印刷用紙:B4縦 1ページの行数:57 1行の文字数(半角文字で):116 その1 (次の登録番号は 950061.JXW) 国  語  科  学  習  指  導  案 指導者 岩長 康之 1.日 時  平成7年7月7日(金) 第1校時 2.学 級  3年4組 男子23名 女子16名 南校舎2階 3.主 題  六 古典を味わう  教材名「東下り」−「伊勢物語」から− 4.主題について   本教材「東下り」は「伊勢物語」百二十五段の中から,第九段の冒頭の部分(「八橋」)と末尾の部分(「すみだ河」)を抜  粋したものである。日本の古典文学は純粋な和歌に始まり,やがては,「伊勢物語」をはじめとする歌物語のように,短詩型文  学と散文とが結合したものがその中核を占めるようになる。したがって本教材の学習は,日本の古典文学の中核をなすジャンル  の学習を入門的に取り上げるものといってよい。教材文は,都の生活に望みを失い,安住の地を求めて東国へ旅をする「男」の  姿を通して,都から遠ざかれば遠ざかるほど都に寄せる思いがつのり,嘆きが強まっていくという,行動と心情の矛盾の深さを  描いている。文章は平易で,脚注によって大意をとらえることが可能である。また,第九段の三つの場面のうち,「駿河の国」  の部分は現代語によって要約されているが,これにより「八橋」と「すみだ河」の対比から,男たちの嘆きの強さの違いに気づ  かせることが容易である。以上のことから,本教材は日本の古典文学の中核をなすジャンルの学習を入門的に取り上げるのに適  した教材であると考える。   生徒はこれまでに,小説と説明文の教材によって,自分たちの力で学習課題をつくり,それを解決していくという活動に取り  組んできた。その結果,自分たちの力で文章を深く読むことができることに気づき,新しい教材の学習に対して,期待と自信を  もって臨もうとしている。しかし事前調査によると,古典の学習に関しては,六割以上の生徒が言葉がわからないことに起因す  る戸惑いを示している。したがって,これまでの古典の学習では,生徒の意識が口語訳のみに向いてしまい,自分たちの視点か  らテーマについて深く考えたり,自分たちの力で設定した学習課題を自分たちの力で解決するという活動,及びそれに伴う成就  感が不十分であった。   そこで本教材の学習では,古典の文章であっても,自分たちの力で深く読み味わうことができることに気づかせ,古典の作品  に対する関心をいっそう高めるために,個人課題をもとに共通課題をつくる活動を行う。個人課題をつくるためには文章の大意  をとらえていることが前提になるので,学習の初期の段階では,脚注や古語辞典をもとに口語訳を丁寧に行わせ,粗筋とその場  面の状況を具体的にとらえさせる。共通課題づくりの過程でふるい分けられた個人の課題やグループの課題は,共通課題の解決  の途中段階でできる限り扱うことを確認するとともに,課題解決の手立ても見通しを持たせて学習に臨ませたい。共通課題を解  決する最終段階では,対比が容易であるという教材文の特質を生かし,「八橋」の場面と「すみだ河」の場面との対比から,都  から遠ざかれば遠ざかるほど都に寄せる思いがつのり,嘆きが強まっていくという,男の行動と心情の矛盾の深さに気づかせて  いきたい。 5.指導計画  (1) 事前調査。----------------------------------------------------------------------------0.5 時間  (2) 全文通読のあと,脚注や古語辞典を使って教材文を現代語に直し,文章の     大意と状況をとらえることができる。-------------------------------------------------------2 時間  (3) 個人課題をつくることができる。--------------------------------------------------------0.5 時間  (4) 個人課題をもとにグループ課題をつくり,それをもとに共通課題を設定し,     学習の計画を立てることができる。---------------------------------------------------------1 時間  (5) 小課題を解決しながら,共通課題を解決することができる。---------------------------------2 時間 (本時2/2) (6) 学習してきたことをもとにして,当時の人々の「旅」に対する自分の考えを,     現代と比べながら作文にまとめることができる。---------------------------------------------1 時間 6.本時の達成目標  (1) 男たちが泣いたのは,都や都に残してきた恋しい人から遠ざかっていく嘆きによるものであることを説明できる。  (2) 都から遠ざかるにしたがって,男たちの嘆きがいっそう強まっていくことを説明できる。  (3) 級友の考えも参考にしながら課題解決をしようとしている。 7.本時の下位行動目標 (観点別評価項目)  a 男たちが泣いたのは,都や都に残してきた恋しい人から遠ざかっていく嘆きによるものであることを      説明できる。                                           (表・理)  b 都から遠ざかるにしたがって,男たちの嘆きがいっそう強まっていくことを説明できる。        (表・理)  c それぞれの場面から見つけた特徴的な事柄や相違点が意味することを,都からの遠さの違い,男たちの   精神的余裕の程度の違い,男たちの嘆きの程度の違いというような内容で説明できる。          (表・理)  d 教材文を音読し,それぞれの場面から特徴的な事柄や相違点を見つけることができる。         (表・理)  e 課題の解決の方法として,和歌が詠まれているそれぞれの場面の対比の方法をあげることができる。   (関・理)  f 男たちが泣いた理由には,二つの和歌の内容や和歌が詠まれたときの状況が深くかかわっていることを   説明できる。                                           (表・理)  g 本時の学習課題は「なぜ,男たちは泣いたのか。」であることを確認できる。             (関・理)  h 本時の学習は,共通課題を解決する学習であることを確認できる。                  (関・理) 8.本時の評価の観点  (1) 男たちが泣いたのは,都や都に残してきた恋しい人から遠ざかっていく嘆きによるものであることを説明できたか。  (2) 都から遠ざかるにしたがって,男たちの嘆きがいっそう強まっていくことを説明できたか。  (3) 級友の考えも参考にしながら課題解決をしようとしていたか。 印刷用紙:B4縦 1ページの行数:78 1行の文字数(半角文字で):120 その2 (前の登録番号は 950060.JXW) 9.本時の展開  <個に配慮する視点>  <A>達成度     <B>学習速度    <C>取り組み方              <D>見方・考え方  <E>興味・関心   <F>生活経験 +−+−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |段|過|時| |   個  人  差  に  対  す  る  配  慮 | | | | | | 学  習  活  動 +−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+資料・教具等| |階|程|間| |  評価の観点・方法 |    配  慮  事  項 | | +−+−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ | | | |1 本時の学習内容を確認で| |※1<E>本時の学習は,「共通課題」| | | | | | きる。 | | の解決であることを確認させる。 | | | |課| |2 本時の学習課題を確認で| | | | | |題| | きる。 | | | | | |確| |+−−−−−−−−−−−+| | |課題紙板書 | |導|認| || なぜ,男たちは泣いた|| | | | | | | ||のか。 || | | | | | |+−−−−−−−−−−−+| | | | | | | |3 課題解決の方法を考え,| |※3<D>男たちが泣いたのは,双方の| | |入| | | 発表できる。 | | 場面とも和歌が詠まれた直後であり,| | | | | | | | 和歌の内容やそのときの状況が泣いた| | | | | | | | 理由に深くかかわっていることを確認| | | | | | | | する。また,対比の方法が出ない場合| | | | |7| | | には,二つの場面の対比が,本時の課| | | | |分| | | 題解決に有効であることを示す。 | | +−+−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ | | | |4 教材文を音読する。 | |※4<C>それぞれの和歌が詠まれた場| | | |課| | | | 面の特徴的な事柄や相違点に着目させ| | | | | | | | ながら音読を聞かせる。 | | | | | |5 二首の和歌が詠まれた場|5−−−−−−−−−−+|5<D>必ずしも対比だけでなく一方だ| | | | | | 面を比べ,特徴的な事柄や|| それぞれの場面から|| けでもよいことを指示し,泣き方,泣| | | | | | 相違点を指摘し,その意味||特徴的な事柄や相違点|| いた人,時間,歌が詠まれたときにし| | | | | | を説明できる。 ||を指摘し,その意味を|| ていたこと,歌を詠むきっかけ,見て| | | |題| | ||説明できたか。 || いるものなどを出させたい。机間指導| | | | | |+−−−−−−−−−−+| により,特にPレベルの生徒を援助す| | | | | | |挙手・指名発表 | る。 | | | | | | | | <A>生徒からの指摘が不十分な場合| | | | | | |   | には,教師が対比の観点を示す。 | | | | | | | | | | | |追| | |   | | | | | | | | | | | | | | | |   | | | | | |6 5で取り上げられた事柄|6−−−−−−−−−−+|6<D>すみだ河の場面の方が八橋の場| | | | | | や相違点をもとにして,都|| 都から遠ざかるほど,| 面よりも,嘆きの程度が大きいこと(| | |展| | | からの遠さと男たちの嘆き||男たちの嘆きが強くな|| 泣き方,歌を詠むきっかけ),気持ち| | | |究| | の強さとの関係を説明でき||っていくことを説明で|| に余裕がないこと(時間,歌が詠まれ| | | | | | る。          ||きたか。      || たときにしていたこと),都からの遠| | | | | | |+−−−−−−−−−−+| さを実感していること(見ているもの| | | | | | |挙手・指名発表     | )をとらえさせ,嘆きの強さと都から| | | | | | | | の遠さには,相関関係があることに気| | | | | | |   | づかせる。            | | | | | | |   | <A>生徒の説明が不十分な場合には, | | | | | |   | 5で指摘された事柄がなぜ,嘆きの程| | | | | | |       | 度,精神的余裕の程度,都からの遠さ| | |開| | | | | を実感させるものであると言えるのか| | | | | |   | を教師が補足説明する。      | | | | | | |   | | | | | | | |         | | | | | | | | | | | | | | | |   | | | | | |30| |   | | | | |分| |           | | | | |課| |7 男たちが泣いた理由を説|7−−−−−−−−−−+|7<D>都に寄せる思いを込めた和歌を, | | | | | 明できる。       || 都や都に残してきた|| 都から遠い場所で詠んだからこそ,男| | | |題| | ||恋しい人から遠ざかっ|| たちは泣くのであるということをとら| | | | | | ||ていく嘆きによるもの|| えさせる。            | | | |解| | ||であることを説明でき|| <A>納得の程度を指サインで確認し, | | | | | ||たか。       || 納得が不十分な生徒に対しては,納得| | | |決| | |+−−−−−−−−−−+| できたという生徒にさらに指名し,理| | | | | | |挙手・指名発表     | 解の定着をはかりたい。      | | | | | | | |  | | | | |10| |       | | | | |分| |  | | | +−+−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+ |自| |8 「自己評価カード」で,| |※8<C>本時の学習に対する意欲,理|自己評価カー| |終|己| | 本時の学習への取り組みに| | 解度,満足度について個人毎に評価さ|ド | | |評| | ついて評価することができ| | せる。 | | | |価| | る。 | | |道しるべ | |末| |3|9 次時の学習内容を確認す| | | 18〜31 | | |分| ることができる。 | | |  | +−+−+−+−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−+