印刷用紙:B5縦 1ページの行数:52 1行の文字数(半角で):102   −−以下 指導案本文−−   第3学年 道徳指導案                        日 時 平成8年9月20日〓2校時                        対 象 第3学年10名(男子4名女子6名)                       指導者 教諭 畠山 祐光 1.主題名 『強い意志』(1−2) (『理想の実現』(1−4)) 2.資料名 『一本の電話』 (卒業生作文による自作資料) 3.主題設定の理由  1 価値について   内容項目1−2は「より高い目標を目指し、希望と勇気をもって着実にやり抜く強い意  志をもつようにする」とある。昨今の中学生は、ものごとを成し遂げようとしても、困難  に直面すると簡単に挫折してしまうことが少なくないと言われているが、一面的なものの  味方に陥ることなく、広い視野に立ってものごとを正しく判断する力を育て、目標を実現  するための諸条件を検討しながら、最後までねばり強く着実にやり抜く態度を育てるよう  に指導する必要があろう。   また、内容項目1−4は、「真理を愛し、真実を求め、理想の実現を目指して自己の人  生を切り開いていくようにする。」ことである。   本校の最大の課題である「生きる力」を育てるためには、困難に立ち向かい、乗り越え  ていくような強い意志の育成が大切であり、それが、自己の理想の実現につながっていく  ものと思われる。   特に、3年生のこの時期には、卒業後の進路が生徒たちの大きな関心事であり、将来に  対する不安やあせりの中で、目標を失いかけたり、迷ったりすることであろう。悩む自分  を受け入れ、悩みを乗り越えた上で、進路実現に向けた取り組みをさせたい。自分の進路  の目標をしっかり定め、それに向かってねばり強く取り組むことを基盤に、理想の実現を  目指して自己を切り開いていくことの価値を考えさせたいと考え、本主題を設定した。  2 生徒について   本学級の生徒は、1学期の進路学習、三者面談、夏休み中の面接練習等により、自分の  進路に対する関心が深まってきている。しかし、現時点では自分にふさわしい進路の目標  を明確にもち、それに向かってねばり強く取り組んでいる段階の生徒は少ない。   学力や自己表現力などでの個人差が著しく、学級活動の際にも、全員がまとまって取り  組もうという意識が弱い。共に学ぶ雰囲気を大事にして、日常生活の中で他人の活動を気  を大事にして、日常生活の中で他人の活動を認め、励まし合う雰囲気を高めようと教師の  声かけ等を配慮している。特に、鹿踊りの取り組みは2年次から学級活動の軸に据えて、  学級での話し合いや練習を通して誇りをもたせようと、指導を行なっているが十分とはい  えず、生徒の自信は確固たるものにはなっていない。さらに自信を深め、後輩たちへと引  き継ぐように支援していきたい。   道徳性検査(HUMAN)によれば、「理想の実現」についての総合評価はA判定が4  名、B判定が5名、C判定が1名である。「強い意志」についての総合評価はA判定2名  B判定は7名となっており十分発達しているとは言えない。またさらに細かく分析してみ  ると、判断面の発達で不十分とされる生徒が4名みられ、「道徳的判断」をより豊かにさ  せるはたらきかけが必要ではないかと思われる。葛藤場面についての判断基準をより深め  それによる判断に自信をもたせていきたい。   一人一人の目標を強く意識させ、卒業までの半年の間、それに向かって着実に努力して  いこうとする態度を身に付けさせたい。そして、お互いが支え合いながら、まとまった学  級全体の雰囲気をつくっていきたい。  3 資料について   主人公のもとに志望校のレスリング部から勧誘の電話が入る。入部を決めれば入学にも  有利に働くと思い、以前からの野球を続けるという希望との葛藤に悩むという内容である  この資料は、今年の3月に本校を卒業した先輩が書いた作文をもとにした資料である。   卒業生本人が実際に体験した葛藤、そして、自己選択の過程が素直に表現されている。  3年生の生徒にとっても身近な問題で、興味をよぶ題材であろうと思われる。主人公の内  面の二種類の理想の実現の価値の間の葛藤についての話し合いで価値の判断力を高めたい。 4.研究テーマとのかかわり   本校の研究主題「一人一人に生きる力を育てる道徳教育の在り方」を具現化するため、  副題「ゆさぶりを大切にした指導の工夫」に基づき、次のような手立てを考えた。  1 本時のゆさぶり(図1) 【資料について】 +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 本資料は卒業生の実|+−−−−発問−−−−+ +−− 形態 −−−+| 体験に基づいた葛藤資|| 討議の中で、以下のような発問を効果的に ・グループによる討議の工夫 料である。身近な資料||組み込み、生徒の道徳的価値観をゆさぶる。−−−−−−−+| をもちいることによっ||・葛藤の根拠を問う発問 |強い意志|+−−資料−−−−+| て葛藤への共感がしや||・対立的発問 ++の価値観||・効果的な板書の工夫 すいのではないかと考||(生徒がもっている価値観と対立する価値観 へのゆさ (葛藤場面と理由づけの対比を える。また、内容は進||をとりあげ、別な視点を与えていく。) ぶり わかりやすくなるように) 路選択の場面でありこ||・といかえし |+−−−++|・先輩の作文による身近な素材 の時期の生徒の関心を||(生徒の考えをより深め、明確にさせる。) (先輩の進路選択の場面) よぶであろう。生徒の||・共感的発問 | |・VTRによる実践への意欲づけ 意見を自由に交換でき|+−−−−−−−−−−+ 図1 +−−−−−−−−+| る雰囲気を大切にし、+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+  個の理解への配慮として、葛藤場面の正確な把握をねらった効果的な板書を行ないたい。 また、資料後半と主 人公の活躍についてはVTRを使用し、実践への効果的な意欲づけを ねらいたい。         +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 【発問について】 |+−−−−−−−−−−−−−−+ | 内容把握の段階では||【学級活動】進路学習、鹿踊り| 図2 | テンポよく短時間で把|+−−−−−−+−−−−−−−+ | 握できるように、教師|+−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| の表情や間を、特に大||【道徳の時間】・感動資料を用いて「強い意志」の大切さについて共通のものにする。 切にしていきたい。ま|+−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| た、話し合いの場面で|+−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| は、発問を工夫し、主||【道徳の時間】(「一本の電話」) || 人公に葛藤に深くせま||・主人公の葛藤する姿についての話し合いにより、自己の判断基準を見直していく。 り、個々の判断基準の||・困難に直面しても自分の意志を貫いて取り組んでいけるような意欲を育てる。 見直しを促したい。 ||・理想の実現を目指して自己の人生を切り開いていこうとする意欲を育てる。 2 連携の構想(図2) |+−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| この学習を通して深| +−−−−−−−−−−−−−+ | められた価値観は、今|+−−−−−−+−−−−−++−−−−−−+−−−−−+| 後のあらゆる活動に生||【学級活動】進路学習 釜中祭 【深められた強い意志への価値観をもとに展開される かされていくと思われ||・強い意志をもち、粘り強く取り組んでいくことの大 活動】 | る。特に、進路実現に||切さをわかり、日常活動として目標をより意識して認 ・釜中祭 ・ことりさわ学園交流 向けて努力する過程で||め合い励まし合いながら取り組んでいけるだろう。 || の意欲的な取り組みを|+−−−−−−−−−−−−++−−−−−−−−−−−−+| 期待したい。また、文+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+  化祭等へ取り組む日常の中でのお互いの認め合い、励まし合いにも期待したい。 5.本時の展開  1 ねらい   ○強い意志をもっての理想の実現の価値の葛藤についての話し合いを通して、道徳的判断力を高める。  2 指導の構想    資料の内容把握を行い、主人公の野球か高校進学かという葛藤について把握し、この状況で「主人公はどうしたらいいと思うか」について第1次判断をする。その後、   モラルディスカッションを行ない、主人公の葛藤状況について意見の交換を行ないたい。そして、話し合いの後半では、「私はなぜどきっとしたのか」という発問により、   理想の実現に向かおうとする強い意志の価値について触れ、判断基準の問い直しを行ないたい。その後第2次判断を行ない、資料後半部分を読み、主人公のその後の活躍   場面のVTRを視聴してオープンエンドで終り、実践への意欲づけとしたい。   価値の追求の話し合いを中心とした展開の中で、発問を効果的に用いることによって生徒の判断力を高めたい。  3 展 開 +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |事 前|・前時(第一時)の授業における、「強い意志」の価値観を高める指導。 | +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |段 階| 学 習 活 動 | 教 師 の 発 問・支 援 | 期待する生徒の反応 | | 留意点・評価 | +−+−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |導|き| 1.本時の学習内|○ブレーンストーミングを行なう。 |○さまざまなイメージを出しあう。 | |・話しやすい雰囲気をつくる。 | | |づ| 容への導入 |・○○で連想するものは? | | | | |入|く| | | |5| | +−+−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | | 2.資料の読み|○教科書の範読(葛藤場面の提示) | | |・教師の範読は、感情をこめて行なう。 | | |つ| と葛藤場面の|・何に熱中していた?・どんな電話?|・野球。 | |・葛藤場面に注意させながら。 | | | | 把握 |・スカウトにOKするとどうなる? |・うちの高校のレスリング部に入らないか? | |・内容把握の発問はテンポよく行ない、紙板書に| | |か| |・野球部に入ってどうしたいって? |・高校入学に有利になる。 | |よって整理していく。 | |展| | |等の補助発問により、内容把握する。|・甲子園をめざす。高校で先輩と野球の勝負をしたい。 | |・挿し絵を使い、悩む姿を想像しやすくする。 | | |む| |○主人公の葛藤の内容を把握させる。|・勧誘を受けるか、断るか。 | |・机間巡視しながら読解の苦手な生徒へ声かけ。| | | | |+−−−−−−−−−−−−−−−+| | |○葛藤に対する判断を問う発問 | | | | 3.課題の意識化||「私」はどうすればいいと思いま|| | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | | | (第1次判断と||すか? ||・「受ける」「断る」のどちらかの意見を学習シートに記入する。| ||自己の考えをまとめることができる。 || | | | 理由づけ) |+−−−−−−−−−−−−−−−+| |10|+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | +−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | | |4.価値の追求 |○「受ける」「断る」の二つのグルー|<受ける>・二つの希望を同時にかなえる危険な道を選ぶより、一| |・全員が意思表示できるように、教室を大きく使| | |ふ| (話し合い)|プに分けて討論する。 |つでも確実な道を選んだほうがいいから。 | |って席の移動を行なう。 | | | | | |<断る>・自分の希望をどちらもかなえるように考えたほうがいい| |・共感的な受け答えに留意する。 | | |か| |+−−−−−−−−−−−−−−−+|から。 | |○思考を深め、より深い心情に気づかせる発問 | | | | ||「私」はどうしてどきっとしたの||・痛いところをつかれたと思ったから。 | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| |開|め| ||かな? ||・自分の弱い部分を指摘されたような気がしたから。 | ||仲間の意見をきき、自己の考えと照らし合わ|| | | |5.判断基準の |+−−−−−−−−−−−−−−−+|・人に決めてもらおうというのはいけない考えだと思ったから。 | ||せ、価値観を高めようと主体的に取り組むこ|| | |る| 問い直し|○対立的発問、といかえし、共感的発| | ||とができる。 || | | | |問等を効果的に組み込む。 | |25|+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| +−+−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |ふ| 6.価値の収束|○これまでの話し合いをふりかえりな| | |・自分の考えをまとめ、シートに記入する。 | |終|り| (第二次判断と|がら、二次判断を記入する。 |・希望のために目標を決めてねばり強くとりくめばいいと思う。 | | | | |か| 理由づけ)|+−−−−−−−−−−−−−−−+|・どちらをとろうと、自分で納得するのが一番だから、よく考えた| |○学習内容をふりかえり、意義をまとめる発問 | | |え| ||「私」はどうしたらいいですか?||方がいいと思う。 | |・悩みを克服して目標を達成した先輩の姿から、| | |る| |+−−−−−−−−−−−−−−−+| | |強い意志をもって取り組むことの大切さに気づか| | | | 7.価値のひろが|○その後をまとめたVTRを見る。 |・悩んだ末に決めた結論に向かって努力した結果だろう。 | |せる。 | | | | り |○自己評価をする。 |・自分で決めたのがよかった。 | |+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| |末|つ| | |・自分の意志でねばり強くやることが大事なんだ。 |10||自分の考えをふりかえり、その深まりを見つ|| | |な| | | | ||めることができる。 || | |げ| | +−−+−−−−本時の評価−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−++|+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+| | |る| | | 1強い意志の大切さについて、自分なりに表現できたか。 || | | | | | | 2主として「学び方」に対する、授業中の形成的評価。 || | | | | | +−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−++| | +−+−+−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ |事 後|【学級活動】 日常生活の中で、強い意志をもって粘り強く活動することの価値を評価していくとともに、お互いの目標を認め合い、達成のために協力するように支援していく。 | +−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ 根拠を問う発問          「どうしてそう思ったのかな?」 生徒にかえす発問         「○○さんはこう言っているけど、あなたはどうですか?」 共感的発問 「なるほどそういう考えもあるなあ」 問い返し        「ということは、つまり、○○ということかな?」 対立的発問 「では、好きな野球をとって、校に不合格になってもかまわない?」                  「レスリングをとったとしても、合格が決まるとは限らないんじゃない?」                   ・好きな野球をとれば、高校入学は一般の生徒と同じ条件で試験ということになる。                    レスリング部をとれば、高校入学は有利になるかもしれない。 「一本の電話」資料分析表 +−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+−−−−−+−−−−−−−−−−+ | 資料の流れ | 生徒の思考   心の流れ・価値 発問・留意したい 表現 +−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+−−−−−+−−−−−−−−−−+ | +− 前提となる主人公のおかれた背景 −−−−−−−−−−−−−−−+ | | |【時間的状況】 【空間的状況】 | | | |・試験の一週間前にきたレスリン|・野球部に入り甲子園出場を目指す| | | |グ勧誘の電話、3日後に返事をす|・勧誘にこたえれば入学に有利 | | | |ることになる。 2つの間での葛藤に悩む。 | | | +−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+ | |<前半> | | |□内容把握の発問 | |+−−−−−−−+| | | | ||野球に夢中にな||・野球が好きなんだ |・理想の実| □どんな夢を? | ||り、甲子園にい||・野球部でがんばった|現1 | | ||く夢をもつ ||のは自分も同じだ | | | |+−−−−−−−+|・よくがんばったな | | | | ・先輩との誓い | | | | |+−−−−−−−+| | | | ||電気関係の職業||・将来の希望がはっき|・理想の実| □どんな職業を? | ||に就くためM高||りしているな |現2 | | ||校を希望 ||・野球も強いのかな | | | |+−−−−−−−+| | | | | ・電子機械科へ | | | | |+−−−−−−−+| | | | ||勉強に苦しむ私||・よく切り替えた |・人間の弱| □勉強のどこが簡単| |+−−−−−−−+|・そうだろうな |さ | でない? | | ・思うように点数| | | | | が上がらず心配に| | | | |+−−−−−−−+|・いい話だ |・興味 | | ||レスリング部へ||・うらやましい |・スカウト| □どんな電話? | ||勧誘の電話 ||・迷ってしまう |の喜び | | |+−−−−−−−+|・自分だったらその話| | | | ・3日後に返事 |にのる(のらない) | | | | |・進路希望がかなうチ| | | |+−−−−−−−+|ャンス | | □何と何で迷った?| ||電話を受けてか|| | | (葛藤場面)| ||らの迷い、相談|| |◎葛藤 |+−−−−−−−−+| |+−−−−−−−+| | ||「私」はどうすれ|| | ・受けるべきか、| | ||ばいいと思います|| | 断るべきか | | ||か? || | ・友達や父親、生|・どうしてみんな同じ|・疑問 |+−−−−−−−−+| | 徒に相談 |ようなことを言うのか|・腹立ち | ・どうしてそう思い| | | | | ますか? | | | | |+−−−−−−−−+| | ・担任の言葉にど|・なぜどきっとしたの|・納得 ||「私」なぜどきっ|| | きっとする |だろう | ||としたのかな? || | |・何がわかったのか | |+−−−−−−−−+| +−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+−−−−−+−−−−−−−−−−+ |<後半> | | | | |+−−−−−−−+| | | | ||自分で決めた結||・そうだったのか | | | ||論 ||・よく決断したなあ | | | |+−−−−−−−+|・自分で決めたことが| | | | ・将来の職業も野|よかったのだなあ | |・自分の意志で決めた| | 球もどちらもやる|・自分もいい結果を出| |結果であれば、がんば| | 道をとる |したい |強い意志 |っていたと思います。| | |・自分で決めよう | |〜あきらめがついたと| | |・粘り強くがんばろう| |思います。 | +−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−+−−−−−+−−−−−−−−−−+ 9/20 3年道徳資料 「一本の電話」 <前半>  「野球」それは、私が中学3年間で一番夢中になったことでした。試合や毎日の練習を 繰り返すうちに、いつからか私は、「高校に行っても野球を続け甲子園をめざしたい。」 という希望を強くもつようになっていました。  私が2年生の卒業式の日です。式が終わり、卒業生との最後のお別れの時、野球部の先 輩が私と握手しながらこんなことを言ってくれました。 「おれは高校で甲子園をめざす。お前もがんばれよ。」 「はい、僕も高校野球やります。ぜひ県大会で勝負しましょう。」 「おう、きっとだぞ。」  3年生になってからの部活もとてもつらいものでしたが、くじけることなくがんばり通 しました。そして、最後の中総体は、自分たちの野球ができたという充実感をもって終え ることができました。  部活引退後は、進路に向けて努力する日々です。私は将来、電気部品の組み立てなどの 仕事をしたいと思っていました。ですから、電気関係では最も条件のあったM高校の電子 機械科に入ることを目標にして、毎日勉強しました。しかし、私にとって勉強はそう簡単 なものではありませんでした。テストの結果は思うように伸びません。このままでは合格 できないと思い、だんだん不安になってきました。  そのまま正月が過ぎ、3学期が始まりました。高校の試験の一週間前になった日の夜、 私のところに突然、その高校のレスリング部の顧問の先生から電話がかかってきました。 「君は、この高校に入学を希望しているんだろう?」 「はい。」 「それならぜひうちのレスリング部に入って活動してみないか。」 これはスカウトだと思い、私はうれしくなりました。また、その話にOKすると、くわし くはわかりませんが、入試に有利になるということを聞きました。勉強が苦手な私にとっ ては、とてもおいしい話でしたが、その話を受けてしまうと、私が高校でやろうと思って いた野球はできなくなってしまいます。 「すみませんが、少し考える時間をください。」と私は言いました。「わかった。三日間 だけ待とう。いい返事を期待しているよ。」 受話器を置いたあともしばらく私の頭の中は混乱していました。  もしレスリング部に入れば、将来の電気関係の職業には一歩近づきますが、高校野球は できなくなります。逆に、レスリング部を断って野球部入りを決意したとしても、希望ど おりの高校に入れるかどうかすごく心配です。将来の職業も甲子園もどちらもかなえるた めには、もっと勉強をがんばればいいのはわかっています。でも…………。  その夜私は迷って迷って眠れませんでした。  次の日、学校の友達に話してみると、みんな「自分が納得できるようにじっくり考えた ほうがいい。」「自分のやりたいようにするのが一番いいと思うよ。」などと言いました 。  帰ってから父親に相談すると、「スカウトされるくらいならたいしたもんだ。だが、ど っちを選ぶにしても、最後は自分で決めることだぞ。」と言われました。そういえば、友 達も同じようなことを言っていたなあと思いました。  私はずいぶん悩みましたが、次第にレスリング部の方に気持ちがかたむいていきました 。次の日、そのことを担任の先生に言うと、先生は「おまえが自身が決めたんだな。それ であればいうことはない。」とおっしゃいました。  なんだ先生も同じことを言うのか。自分で決めろなんて、みんなひとごとだと思ってひ どいなあと、腹が立ちました。  その日の帰りぎわスクールバスに乗ろうとしたとき先生に、「もしもレスリングの練習 中に、グランドから野球部の声が聞こえてきたとしても、だいじょうぶなんだな?」と聞 かれました。  私はどきっとしました。そのとき、私は初めてわかったのです。みんなが私に言ってく れたことばの意味が。 <後半>  結局私はレスリング部の話は断ることにしました。あのときは本当にどうしようか悩み ました。でも、真剣に悩んだ末、将来の希望も甲子園の夢も、どちらもかなえられる道を 私は選びました。  幸い、私は今、希望のM高校で電気の勉強をし、放課後は野球部の練習をする毎日を送 っています。でも、ときどき思うのです。もし、レスリング部に入っていたとしたらどう だったろうか。自分で決めたことであれば、きっと一生懸命がんばっていたと思います。 それに、もし不合格だったとしても、自分の意志で決めた結果であれば、あきらめがつい たと思うのです。  考えれば考えるほど、私はどうすればいいかわからなくなってきました。もう結論は出 さなくてはなりません。私は、いったいどうしたらいいのでしょう。  資料後半(ビデオにテロップで流す)  結局、私は野球を選びました。  自分が でも、もしレスリング部に入って、練習中にグランドから野球部の声が聞こえてきたらど う思うだろう…………。