印刷用紙:B5縦 1ページの行数:52 1行の文字数(半角で):88   −−以下 指導案本文−−                第2学年  道徳指導案                       日 時 平成8年9月20日(金) 1校時                       対 象 第2学年10名(男子3名女子7名                       指導者 教諭 藤村 智子 1.主題名   『信頼と友情』(2−(3)) 2.資料名   『甲子園でプレ−がしたい』 3.主題設定の理由 (1)価値について     価値項目2−(3)は「友情の尊さを理解して心から信頼できる友達をもち、互いに励ま    し合い、高め合うようにする。」とある。自我に目覚め、自己を確立する中学生時代は、互    いに心を許しあえる友人を真剣に求めるようになる。この時期の友人関係の在り方は、人間    的な成長に大きな関わりをもつ。相手の表面的な言動だけでなく、内面的な良さに目を向け、    相手の成長を心から願って互いに励まし合い、忠告し合うことが大切であることを自覚し、    生涯を通じて良き友を得ようとする態度を育てる必要があると考える。     中学校2年生のこの時期は、それぞれの価値観が作られたり、人の行動や自分の行動に意    味づけをしながら行動しようとする時期である。本学級の生徒に改めて学級や友達とともに    中学時代を過ごす意味を考えさせながらよりよい仲間づくり、人間関係づくりを自分たちの    手で築こうとする意欲を養いたいと考える。人とのつきあいの基本は身近な人との関係から    始まる。大きく価値観がつくられるこの時期に本当の友情について正面から向き合い考えさ    せることを通して、友達と表面的に仲良くしようとするつながりを、互いに励まし合い高め    合おうという積極的な人間関係に高めさせる土台を築きたい。 (2)「信頼・友情」から見た生徒の実態     本学級の生徒は、明るく個性的で、目標が定まると意欲的に取り組む力強さがある。1年    生の時から学級みんなが本当の意味で仲間になろうということを考え、生徒なりに精一杯の    表現や行動をしてきた。学級全員が何かを乗り越える苦しみやその先の喜びを味わった経験    に乏しいためそのような経験を積ませてつながりを強めたいと考えている。今年になって伝    統芸能の「鹿踊り」についても、「小さなつまずきに負けずに苦しいところを乗り越えて、    みんなで喜べるような学級になろう」という話がもたれ、友情や仲間について考える場は多    くあった。しかし、友情や仲間への理想の姿に個人差があるため、表面的な優しさを友情の    はかりにしようとする幼さが残る生徒も見られ、学級集団として充分に練られているとはい    えない状態である。     道徳性検査(HUMAN)によれば、「信頼・友情」についての総合評価はA判定3名、    B判定6名、C判定1名と発達が充分とはいえない項目である。さらに、心情面と判断面を    見ていくと、心情面は比較的発達しているが、判断面の発達が不十分な生徒が半数以上いる。    「道徳的判断」を自信を持ってできるように、資料の葛藤場面による判断基準を問い直しな    がら視野を広げ自分たちの判断を再確認させることで自信をもたせたい。     この2学期は、学級経営の面でも釜中祭や修学旅行準備といった仲間づくりに大きく影響    する行事がひかえている。これらの行事は、学級集団や一人一人のつながりがしっかりとで    きていなければ成功することはできない。この資料を通して友情というものをもう一つ広い    ところから考え、刺激しあえるように話し合いの場を大切にしながら個々が高まるように働    きかけたい。 (3)資料について     主人公は中学校3年生。小学校からいっしょに野球をやってきた義男とは親友である。2    人はバッテリ−を組み、中学校でも県大会の決勝まで行く活躍ぶりであった。そんな2人は    地元の期待も大きく、高校でもバッテリ−を組んで甲子園を目指そうと誓いあっていた。し    かし、ある日雄一に県外の野球の有名校から野球留学の声がかかる。雄一の心は義男との約    束と甲子園の夢の間で大きく揺れ動く。 5.本時の指導 (1) ねらい     第1時の共通指導項目をもとに、今までの価値観を問い直し複数の価値を合わせてより深    い考え方ができる。 (2) 指導構想本時は、内容把握の後に主人公の雄一が義男との約束と野球有名校への誘いとの    間で悩む場面をとらえさせる。さらに「雄一はどうすればいいと思いますか?」の発問によ    り自分の考えをつくり、どのような判断をするべきかを中心に話し合いを展開する。話し合    いの中で他の意見に耳を傾けさせ、生徒の応答に応じてゆさぶりをかけながら、さらにもう    一度二回目の判断を求め、時間の中での自己の高まりや変化を感じ取らせたい。 (3) 展 開    事  ○第1時は感動資料を用いて主人公の気持ちに共感させながら『お互いが励ましあい、        高まっていくのが友情である』という共通の意識をもたせた。    前  ○複数の価値がぶつかったときにどう活かしていくかを考える土台づくり。   段 階     学習活動           教師の発問・支援    予想される生徒の反応         時間   指導上の留意点・評価    導   1.本時の学習内容への導入  ○アンケ−ト結果の発表    ・なんでも話せる友達                                      ・話しやすい雰囲気づくりに努める                                      ・困ったとき力になってくれる友達                                      ・事前にアンケ−トをとっておくめる                       ○雄一君はどんなことで迷ったかわかるところに線を引きながら聞い    入   2.資料の判読         てください。                           10        3.資料から主人公の葛藤状                 ・主人公は誰   ・雄一          状況を読み取る                     ・何年生     ・中3                                      ・友達の名前は  ・義男                                      ・いつからの友達 ・小学校のリトルリ-グ                                       ・2人の夢は   ・甲子園に出場すること    ・時間を取らずに応答                                                              ・読み取れたかどうか様子を見ながら                                                              ・監督は何を話にきたのか確認していく。                                      ・R高校で野球をしないかという誘い        4.葛藤状況の理解と学習課題の設定                        雄一は監督の話を聞いてどんな気持ちだったろう?                                      ・認められてうれしい ・義男に悪いな                                      ・自分だけでいいのかな・甲子園に近づいた                       ○主人公がどんなことで迷ったのかをつかませる発問                                                              ・迷っている場面を絵にして貼る +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | 雄一君の行動について考えよう | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+                     ○判断を問い、自己の価値観に気づかせる発問         5.第一次判断と理由づけ                                            展                   雄一君はどうすればいいと思いますか?                                      ・R高校へ行って野球をするのがいい        考えをまとめ、自分の        6.話し合いによる交流                   ・S高校で義男といっしょにやるべき        言葉で発表表できる。                                                             ○1次判断          ・義男との約束もあるし、甲子園の夢も叶いそう                                             だから選べない               15 ・話し合いながら徐々にグル−プが                       ○話し合いによる意見の交流            ↓              まとまるような援助をする。                                     (1)R高                                      ・R高校へ行ってもお互いの目標に向かってがん                                       ばり合えば友達でいられる                                     (2)義男といっしょ                仲間の意見に耳を傾け、広く意見                                     (3)選べない                   を取り入れて考えをつくることが                                      ・地元の高校へ行っても夢に向かってがんばれる   できる                                       との比較。                                      ・どちらをとってもいい方法はある                  7.焦点化された論点について                                   開    ふ    話し合いを深める    +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+          生徒の意見への応答でゆさぶりを | 雄一君がS高校を選んだら義男君はどんな気持ちだろうか? |        +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+                                                                   ・誓いを選んでくれてありがとう り                 ・本当にこれで良かったのかな                                      ・義男に申し訳ないな                      ○論点を資料から価値そのものへ一般化させる発問                      ○ゆさぶりの発問を通して友情についての考えを深め、いろいろな    え                  形があることに気づかせる。                                      ・いっしょにがんばるのが友情だ                                      ・夢を応援してあげることも友情だ    り                                 ・お互いに競い合うのも友情だ        8.2次判断と理由づけ    終 ひ               ○2次判断      ろ   げ 9.高められた価値の深化・      る               意欲化                ○感想・自己評価を記入する。                      評 (1)本時の学習を通じて深められた自己の思考の変化を表現できる。    末 価 (2)主として学び方に関する形成的評価。                      ○この時間の価値の整理をする。     事  【学級活動】     後                ○励まし合い、高め合っていくことが本当の友情をつくるのだという考え                       の定着を目指して生徒への言葉かけや評価をしていく。 +−−−−資 料−−−−−−−+ +−−−−−−発 問−−−−−−−−−− |・生徒が共感しやすい生活資料| |「どちらも大切にする方法はありませんか |・ともに野球を続けてきた義男| |「いっしょにいることが友情ですか」 | との友情 | |「いっしょだからこそできることもあるの |・ずっとあこがれてきた甲子園| | ではありませんか」 | への夢 | |「友達のために夢をあきらめるのですか」 +−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−                                    友情の価値観へのゆさぶり  複数存在する価値の中から、どのよ うに友情をとらえていくか          +−−−−形 態−−−−−−−+ +−−−−−−−その他−−−−−−−+ |・どちらの立場も尊重し考えを| | | | ひろげるための話しあい | |・意見の相違がわかる板書の工夫 | |・資料から価値に目をむけさせ| | | | る話しあい | +−−−−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−−−−−−−−−−−−+ 図1.「本時のゆさぶり」用     【学級活動】       鹿踊りの話しあい |      【道徳の時間】             感動資料を用いて「励ましあい、 高めあっていくのが友情」という価値項目      を共通のものにしていく  【道徳の時間】「甲子園でプレーがしたい」      ・義男との友情と、甲子園へ の夢との間で迷い悩む主人公の姿を通して、複       数の価値をあわせた中での 友情のあり方について考える。      ・ちがう意見にも耳をかたむける中で、より 高い価値に気づき、よりよい人       間関係を築いていく判断力を育てる。 【道徳の時間】 葛藤資料を用い、より日常に近い場面における自己の判断 +−−−−−−−−−−−−−− | 基準を見直していく。                          深められた生命尊重への価値観を                          もとに展開される社会福祉活動     【学級活動】 畑づくり          ・お年よりや地区民との日     畑づくりに対する生徒のイメージ       常的な交流が深まり、      誇りをもてる活動として          ・釜中祭、開校記念行事等     定着していくだろう。      図2.「連携の構想」用