印刷用紙:B4縦 1ページの行数:65 1行の文字数(半角で):90 第2学年 特別活動(学級活動)学習指導案 指導者 山 口 道 明 T.題材名   学校でのおつかい U.題材について   学級活動の活動内容は,「学級や学校の生活の充実と向上に関すること」と「日常生活や学習へ  の適応及び健康や安全に関すること」が示されている。本題材の学校でのおつかいは,基本的な生  活習慣と望ましい人間関係の育成にかかわることで,時と場に応じた礼儀作法を身につけさせるこ  とをねらいとする。   礼儀は,人間関係に欠くことのできない基本的なものである。人と人が接する場合,お互いの人  格の相互敬愛を保つことで,社会生活を円滑に実現する。心のこもった礼儀作法は,他人の心証を  損ねないばかりでなく,自他を受容的な態度にする。その実現のために,言語,動作などがごく自  然な形で振る舞えるようになることは,社会を構成する一員として大切なことである。   ところが,今日,子どもを取り巻く人間関係が,都市化,核家族化,少子化の中で希薄化してい  る。さまざまな人間関係を体験しながら社会性を身につけていくことが欠如している。そこで,低  学年の段階からその発達に即して校内での礼儀作法を身につけさせ,実践させることは,望ましい  人間関係を維持,発展させていく上で重要なことであると考えられる。   低学年における礼儀作法を考える場合,礼儀正しいあいさつと正しい言葉づかいができることが  考えられる。そしてこの二面とも時と場,相手に応じて使いわけなければならない。また,会話の  目的によっても異なってくるはずである。例えば,日直が教務室に,朝の連絡を受けにくる場合と,  運動時間に一緒に遊んでいる担任に話しかける場合では,おのずと区別されなければならないはず  である。学年経営の中でも基本的な行動様式の確立を目指し,「明るいあいさつ」ができることを  重点にしている。大きな声ではっきりあいさつすること,「おはようございます」「さようなら」  は立ち止まって握手であいさつすること,廊下ではだれにでも心を込めて笑顔で会釈することを徹  底し,指導している。   2年生ともなると,1年生と比べ学校生活に慣れ,校内での活動も活発になってくる。特別教室  への出入りもふえ,ほとんどの教室の名前も覚えている。また,担任以外の教師の名前もほとんど  の子どもが知っており,接することも多くなっている。さまざまな人とのふれあいが多くなる反面,  学校生活に慣れ緊張感に欠けてきている面もある。親しさの感情表現がかえってぞんざいな言葉づ  かいや態度になって表れてくることもある。また,家庭訪問や懇談会においても「うちの子は,は  ずかしがってお客さんにあいさつもしない。」とか「お客さんとの話のしかたがわかっていない。」  ということを父母から耳にする。したがって,今後ますます校内での活動が多くなり,また,来校  者の多い本校の特色を考え,この時期に指導を徹底しておく必要があると考える。   本題材の指導は,教務室や校務室などへ用事のため出入りするときの礼儀作法を理解させ,身に  つけさせることである。礼儀作法の指導といっても,その内容は多い。2年生という発達段階から,  教務室や校務室などへ気持ちのよい態度で出入りし,語尾までていねいに話す言葉づかいに重点を  おきたい。指導にあたっては,おつかいをうまくできたりできなかったりする原因について話し合  わせ,実際に学校でのおつかいのしかたを練習させ,改善策を自己決定させていきたい。 V.本題材にかかわる指導の流れ      4月   ・「あいさつ」についての日常指導(朝の会,帰りの会)        ・眼科検診,内科検診時の特別教室への出入りのしかた,あいさつのしかたの           指導(朝の会)           ・「明るいあいさつをしよう」学年児童会の取り組み      5月   ・耳鼻科検診時の特別教室への出入りのしかた,あいさつのしかたの指導 (朝の会)      6月   ・実態調査「教務室や校務室に入るとき」 7月 ・夏休み事前指導「よその家に行ったとき」 9月   ・学級活動「学校でのおつかい」(本時) W.題材と子ども   4月に,「えがおがいっぱい元気な子」という学年目標を設定した。学年目標の達成のために,  基本的な行動様式の確立とし,「明るいあいさつ」を重点の一つとした。日常指導として,「大き  な声ではっきりあいさつする」「おはようございますとさようならは立ち止まって握手であいさつ  する」「廊下ではだれにでも心を込めて笑顔で会釈する」ことを指導してきた。学年児童会では, 毎朝10人以上の人にあいさつをするということに取り組んできた。そのために,子どもたちは,明  るく大きな声で,握手をしながらあいさつをするようになってきた。しかし,子どもたちのあいさ  つをする動機を調べてみると,「あいさつをすると気持ちがいいから」という反面,「みんながし  ているから」とか「先生が言ったから」など,他律的な動機が多くみられ,まだ形だけであり,形  と心があいまって,時と場に応じたふさわしい礼儀作法が身についているとはいえない。また,1  学期が経過し,学校生活にも慣れ,校内を自由に行動できるようになった。自己中心性がまだぬけ  きっていない子どもは,他の教室に自由に出入りしたり,時と場を考えない言葉づかいがみられる。  例えば,けがをし保健室を利用する場合など,勢いよく戸を開け「先生,けが。」と言ったりする  子どもがみられる。逆に,何と言っていいのかわからなかったり,はずかしがってもじもじしてい  る子どももみられる。   実態調査によると,どの子どもも教務室や校務室,保健室に用があって入ったことはある。しか  し,教務室や校務室に入るときはどきどきし,保健室に入るときはふつうであると回答している。  教務室や校務室に入って用事をうまく話せなかった場合として,「まわりに先生がたくさんいて,  はずかしくてうまく言えなっかった。」と不安や緊張感が強すぎる傾向が要因になっていることと  「どのように入っていいのかわからなかった。」「何と言っていいのかわからなかった。」と教務  室や校務室への入り方,用事の言い方が身についていないことが要因として考えられる。保健室に  入るときは,教務室に比べ利用する機会が多いので緊張する様子はあまりみられないようである。  これらは,礼儀作法における子どもたちの技能面,心情面で不十分な面が多々みられるということ  である。したがって,礼儀作法における子どもたちの技能面,心情面の特性を把握し,個に応じて  解決策を自己決定させ,意欲的に実践させる必要があると考える。  (1)指導にあたっては,次のように子どもの特性をとらえる。  Aタイプ…常に気持ちのよいあいさつや言葉づかいに心がけ学校でおつかいをすることができる。 Bタイプ…気持ちのよいあいさつや言葉づかいはわかるが,学校でおつかいができないこともある。  Cタイプ…気持ちよいあいさつや言葉づかいのやり方が身についていない。   これらの特性を考慮し,Aタイプの子どもにはモデル的な役割を与え,Cタイプの子どもにはA  タイプの観察学習を通し実際に練習させ,Bタイプの子どもには心情面にはたらきかける指導を通  し,効果的に自己決定できる手だてを組んでいきたい。   なお,本時の授業の最後には,学習カードに授業に対する参加状況と意欲についての自己評価を  させ,自らの変容をとらえさせ,実践への意欲化を図りたい。 X.本時の指導  1.ねらい    教務室,校務室などへ用事のために出入りするときの礼儀作法を考えさせ,場に応じた言葉づ   かいとあいさつができるようにさせる。  2.展開 +-----+-------------------------+-----+----------------------------------+---------+ | 段階| 学習内容と学習活動 | 時間| 指 導 上 の 留 意 点 | 資 料 | +-----+-------------------------+-----+----------------------------------+---------+ | 意 | 1.教務室での教師との応対|  5| ・VTR1は,「礼をしない」「単語だ| VTR | | 識 |  の2つVTRを見て言葉づ| | けの話し方」「あいさつをしない」内容| 絵 | | 化 |  かいとあいさつについて話| | とし,VTR2は、「礼をする」「語尾| | | ・ |  し合う。 | | までてねいに話す言葉づかい」「あいさ| | | 共 | | | つをする」内容とする。 | | | 通 | | | ・2つのVTRを比較させることにより| | | 化 | | | 問題点を明確につかませたい。 | | | | | | ・よいおつかいのしかたの観点から,2| | | | | | つのVTRはどこが違うか明らかにさせ| | | | | | る。 | | | | | | | | | 原 | 2.望ましくないおつかいを|  8| ・望ましくない言葉づかいをしたときの| | | 因 |  してしまうわけについて話| | 状況を想起させ,原因を考えさせる。 | | | の |  し合う。  | | ・自分たちの教室とは違う場所であるこ| | | 追 |  ・場所を考えない  | | とをとらえさせ,望ましくないおつかい| | | 求 |  ・目上の人であることを忘| | のしかたが人間関係に及ぼす影響まで掘| | | |   れる | | り下げて考えさせたい。 | | | | ・適切な言葉がすぐに思い| | | | | | つかない | | | | | | ・はずかしい | | | | | | | | | | | | 3.よいおつかいのしかたに|  7| ・意識化・共通化の段階でとらえた問題| 絵 | | 対 |  ついて話し合う。 | | 点や原因としてとらえたことをもとに,| | | |  ・礼 | | 留意しなければならないことに気づかせ| | | |  ・語尾までていねいに話す| | る。 | | | 処 |   言葉づかい | | ・意見を板書によって整理しながら,礼| VTR | | |  ・あいさつ | | 儀作法の形の面と心の面にまとめた後,| | | | | | 教務主任の話を聞かせて,安心しておつ| | | と | | | かいができる気持ちを深めさせる。 | | | | | | | | | | 4.学校でのおつかいのしか| 17| ・場と用件を与え,実際に練習させる。| 学習カー| | 解 |  たについて練習する。 | | ・友達の練習を見る視点を押さえさせて| ド | | |  ・グループ毎に練習する。| | おく。 | | | |  ・練習後,感想を発表し合| | | | | 決 |  う。 | | | | | | | | | | | | 5.学校でのおつかいのしか|  3| ・学習カードに自己決定した解決方法を| 学習カー| | |  たのめあてを書く。  | | 記述させる。その際,練習を振り返らせ| ド | | | |   | おつかいで努力したい観点について記述| | | | | | させる。 | | | | | | | | | 意 | 6.実践に向けての決意を持| 5| ・自分で決めた解決方法や決意を発表さ| 学習カー| | |  つ。 | | せ,実践への意欲づけを図りたい。 | ド | | 欲 | | | ・学習カードに自己評価をさせ,自らの| | | | | | 変容をとらえさせるとともに,以後の指| | | 化 | | | 導に役立てたい。 | | | | | | ・事後指導として,日直は,毎朝教務室| | | | | | に来て,先生の連絡を受けるおつかいを| | | | | | することを約束にする。 | | +-----+-------------------------+-----+----------------------------------+---------+