印刷用紙:A4縦 1ページの行数:44 1行の文字数(半角文字で):92 第三学年 道徳学習指導案 指導者  岩 長 康 之 1.日 時  平成7年7月7日(金) 第2校時 2.学 級  3年4組 男子23名 女子16名 南校舎2階 3.主題名  誠実な生き方 資料名「久三と壺」(近藤芳隆) 4.主題について   内容項目1−(3)は,「自律の精神を重んじ,自主的に考え,誠実に実行してその結果に責任  をもつようにする」ことを目指している。本時では特に,目先の利害にとらわれず,常に誠実な態  度で人に接しようとする心を養うことをねらいとする。社会に対して誠実であるということは,人  間として恥ずかしくない,自らに誠実な判断と行為によって支えられているものである。したがっ  て自らの姿を深く見つめ,自己が為す行為について,それが自分自身や他人にどんな結果をもたら  すか十分わきまえることが大切である。自分を偽る行為は,他の人は知らなくても自分が知ってい  る。たとえそれが自分にとって不利益をもたらそうとも,自分に誠実に,人間として誇りをもっ  た生き方こそ,充実した,心から満足できる生き方といえるであろう。そこで,目先の利害や自己  中心的な考え方を克服し,常に物事を正しく判断をし,誠実に実行することの大切さに気づかせて  いくことが必要であると考え,本主題を設定した。 5.資料について   資料「久三と壺」は,古物商を営む主人公の内面的な葛藤を取り上げた資料である。主人公は,  経済的に困窮しているおじから家の古物を買ってほしいと懇願され,値打ちものの壺を不当に安い  値段で買い取る。それを売ってもうけるつもりではなかったが,得意先の骨董品屋がつけた高値に  ひかれてとうとう手放し,大きな利益を得る。さすがに,自分の行為にやり切れなさを感じて,わ  ずかな金と手土産をもっておじの家を訪ねた。だが,逆におじの感謝の気持ちと誠意を目の当たり  にし,自分の不誠実を大いに恥じる。以上のような内容の資料を用いて,本時の指導は,主人公の  打算的な考え方に共感させつつも,それを人間の弱さとして批判できる視点を明らかにし,話し合  い活動を通してねらいに迫らせていきたい。また,主人公と同様の内面的葛藤は,生徒の日常生活  にもよく見られるものであるから,主人公の行動に自分のこれまでの行動を重ねさせ,常に誠実な  態度で人に接しようとする意欲を喚起したい。 6.学級について   道徳の時間については,自由に本音を発言をできる雰囲気をもっており,規範的な考えだけに偏  ることはない。話し合い活動にも意欲的な取り組みを見せる。自分の考えにやや固執しがちな生徒  や,自分の考えやその根拠を上手に表現しきれない生徒もみられるが,多くの話し合い活動を経験  して,少しずつ改善されつつある。   日常の合唱活動や生徒会行事において,集団の結束力を発揮し,望ましい成果を上げる場面もあ  るが,正しくない行動と知りながら,易きに流されたり,打算で行動するなどの自己中心的行動を  とりがちな生徒もいまだに見られる。このような生徒に限って,自分の言動に対する責任を追及さ  れると「みんながやったから」とか「○○君がやれと言ったから」などと,所属する集団や他者へ  の責任転嫁を図りがちである。このことは,他者に安易に融合する態度に慣らされ,自分を冷静に  見つめる能力がまだ十分に育っていないからであると考える。そこで,自分や社会に対し,誠実で  責任ある行動の意義を 理解させ,そのうえで,意欲をもって実践しようとする心を養う指導が大  切であると考える。 7.本時のねらい   目先の利害だけにとらわれず,常に誠実な態度で人に接しようとする心を育てる。 8.本時の展開 +−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ |  教師の働きかけ |      期待する生徒の反応 |  指導上の留意点   | +−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+ |○ 資料を読み,粗筋を| |・手短に行う。 | | 確認する。 | | | |○ 感想をもとめる。 |・相手をだまして利益を得たのはよくない。|・弁護と批判の対立点を| | |・金に困っている身内が相手なのだから,も| 明確にし,判断の違い| | 主人公(久三)の行動| うけより相手の身を思いやるべきだ。 | から話し合いの方向づ| |や考え方をどう思うか。|・確かにずるいかも知れないが,人間ならだ| けを図る。 | | | れでももっている欲だからしょうがない。| | | |・自分のずるさに後ろめたさを感じて,おじ| | | | のところにお金や饅頭をもっていったのは| | | | 立派だ。 | | | |・相手が持ち出してきた商売だし,相手も満| | | | 足しているのだから,主人公は悪くない。| | | |・物を売り買いして金をもうけることは商売| | | | 人として当然だ。 | | | | | | |1 久三が,仙吉おじか|・相手が持ち出してきた商売だし,相手も満|・弁護を十分に出させて| | ら壺と掛け軸を合わせ| 足しているのだから,悪くない。 | おいて,それでも主人| | て1万円で買ったこと|・相手がだれであれ,物を売り買いしてもう| 公がやりきれなさを感| | をどう思うか。 | けを得ることが仕事なのだから,悪くない。 じた点に着目させる。| | |・安くても2万円の価値がある壺なのに,そ| | | | れを相手には告げず,気の毒だから買って| | | | やるというそぶりで安く買ったのが悪い。| | | |・相手があかの他人ならまだしも,金に困っ| | | | いる身内なのだから,金儲けのことは考え| | | | るべきではない。 | | | | | | |2 久三は商売人として|・1万円で買った壺を5万円で売ってしまい, | | 当然のことをしたはず| 後ろめたい気持ちになったのだろう。  | | | なのに,「いいようの|・5万円で売れた壺なのに,仙吉に1万円し| | | ないやりきれなさ」を| か渡さなかったので,仙吉に対して申し訳| | | 感じたのはどうしてか。 ない気持ちなのだろう。 | | | そんな久三をどう思う|・自分自身のことを欲の塊のような人間に思| | | か。 | えてきて,恥ずかしくなったのだろう。 | | | | | | | |・悪かったとか,恥ずかしかったと感じるの| | | | は当然だと思う。本当に後ろめたく感じて| | | | いるならば,このとき仙吉おじに本当のこ| | | | とを告白すべきである。 | | | |・だれに迷惑をかけたわけでもなく,むしろ| | | | 仙吉おじは感謝してくれているのだから,| | | | 何も後ろめたく感じる必要はないと思う。| | | | | | |3 久三は仙吉おじの家|・親切で壺を買ってくれたと思って,自分に| | | を訪ねたが,五千円の| 誠意を示す仙吉おじを見て,自分の誠意の| | | 受け取りを拒否され,| なさを恥じる気持ちになったからだろう。| | | 「自分自身慰めようの|・仙吉おじのつらさがわかっていたのに,つ| | | ない思い」になったの| い自分の欲に負けて壺を安く買いたたいて| | | はどうしてだろうか。| しまったことを悔やんでいるからだろう。| | | | | | |○ 本時のまとめをする。 |・一時の欲や利害に負け| | | | ず,誠実な態度で行動| |  生徒作文の紹介 | | したことが,他者にも| | | | 自分にもよい結果を導| | | | いた体験を記した生徒| | | | 作文を紹介し,意欲化| | | | を図る。 | +−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−+