小学校第4学年社会科指導プログラム

学校名  雫石町立橋場小学校
対象学級  3,4年 3年 男子1名  4年 男子1名 女子1名 計3名
対象年月日  平成10年10月5,6日 第3校時
指導者  紺  野  純  子 
作成者  紺  野  純  子

T 単元名 「くらしの広がり」

U 単元設定の理由

1 教材観

 第3学年では、自分たちの市町村の特徴的な地形、土地利用の様子や集落の分布、交通の様子について調べ、場所によって人々の生活には違いがあることを理解し、地域の社会的事象の特色について考える学習を行ってきている。それを受けて第4学年の本単元では、県内の地形や主な産業、都市や交通網について調べ、社会的事象の特色や相互の関連について考えていくこととなる。
 小学校学習指導要領では、本単元にかかわる目標を「地域における社会的事象を具体的に観察し、地図や各種の資料を効果的に活用できるようにするとともに、社会的事象の特色や相互の関連について考えるようにする。」とし、このことを受けて本単元では、県内における自分たちの町(市、村)の地理的な位置を確認すること、県全体の地形や生産的な産業、都市や交通網の広がりを地図や資料を用いて調べたり、白地図に記入したりすることをとおして、県内の社会的事象の実態をとらえさせ、それらの特色や相互の関連を考えさせていくことになる。ここではこのような学習をとおして、児童一人一人の県に対する理解や関心を深め、地域社会の成員としての自覚を促し、地域社会の発展を願う態度を育てることをねらいとしている。

2 児童観

 日常の学習の様子から、児童は社会科の学習において調査や見学の活動に意欲的に取り組み、地域の様子を見学し、絵地図に表すことはできているように思われる。しかし、調査や見学する活動をとおしてとらえた事実を整理したり比較したりしながら考えていくこと、関連する事柄を他の資料や調査した結果と合わせながら自分の考えをまとめて表現していくことは十分でないように思われる。

3 指導観

 児童にとって、県全体を取り上げた学習は扱う事象も多く、それらの概要をつかむことは容易なこととは言い難い。多くの児童は、県内の他の市町村に出かける機会も低学年の頃よりは増え、遠足や旅行で県内各地を巡る機会もあるが、県内の様々な事象を身近なものとして自分たちの日常の生活と結びつけて考えることは難しいと思われる。
 そこで本単元の指導においては、県内の様々な事象を児童にとって身近なものとし、児童が主体的に資料を観察したり調査したりする活動を行うことができるように、県内の各市町村の観光案内や写真、パンフレットを利用し、具体物として県内で生産された農産物や工業製品に触れさせながら学習を進めていく。
 またこの単元では、地図に関する学習も重要な要素となる。ここでは、県内の地形、市町村、交通の種類を具体的な事例を上げながら、八方位、等高線、縮尺といった基本的な地図の見方の指導を行い、地形図、市町村図、交通図、土地利用図といった複数の地図を学習の場面に応じて取り上げ、地図に親しませながら活用の方法を指導していく。
 県の産業に関しての学習では、主として農業と工業について調べ、県内の生産的な産業の実態をとらえさせ、その特色と他の事象との関連について考えさせていく。しかし、児童の多くは、県内の各市町村で作られている農産物や工業製品を調べて分布図を作ることや、実際に見たり聞いたりしたことのある農産物や工業製品名を指摘することはできるものの、県内で特に盛んに作られている農産物や工業製品の種類の分布の様子をとらえたり、他の地図資料と比較し農業や工業と他の事象とのつながりについてとらえたりすることは難しい傾向にある。このような状況を改善するために、コンピュータ教材を用いて県内の農産物や工業製品の分布の様子を種類別に調べたり、農産物や工業製品の分布図を地形図、土地利用図、交通図、人口分布図と比較して調べたりすることで、児童が、県内で盛んに作られている農産物や工業製品の種類や盛んに作られている地域をとらえたり、比較していくことで県内の他の事象とのつながりをとらえたりできるような支援を行っていく。これらのことをもとにして、県内でなぜその農産物や工業製品が特に盛んに作られるようになったのかという理由を児童に考えさせることで、県の農業や工業に対する認識を深めさせていきたい。

V 単元の指導目標

1 自分たちの住む県の様子を調べることをとおして、地域社会に対する関心を深めさせる。(関心・意欲・態度)
2 県内で生産されている主な農産物や工業製品を調べることを中心として、県の農業や工業の特色や他の事象とのつながりをとらえることをもとに、農業や工業の特色がみられるようになった理由を考えさせる。(思考・判断)
3 身近なところから県全体についての資料を集め、整理して必要な情報を選び、調べたことを白地図に表すことができるようにする。(技能・表現)
4 県内における自分たちの町(市、村)の地理的位置、県全体の地形や主な産業、都市や交通網を地図やその他の資料を用いて調べ、白地図に記入する活動をとおして県の特色を理解させる。(知識・理解)

W 単元の教材構造

X 単元の指導計画

第1時 県の地図を広げてみよう(オリエンテーション 学習計画)
第2時 県の形を書いてみよう
第3時 県の山や川を調べよう(地形図・等高線)
第4時 県の市町村を調べよう(市町村図・等高線)
第5時 県の道路や鉄道を調べよう(交通図・縮尺)
第6時 わたしたちの町と友だちの市をくらべよう(土地利用図)
第7時 県の農産物について調べよう@<コンピュータ教材>
第8時 県の農産物について調べようA<コンピュータ教材>
第9時 県の工業製品について調べよう@<コンピュータ教材>
第10時 県の工業製品について調べようA<コンピュータ教材>
第11時 わたしたちの町と海外とのつながりを調べよう
第12時 県のしょうかいマップをつくろう

Y 本時の学習(第1時)

1 主題 「県の農産物について調べよう」(第7、8時  2時間扱い)

2 指導目標

 県の主な農産物を分布図を用いて調べさせ、それらの種類の多さや地域ごとの違いを理解させ、県の農業の特色や他の事象とのつながりについて考えさせるとともに、県の農業についての関心を深めさせる。

3 目標行動

 県内で作られている農産物には、特に盛んに作られている種類や盛んに作られている地域があること、盛んに作られるようになった理由があることを、他の事象とのつながりに触れながら説明することができる。

4 下位目標行動

G 目標行動と同じ
@ その地域で農産物が盛んに作られるようになった理由を説明できる
A 農産物が盛んに作られている地域の特徴をまとめて書くことができる
B 農産物が盛んに作られている地域の道路の特徴を書くことができる
C 交通図と農産物の分布図を比較できる
RD 交通図から高速道路や国道の位置を指摘できる
E 農産物が盛んに作られている地域の土地の利用の特徴を書くことができる
F 土地利用図と農産物の分布図を比較できる
RG 土地利用図から、田、畑の多い地域を指摘できる
H 農産物が盛んに作られている地域の地形の特徴を書くことができる
I 地形図と農産物の分布図を比較できる
RJ 地形図から、土地の高さ、平地、山地、海岸地域を指摘できる
K 盛んに作られている農産物が、特に集中して作られている地域を書くことができる
L 県内で特に盛んに作られている農産物の種類を書くことができる
M 県内の農産物の分布の様子を種類別に調べることができる
N 県内では多くの種類の農産物が作られているといえる
O 県全体の農産物の分布図から分かることを書くことができる
P 県全体の農産物の分布図を作ることができる
RQ 市町村ごとの主な農産物を資料で調べることができる
RR 市町村のおおよその位置をいえる
RS 農産物とは何かいえる

5 形成関係図とグルーピング

Rはレディネス

6 本時の展開(第7,8時   2時間扱い)

時間配分 学習内容 展開の流れ 教材・教具と留意事項
5 <導入>
・レディネス調査
(RR、RS)

・学習課題の把握

黒板、岩手県の基本図
 1人ずつ、問答法で確認する。
学習計画表
 学習課題を確認し学習プリントに記入させる。
岩手県では、どこで、どんな作物がたくさんとれるでしょうか。また、それはなぜでしょうか。地図やしりょうで調べて、考えてみましょう。
25 <展開>
1)市町村ごとの主な農産物を調べ、農産物の分布図を作る。
(RQ、P)
2)農産物の分布図の全体を見て、気付いたことを発表する。
(N、O)
3)特に盛んに作られている農産物の種類や地域を調べる。
(M)
コンピュータ教材、各資料など
 「岩手県の農産物マップ」を用いて、共同で一つの農産物の分布図を作成させる。市町村ごとの主な農産物は、資料集や観光パンフレットなど、あらかじめ準備したものから必要に応じて活 用し、調べさせる。
コンピュータ教材、学習プリント
 できあがった農産物の分布図全体を見て気付いたことを学習プリントにメモをとらせ、発表させる。
コンピュータ教材、学習プリント
 農産物の種類別に分布の様子を調べながら、盛んに作られているものや盛んに作られている地域を記入させ、県の農業の特色をとらえさせる。
15 4)県の農業の特色を学習プリントにまとめて書くことができたか。
(K)
5)自分がとらえた県の農業の特色を発表する。
記入の遅れがちな児童には、個別に指導を行う。
黒板、学習プリント
 全員に発表させ、自分が気付かなかった特色も確かめさせるため板書する。
5 6)自分がどの農産物について盛んに作られる理由を考えるのか、決める。 黒板、学習プリント
 とらえることができた農業の特色をもとに、盛んになった理由を考えさせるため、農産物を1種類に絞り書かせる。
20 7)農産物の分布の様子を他の事象と比べる。
(RJI RGF RDC
8)比べて分かった農業と他の事象とのつながりを書く。
(B、E、H)
コンピュータ教材、学習プリント
 各自が選んだ種類の農産物の分布の様子を、「岩手県の農産物マップ」を用いて、地形図、土地利用図、交通図と比べ、農業と他の事象のつながりについてとらえたことを記入させる。
10 9)盛んに作られるようになった理由をま とめて書く。
(@、A)
学習プリント
 とらえたことをもとに、自分の言葉で盛んになった理由や県の農業についてのまとめを記入させる。
10 <まとめ>
10)学習プリントにまとめたことを発表する。
(G)
11)本時の学習で感じたことを書く。
12)次時の予告を聞く。
学習プリント
 学習の成果を確かめ合い、必要に応じて教師が補足し、まとめる。
学習プリント
 本時の学習内容についての感想と、コンピュータ教材を利用しての感想を自由に記述させる。

 次時は県の工業について学習することを予告する。