印刷用紙:B5縦 1ページの行数:44 1行の文字数(半角で):82             第一学年 道徳学習指導案                                                                                            指導者 佐々木哲哉 一、日 時  平成3年7月5日(金)2校時                     二、学 級  1年5組 男子17名、女子18名、計35名  南校舎4階       三、主題名   役割を果たす                            四、資料名   マナスル登頂                            五、指導項目  集団における自己の役割と責任                    六、主題設定の趣旨                                  内容項目4ー1は、「集団の意義について理解を深め、役割と責任を自覚し、協力しあっ て集団生活の向上に努める」ことを目指している。本時の主題のねらいとするところは、集 団の意義の理解や役割と責任の自覚を深めさせようとするものである。           成功の結果を見る場合、表立った人だけが立派であるかのような印象を受けるが、その陰 にはそれを盛り立てるべく、自己の責任を果した多くの人々が存在する。つまり成員のひと り一人が集団の目標を自覚し、それぞれの役割に応じて力を尽くした結果として成功がある といえる。この集団の意義の理解や役割と責任の自覚は、理屈としては理解していても実際 の行動場面で実践していくのは容易なことではない。なぜなら、陽の当たる役割を求めたい といった利己心を誰しも持っており、これが大きな阻害要因として働くからである。たとえ ば、クラブ活動で入部当初は一生懸命精を出すが、レギュラーの可能性がなくなると途端に 脱落していくといった例はまさに集団の意義や役割の自覚が欠けているからである。学級の 生徒の実態について見た場合にもこの時点をとらえて必要とされる指導だと考え本時の主題 を設定した。                                     ここでは、資料「マナスル登頂」によって、マナスル登頂という明確な目的を達成するた めには、一人一人がその役割に徹し、自らの責任を自覚してこれを完全にやり遂げ、全員が 一致協力してことに当たらなければならないこと、そのためには自己本位の期待や欲望を克 服して全体の目的達成のために奉仕しなければならないことを十分に自覚させたい。                                             七、本時のねらい                                   集団の意義を理解し、自己の役割を自覚して責任ある行動をとろうとする気持ちを育て  る。                                        八、本時の展開                                   +---------------------+---------------------------------------+-----------------+ |   学 習 活 動 |      期待する生徒の反応     | 指導上の留意点 | +---------------------+---------------------------------------+-----------------+ | ※資料について補足説|                    |         | |  明しあらすじを確認|                    |         | |  する。      |                    |         | | ※感想を求める。  | ・過去2回選ばれたのに、今回は第一次登| ・主人公の行動に| | (主人公のの考え方や|  頂隊に選ばれなかったのでふてくされる| ついて生徒相互の| |  行動についてどう思|  気持ちも仕方がない。        | 考え方の違いに気| |  うか。)     | ・頂上に立ちたい人は他にもたくさんいる| づかせ、課題意識| |           |  のに、自分が選ばれなかったからといっ| を持たせる。  | |           |  てやけになるのはおかしい。     |         | |           | ・登りたい気持ちを我慢して、自分の責任|         | |           |  を果たしたのは立派である。     |         | | 1、登頂隊の発表があ| ・登山家としての最大の夢を失ったのだか| ※がっかりして落| |  った時、その場にい|  らその気持ちも当然である。     | ち込む加藤の気持| |  ることが耐えられな| ・自分の任務は頂上に立つことだと思って| ちに十分共感させ| |  くなり、やけを起こ|  いたのだから落ち込むのも当然である。| る。      | |  しそうな気持ちにな| ・自分で勝手に選ばれると思って、隊長の|         | |  る主人公をどう思う|  発表に不満に思うのはおかしい。   |         | |  か。       |                    |         | |           |                    |         | | 2、プラトー偵察を延| ・今まで2回も涙をのんいて、今回は絶対| ・主人公の行動に| |  長して、先に頂上に|  登る決心でいたのだから頂上へいこうと| 対する生徒の判断| |  登ってしまおうと考|  思ったのも当然だ。         | と根拠を発表させ| |  える主人公について| ・自分のことだけ考えて、隊や、隊長を裏| る。      | |  どう思いますか。 |  切るような考えは悪い。       |         | |           | ・2回の失敗による無念さから考えると初|         | |           |  登頂したいという気持ちは分かるが、我|         | |           |  慢して隊の一員としての役割を果たすべ|         | |           |  きだ。               |         | | 3、大塚のようすをみ| ・みんなのために頑張っている大塚をみて| ・主人公が自分の| |  て、加藤が恥ずかし|  自分が卑怯で自分のことばかり考えてい| 考えを反省して、| |  いと思ったのはどう|  たことに気づいたから。       | 隊の一員であるこ| |  してだろうか。  | ・頂上へはいかれないのに、自分の役割を| とを自覚するよう| |           |  一生懸命になって果たそうとしている大| になったことに気| |           |  塚の姿に心を打たれたから。     | づかせる。   | | 4、主人公は、なぜ心| ・初登頂への未練はあるが、自分の役割を| ・隊における自分| |  のしこりがほぐれて|  果たすことのほうが登山家としての誇り| の役割を誠実に果| |  楽しくなってきたの|  である。              | たしことに登山家| |  だろうか。    | ・隊員としての役割を果たすことによって| としての本当の誇| |           |  日本登山隊がマナスルに初登頂すること| りがあると自覚し| |           |  ができれば満足だと考えたから。   | た加藤の偉さに気| |           |                    | づかせる。   | |           |                    |         | | 5、その後の加藤につ|                    | ・第二次登頂隊の| | いて話をする。   |                    | 加藤を頂上へ登ら| |           |                    | せるためにサポー| |           |                    | トした隊員の話を| |           |                    | 聞かせ、集団のた| |           |                    | めに自分の役目を| |           |                    | 果たすということ| |           |                    | はどういうことな| |           |                    | のかを問いかけた| |           |                    | い。      | +---------------------+---------------------------------------+-----------------+ 印刷用紙:B5縦 1ページの行数:43 1行の文字数(半角で):80 +-----------+---------------------------------------+---------+---------------+ | 主 題 名| 役割を果たす             | 内容項目| 役割と責任  | +-----------+---------------------------------------+---------+---------------+ | 資 料 名| マナスル登頂             | 分  類| 4ー(1)    | +-----------+---------------------------------------+---------+---------------+                                          +---+-------------------------------------------------------------------------+ | ネラ|  集団の意義を理解し、自己の役割を自覚して責任ある行動をとろうとする意欲| | イ | を高める。                               | +---+-------------------------------------------------------------------------+                                          +---+-------------------------------------------------------------------------+ |  |  日本からマナスルへの三度目の登山隊派遣で1956年4月30日第一次キャ| | 資| ンプにいた槙隊長は、登頂隊のメンバーを発表した。加藤は過去二度とも登頂隊| | 料| に選ばれていたので発表を聞くまで心臓が早鐘のようになっていた。しかし、加| | の| 藤は第一次登頂隊のメンバーに選ばれなかった。その場にいることに絶えられな| | あ| い気持ちになり顔や口がこわばるようだった。次の日になっても頂上に立ちたい| | ら| という気持ちはあきらめ切れず、ぬけがけをして一人で登頂してしまおうかとい| | す| った考えをめぐらしていた。しかし、第三キャンプの下に来たとき大塚の実にほ| | じ| がらかな顔を見てすまないと思った。大塚のただ自分のやるべきことをやってい| |  | るという気持ちがドーンと来て彼は本来の務めを果たそうと決心した。    | +---+---------------------------------+---------------------------------------+                    |                           +---------------------------+-----------------------------+            |         話し合いの落ち着けかた         |            +---------------------------------------------------------+            |  これまでの経緯から考えると、初登頂したいという気持ちは|            | 分かるが、やはり隊員の一員として、自分の役割をきちんと果|            | たすべきだという共感的批判を強めていく。        |            +---------------------------------------------------------+                                                +-----------------------------------+  +-------------------------------------+ |    主人公に共感させたい点   |  |    主人公を批判させたい点    | +-----------------------------------+  +-------------------------------------+ |  第一次登頂隊からはずされた加藤 |  |  登頂隊の一員である以上、隊長の命令| | が、自分一人で頂上へ登ってしまおう|  | にそむいたり自分勝手な行動は許されな| | と考えたことは、これまでのいきさつ|  | いこととして批判させる。      | | からすると無理もないこととして共感|  |                   | | させる。             |  |                   | +-----------------------------------+  +-------------------------------------+                                          +---+-------------------------------------------------------------------------+ |  | ・状況をよく把握させるために、日本登山隊のマナスル登頂の経緯、加藤隊員の| | 留|  マナスル登山の経験、第一次登頂隊と第二次登頂隊の違い、初登頂の意義など| |  |  をVTRを使って補足説明する。                    | | 意| ・名誉を得たいという気持ち(利己心)から、自己の役割の自覚へと変容してい| |  |  った様子が分かりやすいようにマグネット式の紙板書を有効に活用する。  | | 点| ・終末段階での説話では、その後の加藤が第二次登頂隊として登頂に成功したこ| |  |  とを話し、その登頂のために村木隊員が加藤を登らせるためにサポートした内| |  |  容を印象的に聞かせる。                        | +---+-------------------------------------------------------------------------+