印刷用紙:B5縦 1ページの行数:62 1行の文字数(全角で):40   第 2 学 年 国 語 科 学 習 指 導 案 日 時  平成6年11月25日(金)4校時  学 級  2年1組(男子12,女子12 計24名) 指導者  内  村  弘  子 1.研究主題      一人一人を生かす授業をどう組み立てるか        基礎基本の定着を中心に 2.国語科の研究主題       一人一人を生かしながら、確かな読解力を育てる指導のあり方 3.国語科の研究主題への迫り方   本校の生徒は、おおむねまじめな学習態度であるが、自分の考えを発表すること  が苦手で意欲的に学習するという姿勢に乏しい。このことは指導過程において自ら  判断したり、一人一人のものの考え方を交流する手だてや個を生かす手だてが十分  に講じられていないことが原因であると考えられる。そこで指導過程の中に意志決  定を迫る場面を設定したり、一人一人のものの考え方を交流する場を設定すること  で個を生かしていきたい。また、確かな読み取りの力を育てるためにはことばを手  がかりにしながら、根拠を持って自ら判断し、自分の言葉で表現していくことが不  可欠であり、「読む・聞く・話す・書く」といった言語活動がより主体的に展開さ  れることによって定着するものと考える。そこで、この点については基礎基本の定  着のための手だてとして「読む・聞く・話す・書く」といった言語活動を指導過程 に位置付けることを重点に考えていきたい。 一人一人を生かすためには、授業の中で一人一人の思考や想像を大切にしていく ことと同時に、実態をどう把握するかが重要な課題となる。興味・関心などの情意 的な領域での実態や知識、理解面などの認知的な領域での実態などが考えられるが 、ここでは事前の調査や学習の過程を大事にしながら、一人一人の良さが生かされ るように授業を構成していきたい。  4.単元名   六 古典に親しむ 扇の的 「平家物語」から 5.単元の目標 (関心・意欲・態度)           古典の文章に読み慣れ、古人の心に触れることによって、自分の生           き方・考え方・感じ方・表現の仕方などを考える態度を養う。    ( 表 現 ) 文体の特徴を生かして朗読することができる。(表現 ク)  ( 理 解 ) 場面の状況や人物の心情をとらえ、当時の人々の生き方や考え方を           読み取ることができる。(理解イ エ)     登場人物の姿と自分たちの生き方、考え方を比べ、感想を持つこと           ができる。(理解 オ)                       (言語事項) 文語文特有の表記・言葉遣いについて理解を深め、朗読することが           できる。(言語事項(1)ア) 6.本単元の指導の意図 (1)単元および教材について   本単元は、一年生の古典入門から発展して、古人の心に触れ、自らの心の問  題として考えていく学習をめざした古典の単元で、物語文学として「平家物語  」、随筆として「枕草子」と「徒然草」そして漢詩から構成されている。古典  は長い時の流れを経てもなお、後の時代に多くの感動や生きる上での知恵を与  えてくれる。自分のことを振り返って考える機会が多くなるこの時期、価値あ  る古典に触れて、人間の生き方や考え方に思いをめぐらすことは意義のあるこ  とである。   本教材「扇の的」は、わが国の代表的な軍記物語である「平家物語」の一節  であり、漢文訓読調の固い響きと、和文脈の柔らかさが溶け合った独特の律動  感にあふれる文章である。構成は前書きと本文、本文は口語訳だけのものと原  文と口語訳の対照させた二つからなり、「那須与一」が「判官」の命令によっ  て命をかけて扇に向かい、風に揺らめく扇の的を射落とすまでの心情が中心に  描かれている。また、戦の最中に競技をしかけたり、舞を舞ったり、敵味方を 越えて賞賛を惜しまぬ平家の姿に対して、あくまでも、戦であることに徹する 源氏の姿も描かれている。  古典に親しむ方法はさまざま考えられるが、まず音読を通して文語のリズム に慣れ、表現の仕方や文体になじむことを重点に考えていきたい。特に「平家 物語」はその流れるような文章のリズムから、朗読に適した教材であるといえ る。また、場面の状況や人物の心情を読み取ることによって、古人のものの見 方や考え方に触れ、現代にも通じるものや現代とは異なったものを考えながら 、自分のものの見方や考え方を振り返る機会にしていきたい。  (2)生徒について   国語の学習については24名中19名が好き(好きな方)、5名が嫌い(嫌  いな方)と答えており、国語の学習が好きな生徒が多い学級である。しかし、  古典の学習となると24名中16名が嫌い(嫌いな方)、8名が好き(好きな  方)と答えており、状況が逆転する。好きな理由としては「昔のことがいろい  ろわかっておもしろい」「読むのが楽しい」などがあり嫌いな理由として「意  味がわからない」「読み方が難しい」などがある。古典に興味を持っている生  徒は読みに対する抵抗はなく、むしろその言葉のおもしろさや昔の人々の生活  にまで関心を持っているのに対し、嫌いな生徒は言葉の意味や歴史的仮名遣い  による読みの難しさから古典を敬遠する生徒が多いことがうかがえる。   また、古典の学習で得意(好き)だと感じる活動として音読や場面の状況を  想像することが挙げられ、苦手(嫌い)だと感じる活動として、歴史的仮名遣  いや言葉の意味をいうことなどが挙げられている。一方、古典の学習が楽しく  なることとして意味をいうことが挙げられており、わからないから勉強したい  という意欲がうかがえる。また、場面の状況や登場人物の心情を考えていくこ  とを中心に学習したいという生徒が多い。場面の想像や心情の読み取りなどは  決して簡単な学習活動とは思えないのだが、調査の結果から場面や心情を大切  にしていくことを興味・関心を持たせる有効な手だてとして考えていきたい。  これらの結果をもとにこの単元では古典に親しむ手だてとして音読と場面の状  況、登場人物の心情の読み取りを中心に、授業を構成していきたい。    学級全体としては、認知面で男女差が大きいが、明るい雰囲気で学習できる 学級である。女子は読み取りに優れ、深い思考ができる生徒も多いのだが、発 言に対しては消極的で、男子は意欲的に学習できる生徒とそうでない生徒が見 られ、指導に苦慮しているところである。古典の学習については苦手(嫌い) と感じる生徒が多いので、文法的なことには深入りせずに、文語文の持つ響き のおもしろさを音読によって感じさせたり、色彩豊かな表現や武具や服装につ いて視覚的に興味を引く資料を準備し、興味を持たせるようにしていきたい。  国語の学習そのものは好きだという生徒が多く、意欲もあるので音読や書く 活動を確保することで発言に自信を持たせるとともに一人一人の思考を大切に し、それぞれがよさを発揮できる場面を設定していきたい。 3)国語科の研究主題へ迫るための具体的方法   個を生かすための手だて  1.生徒の実態把握をもとに、よさを生かせる場を設定する。  2.学習プリントを用いて一人一人の書く活動を確保し、発表の場を設定する。 3.自分の考えだけでなく、他の考えを聞いたり、書いたりする活動を設定する 。 基礎基本の定着の手だて 1.読む・聞く・話す・書くなどの言語活動を指導過程に位置付ける。  2.指導過程の中に意志決定を迫る場と時を設定する。 3.評価の工夫(机間巡視、書いたものを発表する場、自己評価) 7.指導計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6時間 1.全文を読み、あらすじをとらえる。 1時間 2.原文を読み、文語文の特徴をとらえる。 1時間   3.命令を受けるまでの与一の心情の動きをとらえる。 1時間  4.与一の置かれた状況と的に向かうまでの与一の心情の動きをとらえる。                                  1時間(本時)      5.的を射た時の周囲の状況と心情をとらえる。      1時間          6.場面を選んで朗読の工夫をする。 1時間   8.本時の指導 (1)ねらい ・的を射る与一の条件の厳しさを物理的な面と精神的な面からとらえ、与一の悲壮    な決意をとらえることができる。 (2)基礎的・基本的事項 (関心・意欲・態度) 課題をとらえ、課題に対して積極的に取り組もうとする。   ( 表 現 )    与一の心情を想像し、百三十字程度の文章にまとめること              ができる。                        ( 理 解 )    与一のおかれた状況と心情を表現に即して読み取ることが              できる。                         (言語事項)     歴史的仮名遣いに注意して読むことができる。 (3)本時の展開 +−−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+ |段階| 学習内容  |   学習活動   |   支援上の留意事項 | | | | | ◎評 価 ○個を生かす手だて| +−−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−+ | |1前時の復習 | ・与一が一度断った |◎源氏全体のことを考えたことが| |導 | |  のはなぜか。 | 指摘できたか。  | | | | ・断れなかったのな |◎「君命辞しがたく」をもとに発| |入 | | ぜか。 | 表できたか。 | | |2課題提示 |・課題を確認しプリ | | | | | ントに記入する。 | | |5分| +−−−−−−−−−−−−−+| | | | |与一はどんな状況におかれ、|| | +−−+−−−+どんな気持ちで扇の的に +|−−−−−−−−−−−−−−−+  | | |向かったのだろうか。  || | | | +−−−−−−−−−−−−−+| | | |3音読 |・学習部分を音読す |○姿勢・声量・歴史的仮名遣いに| | | | る。 | 注意するよう助言する。 | | | | |○第2時で仮名遣いについて不十| | | | | 分な生徒に配慮する。 | | | | | | | |4場面の状況 |・場面の状況を表現 |○学習プリントに書き込ませる。| | | | に即して読み取る | | | | |  時 | | | | |  場所 |○情景をイメージかできるように| | | |  的までの距離  | 具体的な数字や資料を準備する| | | |  両軍の様子 | | | | |      など | | | | |・どんな条件といえ |◎与一にとって極めて不利な状況| |展 | | るか。  | であることが把握できたか。 | | | | | | | |5 与一の心情 |・「目をふさいで」 |○場面の状況をふまえて書くよう| |開 | | から「目を見開  | に、視点を与える。 | | | | く」までの与一の | | | | | 心情の揺れ動きを |○訳文を参考にしながら与一にな| | | | 想像して書こう。 | ったつもりで書くように助言す| | | |・発表する。 | る。  | | | | |○いろいろな表現方法があること| | | | | を話し、発表できる雰囲気を作| | | | | る。 | | | | |◎追いつめられた状況で神仏に祈| | | | | っていることが表現できたか。| | |6 課題のまとめ|・自然の条件や周囲 |○板書とプリントによって確認す| | | | の状況が与一を追 |   | | | | いつめていたこと | | | | | を確認する。  | | |38分| |・自分が与一ならど |◎自分の立場と根拠が明らかにさ| | | | うするか。 | れ、課題に沿って書かれている| | | |  前段に自分が選 | か。  | | | | ばれたらどうする | | | | | かとその根拠を述 |  | | | |  べ、後段に与一の |  | | | |  行動や気持ちにつ| | | | |  いて感じたことを| | | | |  まとめる。 | | +−−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−-+ |終 |7.まとめ | ・今日の学習の評価 |◎自分の学習を振り返っての感想 | |結 | |  をする。 | を書くことができたか。 | |7分|8.次時予告 | ・扇を射切る場面と | | | | |  その後の両軍の反 | | | | |  応について学習す | | | | |  ることを確認する | | +−−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−− + (4)評価の観点 ・課題をとらえ、課題に対して積極的に取り組もうとしたか。    ・与一の心情を想像し、文章にまとめることができたか。 ・与一のおかれた状況と心情を表現に即して読み取ることができたか。 ・歴史的仮名遣いに注意して読むことができたか。