印刷用紙:A4縦 1ページの行数:69 1行の文字数(半角で):90   −−以下 指導案本文−−                               第5学年 社会科学習指導案                           平成8年10月22日(火)1校時                           男子18名 女子17名 計 35名                           指 導 者 内記 史子 1.単元名 伝統に生きる工業 2. 単元について (1) 教材について     第5学年の指導要領の目標(1)に「我が国の食料生産、工業生産の特色及び運輸などの産業の    様子やこれらの産業と国民生活との関連について理解できるようにし、我が国の産業の発展に関    心をもつようにする。」とあげられている。また、指導要領の内容(2)の(イ)には「我が国の伝統    的な技術を生かした工業について、それが盛んな地域や生産物を地図や資料などで調べて、原料    や土地の条件、技術などを生かした工業製品のもつ意味について考えること。」とあげられてい    る。本単元では、県内の主な伝統工業製品の中から「浄法寺塗り」を取り上げ、生産の工程を具    体的に調べることを通して、原料や土地の条件及び伝統的な技術を生かして生産が行われている    ことや生産に携わる人々の努力や願いについて理解させながら第5学年の目標・内容に迫ろうと    するものである。     浄法寺塗りは、浄法寺町天台寺で僧侶達が寺で使う食器を造ったことがその始まりとされ、1    200年の歴史を持つと言われている。その後、僧侶から民衆の間に造り方が伝えられ、江戸時    代には、南部藩の殿様の保護のもとその技術が伝えられ発展してきた。昭和20年代には、漆掻    き職人が300人以上となるほどの賑わいであった。しかし、盛んだっただけに原木が不足し始    め、一方昭和30年代にはプラスチック製品が盛んに生産されるようになり、浄法寺塗りの伝統    が一時期衰退してしまった時もあった。その後、昭和54年には「浄法寺漆器工芸企業組合」が    つくられ、昔からの伝統を守ろうと努力しているところである。浄法寺塗りが繁栄してきた要因    としては、地元で採れる良質の漆や木地の原料となる原木が豊富にあったこと、優れた技術があ    ったこと、藩の保護を受けたことが考えられる。浄法寺塗りの特長としては、江戸時代には「南    部箔椀」などの華やかな製品を中心に生産されていたが、明治時代以降は、シンプルなデザイン    で生活に密着した製品が多いところにある。     このように浄法寺塗りは、身近な地域で歴史的な背景のもとに発展し、今なお人々の生活と密    着していることから、児童が興味・関心を持って学習できる内容であると思われる。浄法寺塗り    に携わる人々が、後継者不足や原料不足などの問題点を克服し、古くからの伝統技術を受け継ぎ    努力している様子をとらえさせながら、伝統工業に携わる人々の願いや思い、さらに伝統工業製    品の良さにも気付かせていきたい。 (2) 児童について     児童はこれまでの「食料生産にはげむ人々」「工業のさかんな地域」の学習を通し、資料から    社会的事象・事実を読み取り自分なりに問題意識を持ち進んで解決しようとするようになってき    ている。また、学習問題について既習事項や自分の経験をもとに予想を立てたり、調べたことを    個人新聞やパンフレット、紙芝居やクイズ形式に工夫してまとめる力もつきつつある。     反面、自分の予想を確かめるためにどのようなことを具体的に調べていけばよいのか十分理解    できていない児童もいる。したがって、身近な地域の伝統工業製品である「浄法寺塗り」の学習    を通して、一人一人が予想を確かめるためにどのようなことを調べていけばよいか見通しを持て    るように支援していきたい。 (3) 指導にあたって     本単元では、漆塗りや工場見学を学習過程の中に組み入れることによって、児童が興味を持ち    進んで学習問題について調べることができるようにさせたい。     まず、つかむ段階では、大量生産された漆器と手づくりの漆器を実際に触りながら両者の違い    を感覚的につかませていきたい。さらに、実際に椀の塗りの作業を体験させ、浄法寺塗りに興味    関心を持たせるとともに、塗りの体験の感想や自分の塗った椀と職人さんが塗った椀を比較させ    椀のできばえを話し合わせることで、職人さんはどのような工夫や苦労があるのかという問題意    識を高めさせていきたい。     調べる段階では、工場を見学するという方法で問題解決に迫っていくが、さまざまな資料から    も調べられないか考えさせ、自分たちの手でなるべく資料を入手させるように支援していきたい    見学の際には、児童が主体的に見たり聞いたりできるように見学先にこちらの意図をあらかじめ    伝えておくようにする。また、調べたことをまとめる際には、グループ毎に整理させ分かり易く     発表できるように表現方法を工夫させたい。    まとめる段階では、近代工業と伝統工業の違いを作業工程、原料、値段、歴史的背景の観点で    調べさせ、さらに自分なりの表現方法でまとめさせることで伝統工業の持つ意味を理解させてい    きたい。 (4) 研究主題との関わり     本単元では、「浄法寺塗り」という近隣の町で発展してきた伝統工業を地域素材として取り上    げることで児童に興味を持たせたい。また、つかむ段階で実際に椀の塗りの体験をすることで児    童の関心を高めるとともに、自分で塗った椀と職人さんが塗った椀を比較させることで児童の問    題意識を高めることができるのではないかと考えた。さらに、児童が主体的に問題解決できるよ    うに見学という形で体験活動を位置付けていきたい。 3.単元の目標 (1) 我が国の伝統的な技術を生かした工業の盛んな地域や生産の様子に関心を持ち、意欲的に調べ   ようとする。 (社会的事象への関心・意欲・態度) (2) 伝統的な技術を生かした工業製品の持つ意味について考えることができる。 (社会的な思考・判断) (3) 伝統的な技術を生かした工業の盛んな地域を地図や資料で調べ、それらを適切にまとめること   ができる。 (観察・資料活用の技能・表現) (4) 伝統的な技術を生かした工業生産に従事している人々の工夫や努力などについて理解すること ができる。 (社会的事象についての知識・理解) 4.指導計画及び評価項目 (時数10時間) +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+− | 時 | 主 な 学 習 活 動 | 資料・準備 | | | (※体験的活動) | (※地域素材)| +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+− | 2 |《学習問題をつかむ》 | | |(1)|1.大量生産された漆器と手づくりで生産された漆器と|※大量生産された| | | を比較し、気付いたことを話し合う |漆器及び浄法寺塗| | | (※お椀の塗りの体験をする。) |りの漆器 | | | |地図(浄法寺町の位置) | | |作業に必要な道具| | | |材料(刷毛、塗料、椀) | | | | | | | | | | | | |(1)|2.自分が塗ったお椀と実物の浄法寺椀を見比べ、でき|職人さんが塗った| |本時| ばえについて気付いたことを話し合い、全体の学習問|椀と自分が塗った| | | 題を設定する。 |椀 | | | <全体の学習問題> | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | || 職人さんは、どのような工夫や苦労をしているの|| | | ||だろう。 || | | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | |3.上塗りの工程のVTRを見て気付いたことを話し合|上塗りのVTR | | | い予想を立てる。 | | | | ・作り方に工夫がある | | | | ・職人さんは丁寧に心をこめて塗っている | | | | ・職人さんの長年の経験があるから | | | | ・後継者問題 ・疲れ | | | |4.個々に予想を確かめるために調べたいことを考え、| | | | 予想毎のグループに分かれて学習計画を立てる。 | | | | ・個々の調べてみたいことについて | | | | ・方法 | | | | ・まとめ方 | | | | | | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+− | 5 |《調べ学習をする》 | | |(2)|5.グループ毎に問題にそって工場や郷土資料館、周辺|学習プリント | | | の様子を見学したり、工場の人から話を聞く。 |カメラ | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |(2)|6.グループ毎に調べたことをまとめる。 |学習プリント、資| | | |料(浄法寺パンフ| | | |レット、副読本、| | | |町政要覧) | | | | | |(1)|7.グループ毎に調べたことを発表し合い、学習問題に|自作資料 | | | ついてまとめる。 |VTR | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+ | 3 |《学習のまとめをする》 | | |(1)|8.日本各地の伝統工業について調べる。 |教科書、資料集、| | | |白地図、持ち寄っ| | | |た製品 | | | | | | | | | | | | | |(1)|9.近代工業、伝統工業それぞれの特徴について話し合 |教師補助資料 | | | い、伝統工業製品の持つ意味について考える。 | | | | | | |(1)|10.伝統工業で学習したことを新聞にまとめる。 | | | | | | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−+− +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 教 師 の 支 援 | 評 価 項 目 と 方 法 | | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |<関心・意欲・態度> | |・児童には前もって手づくりで生産された漆器と大量生|・浄法寺塗りについて興味を持ち、 | | 産された漆器という説明はないまま、違いが出たとこ| 進んで調べようとする。 | | ろで一方は浄法寺塗りという伝統工芸品であることを| (態度、発言) | | 明らかにする。 |<思考・判断> | |・実際に体験させることによって関心を高めるとともに|・浄法寺塗りと大量生産された塗り | | 問題意識を高めるための手立てとしたい。 | 物の違いが分かる | | | (発言) | |・塗ってみた感想を話し合ったり、自分が塗った椀と職|・自分なりの予想を考え、学習問題 | | 人さんが塗った椀を比べさせ、できばえについて話し| を作ることができる。(発言) | | 合うことで職人さんはどのような工夫や苦労をしてい| | | るのかという問題意識を高めたい。 | | | | | | | | | | | | | | |・予想を立てられない児童には上塗りのVTRや塗りの| | | 体験をもとに考えさせるようにする。 | | | | | | | | | | | | | | |・自分の予想を確かめるためにどのようなことを調べれ| | | ばよいか学習プリントに記入させた後、予想毎のグル| | | −プを作り個々の調べたいことを発表させたい。 | | |・解決方法としては見学の他にパンフレット。浄法慈町| | | の副読本、町政要覧などがあることを知らせ、自分た| | | ちで手に入れることができるようにアドバイスする。| | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |<関心・意欲・態度> | |・最初はグループ毎に工場や郷土資料館、周りの様子を|・意欲的に調べたり、まとめようと | | 自由に見学させその後に一斉に工場の人に質問させる| する。 | | | (態度、発言、自作資料) | |・工場の人には、簡単に浄法寺塗りの特長と作業工程に| <技能・表現> | | ついての説明をお願いしておき、なるべく児童が主体| | | 的に聞けるようにさせたい。 |・資料から事実や要因を読み取った | | | り、調べたことを工夫してまとめ | |・グループ毎に調べたことを発表し合い、他の資料も参| ることができる。 | | 考にすることで修正・補充させる。 | (学習カード、自作資料) | |・聞く人に分かり易いように表現方法を工夫させる。 | | | |<知識・理解> | | |・働く人の生産を高めるための工夫 | |・職人さんの工夫や苦労だけでなく製品を作ることへ | や努力、願いや問題点が分かる。 | | の喜びや情熱についても考えさせる。 | (自作資料、学習プリント、発言)| +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |<関心・意欲・態度> | |・教科書や資料集で各地の主な伝統工業について調べさ|・様々な伝統工業に関心を持ち、進 | | せる。 | んで調べようとする。 | |・家から製品を持ち寄らせ、身近な生活の中にも伝統工| (態度、発言、白地図) | | 業製品があることに気付かせる。 | <思考・判断> | |・いくつかの観点で近代工業と伝統工業の違いを表に整| | | 理しながら、それぞれの特徴が明確に分かるようにさ| | | せる。 |・伝統工業製品の良さについて考え | |・既習したことを自分の考えも加えながら工夫してまと|ることができる。 | | めさせる。 | (発言) | | | <技能・表現> | | |・学習したことを工夫して新聞にま | | | とめることができる。 | | | (新聞) | | | <知識・理解> | | |・伝統工業製品の持つ意味や良さが | | | 分かる。(ノート発言、新聞) | | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 5.本時の学習 (1)本時の目標     職人さんはどのような工夫や苦労をしているのか問題意識を持ち、解決の見通しを持つことができる。 (2)本時での仮説とのかかわり     本時は、本単元の学習問題を明確につかませ学習の見通しを持たせることがねらいである。したがっ    て前時の塗りの体験で自分が塗った椀と職人さんが塗った椀のできばえを比べさせる手立てを取れば、    職人さんは、どのような工夫や苦労をしているのかという問題意識を高めることができるのではないかと    考える。     また、学習問題の予想を立てる段階で、塗りの体験や塗りの部分のVTRを手がかりにさせたり、グル ープ毎に学習計画を話し合ったりすることで、見通しを持って学習していけるのではないかと考える。 (仮説1) (3)展開 +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |段階 学 習 活 動 と 内 容 | 資料・準備 教 師 の 支 援 |評価の観点 | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |つ|1.自分達の塗りの作業の様子をVT|塗りの作|・塗りの作業の様子のVTRを提示|本単元の学習| | | Rで想起し感想を発表する。 |業のVT|することにより塗りの体験を想起さ|問題をしっか| |か| |R |せたい。 |りとつかむこ| | |2.自分が塗った椀と職人さんが塗っ|自分で塗|・自分が塗った椀と職人さんが塗っ|とができたか| |む| た椀を比べ、気付いたことを発表し|った椀と|た椀を比べさせることで、できばえ|(態度、発言)| | | 合い、学習問題を設定する。 |職人さん|の違いに気付かせ、職人さんはどの|   | | | |が塗った|ような工夫や苦労をしているのか問|   | | | |椀 |題意識を高めさせたい。 |   | | |+−−−−−−−−−−−−−−−+|学習プリ| |   | |15||職人さんは、どのような工夫や苦||ント | |   | +−++労をしているのだろう。 ++−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ | |+−−−−−−−−−−−−−−−+| | |   | |調|3.体験したことや上塗りのVTRか|上塗りの|・予想を立てられない児童には手が|自分なりに予| |べ| ら予想を立て、話し合う。 |作業のV|かりとしてVTRをもとに考えさせ|想や調べてみ| |る| |TR |たり、塗りの体験を振リ返させたり|たいこと、解| | |・作り方に工夫がある | |する。 |決方法を考え| | |・丁寧に心をこめている | | |ることができ| | |・長年の経験がある | | |たか。(発言 | | |・疲れ ・後継者問題 | | |、学習プリン| | | | | |   ト) | | |4.予想を確かめるため自分がどのよ| |・予想を確かめるために自分はどの|   | | | うなことを調べていくかプリントに| |ようなことを調べていけばよいか考|   | | | 書く。 | |えさせ学習プリントに記入させる。|   | | |・作り方の手順 (工程) | |・机間巡視をして何を調べればよい|   | | |・経験年数や生産量 | |のか分からない児童にはアドバイス|   | | |・塗る時に気をつけていること | |する。 |   | | |・塗る人の数 | | |   | | | | |・個々に調べたいことをグループ内|   | | |5.予想毎にグループを作り学習計画| |で発表させたり、解決方法やまとめ|   | | | を立てる。 | |方を話し合わせたりしたい。 |   | | |・リーダー・個々に調べてみたいこと| |・まとめ方では聞いている人に分か|   | | |・方法 ・まとめ方 | |り易いような表現方法になるように|   | | | | |アドバイスする。 |   | |25|6.グループで話し合ったことを発表| |・解決方法では、見学の他にパンフ|   | | | する。 | |レット、浄法寺町の副読本で調べら|   | | | | |れることをアドバイスする。 |   | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |ま|7.本時の学習のまとめをする。 |振り返り|・本時の学習についての感想を発表|学習をふり返| |と| |カード |させる。 |り、感想を持| |め|8.次時の予告をする。 | |・次時は実際に見学し、調べていく|つことができ| |る| | |ことを知らせる。 |たか。(自己評価) |5| | | |   | +−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ (4)評 価 職人さんはどのような工夫や苦労をしているのか問題意識を持ち、解決の見通しを持つことができたか。 (5)板書計画 +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− | +−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |・塗りむら | 職人さんは、どのような工夫や苦労| |・液だれ |があるのだろう。 | |・ほこり +−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | (予 想) (調べ方) (まとめ方) | ・作り方に工夫がある ・見学 ・模造紙にまとめる | ・長年の経験がある ・パンフレット ・紙芝居 | ・丁寧に塗るように心がけている ・副読本 | ・疲れ | ・人手不足 +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−