    導要領内容の4には、「地域の文化や開発などに尽くした先人の具体的な事例を調べて、先    人の働きや苦心を当時の人々の生活の様子や考え方、技術や道具などの面から理解できるよ    うにするとともに、現在にあっても地域の人々の生活の向上と安定のためにいろいろな努力    がなされていることに気付くようにする。」とあげられている。本単元では、当時の人々の    貧しい生活の様子をつかませながら、九戸村の人々が協力しあって開田を進めたことや苦労    しながら開田や改良を進め、現在のような水田を作ったという経過をつかませながら第4学    年の目標・内容に迫ろうとするものである。     九戸村は西側に折爪岳や小倉岳、就志森などの高い山々が南北に連なり、東側には平庭高    原から続くなだらかな山々が西の山と向かい合うように並んでおり、大変山林が多い。これ    らの山あいから流れ出る小さな川が南北に流れる瀬月内川にそそぎ、その川沿いに続く細長    い低地に家や田畑が広がっている。現在は、村の面積のおよそ3分の2が山林で、残りの3    分の1が田や畑などに利用されている。昭和20年代に各地区で土地改良が始まるまでは、    畑の他には瀬月内川や沢水を利用した水田がわずかにあるだけで、米はあまり収穫できなか    った。当時の人々の生活は貧しく、あわやひえ、そばなどが主食であり、白米は年に数回し    か食べることができなかった。そこで、妻の神地区の人々は昭和27年に土地改良組合を作    り開田を始め、国から借金をして工事を進めた。当時は、現在のような重機機械はなく、つ    るはしやスコップ、リヤカーなど組合員の手作業で大変苦労しながら工事を進め、昭和31    年の秋に現在のような水田になった。その後昭和36年には組合員の人々が集まり、米が取    れず貧しかった頃や自分たちの苦労をしのび開田記念碑を建てた。しかし、昭和45年頃か    らは減反が始まり、新たな開田や土地改良はあまり行われていない。     子供たちは、自分たちの周りにある水田が昔の人々の努力によって開かれてきたことに気    付かずに生活している。そこで、昔の人々の生活の様子や工事の様子についての学習を通し    て興味・関心を高めるとともに、昔の妻の神地区の人々が、くらしを高めるために力を合わ    せて開発を進めたことをとらえさせながら、郷土への願いや思いにも気付かせていきたい。    また、地域の一員としての自分を意識させ、地域社会の発展を願う態度を育てていきたい。  2 児童について     子供たちは、前単元「県の人たちのくらしと他地域との結びつき」の学習で、自分の学習    問題をもとにいろいろな資料から調べたことを工夫してまとめ、意欲的に活動した。資料か    ら社会的事象・事実を読み取り、自分なりに問題を解決する力も少しずつ身に付いてきた。    グループで調べたりまとめるたりする活動には意欲的に取り組む反面、自分の学習問題をし    っかりと持てなかたり、何をどんな方法で調べればよいか見通せなかったりする子供もいる。    本単元では、地域の開発の学習を通し、どの子供にも自分なりの学習問題を持たせ、また、    何をどんな方法で調べればよいか見通しを持てるように支援していきたい。  3 指導にあたって     学習問題をつかむ段階では、昔と現在の水田の様子を航空写真で比較し、その面積の違い    について目を向けさせていきたい。さらに、妻の神地区の水田の様子や開田記念碑のビデオ    から、開田には昔の人々の努力があったことに気付かせたい。また、当時の人々の貧しいく    らしについてのお話を聞き、開田には人々の切実な願いがあったことをとらえさせるととも    に、当時の人々の苦労について興味・関心を持たせ、学習問題へとつなげていきたい。     調べる段階では、それぞれの計画に従い調べていくが、工事の苦労の様子をとらえさせる    ために、実際に昔の道具を使って穴を掘る体験をさせたり、祖父母などから米の取れなかっ    た頃の様子について聞き取り調査を行わせたりして、体験的な活動を重視していきたい。     まとめる段階では、それぞれが調べたことを新聞、紙芝居、劇化など自分なりの方法で表    現させ、自分たちの地域のくらしを高めた先人の働きをつかませていきたい。また、自分た    ちの地域の発展を願う態度を育てていきたい。  4 研究主題とのかかわり     本単元では、体験的な活動を学習過程の中に取り入れ、子供たちが興味を持って学習問題    に取り組むようにさせたい。     つかむ段階では、ゲストのお話を聞いたり、昔の食事を実際に試食するなどの体験的な活    動を取り入れることにより、一人一人の追究意欲を高め、学習問題を明確につかませていき    たい。     調べる段階では、地域資料の調べ学習や聞き取り調査などから子供たちに身近な問題とし    てとらえさせていきたい。妻の神地区の開田という身近な地域素材を取り上げることにより、    子供たちは先人の苦労をより身近なものとしてとらえ、意欲的に学習に取り組むことができ    ると考えた 3.単元の目標  1 地域の開発に関心を持ち、開田の目的や方法などを意欲的に調べようとし、地域社会の発展   を願おうとする。                 (社会的事象への関心、意欲、態度)  2 地域の発展に貢献した先人の努力や苦労について考えるとともに、それが当時の生活と深く   結びついていることを考えることができる。       (社会的な思考、判断)  3 地域の開発について、自分たちが調べたことを工夫してまとめ、発表することができる。                        (観察・資料活用の技能、表現)  4 地域の開発に尽くした先人の働きや当時の人々の生活の向上を求める努力について理解する   ことができる。                   (社会的事象についての知識、理解) 4.活動計画および評価項目 (時数 9時間) +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |時| 主 な 学 習 活 動 | 資 料 | | | (*体 験 的 活 動) | (*地域素材) | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |2|《学習問題をつかむ》 | | |1|1.妻の神地区の開田記念碑の写真、米の取れ高の| 開田記念碑の写真 | | | 移り変わりのグラフから、気付いたことを話し合| 米の取れ高と水田面 | | | う。 | 積のグラフ | | | | | | | | | | | | | | |2.開田した理由について考え、共通の学習問題を| ※インタビューテープ | | | 設定し、予想を立てる。 | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| ※昔の食事 | | ||妻の神の人々は開田をするためにどのような苦|| | | ||労をしたんだろう。 || | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | | ・お金がかかった | | | | ・工事が大変 | | | | ・人が足りない | | |1|3.自分の学習問題を考え、学習計画を立てる。 | | | | | | | | | | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |6|《調べ学習をする》 | | |4|4.資料や聞き取り調査などで調べる。 | 副読本「くのへ」 | | | | 妻の上地区の地図 | | | | 開田記念碑の写真 | | | | 村の年表 | | | | | | | | | | | ※昔の方法、道具を使って穴を掘る。 | | | | | | | | | | |2|5.調べたことを工夫してまとめる。 | | | | | | | | | | | | | | | | | | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |1|《学習のまとめをする》 | | |1|6.まとめたことを分かりやすく発表する。 | 児童の発表資料 | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 教 師 の 支 援 | 評 価 項 目 と 方 法 | | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | |・ 資料から読み取ったことを話し合いながら問題|<関心・意欲・態度> | | にせまらせる。 |・ 開田について関心を持ち、進んで調べようとす| |・ 開田によって米の取れ高と水田面積が大きく伸| る。(態度、発言) | | びたことから、開田の始まった理由について疑問|<思考・判断> | | を持たせる。 |・ 自分の学習問題を作り、問題解決の方法を考え| | | ることができる。 | |・ 開田が始まる前、人々はどのようなくらしをし| (ノート、発言) | | ていたか予想させる。 |<技能・表現> | |・ 昔の食事を試食したり、インタビューテープを|・ 資料から昔と現在の水田の様子について違いを| | 聞くことによって、当時の人々の貧しい生活や開| とらえることができる。(発言) | | 発への切実な願いをつかませたい。 | | |・ 開田の苦労を予想させ、これから調べていく内| | | 容の大まかな観点をまとめながら、個々の学習問| | | 題を設定させる。 | | | | | |・ 予想をもとに調べる内容や方法を考えさせ、追| | | 究の見通しを持たせる。 | | | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | |・ 資料を中心に調べるとともに、聞き取り調査を|<関心・意欲・態度> | | おこなって問題の解決を図る。 |・ 意欲的に調査し、問題を解決しようとする。 | | | (活動、評価カード) | | |<思考・判断> | | |・ 地域の発展に尽くした先人の努力や苦労を考え| | | るとともに、それが当時の生活と結びついている| |・ 昔の道具を使って穴を掘る作業を体験させ、昔| ことを考えることができる。(ノート、活動) | | の人々の苦労を感じ取らせたい。 |<技能・表現> | | |・ 調べて分かったことを工夫してまとめることが| |・ 調べたことをうまく伝えるために新聞、紙芝居| できる。(作品、活動) | | 劇化など表現の方法をいろいろ工夫させる。 |<知識・理解> | | |・ 先人の働きや当時の人々の生活の向上を求める| | | 努力について分かる。 | | | (発言、作品) | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | |・発表をもとに学習問題のまとめをさせる。 |<関心・意欲・態度> | | |・ 進んで発表したり聞いたりする。 | | | (態度、発表) | | |<技能・表現> | | |・ 調べたことを工夫して表現し発表する。 | | | (発表、態度) | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 5.本時の学習  1 本時の目標 開田が始まる前の妻の神の人々の生活の様子が分かり、共通の学習問題をつかむことができる。  2 本時での仮説とのかかわり 本時は、開田の背景には貧しい生活の苦労があったことをとらえさせ、学習問題を明確につかませる段階 の学習である。インタビューテープで実際に開田に携わった人の話を聞いたり、米が不足していた頃の食事    を見たり味わったりすることにより、当時の人々の気持ちを考えさせたい。(仮説2)     また、開田が当時の人々の切実な願いであったことをとらえさせ、学習問題を明確につかませ、問題解決    の意欲につなげていきたい。  (仮説1)  3本時の展開 +−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ |段階 学習活動と内容 |資料・準備| 教師の支援 | 評価の観点 | | | (※体験的活動) | (※地域素材) | | +−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | |1.開田記念碑の写真を見|開田記念碑|・ 何の記念碑か考えさせるととも| | | | て、妻の神の開田につい|の写真 | に、開田の意味についておさえる| | | | て興味を持つ。 |水田の様子| | | |つ| |の写真 | | | | |2.米の取れ高と面積のグ|米の取れ高|・ 開田によって米が取れるように|・ 資料から、開田前と| | | ラフを読み取り、気が付|と面積のグ| なったことに気付かせ、なぜ開田| 開田後の米の取れ高や| |か| いたことを話し合う。 |ラフ | を始めたのか理由を考えさせる。| 水田面積の違いを読み| | | | | | 取ることができたか。| | |3.昔の食事を試食する。|※昔の食事|・ 米が取れなかった頃の食べ物を| (発言、態度) | | | | | 試食させ、人々の気持ちを考えさ| | | | | | せたい。 | | | |4.インタビューテープを|※インタビ|・ 開発に携わった人々の話を聞き|・ 当時の人々の生活の| |む| 聞き、開発の理由を確か|ューテープ| 当時の妻の神の人々の貧しい生活| 様子や気持ちについて| | | める。 | | や開田への切実な願いをつかませ| 考えることができたか| | | | | たい。 | (発言、プリント) | | | | | | | | | | | | | | |5.当時の食事やテープか| | |・ 共通の学習問題をし| | | ら気が付いたことを話し| | | っかりとつかむことが| | | 合い、共通の学習問題を| | | できたか。 | | | 設定する。 | | | (態度) | |30|+−−−−−−−−−−+| | | | |分||妻の神の人々は開田を|| | | | +−++するためにどのような++−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ | ||苦労をしたのだろう。|| | | | | |+−−−−−−−−−−+| | | | |調|6.学習問題についての予| |・ 予想を立てられない子供には資|・ 共通の学習問題につ| |べ| 想を話し合う。 | | 料を振り返り、手がかりを見つけ| いての予想を考えるこ| |る| ・お金がかかった。 | | るよう助言する。 | とができたか。 | | | ・工事が大変 | | | (プリント、発言) | |10| ・人が足りない | | | | |分| | | | | +−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ |ま|7.本時の学習のまとめを|評価カード|・ 本時の学習について自己評価さ|・ 学習を振り返り、感| |と| する。 | | せ、感想を発表させる。 | 想などを持つことがで| |め| | | | きたか。 | |る|8.次時の予告をする。 | |・ 次時は自分の学習問題を考える| (自己評価カード) | |5| | | ことを知らせる。 | | |分| | | | | +−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+  4 評価  ・開田が始まる前の妻の神の人々の生活の様子が分かり、共通の学習問題をつかむことができたか。  5 板書計画 +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | くらしを高めるねがい | | +−−−−−+ どうして妻の神の人々は開田を始めたのだろう。 | | |開田記念碑の写真 開田          (予想) | | | | ・米が取れなかった | | | | ・びんぼうだった | | +−−−−−+ ・食事ができなかった | | 共通の学習課題 | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | +−−−−−−−+ |妻の神の人々は開田をするためにどのような苦労を| | | | | |したのだろう。 | | | |米の取れ高と面積のグラフ +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | | (予想) | | | | ・お金がかかった | | | | ・工事が大変 | | +−−−−−−−+ ・人が足りない | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+